スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ

文字の大きさ
11 / 112

木の杖の魔法使い①

しおりを挟む
 この話は、グリムが助けた魔法使いの女の子がグリムに助けられる少し前まで遡る――。

♢♦♢

~ドラシエル王国・騎士団訓練場~

 この日、1人の少女は今日も訓練場で魔法の特訓をしていた。

 彼女の名前は“エミリア・シールベス”。
 彼女は5歳の時に『魔法使い』のスキルを女神に与えられ、そこから努力する事4年程経ったある日。もう諦めていた彼女にスキル覚醒が起こった。

 晴れてスキル覚醒者となった彼女は王国の魔法団に声を掛けられ、立派な団員となるべく訓練所に入ったのだった。正式な騎士団や魔法団に所属するには、実力があろうがスキル覚醒者だろうが関係なく誰もが先ずは訓練生として訓練所に入るのが決まりである。それはまた彼女も然り。

 兼ねてから団員になる事を目指していたエミリアは、何の迷いも無く訓練所へ入る事を決めたのだった。

「あら、あの子まだ訓練してるじゃない」
「本当だ。って言うかあの子でしょ? スキル覚醒者なのに未だに訓練生のままだっていう子……」
「え! それってあの人なんだ」
「スキルなんて覚醒すれば直ぐに団長クラスでしょ? あんなに訓練してまともに魔法使えないなんて、本当に覚醒してるのかしら」

 エミリアが訓練場で魔法の特訓をしていると、その姿を見掛けた他の訓練生が小声で話していた。

「“ファイア”!」

 エミリアが呪文を唱えながら手にしている木の杖を振ると、そこから1つの小さな火の玉が飛ばされ、弱々しく放たれたその火の玉は数メートル進むとそのまま消えてしまった。

「やっぱりダメだ……。幾ら訓練しても、1番使える木の杖でコレが限界。どうしてなの? 他の武器なんて全く使い物にならないし……」

 9歳で訓練所に入ったエミリアは、あれから毎日毎日魔法の特訓をしていた。目標は勿論自身が目指している魔法団に正式に入団する為。彼女はどうしても魔法団に入りたいある“理由”があった――。

 だが、エミリアが訓練生として入った日から早くも8年余りが経っていた。

 本来であれば、スキル覚醒者の訓練生としての平均期間は長くて5年。これは仮に5歳で覚醒したとしても、そこから魔法学を学んだり実践訓練など経験して10歳から直ぐに王国を守る騎士団や魔法団として動ける様にする為の言わば準備期間でもある。

 スキルが覚醒した時点で、そもそも団長クラスの剣術や魔法を扱える為訓練は必要最低限であり、実際に今まで“例外”はいなかった。10歳手前でギリギリで覚醒が起こったとしても、騎士団、魔法団共に創設以来15歳以上の訓練生など存在しなかったのだ。

 彼女、エミリア・シールべスを除いては。

 だから彼女はこの訓練所……いや、既に全騎士団、魔法団内で有名になっていた。勿論良くない意味でである。それはエミリア本人もしっかりと分かっていた。自分が笑われている事も冷ややかな目で見られている事も全部。

 だがしかし、彼女はそんな思いをしてまでも、どうしても魔法団に入りたかった。

「“アクアボール”!」

 ――パシャン。
 先程とは別の魔法を放った様子の彼女であったが、火の玉が水に変わっただけで結果は同じだった。エミリアは溜息を吐きながら大きく肩を落としている。

「ハァ、どの魔法もやっぱり基本の3級魔法にも満たない」

 スキルの覚醒有無に関係なく、3級魔法は誰もが使える超基本魔法である。エミリアは間違いなく覚醒者であるにも関わらず、長い特訓を経ても未だにこの3級魔法すらまともに扱えなかったのだ。

 この世界の魔法クラスは全部で6段階。
 下から3級魔法、2級魔法。1級魔法。そして超3級魔法、王2級魔法、神1級魔法と、当然上のランクになればなる程強力な魔法になる。

 エミリアは落ち込みながらも足元に置いてある魔法書を開いた。

「魔法書通りにちゃんと魔力を練ってコントロール出来ているのに、どうして直ぐに消えちゃうんだろう」

 エミリアは何度も何度も魔法書を見ては特訓していたのだろう。開く魔法書は見るからにくたびれており、表紙や中のページも大分汚れている。

「あ! またいやがったぞ。 “魔法打てないモンスター”!」
「うわ本当だ! “パチモン魔法使い”だ!」
「本当にスキル覚醒してるとは思えねぇ“金色訓練生”だよな」
「何歳まで訓練生でいる気だあの“オバさん”!」
「「ハハハハハハッ!」」

 魔法書を読んでいるエミリアに突如聞こえてきたのは、これでもかと自分を馬鹿にする10歳前後の少年達の声であった。

「ゔッ。1番の強敵が来ましたね……」

 どれだけ周りに笑われようと虐げられようと気にしていなかったエミリアであったが、子供の純真無垢さ故か、時折現れる少年達の包み隠さないどストレートな言葉だけがエミリアの唯一にして最大の相手であった。

