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第六章 戦乱の京
第28話 十拳剣
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「お呼びでしょうか殿」
「来たか虎鉄、急に呼び出してすまなかったな」
魔王城王の間。
ある日虎鉄はジークに呼び出され一人で来ていた。
「それで何の用でしょうか。新しい任務ですか?」
「違う。今日はお前に渡したいものがあってな」
ジークは懐より布に包まれた何かを取り出す。大きさは30cmほど、片手で持てるサイズだ。
「これは……?」
「開けてみろ」
虎鉄はそれを恭しく受け取ると丁寧に布をはがし中身を取り出す。
「これは、剣、でしょうか?」
中から出てきたのは小ぶりの両刃の剣。
虎鉄が言い淀んだのはその剣の状態のせいだ。その剣は全体が錆つき黒ずんでおりとても使用できそうな状態ではなかった。
虎鉄は試しにその剣を抜いてみようとするが錆びついているせいで鞘を抜くことすら出来なかった。
「む、むむむ」
虎鉄は頑張って抜こうとするが剣はうんともすんとも言わない。
「無理に抜こうとしなくてもよい。その魔道具はまだ未完成、その状態でいいのだ」
「そ、そうでしたか」
虎鉄はこっそりホッとする。もし自分のせいで魔道具が使えなかったら落胆されるのではないのかと内心焦っていたのだ。
「その剣は『無銘』。つまりまだ名をつけてないのだ」
「名前を……つけてない?」
虎鉄が疑問に思うのも当然だ。
名前は魔道具にとってもっとも重要だと言ってもいい。名前がなければ魂の入ってない器と同じだ。
現に今その剣はなんの魔力も持たずただのガラクタとなっている。
「剣というのはもっとも名のある武器と言っていい。それゆえ何をモチーフにするか悩んでな。だったらお前に決めてもらおうってことにしたのだ」
「拙者が?」
「ああ、この剣にはあらゆる属性に変化する力を入れてある。もし本当に自分の力が足りない時、欲しい力をこの剣に願うといい。必ず力になってくれるだろう」
◇
「今こそこの力、使わせていただきます!」
虎鉄はへべれけ状態の大蛇に飛びかかると『無銘』を取り出し魔力を込め始める。
剣につける名前はもう決まっている。
それは伝説でスサノオが八岐大蛇を討伐するのに使用した剣の名前。
大蛇を倒すのにこれ以上適した名前はないだろう。
虎鉄は目の前に剣を掲げその名を呼ぶ。
「目覚めよ……十拳剣《とつかのつるぎ》!!」
虎鉄の呼びかけに応えるかの様に剣は光出し、その真の姿を表す。
表面を覆っていた錆は落ちその下から金色に輝く鞘が現れる。30cmほどしかなかった長さも倍ほどの長さになり。実用的な長さになる。
虎鉄はその剣『十拳剣』を腰に差し目を閉じる。
これは雑念を排し一撃に集中するためだ。
虎鉄の額に汗が流れる。
チャンスは一回。失敗は許されない。
もしこれで倒しきれなければ全てが無駄になってしまう。
焦る気持ちを抑え、波たつ心を落ち着かせる。
イメージするのは波紋一つ立たない水面。それをイメージすることで虎鉄は筋肉の緊張を緩め、無駄な力を抜いていく。
そして余分な力が抜ききれた瞬間、まるで限界まで溜め切ったダムが決壊するかのごとく力を解放する。
「神討之太刀《かみうちのたち》……天羽々斬《あまのはばき》り!!」
その瞬間、周囲に「キイィィィン!!」と甲高い音が鳴り響く。
その様子を見ていた四人は状況が理解できず困惑する。彼らから見たら飛び上がった虎鉄がとてつもない魔力を放ったと思った瞬間、不思議な音がしたからだ。
しかも虎鉄は剣を抜かずにそのまま地面に着陸したのだ。
失敗したのかと戸惑う面々。しかし次の瞬間驚くべきことが起きる。
