無垢なる密蕾は、愛しき腕にて咲き誇らん

古都助(幸織)

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~カイン・イリューヴェル編~

竜の皇子と王兄姫、戸惑いの距離7◆~カイン×幸希~

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「はあ……、すっきりしねぇ」

 武闘大会が終わって数時間後、夜も更けた頃……。
 イリューヴェル皇宮の自室に戻ってきたカインさんは、ベッドの上でブツブツと愚痴を零していた。
 準決勝で起こった、ルイヴェルさんのまさかの事態。
 それにより勝利を手にしたカインさんは、無事に決勝戦へと進めたのだけど……。
 優勝の栄誉を手に入れた人とは思えない程のどんよりとした暗い雰囲気で、何度もベッドの上を転げまわっているカインさんを眺めながら、私も溜息を吐く。
 気持ちは、わからないでも、ない……。

「カインさん、一応、優勝出来たんですから……、そんなに拘らなくても」

「だってよぉ……、居眠りだぞ? ルイヴェルの野郎、何試合中に寝てんだよ。マイペースにも程があんだろ」

「気持ちはわかりますけど、もう終わった事ですし……」

 お茶を淹れてカインさんの許に運んでいくと、安眠効果のあるそれをぐいっと一気に飲み干されてしまった。
 一応、鎮静効果のある茶葉も入れておいたのだけど、うーん。
 頭を掻き毟り、何度も納得いかないと叫ぶカインさん。どう扱ったものやら。

「決勝のお相手は正々堂々と倒せたんですから、ね? もう気にするのはやめましょう」

「はぁ……、まぁ、それもそうだな」

「それと、あの……、ご、ご褒美の、事、なんですけど」

「いい」

「え?」

 てっきりこの後、求められると覚悟していた私は、カインさんの意外な一言に目を丸くしてしまった。
 よいせっとベッドに寝そべったカインさんが、憂鬱そうな溜息と共に訳を話してくれる。

「ルイヴェルの奴をぶっ倒せなかったんだぜ? こんなの本当の勝利って言えるかよ」

「カインさん……」

「俺は、正々堂々と武闘大会を勝ち抜いて……、お前を抱きたかったんだ」

 切なく掠れた音でそう呟かれた私は、トクン……と、鼓動が熱を抱き波打つのを感じた。
 武闘大会で強者達を倒し、自分の実力で優勝を手にしたかった……。 
 真っ直ぐな心根の恋人。
 私はベッドに上がると、悔しそうにしているカインさんの、その身体に寄り添った。

「ルイヴェルさんとの事は……、残念でしたけど、カインさんが優勝した事実は変わりません」

「気休めはいらねぇよ。俺の優勝は、ルイヴェルの野郎が居眠りこかなきゃ、なかったようなモンなんだからなっ」

「そうでしょうか?」

「あ?」

 あの時、私の応援を受けて動きを変えたカインさんは、ルイヴェルさんの表情が変わる程に猛攻を仕掛ける事が出来ていたと思う。
 私への想いを胸に強くなるカインさんは、もしかしたら、あのままルイヴェルさんが居眠りをしなくても、勝っていたんじゃないだろうか。
 そう伝えても、カインさんは納得出来ないと呟き、もう寝ると言い出してしまった。
 今夜のご褒美を、自分から捨てる方向に走りかけている。
 だけど、私は……、カインさんのあの戦いを見ていて、思ったのだ。
 たとえ武闘大会で優勝出来なくても、私の為に頑張ってくれた彼を、心から受け入れたいと。
 それに、『もふもふパニック!』で騒動が起こった際に、カインさんは私を助けに来てくれた。
 準決勝に戻ってほしいと言っても、私の方が大事だと……、そう、言ってくれた人。
 心優しい、私だけの、愛しい男性。貴方のその心を感じられる事が、どれだけ私にとって幸せな事か。
 私は起き上がると勇気を出して……、自分の夜着を脱ぎ始めた。
 その衣擦れの音に気付いたのだろう。カインさんが訝しげにこちらを向いて、驚愕に目を見開いた。

「お、おいっ、何やってんだよ!!」

「カインさん。私は……、たとえ優勝を手に出来なくても、私の為に頑張ってくれた貴方が、この世界で一番愛おしく思えたんです。どんなに傷付いてもルイヴェルさんに立ち向かってくれたでしょう? 私の事を心配して、駆けつけてくれたでしょう? 私を腕に抱きあげて、医務室に走ろうとしてくれたでしょう? それだけで、私は……」

