スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ

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64 エネルギーの流れ

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~閻魔闘技場~

「うおぉぉッ!」
「くたばれコラァ!」
『ギィィィ!』
「そこだ! いけッ!」

 数万はいるだろうという人の視線が全て闘技場のど真ん中に集まる。

 人々の視線の先には戦士と呼ばれる人間と、見るからに気性が荒そうな野獣。更にそんな野獣と同じぐらい危なそうなモンスターの数々。

 戦士と戦士が、野獣とモンスターが、戦士と野獣が。組み合わせもルールも無用と言わんばかりにただひたすら闘技場では激戦が繰り広げられていた。

 何時かのフィンスターでラグナレク討伐の説明を聞かされた時よりも何十倍も凄まじい熱気と歓喜。歓声で闘技場が揺れている。イヴに促された俺達は早速この閻魔闘技場とやらに入り、多くの見物客達に紛れて戦士の戦いを観戦している。

「凄い空気」
「外でも熱気が伝わっていたけど、中はもっと異常だな……!」
「これは面白い。俺も早く手合わせさせてくれ」

 俺とエミリアがまだ戸惑う中、フーリンは既にこのデタラメな展開を受け入れている。それどころか寧ろやる気満々だ。ここは確かにフーリンに合っているのかもしれない。

「いいかいアンタ達。ここには遊びに来たんじゃない。他の有象無象とここにいる戦士達の“違い”が分かるかい?」

 これまでとは少し纏う雰囲気が変わり、イヴは真剣な目で俺達に訴えかけてきた。

「急に違いって言われてもな」

 目の前で激戦を繰り広げる戦士達はごく普通の人間だ。俺達と変わらない。イヴやハクの言う特殊さなんて全然分からないぞ。特別魔力や波動が高い訳でもなさそうだし、一体何だ?

 俺もエミリアも答えが分からない。フーリンは戦いに夢中で話すら聞いていない。

「やっぱり分からないみたいだねぇ。よく理解しておきな。“それ”が今のアンタ達の実力さ」

 イヴから突如放たれた意味深な言葉。その言葉が意味する事が、当然俺達には分からなかった。

「何だそれ。一体どういう事だよイヴ」
「馬鹿者。もうアンタ達の“特訓”は始まってるのさ。下らん事を考えてる暇があるなら早く違いを見極めな――」
「「……⁉」」

 気が付けばずっとイヴのペース。俺達は疑問を抱く暇もなく、どんどんとイヴのペースで事態が進んでいっている。今この瞬間もそうだ。ずっと訳が分からないまま今に至り、挙句にもう特訓は始まってるとか言い出した次第。

 俺がそんな事を思っていると、またハクがイヴのフォローをするかの如く俺達を促した。

「グリム、エミリア、フーリン。兎に角今からは戦士達の戦いを見よう。イヴは考えるより行動派だから説明不足だけど、この“違い”が分かればグリム達はもっと強くなれるわ。

ほら、また戦士の戦いが始まるわよ。いい? 戦士達の力は確かに特殊だけど、反対に誰にでも扱えるものでもあるの。イヴの言う違いって言うのは“エネルギー”の事。そのエネルギーを意識して戦士の戦いを見ればきっと分かる筈よ」

 エネルギー……?

 俺もエミリアも同じ言葉に疑問符を浮かべていたが、戦士達の戦いは待ったなしで次々と繰り広げられていく。俺達は一戦一戦集中して見るが、どれだけ見ようとまるで意味不明。一戦終わるごとにイヴとハクに尋ねるが、2人共答えを返す気がさらさらない。「兎に角見ろ」の一点張りだ。

「うおぉぉッ!」
「くたばれコラァ!」
『ギィィィ!』
「そこだ! いけッ!」

 俺が悶々とするのは裏腹に、どれだけ時間が経っても闘技場の熱気は収まる事を知らない。いや、逆に盛り上がりが増してきている。もうこれで何十戦目だろう? この闘技場で戦っている戦士やモンスター達は皆好戦的で気性が荒いせいか、どの戦いも攻防が激しいんだよな。それこそ一撃で決まってしまった戦いも幾つかあったし。

 それにしても……何度戦士の戦いを見ても一切“違い”とやらが分からない。

 結局、答えが見出せないまま戦いを見ていると、これまで盛り上がっていた闘技場内が更にもう一段階ボルテージを上げて異様に盛り上がり出した。

「「おおぉぉぉぉぉぉぉッ!!」」
「な、何だ⁉」

 余りに凄まじい歓喜に俺は驚き、エミリアは耳まで塞いでしまっていた。突如見物客は一堂に立ち上がり物凄い歓声を上げ始める。事態を把握出来ない俺達が何事かと周りを見渡すと、見物客達全員の視線と歓声が闘技場に姿を現した“1人の男”に注がれていた。

「来た来た来たぁ! 待ってました!」
「かっこいい~!」
「今日も豪快に倒してくれよ“ヘラクレス”!」

 闘技場中の視線を全て奪ったヘラクレスと呼ばれた男。
 
 颯爽と姿を現したその男は、今までの戦士達の中で明らかに1番強いと直ぐに分かった。ただ歩いているだけでも隙を感じさせない彼は、皆の歓声に優しく手を上げて応えるのだった。

「ヒッヒッヒッ。流石に奴の強さは感じ取れた様だねぇ」
「ああ。あの人は強そうだな」
「アレは確実に強者だ。もう俺は我慢出来ない。今すぐあそこであの男と手合わせしてくる」
「いやいやいや、ちょっと待てフーリン! 何本当に行こうとしてるんだよ、アホか!」

 真面目な顔をして観客席から飛び出そうとするフーリンを俺は必死で止めた。マジで何を考えているんだコイツは。

 俺とフーリンのそんなバタバタを他所に、闘技場内はヘラクレスの入場で熱気が増している。これから始まるのは勿論彼の戦いであり、皆の次なる視線は“対戦相手”へと注がれていた。

「期待してるぜヘラクレスさん!」
「今回は誰が相手だ!?」

 見物客達はヘラクレスが入場してきた闘技場の門とは反対の側の門を見ている。もう何度も戦いを見たから俺達も分かっていた。彼が入場してきたという事は、今度は反対側から相手が入場してくるという事を。既に無意識のうちに俺もそこを見ていた。すると、ゆっくりと大きな門が開き始め、暗い通路の奥から並々ならぬ気配が伝わってきた。

「おいおい、なんだよそれ!?」
「見た事無いぞあんな生き物!」
「何のモンスターだ?」
「気持ち悪いな~」

 俺は一瞬目を疑った。それはエミリアもフーリンもまた然り。

 見物客達は皆ヘラクレスの対戦相手入場に更なる盛り上がりを見せているが、俺達は“その姿”を見て、まるで時が止まったかの様ようにこの闘技場の大歓声が一瞬無音になった気がした。




「ラグナレク――」

 そう。
 ヘラクレスの対戦相手。それは3つ頭の頭部を持つ、ケルベロスのような姿をしたラグナレクであった。
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