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SM屋敷の惨劇
しおりを挟むとある西洋風の屋敷で、殺人事件が起きた。
殺害されたのは、その屋敷の主人。通報したのは、その屋敷に仕える執事で、夜中に主人の部屋から物音が聞こえてきたので、気になって部屋を訪ねたところ、主人が死んでいるのを発見したという。
黒川は早速、部下を引き連れて現場へと急行した。
屋敷に到着──。
とても大きな屋敷だ。そして、門も大きい。屋敷の至る所に、金を掛けているのがよくわかる。
呆気にとられながらも黒川は、門の脇にある、高級そうな呼び鈴を押した。
ブーーーッ!
「……ショボイな」
なぜか、呼び鈴の音はショボかった。
すると屋敷から、一人の老人が姿を現した。
「警察の方々ですね。ようこそお越し下さいました」
老人の顔は、真っ白な白髪に隠れて確認しずらかったが、見た感じ、70~80歳位の男性のようだった。
「あなたが、通報をくれた執事さんですか?」
黒川は老人に尋ねた。
「ええ、私がご連絡を差し上げました、この屋敷に仕える執事でございます」
どうやらそのようである。
「殺人があった現場へ、案内して下さい」
「はい、こちらへどうぞ」
そう言うと執事は、屋敷の奥へと入って行き、黒川達も執事の後に続いた。
「こちらでございます」
一番奥の突き当たりの部屋の手前で、執事はそう言った。黒川は執事を追い越し、殺人があった現場へと、足を踏み入れたのであった。
「こ、これは……」
黒川の目に、最初に飛び込んできた光景とは、その屋敷の主人と思われる、チビ・デブ・ハゲと三拍子揃った中年の男が、全裸で四つん這いになったまま、亀甲縛りをされて死んでいる姿だった。
そしてなんと、お尻には、とてつもなくデカイ浣腸が刺さっており、頭は真っ二つにされ、凶器の斧が、まだ刺さったまんまだった。
「す、すごい死に方だ……」
黒川は、おもわず息を飲んだ。
「事件があった日のことを、詳しく教えて下さい」
黒川は、部屋の外で待っている執事に聞いた。
「あれはそうですねえ……昨夜、私がその日の最後の仕事を終えて、寝ようと思った時のことです」
「ほう、それで」
「旦那様の部屋から、すごい音が聞こえてきたので、慌てて部屋の方へ向かいました」
「フムフム」
「すると部屋から、男が走り去って行くのを見ました」
「その男の顔を見ましたか?」
「いえ、暗かったので顔までは……」
「そうですか、話を続けて下さい」
「はい。そして、旦那様の部屋をノックしてもお返事がなかったので、入ったら……」
「死んでいた?」
「その通りです」
黒川は部下の刑事に聞いた。
「この付近一帯の目撃情報はあったのか?」
「はい。この執事の言う通り、昨夜この屋敷から、怪しい人影が走り去るのを、近所の住人が目撃しています。性別までは不明ですが……」
「どうやら、そいつが犯人のようだな。よし、一旦本部に帰って報告後、捜査開始だ」
「わかりました!」
犯人は屋敷の主人を殺害後、逃走を謀った模様だ。早く犯人を捕まえなければ。
「執事さん、後は鑑識がきて現場を処理しますから、私達はここで失礼します」
「そうですか、ご苦労様でした」
と、黒川達が帰ろうとしたその時である。
「ちょっと待っておくれやす」
「誰だっ!」
早くイクこと風の如く!
連射可能なマグナム探偵!
名探偵レン太郎!
