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誘われる瞳に逆らえません
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目が醒めると、見たことがない天蓋付きのベッド。ふかふかしていて気持ちいい。そして、温かい人のぬくもり。
ひと? うーん、たしか……初めての社交界のデビューで、王宮のパーティーに彼のエスコートで……キス、された。それも、公衆の面前で!!
「起きたか?」
心地よい聞き覚えのある声。恐る恐る顔を上げる。
とても柔らかく優しい瞳。ぎゅぅっと優しく抱きしめられる。そして、当たり前かのようにキスをしてきた。
「んっ……ぁっ……」
「可愛い」
おでこ、頬、唇。首筋とキスをたくさん。そのたびに、我慢できない甘い声が出てきてしまう。
彼の大きく節張った指が、身体を優しく撫でている。ピクリと身体が跳ねて、彼を喜ばせてしまう。
「っだ、め……っあ……りひゃ、る、と、さま……」
「もっと、キスしよう」
「だか、ら……んんっ……あっ、だ……ぁっ」
「可愛い」
熱い黒い瞳が私を捉えている。もう、どうしたら? このままだと……。
キスをたくさん受けていると、胸があたたかく、彼を身近に感じる。ほんのり、翠色の光が包んでいる。
バタンっ!!
勢いよく、寝室の扉が開かれた。その先には、血相を変えて、形相も変えた……オネエちゃんがいて。
リヒャルト様を私から、ひん剥いた。うん、投げ飛ばした。
ドスン!!
「……ロイ……お前……」
「大丈夫? もっと早く来たかったけど?」
「おいっ!!」
「こんっのど阿呆が、パーティーでやらかしたっていうし……最後までヤラレてない?」
「待て!! ヤッていない!! 俺はまだ!!」
いや、まだ。って、しようとしました? しそうな勢いありましたよね? だって、胸とか、下腹部に手が……。
あっ、オネエちゃんが……。
「ちょぉっと、この男連れていくな」
「まっ、待て……ロイ、お前……」
バタン……。
リヒャルト様、生きて帰ってきてください。
「うわーーーーー!!」
断末魔の叫び。オネエちゃんがお兄ちゃんになったわ。
うん、久し振りに聞いた。あの、叫びした人。
清々しい笑顔のロイと、無事に生還を果たしたリヒャルト。その状況を知った「……あぁ……旦那様」と言ったワルバーン家の執事長のギルバートさん。悲痛な顔をしていました、ギルバートさん。
パーティーから帰った私の後のことを、アルバルトから聞いたからとオネエちゃんは馬車ではなく、馬で駆けつけた。
今、彼は懲りもせずに、私を抱きしめている。少々、諦め気味のロイが大事な話があるからと再び彼をひっぺがして執務室へと行った。
「マリア様。旦那様が戻られるまで、お茶でもどうぞ」
「ありがとう」
ギルバートは、用意していたお茶と茶菓子を持ってきてくれた。温かい紅茶に、ジャムもあった。
日付が変わっていたのか? 窓辺から少し陽射しが見えた。初めてワルバーン公爵家に来た。ゲームでは、スチルで見ただけだけど。公爵家は、広大な領地を持っていてリヒャルトは領民にはとても慕われていたと思う。
彼が何故、祝福を得られないのか? 光魔法を遣えなくなったのか? そのあたりが、ゲーム上では解かれていたんだけど……いま、ここでギルバートさんに尋ねるのは失礼だよね? 彼から、話したくなったら話してくれるのを待とう。
お腹が少し満たされた時に、2人が戻ってきて3人でお茶になった。
だんだんとまた眠気がきて、彼の温もりを探し始める。
「眠そうにしているのも可愛い」
「んっ……私、かわいく、ないです」
「可愛いマリア」
可愛いとばかり言い、決して、好きとは言わない。分かっている。彼は、私を可愛いといって、可愛がりたいんだろう。
瞼が重く、その瞳で一生懸命彼への気持ちを伝えたいのに……本当は、憧れから……。
「いいの? 本当のことを言わないで?」
「……その方が、お互いのためだ」
「お前はソレでいいかもしれない。でも、マリアは……」
