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第十話・かくれんぼの闖入者
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「皆~! ちゃんと上手く隠れるんだぞ~!!」
「「「はぁ~い!!」」」
孤児院と、その周辺の区域を使ってのかくれんぼ。
帰省ついでに度々訪れていた孤児院に足を運んだシャルロットは、子供達の逃げて行く足音を聞きながら、庭の片隅で目を閉じていた。大きな声でひとつひとつ、数を響かせる。
「にじゅうい~ち、にじゅう~にぃ~……」
もう、子供達の声は聞こえない。孤児院の中や外のあちらこちらに隠れようと、皆ちゃんと散らばっていったようだ。三十まで数えたシャルロットは目を開き、早速大勢のターゲット達を見つけるべく、捜索に出る。
――しかし。
「お、この辺が怪しいな~。それっ!」
「…………」
「…………」
子供達の誰かが入っているのだろうと思い、パカリと持ち上げた大き目の木箱の蓋。
中に潜んでいた『誰か』と目が合った瞬間、シャルロットの笑顔は凍りついた。
……、……、…………。
「な、……何を、やってるんだ? シグルド君」
「遊びに混ざっている……」
「ほぉ~、そうか」
パタン。木箱の蓋から手を放し、それが閉まるのと同時に意識を右手のひらに集中させ、頑丈な縄を具現化させる。
「どりゃあああああっ!!」
怒涛の勢いで木箱をグルグル巻きにし、シャルロットは飛びのく。
これでよし……。暫くは出て来られまい!!
普通の者なら、それがたとえ魔族であっても、天使であっても行使出来ないだろう不可思議の力で次は『接着剤』と書かれた巨大なチューブをシャルロットは具現化させ、木箱の上からどろりと大量の液体をぶっかけていく。
「はぁ、……はぁっ、悪く思うなよ、シグルド君!!」
よし、子供達には悪いが、今の内に逃げよう。全力で逃げよう!!
だが、現実はシャルロットの思うようには行かず。
「な、なにぃいいいいっ!?」
ドカーンッ!! と、内側から意味のわからない馬鹿力で木箱が破られ、その衝撃で縄も接着剤も吹っ飛んでしまった!
(いやいやいや!! どろどろ木工用瞬間接着剤まで吹っ飛ぶって意味がわからないぞ!!」
中から生じた衝撃波のせいだろう。だが、シャルロットは荒野の中で一人生き残ったかのような出で立ちのシグルドに、本気で悲鳴を上げたくなった。
「シャルロット……」
「い、いやっ、あの、だなっ。い、今のは、今のは、わふっ!!」
相変わらず、私服は上腕部と腹の部分が剥き出しの黒衣装で固めているシグルドに抱き締められ、シャルロットは猛獣の檻に囚われてしまった。
ちょっ、痛いっ、痛いぞ!! この馬鹿わんこ!!
いつもより抱き締める力が強すぎるように思うシグルドにそれを伝えるが、彼は黙ったまま、少しだけ力を弱めるだけだった。
あぁ、筋肉がっ、シグルドの厄介な吐息がっ、ぁあああああああああっ!!
「……し、て。アイツなんだ」
「え?」
「どうして、エリィが……、エリィだけが、特別なんだ? どうして俺は、お前の傍に在る事も、許され、ない……?」
「……わからないのか?」
「わからない」
まさか、とは思っていたのだが……。
どうやらシグルドは、自分で自分の気持ちがわかっていないようだった。
シャルロットの方は、アルバートとの件でハッキリと自分が抱く予感の正体に確証を持ったというのに……。
(いや、違う。気のせいだ……、気のせいでなければいけないっ)
シグルドの中にある、自分への感情に名前をつけてはいけない。
自分がシグルドを意識してしまう事も、本人がその感情に名前を付ける事も、絶対にあってはならない。
「あ~!! シャルロットおねえちゃん、何やってんのぉ~?」
「うわっ!! じゃ、ジャンっ!! み、見るな!! 見るんじゃない!!」
「どうしたのぉ~? あぁ~!! シャルロットおねえちゃんが、男の人と抱き着いてる~!!」
「うわぁああああああっ!!」
隠れていたはずの子供達が二人の前に現れ、面白そうな目で見上げてくる。
すぐに離れようとしたシャルロットだが、でかわんこに羞恥心というものはなかった。
「まだ、離れるな……」
「そんな声で囁くなぁああああああああっ!!」
掠れと絶大な色気を伴ったシグルドの切ない囁き声に震えを走らせ、シャルロットは全力で暴れる。
「皆~!! シャルロットのおねえちゃんが~!!」
「えぇ? なになにぃ~?」
「どうしたのぉ~?」
あぁ、目撃班のせいで、どんどん隠れていた子供達が集まってくる……。
挙句の果てには、孤児院の責任者や手伝いの者達まで現れ、シャルロットはここでも、恥ずかしすぎる噂を生み出してしまったのだった。
「「「はぁ~い!!」」」
孤児院と、その周辺の区域を使ってのかくれんぼ。
帰省ついでに度々訪れていた孤児院に足を運んだシャルロットは、子供達の逃げて行く足音を聞きながら、庭の片隅で目を閉じていた。大きな声でひとつひとつ、数を響かせる。
「にじゅうい~ち、にじゅう~にぃ~……」
もう、子供達の声は聞こえない。孤児院の中や外のあちらこちらに隠れようと、皆ちゃんと散らばっていったようだ。三十まで数えたシャルロットは目を開き、早速大勢のターゲット達を見つけるべく、捜索に出る。
――しかし。
「お、この辺が怪しいな~。それっ!」
「…………」
「…………」
子供達の誰かが入っているのだろうと思い、パカリと持ち上げた大き目の木箱の蓋。
中に潜んでいた『誰か』と目が合った瞬間、シャルロットの笑顔は凍りついた。
……、……、…………。
「な、……何を、やってるんだ? シグルド君」
「遊びに混ざっている……」
「ほぉ~、そうか」
パタン。木箱の蓋から手を放し、それが閉まるのと同時に意識を右手のひらに集中させ、頑丈な縄を具現化させる。
「どりゃあああああっ!!」
怒涛の勢いで木箱をグルグル巻きにし、シャルロットは飛びのく。
これでよし……。暫くは出て来られまい!!
