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第6話:敬四郎のための500万品のレシピ。

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敬四郎がクーニャンのことを好きだと言ったことから状況が変わってきた。
それは大きな展開だった。

敬四郎が、もしクーニャンに好きだと告白してなかったら、今のまま
なにも変わらず、クーニャンは夕方敬四郎のために晩ご飯を作りに
来るだけの家事代行を続けていただろう。

クーニャンは敬四郎の好きだと言う告白を全面的に受け入れ、
ハウスベルを辞めて、正式に敬四郎のマンションで同棲する
ことになった。

クーニャンは同棲兼敬四郎の恋人になったわけで、彼女は恋人として
敬四郎のために朝昼晩とご飯を作ることが生きがいになった。

将来的には敬四郎はクーニャンと一緒になるつもりでいた。
でも大学はまだ四年残ってるわけで・・・すぐどうこうできる
わけじゃなかった。

だけどその後も、ふたりは順風満帆にお互いの愛を育んでいった。

そして敬四郎とクーニャンが暮らし始めて五年の月日が流れていた。
大学を卒業した敬四郎は宇宙開発の研究に没頭していた。

クーニャンはと言うと今は細やかながら居酒屋さんを営んでいた。
中華だけじゃなく、全般的に自分の特技を生かせる料理屋。

店の名前は「三蔵法師」・・・ありがたい人の名前だけど、それって居酒屋って
より、やっぱり中華料理屋っぽくない?
ああそうか・・・もし中華料理屋やってたらその名前になってたんだ。

クーニャンの店は、クーニャンに鼻の下を伸ばした男どもで賑わっていたため
繁盛していた。

男相手にお酒を売ってお愛想を振りまく商売。
人との関わりが嫌いじゃなかったクーニャンは性格的にそういう商売が合って
たのかもしれない。

だから、敬四郎とクーニャンが会えるのは敬四郎が休みの時以外は夜だけ。
それでも、ふたりが相変わらずラブラブだったことには違いなかった。

もちろんクーニャンの「三蔵法師」の開業費は敬四郎、厳密には敬四郎の実家
から出ていた。

敬四郎は大学を卒業したことを期に両親にクーニャンを紹介した。
両親は最初はクーニャンが中国人だと知って反対まではしなかったが
いい顔はしなかった。

でもクーニャンが性格のいい子だと分かるにつれ、ふたりの関係を賛成して
くれるようになった。
とくに父親は、なにかと自分の体を気遣って心配してくれるクーニャンの
優しさに惚れていた。

な、もんで、クーニャンの居酒屋出店の金はワシに任せないさいってんで
父親が全面的にバックアップしてくれた。
日常生活も父親はクーニャンのためになにかと気にかけてくれた。
だから父親はクーニャンの店にも時々顔を出してくれていた。

でもクーニャンが仙女だってことは敬四郎以外誰も知らなかった。

愛想がよくて誰にでも優しくて笑顔が絶えないクーニャン。
男は自分に気があるんじゃないかとみんな勘違いして一縷の夢を描いた。

だけどクーニャンの心には敬四郎しかいないわけで・・・

実はクーニャンは自分が今幸せにやってることを紅崙山の幽老参人ゆうろうさんじんに報告しに
時々霊山に帰っていた。

あの時、敬四郎がクーニャンに自分の気持ちを告白したことによってふたりの
関係は大きく変わった。
敬四郎が、もしクーニャンに好きだと告白してなかったら状況はなにも変わらず、
クーニャンは夕方敬四郎のために晩ご飯を作りに来るだけの家事代行を続けて
いただろう。

「敬四郎?・・・私を愛してるあるか?」

「うん・・・愛してるよ、君と出会えてよかった・・・僕って世界一幸せ者だね」
「可愛いクーニャンがそばにいて、でもって美味しい料理もたらふく食べられて」
「もう最高・・・僕だけの仙女ちゃん」

そう言って敬四郎はクーニャンを抱きしめた。

はじまった二人の同棲生活・・・クーニャンの作る料理は敬四郎の舌を永遠に
飽きさせない。
なんせクーニャンは仙女であり500万品のレシピを持ってるんだから・・・。

敬四郎のための恋するレシピを・・・。

おしまい。


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