「俺がどういう役か、分かっているだろう?」
やれやれ、と肩をすくめるロイ。本当の事を話さなくてはならないのは、分かっている。
教会から異例の連絡が入った日。自分の光魔法が戻る娘が現れた、と。その娘は、護らなくてはならないこと。
どんな方法で行っても護ることを優先とした。光魔法は二の次。彼女のことは、フィリップに以前、映像魔法で姿を見せて貰っていたし「可愛くて可愛くて」と連呼している兄だった。
実際に逢った時、可愛いと思えた。妹みたいに。ロイからは、「傷つけたらタダじゃおかない」と念押しされていた。クロイツ家には、教会との事がある上で当人には言わずに婚約を申し込むと。 それで、済むと。それで、役を果たせる、と。
腕の中で気持ちよく眠っている彼女が、可愛いのは本当だ。ただ、日に日に、可愛すぎて自分がどんどん暴走していく。ドレスを、宝石をあんなにプレゼントする筈では……。
キスを初めてした時、自分の中で温かいモノを感じた。翠色の光が包み込んでいた。祝福を受けると、その者の色が現れる。光魔法の光を初めて見た。
「俺は帰るけど、それ以上はしない約束だからな」
「…………」
「自分の気持ちに正直になるなら……許す」
「……俺は、自分の役を……果たすだけだ……」
ロイは屋敷から帰って行った。
抱きかかえたまま、彼女と再びベッドに戻る。もぞもぞと安心する場所を探すように動いて、落ちつくと小さな笑みを浮かべる彼女。 俺が安心する場所ではない……彼女には、ロイのように想っている人間がふさわしいだろうし。アルバルトのように、聖騎士としても人望の厚い人間が傍にいてもおかしくない。
「俺みたいな……堕ちた騎士は……君には、相応しくないんだ」
彼女が少し、寂しそうな顔をしたように見えた。聴こえるはずがない。言える筈がない。
俺は……彼女の、マリアの隣には、役としているだけなのだから。
『リヒャルト様、好きです』
『……可愛いマリア……』
『リヒャルト、さ、ま?』
『……俺は、君を好きではない……務めでいただけだ』
『そう、です、か……』
あぁ、そんな寂しい瞳をしないでくれ!! 可愛いマリア!! 俺は、ただ、役を果たして……君を護って……。
泣かないでくれ!! 涙を……。
ま、待ってくれ!!
マリア?
可愛いマリア?
マリアがどんどん黒い霧に囲まれている。違う、そっちじゃない!! 助けないといけないのに、光魔法が遣えない俺には剣しかないのに……。
『マリア!! ダメだ!! そこから離れるんだ!!』
『ごめんなさい。私……違うの……マリアだけど……違うの』
「マリア!! っ、はっ、はぁ、はぁ!!」
隣には、小さな吐息をたてて「リヒャルト、さ、ま」と言っている彼女。
「よか、た……」
夢なのに、異様な現実味のある感覚。寝汗で寝間着のシャツが身体に張り付いている。
彼女が眠っている間に、少しこの気持ち悪い汗を流しに風呂場へと向かった。
ひと? うーん、たしか……初めての社交界のデビューで、王宮のパーティーに彼のエスコートで……キス、された。それも、公衆の面前で!!
「起きたか?」
心地よい聞き覚えのある声。恐る恐る顔を上げる。
とても柔らかく優しい瞳。ぎゅぅっと優しく抱きしめられる。そして、当たり前かのようにキスをしてきた。
「んっ……ぁっ……」
「可愛い」
おでこ、頬、唇。首筋とキスをたくさん。そのたびに、我慢できない甘い声が出てきてしまう。
彼の大きく節張った指が、身体を優しく撫でている。ピクリと身体が跳ねて、彼を喜ばせてしまう。
「っだ、め……っあ……りひゃ、る、と、さま……」
「もっと、キスしよう」
「だか、ら……んんっ……あっ、だ……ぁっ」
「可愛い」
熱い黒い瞳が私を捉えている。もう、どうしたら? このままだと……。
キスをたくさん受けていると、胸があたたかく、彼を身近に感じる。ほんのり、翠色の光が包んでいる。
バタンっ!!
勢いよく、寝室の扉が開かれた。その先には、血相を変えて、形相も変えた……オネエちゃんがいて。
リヒャルト様を私から、ひん剥いた。うん、投げ飛ばした。
ドスン!!
