誤飲魔力 ~酔っ払いオヤジの俺、遂に酒と間違え【ドラゴンの魔力】を誤飲してしまった~

きょろ

文字の大きさ
42 / 51
3杯目~悪酒~

41 終わりは突然に

しおりを挟む
「――痛ってぇッ……! 何が起こった……⁉」

 落下してきたのは若い男。

 誰かは知らんが取り敢えず無事みたいだ。

「ガーゴイルの次は人間か。よく分からん島だ」
「おいお前、大丈夫か?」

 青年の年齢は20歳前後ぐらい。狐の様な細いつり目に額にはバンダナ。耳や首や手首には、何やら高価そうなアクセサリーがジャラジャラと付けられていた。

 青年は落下した時に頭でも打ったのか、痛そうにその部分をさすりながらゆっくりと立ち上がり、徐にきょろきょろと周囲を確認したかと思えば何故か俺達の所で視線が止まった。

「お、“旦那達”も来てたのか!」

 旦那達……?

 この青年とは勿論初対面……の筈なのだが、何故だ……? 明らかに向こうは俺達を知っている様子。何処かで会ったか?
 
 いや、記憶にねぇぞ。旅の道中でも関わった人達は覚えているが、こんな兄ちゃん知らないな……。でもなんだろう。この雰囲気と話し方をどっかで……。

「まさかもう忘れた? ヒャハハ、いくら旦那でも呆けるには早すぎるでしょ」

 この瞬間に俺はピンときた。横にいたリフェル達も気が付いた様だ。

「お前まさか……!」
「分かったみたいだね。そう、俺だよ。“ルルカ”。言ったでしょ? これでも一応人間だって」

 そう。この見覚えはないが確実に会った事のある人物はあのルルカだった。

 紛れもない、ついさっきまで一緒にいたあのタヌキだ。

「何がどうなってやがるんだ?」
「まぁ困惑するのも無理ないよね。でもこっちが正真正銘、デーヴィ盗賊団ルルカの姿なんよ」

 成程。俺が見た人影はコイツだな。だとすればリフェルが言っていた事も辻褄が合う。ガーゴイル倒したのもルルカか。一見軽い感じに見えるが、さっきの殺意といいそこそこ実力あるみてぇだな。
 
「それよりさ、コレやったの旦那達?」

 ルルカは真っ二つに割れた城を見ながら言ってきた。

 どうやらコイツは城の1番上にいたヘクセンリーパーの元へ向かっている途中、俺が城を割ったせいで落っこちてきたらしい。

 別にコイツ狙った訳ではないのだが、少しだけ同情しておこう。

「悪りぃな」
「はい嘘。絶対思ってないでしょ」
「バレたか」
「まぁいいよ、“それどころ”じゃなくなったみたいだし。結果オーライって事で」

 そう言いながらルルカは鋭い視線を城の上へと飛ばしていた。

 そして直後、俺達も“奴”の放つ禍々しい殺気を感じると同時に、その視界には城よりも高い上空を漂う、異質な人影の姿があった。

「ヘクセンリーパー……」

 本物を見た事が無いにも関わらず、俺の口から自然と奴の名前が零れていた――。

「誰だ貴様たちは……?人の家で随分好き勝手やっているじゃあないか。えぇ」

 静かに口を開いた魔女、ヘクセンリーパー。

 この島の不気味な雰囲気が可愛く思えるぐらい、奴1人が現れただけで空気が異常に重くなった。全身を纏う黒いマントが風に靡かれ、不規則に垣間見える眼光は確実に俺達を敵視している。

 コイツ強い……。

「お前がヘクセンリーパーだな。実は折り入って話したい事がッ……⁉ って、おいッ!」

 奴と話そうと声を掛けた瞬間、ヘクセンリーパーは手にしていた杖を大きく上に振り上げると、一瞬にして膨大で重々しい魔力が音を鳴らしながら集まった。そして奴は躊躇する事なくそれを俺達目掛けて放ってきた。

「私の城を破壊しておいて何が話だい……得体の知れない貴様ら等ゴミ同然じゃ。さっさと死になッ!」

 なッ、やべぇ……!