「シャ?」
大蛇の8つの首にツツツ……と赤い線が走る。大蛇自身も不思議に思ったのかその線を不思議に見守る。
そしてその線が首を一周した瞬間、なんと大蛇の首がコトリ、と地面に向かって落下した。
切り落ちた首は何が起こっているのか理解できないようで不思議そうに自分と繋がっていた胴体を眺める。
「い、いったい何が起きたんだ……?」
「居合よ」
不思議がる興亀に虎虎が答える。
「さっきの金属音は刀と鞘が擦れる居合音だったのよ。目にも止まらない速さで虎鉄が放った居合は音だけを残して大蛇にすら気づかれずその首を切り落としたのよ」
「相手にも気づかれない斬撃!? そんなことできるのか!?」
「事実目の前で起きたのだから信じるしかないじゃない。まさに神速ってやつね」
神業に驚愕する一同に向かい虎鉄はゆっくりと振り返る。
虎鉄の後ろには首を全て失った大蛇の胴体のみが残っている。首は魔力の供給源を失いサラサラと消え去ったが胴体だけは魔力を残しており消えなかったのだ。
「おい怪我はないかお主ら……」
虎鉄がそう言って一歩を踏み出した瞬間、背後にあった胴体に異変が起こる。
なんと胴体の中央部に巨大な目玉がギョロリと生えてきたのだ。その大きな瞳は血走りながら虎徹を憎々しげに見つめる。視線だけで人を殺せそうなほどの憎しみが込められている。
しかし渾身の一撃を放った虎徹はそれに気づくことはできない。今立っているのすら奇跡なのだから無理もないだろう。
しかしそんなことなど御構い無しにかつて大蛇だったその化け物は口の下に巨大な口を作り出す。
「わ、わたじは誰だと思っでいる! わだしこそ元老院が長、麒黄院なるぞ!!」
どうやら首が切り落ちる寸前、一人だけ意識を胴体に移していたようだ。
かつて元老院の長だったその化け物は口からよだれを撒き散らしながら虎鉄を一飲みにしようと襲いかかる。
もちろん興亀たちはそれを阻止しようと走り出そうとするが彼らも満身創痍。とても間に合わない。
「くそっ……どうしようもないのか?」
思わず興亀の口から弱音がこぼれる。
しかしまだ諦めてない者が一人だけいた。
「こんなところで終わらせてたまるもんですかぁ!!」
猛スピードで走り出したのは虎虎だ。
彼女も相当の深手を負っており、魔力も枯渇しかけているというのにその足取りは力強く、そしてなにより速かった。
「もう大切な人を失うのはころごり……こんどこそ救ってみせるあの子のためにも!!」
虎虎の体を黒い炎が包み始める。
彼女の持ち得る魔法感覚は『金』のみ。その彼女が炎をまとうことは本来ありえないことなのだが、今の彼女にとっては些細なことだ。
正体不明の力であろうと使えるものはなんだって使う。
「はああああああ!!」
烈火の速さで虎鉄と化け物の間に割り込んだ虎虎は「金」と「火」両方の魔力を解放する。
本来火は金を溶かしてしまい相性は悪い。しかし虎虎は虎王院家当主の名に恥じない持ち前のセンスで相反する二つの属性を両立させてみせる。
その結果現れたのは黒炎に身を包んだ金で作られた虎。
その大きさは大蛇の胴体部分である化け物を超える大きさを誇り、その身から放たれる熱気は木材はもちろん金属ですら溶かす温度だ。
「くらえ化け物! 私の怒りを、私たちの怒りを食らってみろっ!」
虎虎の出した虎はその大きな手で化け物を掴み、さらに燃え盛る牙で噛み付く。
「ぐ、ぐおおおおおっ!! やめろっ! わだしを誰だと思っでいる!」
虎の放つ炎は化け物の体をものすごい速度で焼いていく。しかも黒炎が焼いた箇所は再生することなく化け物を確実に死へ追いやっていく。
「あんたが誰かなんて関係ない! 私たちは私たちの守りたいものだけを守る!」
虎虎はさらに魔力を込め黒炎の威力を上げていく。
黒炎はすでに化け物の全身を包み込んでいる。
