祝福は貴方だけに捧げます!!

中村湊

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デビュタント

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 学園を卒業して、久し振りに首都からクロイツ家に戻った。
 その日から、デビュタントの準備で家中が大変だった。なにより、リヒャルト様から新しいドレスやアクセサリーが送り届けられていた。
 ドレス全て、サイズが寸分違わずピッタリで直しが必要のない状態。ある意味、スゴイ。抱きしめたとか、その程度ですよ? 裸はみられていないし……。それで、このピッタリのサイズのドレス。
 人間メジャーですか? あなたは?
 
 「ワルバーン公爵は、マリアに似合う色をよく分かっているのね?」
 「そう……みたい、デス」
 「あっ、コレもいいわ!! こちらも……」
 「ドレデモイイデス」

 投げやりになり始めたのを、お姉様やお母様にたしなめられる。
 薄翠色に黄金が混じった瞳に合う、翠に金糸きんしの刺繍がほどされたドレス。翡翠ひすいの宝石のネックレスとピアス。ふんわりとした柔らかいデザインのドレスに、造りが一級品だと一目でわかるアクセサリー。
 クロイツ侯爵家も、聖騎士団だったお父様と、現役の聖騎士であるフィリップお兄様。騎士として名を馳せている家門かもんで、領地経営もうまくいっていて決してドレスとか宝石を用意できない……のでは、ない。
 
 私が学園に戻った後から、デザイン画がお母様に送り届けられドレスが仕上がると届く。ということが、続いていたようで……。
 今日も、試着するだけで……もう、本当に。どれも違うデザインのドレスとアクセサリーで、どれだけアイディアが浮かんだのだろうか? リヒャルト様?!

 デビュタントのパーティーは、王宮で開かれる予定。
 エスコートは、お兄様に頼んでいたんだけれど。最近、溜め息をついて頭を抱えて帰ってくるお兄様。

 「……はぁ……」
 「お帰りなさい!! お兄様!!」
 「あぁ!! マリア? 今日は無事だったかい?」
 「はい。フィリップお兄様? 大丈夫ですか……お疲れの様ですが……」
 「っ!! マリア、ごめん!! 兄を、不甲斐ふがいない兄を許しておくれーーーーー!!」

 脱兎だっとのごとく去って行く。
 毎日届く、彼からの手紙。魔法がある世界だから、私の目の前にふわりと現れる手紙。
 リヒャルト・ワルバーン公爵からの手紙。そりゃぁ……ブレがない、求婚の手紙デス。

 【俺の可愛いマリア嬢
  昨夜も、貴女の可愛い姿を想い。仕事もしながら、貴女のいない屋敷は辛い。でも、仕事は頑張った!!
  夜に、夢で可愛い貴女に逢えるのが救いです。
  社交界のパーティで、貴女がどのドレスを身につけてくれているか楽しみでならない。
  あぁ、どれも似合っているだろう!!

  早く、今すぐにでも婚儀をしたい!!
  俺は待てができるから……待っている。
  
  俺の可愛いマリア。

  リヒャルト・ワルバーン】

 こういう感じで、まぁ、毎日きています。返事を書いていますが……私も彼に慣れてきてしまった。

 パーティーに出るのに、ダンスの最終練習。
 屋敷に、リヒャルト様がいらしています。もう、素敵なパーティードレスです。黒地のスーツで、もう、素敵です。腰には装飾剣を帯剣。
 えぇっと、ダンスはお兄様と練習だったはずですよね?

 広間の端に居るお兄様。演奏のためにピアノの前のお姉様。バイオリンを弾くロイ公爵。
 お兄様が謝って逃げたのは、このこと? うん。分かっていた気がした。必死だったんだよね? お兄様も……。

 「マリア嬢。こちらに手を」
 「はい」
 
 ピアノで演奏するお姉様。併せて、バイオリンの音色。ワルツ。
 彼のリードで、ダンスのステップが……あっ、足を踏まずにダンスできてる? いつもだと、お兄様の足をケガさせてしまうくらいに踏んでいたのに。その……私のダンスレベルもスゴイけど。
 彼を見ると、優しい眼差しで見つめ返してくる。

 「俺だけを見るよう」
 「……はい……」

 彼の黒い瞳。離せない。心臓が高鳴っているのに、彼の手の温もりから、とても安心してダンスができた。


【パーティー当日】
 王宮へは、ワルバーン公爵家の馬車だった。
 リヒャルト様が、エスコートするなら全てと譲らなかった。
 彼に手を引かれて会場入り口で、名前を呼び上げられる。人々のざわめきが、私たちが扉から入場すると。静まりかえった。

