祝福は貴方だけに捧げます!!

中村湊

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学園生活の最後

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 夏休み中は、お姉様たちと茶会をしたり。家族でピクニックの日々。あとは……夏休み中は、ロイ公爵とリヒャルト様もクロイツ家に滞在。というか、居座った。ヘイリーお姉様の婚約者、ワイバーン様も訪れたり。
 私は、刺繍やレース編みと、手芸をお姉様やお母様としたり。マリアになってからは、台所に行って料理長とお菓子とかを久し振りに作ったり。

 台所にいたら、フィリップお兄様が血相を変えて来て。「まだ危ない!!」「休んでいなさい!!」とか大変だった。結局は、私の料理とお茶で……大人しくして貰いました。
 
 「マリアのサンドイッチは絶品なんです!! リヒャルト公爵!!」
 「……ふむ……」
 
 口数が少ない公爵に、もう、アレが美味しいコレも食べて欲しいと言うお兄様。もう少し大人しくしてください!!
 リヒャルト様は、少し表情が緩んだ時を見せてくれて。なんだか胸のあたりがほんわりとして、笑顔になってしまう。それを見たのか、彼は顔をそむけてしまう。

 夏休みも残り1週間で、学園に戻るために荷物支度をし始めた。
 珍しくお父様が執務室に呼んでいると、お母様から言われて向かうと……。
 雁首がんくびそろえた……言い方悪かったです。
 家族全員と、ロイ公爵、そして……リヒャルト様。全員、難しい顔をしてます。

 「率直に言おう。マリア」
 「はい」
 「……お前は……特別科から転科する。つまり、今の学園の中での実情を考えてだ。手続きは済ませてある」
 「あの、お父様? 転科というのは……学園で何科に変わるのですか?」
 「ふむ……お前の力の事と、状況を踏まえ。魔法特殊科になる。一般棟の中に寮は移している」
 「……わかりました……」
 
 静かな沈黙が流れた。ふと、疑問がわいた。コレは、家族で話せば済むのに。なぜ、ロイ公爵とリヒャルト様がいるのだろうか?
 ちらりと、2人を見ると。ロイ公爵はパチリとウィンク。リヒャルト様は……鋭い瞳でじっと見てます。

 「それから……リヒャルト公爵が……」
 「俺から話します」
 「そうか?」
 「マリア嬢……」

 私の前に、身長が高く体躯たいくのいい彼がひざまづいた。私の手をとり、甲にキスをする。

 「っ?!」
 「あなたに、結婚を申し込む」
 「ひゃい?」
 「ふっ、可愛い」
 「かわっ、へっ?」
 「貴女を妻にすると、言っている」

 お父様はじめ、皆、知っていたようで……いやいや、一体、どこでどういった経緯で、その話の流れ?
 一生懸命、茶会での出逢いから、夏休み中の出来事を想い出して頭の中で総動員した……けれど、そういう流れの話しって。なかった、よね? なかった、はず……。

 「あの……リヒャルト様?」
 「なんだ? 俺では……駄目か?」
 「い、いえっ……どこで、そういう風に思われたのか?」
 「貴女が……可愛くて」

 彼は、真面目な瞳と表情で、答えている。うん、可愛いは嬉しい。あのリヒャルト様だし。
 でもね、可愛いだけじゃ……ダメでしょ? ダメじゃない?
 その間も、手を優しく撫でてくるし。

 「お返事、すぐにした方が……いいですか? もう少し考え」
 「ダメなのか? 俺は、今すぐ婚姻の儀をしたい!! しかし、クロイツ侯爵が。デビュタント前だと……せめて、学園を卒業してからと……俺は、直ぐに婚姻をしたいのだ!!」
 「……はぁ……それで、今、婚約を……」
 
 お父様を見ると、遠い目をしている。お兄様たちも。ロイ公爵だけが……「オッケーしちゃいなさいな!!」と、口パク。
 彼は、私がイエスと言うまで手を離さない様で……片手じゃなくて、両手で私の手にキスしてくる。
 裏ルートの攻略で、こんなシーンあったかなぁ? うん、学園の生活自体が、もう、ルートとかシナリオとか訳わかんない状態だし。自分の後悔がないようにしたほうが、いいのかなぁ。

 「ワルバーン公爵」
 「リヒャルトと呼んでくれ」
 「……私の学園生活が終わっても、公爵が同じ気持ちでいらっしゃったら……お受けいたします」
 「……わかった。俺は待てる……その間だけなら……たぶん」