「うおぉ……永遠の……いのち……」
「死ね、くそじじいが」
やがて魔力が切れた虎虎が魔法を解くとそこには燃えたカスと瓦礫だけが残っていた。
「来たか虎鉄、急に呼び出してすまなかったな」
魔王城王の間。
ある日虎鉄はジークに呼び出され一人で来ていた。
「それで何の用でしょうか。新しい任務ですか?」
「違う。今日はお前に渡したいものがあってな」
ジークは懐より布に包まれた何かを取り出す。大きさは30cmほど、片手で持てるサイズだ。
「これは……?」
「開けてみろ」
虎鉄はそれを恭しく受け取ると丁寧に布をはがし中身を取り出す。
「これは、剣、でしょうか?」
中から出てきたのは小ぶりの両刃の剣。
虎鉄が言い淀んだのはその剣の状態のせいだ。その剣は全体が錆つき黒ずんでおりとても使用できそうな状態ではなかった。
虎鉄は試しにその剣を抜いてみようとするが錆びついているせいで鞘を抜くことすら出来なかった。
「む、むむむ」
虎鉄は頑張って抜こうとするが剣はうんともすんとも言わない。
「無理に抜こうとしなくてもよい。その魔道具はまだ未完成、その状態でいいのだ」
「そ、そうでしたか」
虎鉄はこっそりホッとする。もし自分のせいで魔道具が使えなかったら落胆されるのではないのかと内心焦っていたのだ。
「その剣は『無銘』。つまりまだ名をつけてないのだ」
「名前を……つけてない?」
虎鉄が疑問に思うのも当然だ。
名前は魔道具にとってもっとも重要だと言ってもいい。名前がなければ魂の入ってない器と同じだ。
現に今その剣はなんの魔力も持たずただのガラクタとなっている。
「剣というのはもっとも名のある武器と言っていい。それゆえ何をモチーフにするか悩んでな。だったらお前に決めてもらおうってことにしたのだ」
「拙者が?」
「ああ、この剣にはあらゆる属性に変化する力を入れてある。もし本当に自分の力が足りない時、欲しい力をこの剣に願うといい。必ず力になってくれるだろう」
◇
「今こそこの力、使わせていただきます!」
虎鉄はへべれけ状態の大蛇に飛びかかると『無銘』を取り出し魔力を込め始める。
剣につける名前はもう決まっている。
それは伝説でスサノオが八岐大蛇を討伐するのに使用した剣の名前。
大蛇を倒すのにこれ以上適した名前はないだろう。
虎鉄は目の前に剣を掲げその名を呼ぶ。
「目覚めよ……十拳剣《とつかのつるぎ》!!」
虎鉄の呼びかけに応えるかの様に剣は光出し、その真の姿を表す。
表面を覆っていた錆は落ちその下から金色に輝く鞘が現れる。30cmほどしかなかった長さも倍ほどの長さになり。実用的な長さになる。
虎鉄はその剣『十拳剣』を腰に差し目を閉じる。
これは雑念を排し一撃に集中するためだ。
虎鉄の額に汗が流れる。
チャンスは一回。失敗は許されない。
もしこれで倒しきれなければ全てが無駄になってしまう。
焦る気持ちを抑え、波たつ心を落ち着かせる。
イメージするのは波紋一つ立たない水面。それをイメージすることで虎鉄は筋肉の緊張を緩め、無駄な力を抜いていく。
そして余分な力が抜ききれた瞬間、まるで限界まで溜め切ったダムが決壊するかのごとく力を解放する。
「神討之太刀《かみうちのたち》……天羽々斬《あまのはばき》り!!」
その瞬間、周囲に「キイィィィン!!」と甲高い音が鳴り響く。
その様子を見ていた四人は状況が理解できず困惑する。彼らから見たら飛び上がった虎鉄がとてつもない魔力を放ったと思った瞬間、不思議な音がしたからだ。
しかも虎鉄は剣を抜かずにそのまま地面に着陸したのだ。
失敗したのかと戸惑う面々。しかし次の瞬間驚くべきことが起きる。
「シャ?」
大蛇の8つの首にツツツ……と赤い線が走る。大蛇自身も不思議に思ったのかその線を不思議に見守る。