「やめろよ……。俺とお前の約束は、武闘大会で優勝する事だったはずだ。それに納得出来ない以上、俺は……」

 こんな事、他の男性に対しては絶対に出来ない。
 私は中途半端に脱ぎ掛けた夜着姿で、拒もうとするカインさんの胸にしがみつく。
 治癒の術のお蔭で大部分の傷は治っているけれど……、痛々しい痕は、目に見える場所にまだ浮かんでいる。
 カインさんの首筋に唇を近づけ、音を立ててその肌に吸い付く。

「んっ……、こら」

「嫌……、ですか?」

 熱に潤んだ眼差しで見上げれば、カインさんはごくりと喉を鳴らし、顔を背けた。
 自分の優勝は正当性のあるものではない。だから、自分は約束を果たせていない、と。
 そんな男らしい主張をするカインさんも好きだけど、私は……。

「じゃあ、約束とは関係なく……。今、カインさんに、愛する人に抱いてほしいと願っている私の気持ちを、汲んではくれませんか?」

「ユキ、お前……」

「カインさんが私の為に頑張ってくれた姿が、私の危機を救いに来てくれたその想いが、準決勝を捨ててまで医務室に連れて行ってくれようとした優しい心が、とても、嬉しかったんです」

 戸惑うカインさんをベッドに押し倒し、普段では考えられない程の行動力で、私はカインさんの夜着を乱し、その鍛えられている胸に口づける。
 愛する人にしかしない、出来ない、とても恥ずかしい行為。
 今……、物凄く、この人の温もりに包まれたくて仕方がない。
 私が肌に口づける度に、カインさんのくぐもった低い吐息が漏れ聞こえる。

「ユ、……キ、っ、はぁ」

「約束とか、ご褒美、とか……、もう、関係、ないんです。私は、カインさん……」

「くっ……、ユキ、お前」

「貴方に、愛してほしい……」

 こんな羞恥心全開の誘いの言葉なんて、今夜が終わったら、きっともう二度と言えないかもしれない。
 男性の服を脱がせて、自分からその肌にキスをして、誘うように舐めたりするなんて……。
 求められる事はあっても、自分から求めた事はない。こんな、大胆な行動……。
 カインさんの息が乱れ、その下肢で確かな変化が起こり始めた。

「甘やかしすぎ、……だっ。止まんなく、なんだろうが」

「私が望んだ事です。私が、貴方を……、欲しがっているんです。だから」

「くそっ……、お前からこんな真似されたらっ」

「きゃっ」

 理性の鎖が引き千切れてしまったのか、カインさんが私をベッドに押し倒した。
 真紅の双眸に浮かぶ激情と、男性としての欲の気配。
 カインさんは堪え切れなくなったように私の唇を塞ぎ、荒れ狂う本能のままに口内を貪ってきた。

「ンっ……、カイ、ン、さっ」

「こんな恰好で、あんな声で、……俺を狂わせたいのかよっ」

「はぁ……、狂って、くれ、ないん、です、か?」

 カインさんに見つめられている事が、存在を求められている事が、嬉しくて仕方がない。
 恐れていた行為を、自分がおかしくなるかもしれない触れ合いを、今は私自身が望んでいる。
 カインさんが私に向けてくれる愛情が、優しさが、本当に嬉しくて……。
 自分が自分ではないと思えるぐらいに、淫らな誘いをカインさんに繰り返してしまう。

「前よりも、もっと……、貴方が愛しくて、おかしくなりそうなんです」

「止まんねぇぞ……。本当に、いい、のか?」

 それは、最後までしてもいいのか? という最終確認なのだろう。
 私が誘いをかけてしまったせいで、辛いことになっているはずなのに……。
 こんな状態になっても私を気遣ってくれるカインさんが、どんどん愛おしくなる。
 こくりと頷いたのを合図に、カインさんは私の夜着を乱しながら本格的に行為に耽り始めた。

「ユキ……、ユキっ」

「ぁっ……、カイン、さ、んっ」

「はぁ、そんな可愛い声出したら、本当に……、くそっ」

 首筋に吸い付かれ、胸の膨らみを揉まれながら、熱烈な愛撫を肌に受ける。
 促されて差し出した舌を求められ、密やかなる音を響かせながら交じり合う。
 どちらの身体も熱くなっていて、早くひとつに溶け合いたいとでも言うかのように、肌を押し付けあう。

「好きだ……、お前がいれば、俺は……、ユキっ」

「んっ……、ぁっ、カイン、さ、ん」

 次々と私の肌に咲き乱れる愛の証……。
 初めて出会った時は、無理矢理襲われかけて吐き気がしたのに……。
 カインさんの事を知る度に、一緒の時間を積み重ねていけばいくほどに、この人の傍にいたいと、そう、思うようになった。心から、そう願うように。
 不器用で、口が悪くて、素直じゃないところもあるけれど、いつだって私の事を大切に想ってくれる、唯一人の、愛する男性。
 顔を上げ、私を見下ろすカインさんに微笑むと、泣きそうな顔で嬉しそうに笑みを返された。
「夢じゃ……、ねぇ、よな?」

