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3杯目~悪酒~

36 トラブルメーカー

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♢♦♢

~ワーホルム王国~

 俺とリフェルがリューテンブルグ王国を出発し、ツインマウンテンではアクルと、フランクゲートではピノキラーことエマと出会った。

 あれから約半年。時の流れとは本当に早いものだ。

 この半年間での出来事は……まぁ色々あった。それはそれはもう色々と。だからこそ余計に時間が経つのが早く感じるのだろう。想像していた満月龍探しの旅とは全然違うもんな。

 ん?
 何が起きていたって?

 あ~、まぁそうだなぁ……話すとかなり長くなるが結論から言うと、当然まだ満月龍を倒していなければ見つけてもいない。

 言い訳をするつもりじゃねぇが、初めからこの旅はかなり無謀な挑戦でもある。何百年、何千年に1度遭遇するかどうかっていう幻を追ってる訳だからな。こんな短期間で見つけた方が驚くぜ。

 それに、今の俺達の現状をもっと正確に伝えるならば、この半年間は満月龍探しどころではなかった。

 ……いや、“今も”と言った方が正しいか。


「――全く、何がどうなってやがるんだこの島は。いつもいつも面倒ばかり起こしやがって」
「自分の事を棚に上げるなジンフリー」
「元はと言えばお前がコレ“拾ってきた”んだろうがよアクル」
「五月蠅いですヨ」
「毎回トラブルばかり……。結局殺せば全部解決するのに」
「だから直ぐ殺そうとするんじゃねぇよエマ。それにリフェル、今回はお前の魔法が失敗した事も原因だぞ」
「何を言うカ! 私の失敗ではなくこの島が原因でしょウ!」

 こんな会話が俺達の日常。
 
 誰かは知らねぇが、絶対この中にトラブル体質の奴いるぞ。そうでなければこんな次から次へと面倒に巻き込まれるなんて有り得ねぇ。

「一体誰がトラブルメーカーだ?」
「オラではない。案外リフェルかもな」
「何を言ってるのですカ。全員のデータを元に、ここ半年間の各自の行いを踏まえると、私のトラブル計算ではジンフリー34%、アクル33%、エマ33%という割合が出ていまス。アンドロイドの私は関係ありませんヨ」
「って事はやっぱり“オヤジ”のせいね」
「そのパーセンテージなら全員同罪だアホ」
「いや、オラとエマより1%高いお前が原因だ」
「そうよ」

 これもいつものパターン。大体皆俺に厳しいんだよな。何かしたか俺。そもそも思い返せばフランクゲート襲撃から流れが悪いんだよな。

(半年前からの出来事一覧↓)

 ・フランクゲート襲撃で公にこそならないものの、世界中の裏稼業界隈に伝わる程の騒ぎに。

 ・万が一にも犯人だとバレたら嫌なので別の離れた王国に移動。

 ・移動先の王国でアクルがトラブル引き寄せ。

 ・無事解決したかと思いきや今度はエマがトラブル引き寄せ。

 ・落ち着いた後、訪れた別の王国で俺がトラブル引き寄せ。

 ・一旦誰もいない地域へと移動。のんびり出来るかと思いきや大量のモンスターと対峙。

 ・争いを収める為、何故かそこのモンスター達と仲良く国造り。
 
 ・次に向かった獣人族の王国では、成り行きで俺が剣の指導。騎士団設立。

 ・移動した王国先で冒険者がリフェルを軟派。周辺のギルドを巻き込む大争いに発展。

 ・その後も俺→アクル→エマ→俺→エマ→アクル→俺→アクル→エマ→俺……の順でトラブル引き寄せ。

 一難去ってまた一難とは言うがこれは起こり過ぎ。災難が畳み掛けてきやがる。

 だが、決して悪い事ばかりではないのもまた事実。
 長い間旅を共にした事もあり、全員の距離が幾らか縮まったのか変化も見受けられる。

 アクルはいつの間にか皆の纏め役になっているし、最初は拒絶していたエマが最近俺の名前を1文字だけ入れて呼ぶようになった。まぁその呼び方がオヤ“ジ”なのが気になるが良しとしよう。

 そして大きな変化ではないが、代わり映えに1番驚くのはリフェルだ。
 Dr.カガクの言っていた通りどんどん人間に近づいてきている。ぎこちなかった話し方も今ではもう普通の人間と大差がない。確かに面倒ばかりではあったが、これはこれで良いと思う。

 それでもトータルで見れば割に合わないけどな。この災難はもしや満月龍からの警告か何かか? 全く。

 いや、違うな。そもそも全部悪いのは満月龍だろ。そうだ。悪いのはあのドラゴン!  それ以上もそれ以下もねぇ。後は全員被害者なんだよ。あれから5年以上も経つのにまだ嫌がらせするのかあのクソドラゴンは! 必ず見つけ出して全て終わらせてやる。結局全部お前のせいなんだよ満月龍。俺達が今“こうなっている”のもな!

「――いや~、“旦那達”面白いね! いつもこんな賑やかなの?」

 俺達が今言い争っている原因の1つは“コイツ”でもあるかも知れない。

「うるせぇ。そんな事より続きを教えろ。どうなってるんだよこの島と魔女は」
「ヒャハハ。それは――」

 此処、ワーホルム王国という場所で偶然出会った、この“羽の生えたタヌキ”が原因だ。
 
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