K-POPアイドルの義兄からの溺愛はとまらない~オッパの推しはわたしだけ~R18

中村湊

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先輩たちからの告白

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 デビューしたS.treetは1周年を迎え、カンバックでも無事にデビュー前からのファンダムを含め徐々に人気を得てきている。ファンダム名が【Moon】という。Star Streetという、正式名称から空に馴染んだ名前という事で星空に浮かぶ月=Moonになった。

 「ミニョちゃんが、俺たちのファンダム第一号は俺たち公認だから!!」

 そう、S.treetメンバー達は言う。何より、ミゲさんはじめ代表まで言い出している。
 番組収録でも、音楽番組以外にアイドル番組、ラジオ番組。バラエティー番組にも出演する機会が少しずつ増えてきている。番組の行く先々で、ミニョはケータリング専属契約で一緒に行動し料理をしている。料理だけでなく、飲み物の準備もする。ハルモニの食堂スタッフでミニョを古くから知っていて食堂スタッフとしても信用の厚い人も契約している。

 「ミニョちゃん、今日のメニューで足らない材料ある? わたし先に買っておくよ?」
 「パクさん、助かります!! たしか、ネギと……このメモの材料、お願いします!!」
 「了解!! あとは……飲み物は……とりあえず、メンバー達のいつものショップデリバリーを利用かな?」
 「そうですね。ミネラルウォーターは十分にあるので」

 パクさんは、ハルモニの食堂で調理師の資格を取った後から働いている女性でミニョからは年上の頼り甲斐あるお姉さんという感じだ。小さい頃から、テコンドーをしていて現在も道場へは後輩指導している帯色持ちという。外見はとても綺麗ですらっとした感じだが、怒らすと技で酔っ払い撃退を食堂でしてきているいう人物。
 ある意味、ミニョの護衛を兼ねているらしい。
 パクさんが買い出しに行っている間は、BGのスタッフもケータリングの配膳手伝いに入ってくれていた。その、護衛として一番強いパクさんがいない時にJYUM-BUGの大型犬たちがやってきてしまった。
 ドアのすき間から顔をメンバーが立て並びに除いて……怪しさ満点状態。

 「ミニョちゃん、可愛いなぁ」
 「天使だよなぁ。俺、今朝もミニョちゃんの夢見た」
 「罵って欲しいなぁ……」
 「可愛いし、叱ってるときのミニョちゃん……」
 「「「「堪らないんだよなぁ……」」」」

 M属性、変態大型犬と化したミニョ大好きJYUMメンバーは、耳をヒョコヒョコ尻尾をフリフリしている。
 その視線にミニョは気づいてしまい……S.treetのデビュー前から、ずっとJYUMメンバー達全員にテレビ局とかで遭遇する度にこの状態から始まる。
 視界からわざとズレてからドアの前に現れるミニョ。

 「「「「ミニョちゃん!!」」」」

 JYUMメンバー全員、見事な総崩れこけっぷり。それをテレビカメラでおさめられたら、バラエティー番組出演できるだろうなぁとミニョは思ってしまう。COOLを売りにしているので、バラエティー番組は基本NGらしい。

 「先輩たち、お仕事は?」

 ミニョが慣れた感じで尋ねると。「頑張ってきたよ? ミニョちゃん!!」とリィンが最初に言う。大型犬達が尻尾を振っている幻覚が視えている。ファンダムがこの光景を見たら……違う意味で、ファン層は増えそうだが。

 「ミニョちゃん、頑張ったからさ……僕に、頭なでなでして?」
 「いや、僕だ!!」
 「俺に決まってるだろ!! ミニョちゃんは俺の運命の人なんだ!!」
 「リィン!! 運命の人は俺だ!!」

 わいわいと俺が俺がと言い出すと止まらないJYUMメンバーの声に、ケータリンの部屋にやってきたS.treetメンバー達が先輩の変態姿? に呆れている。ジュヨンはいつの間に? の瞬発力で、ミニョの前でガードしている。
 その瞬間に、リィンがミニョにご褒美がまだと騒いでとまらない。さらに、俺と付き合って告白しだしている。
 さすがに、グフ達が先輩とは言えリィンたちの周りを囲んで「先輩、テレビ局です!!」と必死に説得しているが聞く耳をもたない。