「カインさん……」

 ぽたりと、私の胸に落ちた……、温かな雫。
 私の頬を右手で撫でながら、カインさんは啄むようにキスをくれる。

「俺みてぇな捻くれ者に、お前みてぇな……、良い女が永遠を約束してくれるなんて、よ。なぁ、ユキ……、後悔しねぇのか? 俺とひとつになって、本当に、いいのか?」

 どうしてそんな、わかりきった事を聞くんだろう。
 長い月日を待たせてしまった私がそれを聞くならまだしも……、カインさんが私に対して許しを乞うような事を言うなんて。だけど、見つめてくる熱と寂しさに揺れる真紅の双眸は真剣そのものだ。
 私は両手を持ち上げて彼の頬を包み込むと、心からの幸せを顔に浮かべた。

「カインさんが、いいんです……。大好きな、私だけの、カインさん」

 これからの人生を、どうか一緒に歩き続けてほしい。
 貴方の傍に、ずっと寄り添わせてほしい……。
 そう伝えると、カインさんは今度こそ本当に大泣きしそうな程に表情を歪めた後、私を自分の胸に抱き起して、ぎゅぅぅっと強く抱き締めてきた。

「もう、逃がしてやんないからな……っ。ずっと、俺のもんだからなっ」

「ふふ、それは前からじゃないですか。私は、貴方に恋心を覚えた時からずっと、カインさんだけのものです」

「――っ、お前、さっきの誘惑といい、本当……、俺を甘やかす手腕が凄いな」

「そういうつもりは……、ない、ですよ?」

「その潤んだ上目遣いも半端ねぇな……。ユキ、お前の全部……、奪ってやりたい」

 夜着の中に忍び込んだ腕が、私の背中を擽りながら甘い疼きをもたらしてくれる。
 背中をしならせ、のけぞらせた首にカインさんの舌が這い、熱い吐息を触れさせながら何度も吸い付いては愛の証を咲かせていく。
 肌をまさぐる手の動きは徐々に大胆なものへと変わっていき、夜着の下に穿いていた下着が太腿を伝って脱がされる。

「もう……、濡れてるな」

「んっ、い、言わないで……、くだ、さいっ」

「お前、自分から俺を誘った事……、忘れてんのか?」

「あっ……、んっ、指、がっ」

 すでに蕩け始めていた中心に、カインさんの指先がくちゅりと沈み込んでいく。
 焦らすように指のお腹部分を入口の襞に擦り付けられ、私の反応を見ながらカインさんが徐々に刺激を強めながらニヤリと笑う。私が乱れる姿を見せると、いつもこうだ。
 心から嬉しそうに、もっと甘い声を、乱れる様を見せろと言わんばかりに、今度は胸の突起に吸い付かれる。

「か、カインさんっ、そんなに……、ぁっ」

「俺に愛されたいって、抱かれたいって強請ってくれたのは、お前だろ? 俺の指で、唇で……、もっと感じろよ」

「んっ、……はぁ、あっ、やぁっ」

 蜜口にもっと深く指を突き入れられたかと思うと、カインさんは私と繋がる為の準備をしようと、性急に中の弱い部分を弄り始めた。
 柔らかな内部は、すでに蜜の影響を受けて熱くなっている。
 それをカインさんが指でほぐし、自分のモノを受け入れられるよう丹念に愛撫し、時折引っ掻くような動作を仕掛け、指をもう一本増やした。

「あっ、あぁっ、……中、が、んんっ」

「もっと声出してみろ。我慢すんな……」

「はぁ、はぁ……、あっ、ぁぁっ、駄目っ」

 ベッドに押し倒され、執拗な愛撫を注がれ続けた私は、愛する人の猛攻に陥落し、早くも達してしまった……。
 とろりと、蜜口からはしたない筋が流れ落ちるのを感じながら、指を引き抜かれる。
 思考さえも蕩かされてしまっている私を見下ろしながら、カインさんが蜜を纏う指先を自分の口内に含んで舐めてみせると、すでに膨らみを見せていたその下肢を隠す夜着を脱ぎ去り、熱と硬さを宿したそれを外気に晒した。

「カイン……、さ、んっ」

 蜜で溢れている秘部に、カインさんが自分の分身を擦り付けてくる。
 ゆっくりと動きながら、いつ突き入れられてもおかしくない動き……。
 卑猥な音を生みながら、やがて上半身を私の胸へと倒してきたカインさん。

