番としか子供が産まれない世界で

さくらもち

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3話

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「ニーナ?起きたかい?」
産まれて初めて寝すぎたと思えるほど寝たためか寝起きで頭が回らずここはどこだろうとぼんやりしていると、扉の外からアンジェリカの声が聞こえた。
「あ、はい!」
「入ってもいいかい?」
「ど、どうぞ。」

慌ててベッドから降りて扉を開ける。
「うん、顔色もだいぶ良くなったな、お腹が空いているだろう?」
「え、あ……」
そういえば昨日の朝から何も食べていないけど2日程食べられない日も珍しくないしまだ我慢できる程度だし。
「さっきの応接室に軽食を用意してもらったから行こう。」
「これ以上ご迷惑をかけるのは……」
さすがにアンジェリカには色々としてもらっているしこれ以上迷惑はかけられない。
「問題ない、私はしばらく君の護衛となることが決まったから何も気にしなくていい。」
騎士様が護衛に付いてくれるって事?
特異体質ってそんなに凄いことなの?
寝ぼけている事もあり混乱してしまうがアンジェリカはお構い無しに私を応接室に連れて行って今まで食べたことの無い滑らかなスープに柔らかいパンを食べさせてくれた。
「もっと食べられるなら遠慮しなくていいのだが?」
出されたスープの半分とパンは小さな丸パンを1つ食べたところでお腹がいっぱいになってしまった。
「もうお腹いっぱいなので、ありがとうございます。」
「馬に乗せた時に思ったがニーナは軽すぎる。これからはもっと食べれるようになるといいな。」
私はコレからどうなるのかは分からないけどアンジェリカは私を悪いようにはしない気がする。
「こんな美味しいパンとスープは初めてだったので残すのが勿体ないです。また次の食事の時に残りを食べてもいいですか?」
いつ食事が貰えるか分からないので多めにパンを貰えた時はこっそり隠してお腹のすいた時に食べていたけどこのパンも貰って行けるかな?
「なっ、そんなことをせずとも新しく作るから心配しないでいい、残ったのも捨てる事は無いから心配いらないさ。」
どういうことか分からないけどアンジェリカといる限りは食事の心配は無いのかもしれない。

「ニーナ、食事をしてすぐで申し訳ないが着替えて移動をしたいと思う。」
食事をおえて食後にまた香りの良い紅茶を出してもらえたので飲んでいるとアンジェリカから着替えるように言われたけど、朝このメイド服を着させてもらったばかりなのにまた着替え?と不思議に思ってしまう。
「その服は一時的なものだよ、ニーナはメイドでは無いからドレスの用意が出来たからそちらに着替えて貰うよ。」
そう言って応接室の扉を開けると何枚かのドレスや綺麗な箱を持った人達が入ってくる。
「用意できたドレスでニーナ似合いそうなのは、コレだな!コレならコルセットもしなくて良いしちょうどいい。」
そう言ってアンジェリカが選んだのは薄い緑のドレスだった。
「キレイ……」
思わず見惚れてしまう、アイシャのドレスは見慣れていたけどアレと比べては行けないような何かがこのドレスにはあった。
(質の違い、品の良さをニーナは知らないが直感的に思った)
「さあ、ニーナをとびきり可愛くしておくれ。」
ドレスなどを持ってきた人達に囲まれて髪に何かを塗られたり、顔にメイクをされたけどなんだかくすぐったかったりとオシャレって大変なんだなと思ってしまう。

やっとの思いで完成と言われ鏡を見せてもらうと窓ガラスに映った自分の顔しか知らないけど別人にしか見えなかった。

「うん!とってもいいね。では行くとしよう。」
行く?どこに行くの?こんなにオシャレしたんだから追い出されたりはしないと思うけどどうしても不安が募る。

「ニーナ、今から離宮に移動してある人に会ってもらいたいんだ。その人は厳しい所もある人だけど、ニーナには多分とっても優しいはずだから。」
アンジェリカの言っている意味が理解出来なかったけど言われるがまま用意された馬車に乗り込む。
正直ドレスが歩きにくくてアンジェリカが腕を貸してくれなければ何度も転んでいたと思う。
初めて乗る馬車は伯爵家で見た馬車より立派でとても素敵な見た目だし、座ってみるとさっきまで寝ていた部屋のベッドよりふかふかなシートで沈み込んでしまうのかと思ってしまう。
それにしてもアンジェリカの言う会って欲しい人ってどんな人なのかな?
1日があっという間で、既に日が沈みかけている時間に少し戸惑う。

考え事をしていると目的地に着いたのか馬車が止まりアンジェリカが先に降りようと扉に近づいた時外からバン!と勢いよく扉が開けられ思わずビクッとしてしまう。

邪魔と言わんばかりにアンジェリカを扉の外に追い出した顔と私に向ける顔の差に戸惑っていると、
「名は?」優しく私の手をとり聞いてくる。
あまりの事に呆気に取られていたけどもしかしてこの人が会って欲しい人?

「に、ニーナです。」
「ニーナ、私はメビウス・ドラングスだ。」
「は、はい。」
なんだか胸元が急に熱くなる。
「やっと君に会えた。」
ドレスは鎖骨の見えるデザインで熱くなった所は隠されていない。
そこに浮かび上がったのだ。
彼の、メビウスの番紋が。
それを見た彼はこの世の幸せを集めたようなとろける顔を私に向けているが人の感情を読むのが苦手な私は戸惑うことしか出来ない。

「さあ、今日からここが君の家だよ。」
馬車から抱きかかえられて離宮の中に入りメビウスが私の家だと言うけど……
伯爵家より何倍も広くて綺麗な建物に見惚れてしまう。

「ニーナ?」
「えっ?あっ」
呼ばれてメビウスを見ると複雑そうな顔で見つめられていた。
「建物に嫉妬する日が来るなんて……」
と言っているけどよく分からない。
初めて会うけどメビウスの腕の中にいると落ち着く。
無意識に肩に頬ずりすると
「ニーナ、煽らないで。」
頬を染めて目つきが変わってる気がする。
「??」
よく分からないので首を傾げてしまうがそれすらもメビウスにとっては悶絶級の仕草で今すぐ寝室に連れ込みそうになる理性をなんとかつなぎとめていた。
「さあ、ここが君の部屋だよ。」
日当たりが良く見晴らしも最高な部屋は離宮の主夫妻用の部屋の妻側で隣は夫婦の寝室、その隣がメビウスの部屋らしい。

夫婦の部屋になんで私が???としか考えられなかったけどここで何か言うべきでないのは私にもわかったので嬉しそうに説明してくれるメビウスを眺めていた。
「ニーナ?どうした?」 
「え?あの、その……」
今日1日で色んなことがありすぎて正直頭がぐちゃぐちゃになっていた。
さっきまでかすかに見えていた夕日もいつの間にか沈み、部屋には灯りがともされていた。
「ごめん、急に色々あったし戸惑うよね。」
「はい……」
みんなが私に親切にしてくれるのは特異体質だからなのかな?
番についてもよく分からないし本当に困った。
「とりあえず夕食にしようか。」
「え?」
ここに来る前にも食べたのに本当にまたご飯を食べていいの?
「ん?シェフが消化にいい食事を用意してくれているから楽しみにしていて。」

案内されて行った食堂はとても広くて、用意された食事もとっても美味しくて、幸せな気持ちで用意された部屋でまたぐっすり寝てしまった。
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