「……ロイ……お前……」
「大丈夫? もっと早く来たかったけど?」
「おいっ!!」
「こんっのど阿呆が、パーティーでやらかしたっていうし……最後までヤラレてない?」
「待て!! ヤッていない!! 俺はまだ!!」
いや、まだ。って、しようとしました? しそうな勢いありましたよね? だって、胸とか、下腹部に手が……。
あっ、オネエちゃんが……。
「ちょぉっと、この男連れていくな」
「まっ、待て……ロイ、お前……」
バタン……。
リヒャルト様、生きて帰ってきてください。
「うわーーーーー!!」
断末魔の叫び。オネエちゃんがお兄ちゃんになったわ。
うん、久し振りに聞いた。あの、叫びした人。
清々しい笑顔のロイと、無事に生還を果たしたリヒャルト。その状況を知った「……あぁ……旦那様」と言ったワルバーン家の執事長のギルバートさん。悲痛な顔をしていました、ギルバートさん。
パーティーから帰った私の後のことを、アルバルトから聞いたからとオネエちゃんは馬車ではなく、馬で駆けつけた。
今、彼は懲りもせずに、私を抱きしめている。少々、諦め気味のロイが大事な話があるからと再び彼をひっぺがして執務室へと行った。
「マリア様。旦那様が戻られるまで、お茶でもどうぞ」
「ありがとう」
ギルバートは、用意していたお茶と茶菓子を持ってきてくれた。温かい紅茶に、ジャムもあった。
日付が変わっていたのか? 窓辺から少し陽射しが見えた。初めてワルバーン公爵家に来た。ゲームでは、スチルで見ただけだけど。公爵家は、広大な領地を持っていてリヒャルトは領民にはとても慕われていたと思う。
彼が何故、祝福を得られないのか? 光魔法を遣えなくなったのか? そのあたりが、ゲーム上では解かれていたんだけど……いま、ここでギルバートさんに尋ねるのは失礼だよね? 彼から、話したくなったら話してくれるのを待とう。
お腹が少し満たされた時に、2人が戻ってきて3人でお茶になった。
だんだんとまた眠気がきて、彼の温もりを探し始める。
「眠そうにしているのも可愛い」
「んっ……私、かわいく、ないです」
「可愛いマリア」
可愛いとばかり言い、決して、好きとは言わない。分かっている。彼は、私を可愛いといって、可愛がりたいんだろう。
瞼が重く、その瞳で一生懸命彼への気持ちを伝えたいのに……本当は、憧れから……。
「いいの? 本当のことを言わないで?」
「……その方が、お互いのためだ」
「お前はソレでいいかもしれない。でも、マリアは……」
「俺がどういう役か、分かっているだろう?」
やれやれ、と肩をすくめるロイ。本当の事を話さなくてはならないのは、分かっている。
教会から異例の連絡が入った日。自分の光魔法が戻る娘が現れた、と。その娘は、護らなくてはならないこと。
どんな方法で行っても護ることを優先とした。光魔法は二の次。彼女のことは、フィリップに以前、映像魔法で姿を見せて貰っていたし「可愛くて可愛くて」と連呼している兄だった。
実際に逢った時、可愛いと思えた。妹みたいに。ロイからは、「傷つけたらタダじゃおかない」と念押しされていた。クロイツ家には、教会との事がある上で当人には言わずに婚約を申し込むと。 それで、済むと。それで、役を果たせる、と。
腕の中で気持ちよく眠っている彼女が、可愛いのは本当だ。ただ、日に日に、可愛すぎて自分がどんどん暴走していく。ドレスを、宝石をあんなにプレゼントする筈では……。
キスを初めてした時、自分の中で温かいモノを感じた。翠色の光が包み込んでいた。祝福を受けると、その者の色が現れる。光魔法の光を初めて見た。
「俺は帰るけど、それ以上はしない約束だからな」
「…………」
「自分の気持ちに正直になるなら……許す」
「……俺は、自分の役を……果たすだけだ……」
ロイは屋敷から帰って行った。
抱きかかえたまま、彼女と再びベッドに戻る。もぞもぞと安心する場所を探すように動いて、落ちつくと小さな笑みを浮かべる彼女。 俺が安心する場所ではない……彼女には、ロイのように想っている人間がふさわしいだろうし。アルバルトのように、聖騎士としても人望の厚い人間が傍にいてもおかしくない。
「俺みたいな……堕ちた騎士は……君には、相応しくないんだ」
彼女が少し、寂しそうな顔をしたように見えた。聴こえるはずがない。言える筈がない。
俺は……彼女の、マリアの隣には、役としているだけなのだから。
『リヒャルト様、好きです』
『……可愛いマリア……』
『リヒャルト、さ、ま?』
『……俺は、君を好きではない……務めでいただけだ』
『そう、です、か……』
あぁ、そんな寂しい瞳をしないでくれ!! 可愛いマリア!! 俺は、ただ、役を果たして……君を護って……。
泣かないでくれ!! 涙を……。
ま、待ってくれ!!
マリア?
可愛いマリア?
マリアがどんどん黒い霧に囲まれている。違う、そっちじゃない!! 助けないといけないのに、光魔法が遣えない俺には剣しかないのに……。
『マリア!! ダメだ!! そこから離れるんだ!!』
『ごめんなさい。私……違うの……マリアだけど……違うの』
「マリア!! っ、はっ、はぁ、はぁ!!」
隣には、小さな吐息をたてて「リヒャルト、さ、ま」と言っている彼女。
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