 「私、変でしょうか?」
 「君が可愛すぎる」

 こんな状態でも、彼は。可愛い、可愛いとばかり。
 転生前、彼には憧れとかあったけど。実際に生きている彼は、ゲームとは思いも寄らぬ暴走ぶりだし。私は、マリアと茜の気持ちがだんだんとひとつになり始めて、揺らめいている。
 パーティー会場には、イベントのシナリオ通り。聖騎士団の皆様がいた。そして、サラとエリザベス。特別科の聖騎士候補者たちも……。
 ひやりと背中に汗が伝う。心臓がいやな音。
 
 ぎゅぅ。

 「俺がいる」

 知らぬ間に、彼の手を強く握っていた。ここには、彼がいる。お兄様たち、聖騎士団の皆様も。大丈夫。
 王にひとりひとりが挨拶をしていく。私は、リヒャルト様と王に挨拶をした。「そなたが……今宵は、楽しむと良い。マリア嬢」と声かけしてくれた。
 一通りの挨拶の後、ダンスの音楽が始まる。最初のダンスをリヒャルト様と踊った。

 「マリア嬢。デビューおめでとうございます」
 「アルバルト様。ありがとうございます」
 「私と、一曲」
 「ダメだ!! マリア嬢は俺とだけだ」
 「「えっ?」」

 思わず、アルバルト副団長と声がかぶる。後ろに控えていた、聖騎士団の皆様も……目が。うん、遠い目している。
 リヒャルト様は、ブリザード吹かせて聖騎士団凍らす勢い。危ないよね? きっと。このままじゃ……。

 「リヒャルト様? 私は、貴方に、リヒャルト様にエスコートして頂けただけでも光栄です」
 「~~~っ!! ……わ……い」
 「リヒャルト様?」
 「俺の嫁は、可愛すぎる!! マリア、可愛いぞっ!!」

 何かのスイッチ入れたのか……彼が抱きついて、頬ずりしたり、頬にキスしたり。外から見たら、もう、こんなおおやけの場所で何してんだ?! ってくらいで。
 周りとか、場所とか、分からないくらいらしく。可愛い連呼して……。
 聖騎士団の皆様が、あっ、視線はずした。皆、周りに見えないようにしてくれているけど。うん、見ないようにだけしている。聞かないふり、している。
 
 「っ、りひゃる、と……さま?」

 ちゅっ、ちゅぅ……。

 ダメ、これ以上!! ちょ、ちょっと待てするんでしょ?
 えっ、えっ、顔、かーーーおーーーー!!
 完全にキス……に。

 「んっ!!」
 
 唇に、彼の唇。唇の間に彼の舌が滑り込んで……声、漏れちゃう。ダメなのに、彼を拒めない。

 「んっ、ぁ……んっ、ぁん」
 「マリア、可愛い……屋敷に行こう」

 聖騎士団の皆様が、生ぬるーい気持ちでいた。

 「アルバルト。後は頼んだ」
 「わぁってる。お前の頼みだからな……」
 
 ぼんやりして彼に横抱きにされて馬車に乗るまで。私を睨みつけ、憎しみのかたまりになったサラディン。
 彼女は、ドレスをひるがえし会場から去った。そして、エリザベスも。

 聖騎士団は、パーティーに参加するだけではなかった。最近の、騎士に対して行われている不穏ふおんな出来事。
 2人の【与える者】は、違うモノを得ているが分からない。証拠もでてこない。

 アルバルトは、近衛騎士団にも注意を促していた。一般騎士団は……入隊前の騎士が、既に関わっているらしい情報だけ。
 魔法を遣えない彼に代わり、魔法での探りを入れる者と実働する者、情報を探る者。様々な役割の中で、国の均衡きんこうを保ってきたというのに。それを、崩しかねない。
 国を護ってきた者として。

 馬車で邸宅へ戻る最中。彼女は小さな吐息をたてて眠っている。 リヒャルトは、マリアに貰った小さな香り袋を胸元から出して手に握って彼女を抱きしめた。

 「俺の可愛いマリア」

 唇に再びキスをした。
 彼女から、温かい何かを感じた。先ほども、会場で耐えきれずにキスをした時に感じた。なにか……。
 手の中の香り袋が温かくなる。薄翠色の光りが2人を包んだ。
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