 最後に、「たぶん」って。たぶん、って何ですか?!
 執務室には、ロイ公爵とリヒャルト様が残って、お兄様とお父様。男だけの話しということで。イヤな予感が満載。

【学園に戻る日】
 予感的中。私が残りの学園生活で首都にいる間。リヒャルト様と、ロイ公爵も首都の別邸に滞在。そして……2人が外出許可と外泊許可での行き先には、2人の邸宅が指定された。
 これって、リヒャルト様は完全に待てないという意思表示で、その防壁……ガード役にロイ公爵でしょ? そうでしょ?

 学園では、魔法特殊科への転科が無事に済まされていて、荷物も全て移されていた。一般棟は、特別棟とは離れていた。
 サラに挨拶をしたけど……「あら? 寂しくなるわ」と言いつつ、蔑視べっしと冷たい瞳を向けられた。ヒロインが……なんだか違う。
 魔法特殊科では、最初は、「特別科だったのに?」と言われたけど。今は、色々と勉強とか一般棟での事を教えてくれる人もいたり。分からない魔法の事は教えてくれたり。嫌がらずに組みを作っている。
 
 図書室では、特別棟と一般棟の人が一緒だから……特別棟の人からは冷たい視線を浴びるけど。
 けれど、以前ほどは気にならない。一般棟だと、台所の貸し出しがあって、たまに軽食作っていたら。同じ寮の子たちと、サンドウィッチを作る仲になった。

 「それで、今はどう?」
 「うーん……魔法特殊科の子たちは、最初は色々聞いてきたけど。今は、一緒にサンドウィッチ作ってみたりしてる」
 「よかったわぁ!! もう、心配で心配で!!」
 「オネエちゃんは、昔っからそうだったね?」
 「あら? だって、実の妹ですもの。この世界では少し違うけど」
 
 今日の外出では、ロイことオネエちゃんの邸宅。気兼ねなく、一緒にお茶とかしている。お茶菓子は、オネエちゃんのお手製。
 今日のお菓子のレシピも貰った。
 レシピを想い出しては、作ってメモして渡してくれる。そして、私も思い出したレシピを作って書いては、渡す。
 
 リンゴーン。
 
 「ちっ、今日は早いな」
 「えっと……もしかして……」

 バタン!!
 
 勢いよくやってきたのは。例の婚約申し込みを諦めない。騎士。リヒャルト様。
 夏休み明け、外出初日から3ヶ月経ったが……逢うたびに、「結婚しよう!! いや、婚約が先だったな」とのたまう。
 うん、完全に……なにかのネジ、外れてますよね? リヒャルト様?

 今日は珍しく、婚約申し込みを前に、オネエちゃんと部屋から出て何やら話している。
 うーん、大事な仕事の話しは邪魔せずに。お茶して待つ。私は、待てが出来る!!

 部屋に戻ってきた2人が、少し。普段、見せない表情だった。深刻な事でも起きているのだろうか?

 「マリア嬢。首都の噂は聞いているか?」
 「噂……えっと、騎士の方が出入りしている部屋があるとか……ですか?」
 「そうだな……少々やっかいで。君には特に気を付けて貰いたい。俺の妻として」
 「俺の妻……ですか?」
 「そうだ。その出入りしている騎士と関わると、ロクな事にならない」
 「えぇっと……俺の妻と確認して、そうだ、と断言しないでください。リヒャルト様」
 「ちっ、違うのか?」

 どこから話していけば、この方は、分かってくれる? うん、今は無理……って、やってきたから。こうこじれてるんだ!!
 オネエちゃんを見ると。笑いを必死にこらえている。オネエちゃんがその部屋のある通りや、出入りしている騎士の出歩く場所おおよその話をしてくれたが・・・・・・聞いて愕然がくぜんとした。

 「……特別寮……」
 「「…………」」 

 私がぽつりと、その名前を言った時、2人は押し黙った。たぶん、それ以上は口にだしてはいけない。
 
 学園には、リヒャルト様の馬車で送って貰った。その間、ずぅーーーーと、婚約してくれ、婚儀はどんなドレスが良いか? だったけど。
 この状態に慣れてきている、自分が恐い。

 残り3ヶ月で、学園生活が終わる。学べることは、出来る限り学びたい。
 
 聖騎士団への所属試験とかは、今は……考えたくない。
 入学して1年以上、寮の部屋で聞こえてきた。聞かされ続けた、サラの喘ぎ声。サラとシている聖騎士候補者たちの声。水音。
 時折、夢に出てくる。その日は、必ず、外出してロイと話していた。お父様が一般棟にと手続きしてくれていなかったら……私は、今、こうやって学園生活を続けていられただろうか?
 