黒川は黙ったまま、頭を押さえてうなだれている。
「あ、あれ……どうしたんですか? 黒川さん」
「誰なのかわかっているのに、誰だっ! と言ってしまった、自分が嫌になっただけだ」
「そんなー! お約束じゃないですか。気にしない気にしない」
レン太郎は、黒川の背中をポンポン叩いている。
「で、どっちだ?」
「……はい?」
「お前はどっちのレン太郎なんだ?」
「どっちって、どういう意味ですか?」
そう、前回の話で、レン太郎は二重人格者であることが判明している。二重人格といっても、見た目は変わらないので、黒川はどっちかわからないでいた。
「質問していいか?」
「はい、どうぞ」
「いい国つくろう」
「ハメ撮り天国」
「やっぱり、アホな方か……」
レン太郎は、銃声を聞くことによって、賢くなったりアホになったりする特異体質だ。
まあ普通、銃声なんて聞く機会なんて滅多にある事ではない。なのでレン太郎は、前回アホになってから、そのまんまという訳だ。
「いいか! よく聞け!」
黒川は、レン太郎を見据えたまま話を続けた。
「俺は今から本部に帰る。お前もこの屋敷から出ていく。以上だ! わかったなっ!」
「はい、わかりました!」
そう言うとレン太郎は、その部屋を興味深そうに物色し始めた。
「わかってねーじゃねーかっ! オメーはっ!」
「ほらほら、黒川さーん! この部屋、SMグッズがいっぱいありますよー!」
レン太郎は、宝の山を見付けたかのように、はしゃいでいる。
「刑事さん、何なんですか? あの人は」
執事は、わけのわからない男に部屋を荒らされて、怒っているようだ。
「すみません、単なる変態です。すぐに連れて帰りますから」
そう言って黒川は、レン太郎に近づいた。
すると、
「ねえ、黒川さん」
レン太郎は、主人の死体を見ながら話し始めた。
「なんだ?」
「この人、幸せな死に方をしてると思いませんか?」
「どうしてだ? こんな酷い殺され方なのに……」
「だって、SMのプレイ中に、絶頂に達したところで死んでるんですよ。さぞ、本望だったんじゃないですか?」
「プレイ中に……だと?」
黒川は、レン太郎の言葉を聞いて少し考えた。そして、鋭い眼光で執事をにらみつけた。
「執事さん」
「は、はい。何でしょうか?」
「あなた確か……男が走り去ったって言いましたよね?」
「え、えーと、男だったような女だったような……」
「ご主人は、SMの趣味がおありのようです。しかも、死に方から推測すると、かなりのマゾのようだ」
黒川は、執事から目を離さずに話し続けた。
「SMプレイの最中に殺されたということは、相手……いや犯人は、女王様という事になる。だから、走り去ったのは女だ。執事さん、あなたウソを言いましたね?」
執事は、そのまま黙り込んでしまった。
すると、
「く、黒川さん! た、大変です!」
レン太郎が慌てた様子で、黒川を呼んだ。
「ど、どうした?」
「私のチンコが、おっきくなっています」
レン太郎は、膨らんだ下半身を黒川に見せつけた。
「オメーには、節操ってもんがねーのかっ!」
黒川は、レン太郎の頭をグーで殴った。
「痛いです」
「当たり前だ」
「黒川さん。私のチンコは、いい女にしか反応しないんです」
「だからどうした?」
「でも、ここには男しかいないんですよ。ね、大変でしょ?」
「そういえば……」
たしかに、この部屋には、黒川と、その部下の男と、執事と、レン太郎しかいない。にもかかわらず、レン太郎の下半身が膨らんでいるのは、どういう事なのだろうか。
「ミホコさんがいる時は、ギンギンなんですけどね。黒川さんもそうでしょ?」
「うるせーよ」
どうやら、黒川もミホコには反応していたように思われる。
と、黒川がレン太郎と言い合っていると、
「わ、私は、用事がありますので失礼します」
そう言って執事は、部屋を出ようとした。
「あっ、ちょっと待っ……ん?」
その時、黒川は見た。執事の真っ白な白髪の下から、黒い髪がチラリと出ているのを──。
「執事さん」
「は、はい」
「あんた、本当は執事じゃないだろ?」
「な、何を言ってるんですか。私はこの屋敷に長年仕えている……」
執事は、かなり動揺しているようだ。
