17才。

猫野 尻尾

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第20話:ついにハピホ。

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ホテルの部屋に入った凛の第一声。

「わ~なにこれ?・・・派手~・・・すご~い」

(リニューアルされたとは言え部屋の中はラブホの時と変わってないじゃん)

僕は部屋の中をぐるっと見てそう思った。
ひときわ派手な部屋に入ったみたいだった。

彼女は天井から下がってきているパイプを珍しそうに見ながら

「何これ?」

「そこに料金を入れるんだと思うよ・・・たぶんね」 
「その穴にお金を入れるとシュッって吸い込まれていくって仕組みに
なってるんだよ」

僕はホースが伸びてきてる先の穴を指差した。

「ふ~ん・・・て、悠人・・・なんでそんなこと知ってるの?」

〈わ、余計なこと言った・・)

「ん~とね、それはね、そう友達に教えてもらったの」
「って言うか、そこに説明書いてあるの今見たし・・・」

「友達?、説明どっち?」

「じゃ~友達」

「うそ」
「誰か女と来たことあるんでしょ?」

凛は眉を細めて下唇を前に出すような仕草をした。

「違うって、最近のホテルってこうなってんだよって、友達からね・・・」

「本当に~?」

「ほんと、ほんと」

「本当かな~?」

「うそじゃないってば」

「でも、慣れてるじゃん、はじめてって感じしないんだけど」

「来たことはあるよ、でも仕事でだよ」

「こんなところに?、どんな仕事?・・・そういうこと言うと、よけい怪しい」

「だから、もういいじゃん、今日それ関係ないでしょ」
「言い合ってても終わんないし・・・やめようよ」

「いいけど・・・」

大人同士の付き合いならもうちょっとムードのある会話になったんだろうけど
所詮、女子校生。
疑ってばかりでムードもへったくれもない。
下手なこと言うとまたスネたりするからな・・・。

凛はそれからもまだ部屋を物色していた。
ガラス張りのバスルームを見つけた凛は、

「わ~ガラス透けてるぅ」
「丸見えだね、これちょっと恥ずかしくない?」

だいたいハッピーなホテルってそういうもんだよ。
部屋の中にはカラオケもあったし、エロ~いDVDの棚もあった。 
それを凛は見つけて、一枚手にとってエロいジャケットとエロいタイトルを見て

「わ~やらし~」

って顔をしかめた。

「凛はこういうの見たことあるの?」

「ないよ、エッチなのがあるのは知ってるけど」

「見ないほうがいいよ。凛には刺激が強すぎるから」

「悠人は見たことあるの?」

「そりゃ一応男だからね」

「あ~やらし~スケベ・・・不潔~」

そう言って僕を軽蔑の眼差しでみて、顔をしかめた。

 (でもさ、これから君は、そう言うやらし~ことをしようとしてるんだからね)
(わかってる?)

「凛の歳じゃ、男の心理は理解できないんだよ」

「なにそれ?・・・心理?」
「男の人はみんなスケベだってことは分かるよ」

「それ偏見・・・外れてはないけどな」

ちょっとだけ関心ありそうな凛だったが、見たいとは言わなかった。
こういうのは逆効果になる人もいるらしいから見せないほうがいい。
エッチする前にシラけられると困るしね・・・。

部屋を物色してた凛は、大きなベッドに座った。

「わ~ふわふわ」

それからベッドの枕元にあったコンドームを目ざとく見つけて

「何これ、あ、あれ?」
「やだ~」

ゴムが入った袋を持って珍しそうに見てる。 
そのくらいは知ってるみたいだね。
一応性教育は受けてるだろうし・・・。

結局カラオケは、なんとなく歌うって気分じゃなかった。 
ことが終わったあとなら、まだしも、これからって時にそんな気にはならない。
凛もそれは同じ気持ちだったようだ。 

言ってみれば、このどうでもいい時間が僕はまじで無駄な気がした。
凛が静かになると、なんとなくだけど、緊張感が高まってくる。
そういう緊張感は相手にも伝わる。

一通りはしゃいで落ち着いた凛は、ベッドに座ったまま天井を眺めていた。
空気感が止まるのは、よけい緊張を誘う。

「ねえ、本当にここに誰かと来たことないの?」

(え~そこ~)
(また蒸し返すつもりかよ?・・・勘弁してくれ~)
(なにをしにここに来たか・・・分からせないとな)

つづく。
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