 学園内を歩いていて、背筋がゾクリとして脂汗がでる。視線を感じて振り返ると、一般棟と特別棟の狭間はざまから。
 鋭く冷たい瞳がある。妖艶ようえん色香いろかを放つ女。その周りには、彼女を慕う男達。荒い息を隠さず、彼女に触れ、また早熟な少女は女の顔をして喘ぎ声を隠さない。
 他にも人が、生徒がいるはずなのに、その状況と声は私だけに聞かされ見せつけられている。

 「んっ、はぁ……あっ、あぁ!!」
 「あぁ、すごい……こんなにも、力が沸きあがる!!」
 「俺にも、俺にも与えてくれ!! っく、堪らない!!」
 「ふふっ、皆に与えるから大丈夫よ?」
 「あぁ、たぎる。ふっ、はっ、はっあ!!」
 「俺ともキスを……んっ、はぁ……」
 「我慢できないの? 大丈夫よ? 今日は、ほら、エリーもいるのよ」

 女が指をさした先に、囲まれて喜ぶエリザベス。「祝福を与えたいの」「いっぱい与えさせて」と隠さず言い喘ぐ。
 聖騎士候補者と騎士候補者たちが、2人の【与える者】に群がっている。まるで、甘い蜜に群がるように。彼女らは嬉々ききとして与え、悦び、喘いでいる。
 騎士たちは、蜜を受け取り、自らも魔法の力を高めるために彼女らの最奥を味わう……遠くにいるはずが、水音が頭の中にぐちゅっぐちゅ、と響く。男たちのたかぶる声に、悦び求める続ける声。
 サラとエリーの悦び喘ぐ声。視界には、彼女たち以外に……【与える者】が……。

 マリアは、冷や汗と脂汗がとまらなくなりガタガタと震える。アレは、祝福の与え方が度を超えている。違う!! アレは……違う!! 
 必死にその場から逃れるように走った。訳も分からず、涙が溢れる。
 なんで? なにを? サラは、エリザベスは? 聖騎士候補者たちは? 騎士候補者たちは?
 頭の中が先ほどの光景がこびりついて離れない。水音、喘ぎ声、荒ぶる声。グルグルとしてきている。

 ドンッ!!

 「マリア嬢? なぜここ……」

 目の前のマントを付けた、男性。間違うはずはない。リヒャルト。 彼は、私をマントの中に隠し入れて、抱き上げてくれた。

 「俺の邸宅に行くが……いいか?」
 
 小さくうなずく。
 彼から今、離れてはいけない。あの場所にまたってしまったら……私が、壊れてしまう。
 マリアとしても、茜としても……この世界に、居られなくなるかもしれない恐怖があった。
 震える手で彼の胸元にしがみついた。

 どこをどう走って、学園の外に出ていたか、彼にどこで出逢ったか。彼の邸宅にいつ着いたか分からない。リヒャルトから連絡を受けた聖騎士団の騎士が駆けつけてくれた。

 「はじめまして、マリア嬢。アルバルト・ロンバートと申します。聖騎士団副団長を仰せつかっています」
 「マリア……クロイツ……です」

 リヒャルト様の膝の上に乗せられた上、抱きしめられたまま挨拶をしていた。
 アルバルトが来る前には、少し落ちついていたけど。膝の上から、彼が下ろしてくれなかった。
 副団長が、「リヒャルトがいますよ」と言ってくれた。

 「貴女に危害が及ばないよう、少しだけ魔法をかけます」
 「……はい……」

 手をとり、ふぅっと息を吹きかけた。
 温かい光が手から、全身に……オレンジからミドリへと色が変わる。その間、リヒャルト様の温かいぬくもり。
 とても安心する。

 彼は、「本当は俺が魔法を遣えれば……」と悔しそうにしていた。

 それ以降、私は、なんとか。アレに遭遇することなく過ごせた。
 学園生活終わる日まで……。

 別の問題が起きていたのは、分からなかった。
 彼の待てが、限界を超えすぎていたのを。私は卒業後に、思い知らされた。
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