そしてその線が首を一周した瞬間、なんと大蛇の首がコトリ、と地面に向かって落下した。
切り落ちた首は何が起こっているのか理解できないようで不思議そうに自分と繋がっていた胴体を眺める。
「い、いったい何が起きたんだ……?」
「居合よ」
不思議がる興亀に虎虎が答える。
「さっきの金属音は刀と鞘が擦れる居合音だったのよ。目にも止まらない速さで虎鉄が放った居合は音だけを残して大蛇にすら気づかれずその首を切り落としたのよ」
「相手にも気づかれない斬撃!? そんなことできるのか!?」
「事実目の前で起きたのだから信じるしかないじゃない。まさに神速ってやつね」
神業に驚愕する一同に向かい虎鉄はゆっくりと振り返る。
虎鉄の後ろには首を全て失った大蛇の胴体のみが残っている。首は魔力の供給源を失いサラサラと消え去ったが胴体だけは魔力を残しており消えなかったのだ。
「おい怪我はないかお主ら……」
虎鉄がそう言って一歩を踏み出した瞬間、背後にあった胴体に異変が起こる。
なんと胴体の中央部に巨大な目玉がギョロリと生えてきたのだ。その大きな瞳は血走りながら虎徹を憎々しげに見つめる。視線だけで人を殺せそうなほどの憎しみが込められている。
しかし渾身の一撃を放った虎徹はそれに気づくことはできない。今立っているのすら奇跡なのだから無理もないだろう。
しかしそんなことなど御構い無しにかつて大蛇だったその化け物は口の下に巨大な口を作り出す。
「わ、わたじは誰だと思っでいる! わだしこそ元老院が長、麒黄院なるぞ!!」
どうやら首が切り落ちる寸前、一人だけ意識を胴体に移していたようだ。
かつて元老院の長だったその化け物は口からよだれを撒き散らしながら虎鉄を一飲みにしようと襲いかかる。
もちろん興亀たちはそれを阻止しようと走り出そうとするが彼らも満身創痍。とても間に合わない。
「くそっ……どうしようもないのか?」
思わず興亀の口から弱音がこぼれる。
しかしまだ諦めてない者が一人だけいた。
「こんなところで終わらせてたまるもんですかぁ!!」
猛スピードで走り出したのは虎虎だ。
彼女も相当の深手を負っており、魔力も枯渇しかけているというのにその足取りは力強く、そしてなにより速かった。
「もう大切な人を失うのはころごり……こんどこそ救ってみせるあの子のためにも!!」
虎虎の体を黒い炎が包み始める。
彼女の持ち得る魔法感覚は『金』のみ。その彼女が炎をまとうことは本来ありえないことなのだが、今の彼女にとっては些細なことだ。
正体不明の力であろうと使えるものはなんだって使う。
「はああああああ!!」
烈火の速さで虎鉄と化け物の間に割り込んだ虎虎は「金」と「火」両方の魔力を解放する。
本来火は金を溶かしてしまい相性は悪い。しかし虎虎は虎王院家当主の名に恥じない持ち前のセンスで相反する二つの属性を両立させてみせる。
その結果現れたのは黒炎に身を包んだ金で作られた虎。
その大きさは大蛇の胴体部分である化け物を超える大きさを誇り、その身から放たれる熱気は木材はもちろん金属ですら溶かす温度だ。
「くらえ化け物! 私の怒りを、私たちの怒りを食らってみろっ!」
虎虎の出した虎はその大きな手で化け物を掴み、さらに燃え盛る牙で噛み付く。
「ぐ、ぐおおおおおっ!! やめろっ! わだしを誰だと思っでいる!」
虎の放つ炎は化け物の体をものすごい速度で焼いていく。しかも黒炎が焼いた箇所は再生することなく化け物を確実に死へ追いやっていく。
「あんたが誰かなんて関係ない! 私たちは私たちの守りたいものだけを守る!」
虎虎はさらに魔力を込め黒炎の威力を上げていく。
黒炎はすでに化け物の全身を包み込んでいる。
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