「その白髪のヅラの下から、本当の髪がはみ出て見えてんだよっ! しかも、前髪を下ろして、ご丁寧に顔まで隠しやがって!」
そう言うと黒川は、執事の髪を掴んで引っ張った。すると、ヅラが外れて、執事の正体が明かとなったのだ。
「……あ」
と、黒川は言った。
「……あ」
と、部下の刑事達も言った。
「……お、おおっ!」
と、レン太郎はテンションが上がった。
それもそのはず、その白髪のヅラの下から現れた顔とは、まだ20代と思われる、黒髪の美女だったのだ。
「お前、いったい何者だ?」
黒川は美女にそう聞いた。
「あたしは、この死んだ男の妻よ」
なんと、この美女の正体は、殺された屋敷の主人の妻だったのだ。
「ええっ!」
と、黒川は驚いた。
「ええっ!」
と、部下の刑事達も驚いた。
「イヤーッ! こんな美人がこの男と、あんなことやこんなこと……」
と、レン太郎はジタバタしながら悔しがった。
「あんたが、この男の妻?」
半信半疑ながらも、黒川は再確認した。
「そうよ」
殺された主人は、チビ・デブ・ハゲと三拍子揃っている。そして、SMが趣味で、超ど級のMときている。どう考えても、この美女とは不釣り合いだ。
「世の中、わからんもんだな」
そう言うと黒川は、タバコを取り出して口にくわえた。
「黒川さん、火をどうぞ」
「あぁ、スマンな」
レン太郎は、真っ赤な低温ローソクで、黒川のタバコに火を点けた。
「おい」
「はい?」
「このローソク、どっから持ってきた?」
「え、そこら辺にごろごろ落ちてましたけど……」
黒川は、タバコをくわえたまま、怒りにうち震えている。
「ここは殺人現場だっ! 勝手に現場の物を触るんじゃねーっ!」
そして黒川は、勢いづいたまま美女にも話し出した。
「あんたも、何で執事に変装する必要があったんだ? 素直に最初っから妻だと名乗ればいいだろう!」
「嫌だったのよ」
「なにがだ?」
「この男の妻だって、名乗るのが嫌だったからよ」
「じゃあ、なんで結婚なんかしたんだ?」
美女は、バツが悪そうな顔をしたまま、黙ってしまった。
「財産目当てか?」
と、黒川は美女に聞いた。
「そうよ! この屋敷の財産が欲しくて、この男と結婚したわ」
「で、殺したのもあんただな?」
「だって、この男、毎晩毎晩、あたしに女王様のコスチュームを着せて、SMプレイを強要するんだもの」
「だから殺したのか?」
「そうよ。でも殺すなら、せめてプレイの最中に絶頂に達した時に殺してやろうと思ったの」
「せめてもの情けか?」
「そんなところね」
「で、殺害後、あんたはそのまま逃走をしたと見せかけて屋敷に戻り、執事の変装をして警察に通報したわけだ」
「その通りよ。誰かが逃げたのを、近所の住人に見られなければならなかったから……」
「そこまでしたのに、残念だったな」
そう言いながら黒川は、美女に手錠をかけた。
「殺人の容疑で逮捕だ」
そして事件は解決した。
すると、
「黒川さん、ちょっといいですか?」
と、レン太郎の声がした。
見ると、レン太郎はワクワクした表情で全裸になっていた。
「な、何やってんだ?」
「何って、現場検証ですよ」
そう言いながらレン太郎は、全裸のまま四つん這いになった。
「さあ、女王様! 私を殺したご主人だと思って、最初っからプレイを再現して下さい!」
「うるさい! あんたさえ来なければ、上手くいっていたのにっ!」
美女は声を荒らげ、レン太郎を怒鳴りつけた。
「イヤーン! その調子ーっ!」
だが、レン太郎は喜んでいる。
この時、黒川は思った。
たしかに、レン太郎が来なければ、執事に変装していた事も、犯人だった事も気づかずに、そのまま帰っていた。まさか本当は、このレン太郎は、アホな方ではなく、賢い方だったのではないか……と。
「さあ! 早く続きをっ!」
レン太郎は女王様に、プレイの続きを期待している様子だ。
「まさかな、考え過ぎだ」
そして、黒川は犯人を連行し、レン太郎は部下の刑事に、保護という形で取り押さえられ、事件は幕を閉じた。
意外な活躍で、事件を解決へと導いた名探偵レン太郎。
次回は、どんな現場に現れるのであろうか。
「まだ現場検証が、終わってませーん!」
(つづく)
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