普通の者なら、それがたとえ魔族であっても、天使であっても行使出来ないだろう不可思議の力で次は『接着剤』と書かれた巨大なチューブをシャルロットは具現化させ、木箱の上からどろりと大量の液体をぶっかけていく。
「はぁ、……はぁっ、悪く思うなよ、シグルド君!!」
よし、子供達には悪いが、今の内に逃げよう。全力で逃げよう!!
だが、現実はシャルロットの思うようには行かず。
「な、なにぃいいいいっ!?」
ドカーンッ!! と、内側から意味のわからない馬鹿力で木箱が破られ、その衝撃で縄も接着剤も吹っ飛んでしまった!
(いやいやいや!! どろどろ木工用瞬間接着剤まで吹っ飛ぶって意味がわからないぞ!!」
中から生じた衝撃波のせいだろう。だが、シャルロットは荒野の中で一人生き残ったかのような出で立ちのシグルドに、本気で悲鳴を上げたくなった。
「シャルロット……」
「い、いやっ、あの、だなっ。い、今のは、今のは、わふっ!!」
相変わらず、私服は上腕部と腹の部分が剥き出しの黒衣装で固めているシグルドに抱き締められ、シャルロットは猛獣の檻に囚われてしまった。
ちょっ、痛いっ、痛いぞ!! この馬鹿わんこ!!
いつもより抱き締める力が強すぎるように思うシグルドにそれを伝えるが、彼は黙ったまま、少しだけ力を弱めるだけだった。
あぁ、筋肉がっ、シグルドの厄介な吐息がっ、ぁあああああああああっ!!
「……し、て。アイツなんだ」
「え?」
「どうして、エリィが……、エリィだけが、特別なんだ? どうして俺は、お前の傍に在る事も、許され、ない……?」
「……わからないのか?」
「わからない」
まさか、とは思っていたのだが……。
どうやらシグルドは、自分で自分の気持ちがわかっていないようだった。
シャルロットの方は、アルバートとの件でハッキリと自分が抱く予感の正体に確証を持ったというのに……。
(いや、違う。気のせいだ……、気のせいでなければいけないっ)
シグルドの中にある、自分への感情に名前をつけてはいけない。
自分がシグルドを意識してしまう事も、本人がその感情に名前を付ける事も、絶対にあってはならない。
「あ~!! シャルロットおねえちゃん、何やってんのぉ~?」
「うわっ!! じゃ、ジャンっ!! み、見るな!! 見るんじゃない!!」
「どうしたのぉ~? あぁ~!! シャルロットおねえちゃんが、男の人と抱き着いてる~!!」
「うわぁああああああっ!!」
隠れていたはずの子供達が二人の前に現れ、面白そうな目で見上げてくる。
すぐに離れようとしたシャルロットだが、でかわんこに羞恥心というものはなかった。
「まだ、離れるな……」
「そんな声で囁くなぁああああああああっ!!」
掠れと絶大な色気を伴ったシグルドの切ない囁き声に震えを走らせ、シャルロットは全力で暴れる。
「皆~!! シャルロットのおねえちゃんが~!!」
「えぇ? なになにぃ~?」
「どうしたのぉ~?」
あぁ、目撃班のせいで、どんどん隠れていた子供達が集まってくる……。
挙句の果てには、孤児院の責任者や手伝いの者達まで現れ、シャルロットはここでも、恥ずかしすぎる噂を生み出してしまったのだった。
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