 奥の廊下から何やらざわつく声がして、一瞬、リィンの告白声がバレたのだろうか? とミニョ達が焦っていると。意外な人物が歩いて来た。
 ミニョ、三陽の産みの母親。エリだった。30歳を超えたとは思えない美貌とスタイル。そして、演技力のすばらしさで韓国以外でも活躍の幅も大きく。海外作品では、助演女優賞を受賞している実力派。日本語、韓国語、中国語、英語を話す語学力の堪能さ。
 ちょうど、インタビュー番組を終えたエリは、廊下にいるミニョを見つけ近づいて来た。S.treetメンバー達も、JYUM-BUGメンバー達も大物女優が近づいてくるのに緊張している。ミニョだけは、違う緊張が走る。

 「久しぶりね? 三陽?」
 「……久しぶり、です……」
 「BGとケータリングの契約したっていうのは。本当だったのね?」
 「……はい……あの、なにか……」
 「少し時間いいかしら? 手間は取らせないわ」
 「ごめん、オッパ。少し行ってくる」
 「えっ?! ミニョ?」

 ジュヨン達も頭の中がクエスチョンマークだらけだった。ミニョがエリと、エリのマネージャーと一緒に部屋に入った後にパクさんが戻って来て皆から事情を聴き「わかった。ヘギョンさんにはわたしが連絡するから」と。なぜ、そこでヘギョン、つまりジュヨンの母の名前が出るのかが分からないジュヨン。

 エリの控室に入り、2人きりになった三陽。母とこう2人で話すのは、ジュヨンが練習生としてのステージ会場以来。母というには時間が短いし、三陽にとってはヘギョンさんがオモニという感覚。
 母である、エリも少しためらっている様でミネラルウォーターをストローから一口飲み。

 「前に話したこと覚えてる? ステージ会場のこと。何かあれば力になるって……」
 「……はい……でも、特に困っては……あなたとは、別に親子でも……」
 「母親にはなれなかった。わたしは……あなたを【捨てた】女ですもの。でも、憶えていて欲しいの。わたしは……捨てたいから捨てたかったんじゃないの……三陽と名前を付けたのは、わたしだというのは知ってる?」
 「はい……お父さんから聞いてます。お母さんは、あの世界に戻らないといけない事情があるからって」
 「あなたに渡した名刺、ある?」
 「……はい……」
 「この先、あなたを守るのにBGだけじゃ足らない日がくる。絶対に……ジュヨン君、あなたと恋仲でしょ?」

 エリが何故知っているのだろうか? と思った。知っているのは、S.treetメンバー達だけ。あと、ミゲさん。代表は薄々気が付いている。
 三陽は動揺を隠しきれない。エリは三陽の手を、母が手を握っている様に優しく包み込み「あなたに何かが降りかかろうと、わたしが全力であなたを守る」といった。真剣で真っ直ぐな瞳で。あの日、わたしを捨てた母は何かを抱え苦しみ離れざるを得なかったと分かったような気がする。
 エリが何故、父と離婚しないといけなかったのか? わたしから離れなければならなかったのか? 娘がいるのを何故隠し通してきているのか?
 聴きたい事は山ほどあったが、時間がなかった。

 「渡した名刺の裏に、プライベートメッセージの宛先と番号があるわ。登録しておいて」

 そう言って、エリはマネージャーを呼んでミニョをもとのケータリングの部屋へと送るように伝えた。戻ってきたミニョにパクさんは酷く心配してくれたが、ミニョは料理をすることで気持ちを冷静に保つことができた。
 料理が出来上がる時に、JYUM-BUGメンバー達はまたやってきてミニョの料理をおすそ分けして貰って「仕事にいきなさい」と言われては喜んで帰って行った。恒例の、罵り送り出しイベント。グフ達は、「俺たちの先輩は……COOL系だったよな?」と顔を合わせて確認し合う。

 ただ、ジュヨンだけはJYUM-BUGたちがくるたびにイライラが増していってミニョと早く一緒になりたいという気持ちが強くなる一方で。もっと、ミニョが言っていた『みんなを元気に笑顔にしてくれるアイドルになる』という目標をより一層目指した。
 グフ達やミゲも、みんな同じ想いで練習に力が入り、音楽番組でもコメントにも磨きがかかってきていた。ただ、ジュヨンの言葉少なすぎの通じない言い方にMCは戸惑うのは相変わらずで。グフが間に入って言うと、ジュヨンが頷くというパターンがある意味S.treetの面白い一面としてとらえられていた。
 その言葉少なさが功を奏したのが、バラエティー番組でのジュヨンのリアクション。表情が変わらないという中で、料理を当てるという中にミニョの料理をいれ「ケータリングの料理を当ててください」を一発で当てて平らげてしまったというシーン。番組の中で、一番ジュヨンが反応していたのがMCには面白かったらしい。
 
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