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第一章 チュートリアル
平川のノート『歴史』⑫
しおりを挟む『ピフーの戦い』でムヤ人の本国にいる軍をほぼ一掃したヌエニ人はムヤ人が住む『サウドゥーリ半島』に上陸した。
軍が殲滅され、ラベゴ大陸から呼び戻した援軍も逃げるように引き返してしまった。
頼れるものが何もなくなったムヤ人の大部族は、ひとまずは『プゼーポ湾』沿岸部をヌエニ人に譲渡することを決めた。
領土をそのまま引き渡しても、統治システムを築き上げるのは時間が必要だ。
その間にラベゴ大陸にいる他の主力軍の呼び戻し、ペルニ島にいる開拓軍を呼び戻す時間を捻り出そうとした。
結果を言えば、ペルニ島にいる開拓軍は半分は戻ってきたが、ラベゴ大陸にいる主力軍は二割だけが戻った。
残った八割はなんだかんだ理由をつけて戻ろうとはしなかった。ひどいのはそのまま手紙を無視して、返事さえこなかった。
先刻は他大陸に入植を果たした輝かしい日の出の勢いだったのに、今は手持ちの軍もなく、自軍にさえ裏切られる始末である。
その間もヌエニ人が『プゼーポ湾』沿岸部の開発は進んでいる。残った時間はもう僅かと考えたムヤ人の上層部はかなり焦り始めた。
実際、その心配は正しい。
上層部が集まって会議を長々と開いているうちに、『プゼーポ湾』沿岸部の小部族は既に大半はヌエニ人に恭順の意を示した。
正しい数は判明していないが、ムヤ人の大攻勢は二十万を超える大軍であったと言われている。
その大軍を容易に大敗させたヌエニ人の軍に逆らおうとする部族は少数派。
ムヤ人の大部族は全てが内陸にあったので、海に近い部族の心情を知る由もない大部族の長は勝手に彼らは抵抗して時間を稼いでいくれると思い込んでいた。
そんな筈がある訳もなく、圧倒的な力を戦いで示したヌエニ人の統治を受け入れた部族が殆どである。
一方、ペコサ人のヌエニ人への臣従は『内海』諸民族に驚きを与えた。急に極北の地から出て来ては瞬く間に勢力を広げ始めたのである。
ネホヌ諸島に進出し、ペコサ人を下に収めたことにより『内海』西側の利権は彼らとフェス二人が独占する形になった。
東側は依然してムヤ人の勢力ではあるが、彼らの本拠地を守護する軍は半壊している。ヌエニ人が攻勢に出れば『サウドゥーリ半島』にいるムヤ人は抵抗できる筈がない。
ラベゴ大陸とペルニ島にいるムヤ人の軍は本国を見捨てるつもりがこの時点ではあったと思う。助けるつもりがあったのならラベゴ大陸に引き返す意味がない。
彼らは本気でラベゴ大陸に新たなに居を構えるつもりだったのだろう。
しかし、『フーチェ・ダルプース』がこの絶体絶命の危機を打破した。
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