 ヘクセンリーパーの凄まじい魔法攻撃が雷の如く襲ってきた。
 
 ……かに思えた次の刹那――。
 突如風船が割れたかの様に、俺達目掛けて繰り出された攻撃が、当たる直前でパッと消え去った。

「……!」
「何だ?」

 想定外の出来事だったのだろうか、攻撃をしたヘクセンリーパーも突然の事に、少しばかり驚いている様子。

 何が起こったのか分からない。

 その場にいた全員が同じ事を思っていた。

 たった1人の青年を除いて――。

「お前の相手は俺なんよ……ヘクセンリーパー」

 流れていた数秒の静寂を破ったのはルルカ。

 何をしたのかは分からないが、今起きた事がルルカによるものだという事は全員が理解出来た。

「貴様は……。誰かと思えば、何時ぞやのコソ泥ではないか。私の呪いを受けてまさか生きておったとはねぇ。これはこれは滑稽な話じゃあないかい! ケッケッケッケッ!」
「相変わらず不愉快な婆だな」
「性懲りもなく“また”殺されに来たのかい?」
「黙れよ。次殺されるのはお前だ」
「若者の威勢ほど死に近いものはない。今の攻撃は運良く防いだ様だがねぇ、私の前でまぐれは2度起きないよ。ケッケッケッ」

 ヘクセンリーパーは嘲笑いながらそう言った。

 そして、このヘクセンリーパーに嘲笑いが合図かの様に、強力な魔力練り上げたルルカがヘクセンリーパーに攻撃を仕掛けた。

「速ぇ……!」

 腰を落としたルルカは地面を力強く蹴り、疾風の如くヘクセンリーパーの元まで飛び上がって行った。

 これは……風属性の魔法か。凄ぇ強さだ。
 やはりルルカとヘクセンリーパーには穏やかじゃねぇ因縁があるみたいだな。

 ルルカが飛び上がるとほぼ同時に、周囲には強烈な風が巻き起こっていた。

「お前を殺さねぇと……“アイツら”に合わす顔がないんよ……!」
「――!」

 一瞬で距離を詰めたルルカは、ヘクセンリーパーの背後を取り既に攻撃態勢へ。

 油断していたのか、ヘクセンリーパーは辛うじてルルカに反応はしたものの、余りの速さに体が動かずルルカの攻撃が見事ヘクセンリーパーを捉えた。

 ――ズドンッ!

 攻撃を受けたヘクセンリーパーは強烈な風と共に数メートル先まで飛ばされが、空中で再び体勢を立て直した。

「チッ、浅かったか」
「成程……。その“魔具まぐ”で私の力を無効化しているようだねぇ」
「この2年、俺はお前を殺す為だけに生きてきたんよ。既に殺す準備も算段も整ってる。お前はもう詰んでんだよッ!」
「見当違いも甚だしい。たかが魔具を手に入れたぐらいでこの私に勝てると思ったのかい? 何処までも笑わせる若造だねぇ。2度と生意気な口を叩けない様また全員殺してやるわッ!」

 ルルカの先制攻撃から数分が経過した。

 あれから両者一歩も譲らず激しい攻防を繰り返した後、互いに一定の距離を保った。

「ハァ……ハァ……ハァ……」
「しんどそうじゃあないか。ここまで呪いの時間を延ばしていた事だけは賞賛してやろうかねぇ」
「うるせぇ……。ハァ……ハァ……次の一撃で終わらせてやるよ」
「まるで説得力がない。私も暇じゃないんだ。次で殺してやるから早くアホな仲間達の元へ逝きな!」
「殺す」


 これが2人の最後の会話。

 ルルカとヘクセンリーパーは今までよりも更に魔力を高め、互いに最大の攻撃を繰り出す態勢へと入った。

 両者の魔力の圧によって島全体が地響きを鳴らし揺れている。

 勝者がどちらにせよタタでは済まない。

 上空で激闘を繰り広げるルルカとヘクセンリーパー。

 地上にいた俺達は危険を察知し、少し離れた位置まで下がり衝撃に備える準備をした。


 そして――。

「食らえヘクセンリーパァァァッ!!」
「死ねぇぇぇぇッ!!」

 魔力を極限まで高めた渾身の一撃が、遂に両者から両者へと放たれた。

 2つの強力な魔法攻撃が凄まじい威力でぶつかり合ッ……『――シュバァァァァァァンッ!!』

「「……⁉」」

 まさに一瞬の出来事――。

 ルルカとヘクセンリーパー、両者の強力な攻撃を遥かに凌ぐ神がかり的な魔法弾が2人の攻撃を飲み込み消滅させてしまった。

 どこからともなく突如現れたその魔法弾は、そのまま遥か上空まで放たれていきいとも簡単に雲を割る。

 全員が言葉を失った。

 まるでこの世に終末が訪れたかの如く。

 辺りは耳鳴りが聞こえる程の静寂に包まれ、ぞの場にいた全員の視線が無意識のうちに、魔法弾が飛んできた方向へと向けられていた。













 「――全くもって長いでス」
 
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...