 防ぎようのない少年達の“言葉”の魔法攻撃。

「どれだけ練習しても意味ねーんだよ!」
「へへへ、俺なんかもう訓練生終わったもんね!」
「あんなオバさんに構うと俺達まで魔法が下手になりそうだぜ!」
「ハッハッハッ! ホントだよね!」
「でもな、見てろよお前ら! ポンコツ魔法使いのアイツでも“1個だけ”魔法使えるんだよ!」

 1人の少年はそう言うと、地面に転がっていた石を徐に拾いエミリアに投げつけた。

 すると。

「“ディフェンション”」

 エミリアは瞬時に魔法を繰り出し、淡く光る防御壁で自身を覆う。
 少年が投げた石は彼女の防御壁によって弾かれてしまった。

「うわ出たよ!」
「な! アイツあの魔法だけは使えるんだぜ?」
「何で防御壁だけ出せるんだよ! 他の攻撃魔法全部ダメなのに」
「やっぱ可笑しいよなあのオバさん!」
「やーい、ヘボ杖のニセ魔法使い!」
「「ギャハハハハハ!」」

 少年達の嘲笑が響き渡る中、エミリアは再び魔法の特訓を始めるのだった。

「もうあんなの相手にしてもつまらないからさ、遊び行こうぜ!」
「そうだよな! 行こう行こう!」
「そう言えば今日魔法団の実践演習やってるらしいぞ」
「マジか! じゃあそれ見に行こう!」

 少年達はそう言いながら元気よくその場を去って行った。

「ハァ。私は子供にも馬鹿にされるヘボ杖のニセ魔法使いだわ本当に」

 去った少年達がいた場をボーっと見つめながら、エミリアは静かに呟いていた。

 彼女は自身の持つ木の杖でしか魔法を出せない。他の杖では一切ダメなのだ。そして唯一使えるその木の杖ですら3級魔法もまともに放てない。強いて使えるのがさっきの“ディフェンション”という防御魔法のみであった。

 このディフェンションは勿論3級魔法。
 だが実力者達は通常、自分の魔法に火属性や風属性などの得意な性質を加えてより強力な魔法にするのが一般的であるが、エミリアはそれも出来なかった。

 どの属性も直ぐに消えてしまう。
 何年もの特訓の中で、唯一使えたのがこのディフェンションのみであった。これでは到底魔法団に入団するどころか訓練生すら卒業出来ないという事をエミリアは誰よりも実感していた――。
しおりを挟む
感想 73

あなたにおすすめの小説

【状態異常耐性】を手に入れたがパーティーを追い出されたEランク冒険者、危険度SSアルラウネ(美少女)と出会う。そして幸せになる。

シトラス=ライス
ファンタジー
 万年Eランクで弓使いの冒険者【クルス】には目標があった。  十数年かけてため込んだ魔力を使って課題魔法を獲得し、冒険者ランクを上げたかったのだ。 そんな大事な魔力を、心優しいクルスは仲間の危機を救うべく"状態異常耐性"として使ってしまう。  おかげで辛くも勝利を収めたが、リーダーの魔法剣士はあろうことか、命の恩人である彼を、嫉妬が原因でパーティーから追放してしまう。  夢も、魔力も、そしてパーティーで唯一慕ってくれていた“魔法使いの後輩の少女”とも引き離され、何もかもをも失ったクルス。 彼は失意を酩酊でごまかし、死を覚悟して禁断の樹海へ足を踏み入れる。そしてそこで彼を待ち受けていたのは、 「獲物、来ましたね……?」  下半身はグロテスクな植物だが、上半身は女神のように美しい危険度SSの魔物:【アルラウネ】  アルラウネとの出会いと、手にした"状態異常耐性"の力が、Eランク冒険者クルスを新しい人生へ導いて行く。  *前作DSS(*パーティーを追い出されたDランク冒険者、声を失ったSSランク魔法使い(美少女)を拾う。そして癒される)と設定を共有する作品です。単体でも十分楽しめますが、前作をご覧いただくとより一層お楽しみいただけます。 また三章より、前作キャラクターが多数登場いたします!

【1/20本編堂々完結!】自力で帰還した錬金術師の爛れた日常

ちょす氏
ファンタジー
「この先は分からないな」 帰れると言っても、時間まで同じかどうかわからない。 さて。 「とりあえず──妹と家族は救わないと」 あと金持ちになって、ニート三昧だな。 こっちは地球と環境が違いすぎるし。 やりたい事が多いな。 「さ、お別れの時間だ」 これは、異世界で全てを手に入れた男の爛れた日常の物語である。 ※物語に出てくる組織、人物など全てフィクションです。 ※主人公の癖が若干終わっているのは師匠のせいです。 ゆっくり投稿です。

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~

蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。 情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。 アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。 物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。 それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。 その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。 そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。 それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。 これが、悪役転生ってことか。 特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。 あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。 これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは? そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。 偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。 一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。 そう思っていたんだけど、俺、弱くない? 希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。 剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。 おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!? 俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。 ※カクヨム、なろうでも掲載しています。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

処理中です...