「ユキ……、んっ」

「カイ、んっ……、んぅっ」

 早く、早く、互いの熱をひとつに溶かし合ってしまいたい。
 カインさんに唇の表面をなぞりながら舐められ、存在を貪られるかのように舌の裏側、その根元を突かれた後、濡れたそれを強く吸い上げられる。
 触れられる度、その低く艶やかな掠れた声音で名前を呼ばれる度に、全身が、心が、喜びに打ち震えてしまう。

「ユキ……、本当に、後悔……、しないな?」

「んっ……、しま、せん。私を、カインさんと、ひとつ、に……、ああっ」

 その瞬間を待ちわびていた蜜口に、カインさんの昂ぶりの切っ先があてがわれたかと思うと、ぐっとそこに力が加わった。指とは違う圧倒的な太さのそれに、未開花のその場所が悲鳴を上げてしまう。
 
「うっ……、い、痛っ」

「悪い……っ、出来るだけ優しくしてやりてぇって思ってるのに、お前を苦しませるぐらいなら……っ」

 そう呻いたカインさんが、反射的に腰を引きそうになったのを感じて、私は衝動的に「駄目っ」と声をあげてしまった。
 出て行かないでほしい……。確かに、初めての痛みは相当のものだけど、それでも、カインさんを失うかのようなこの辛い胸の痛みに比べたらこのくらい。

「おねが、……い、します。最後まで、……カインさんに、して、ほしい、です」

「ユキ……、お前。くそっ……、手加減出来るか、ますます自信がなくなってきたっ」

 動きが再開され、カインさんの昂ぶりが慎重に私の内部をほぐしながら奥に進み始める。
 初めて感じる男性の逞しさと、この身を苛む苦痛……。
 眉を顰め、涙を零しそうになってしまうほどだったけど、同時に、こうも思う。
 これが、愛する人とひとつになる痛み……。
 私が、カインさんの存在に本当の意味で抱き締められているのだと、胸に在った温かな感覚が、どんどん強まっていく。例えるなら、――カインさんの愛に呑み込まれてしまいそう。
 
「くっ……、ユキっ、もう、少し、我慢、してろよ」

「は、はい……っ、んっ」

「はぁ……、お前の中、すげぇ……、ぅっ、熱くて、俺の全部を」

「あぁっ……、はぁ、カイン、さっ」

 時間をかけてようやく、カインさんの熱杭が私の一番奥まで届いた。
 元々女性の身体は男性の愛を受け止める場所だと知ってはいても、中に感じる圧迫感は途方もない。
 カインさん以外の感触なんて知らないけれど、それでも、この昂ぶりが大きい物である事だけはわかる。

「ユキ……、ありがとう」

「え……、どうして、お礼、なんて」

「俺、お前に会えて……、こうして、愛し合えて、――すっげぇ嬉しい」

「――っ」

 動きを止めたカインさんが、屈託のない温かな笑顔で私を見つめる。
 その眩しさに、彼の愛の深さに、私の鼓動がどんどん熱を帯びて跳ね上がっていく。
 カインさんの背中を抱き締め、私もその耳元に囁く。

「私も、です。カインさん……、心から、貴方の事だけを愛しています。貴方に出会えて、本当に良かったっ」

「ユキ……っ」

 少しの休息の後、ズッ、と……、ゆっくりカインさんの昂ぶりが途中まで戻ったかと思うと、またゆっくりと慎重に奥へと突き上げられる。
 彼の感触にまだ慣れていない私の内部は、その動きにまた痛みを覚え、苦痛とは反対にカインさんの分身を締め付けてしまう。

「んっ……、い、いたっ、あぁ……」

「少しずつ、慣らしていくからな……。はぁ、ユキ……、ユキっ」

「ぁっ、あぁ……、っ、んっ、んっ」

 痛がる私を気遣いながらも、カインさんの動きは徐々に荒くなっていく。
 念入りに中を抉っては、自分の形を馴染ませるように肉をほぐしながら、私の頬や額にキスを落としてくる。

「好きだ……、お前だけが、俺のっ」

「んぅっ、……はぁ、はぁ、カイン、さん、好き、です。だ、から、もっと、愛、し、ぁあっ」

「馬鹿っ! ……これ以上、俺を煽る、なっ。くっ、ユキ、ユキ……!」

 互いの汗が交わるほどに抱き締め合い、ゆっくりとしていた動きが徐々に速まってくる。
 痛い、痛い……、だけど、愛しい人が与えてくれる痛みは、とても、――愛おしい。
 カインさんが私の左手を掴みよせると、手のひらに唇を押し付け、肌を舐めあげる。

「愛してる……、はぁ、んっ、ユキ」

「はぁ、……はぁ、カイン、さん」

 手のひらに残る濡れた感触と、カインさんの熱い吐息が、狂おしいほどに切なくて……。
 私も彼のその手に唇を寄せて熱を触れ合わせる。
 それと同時に、中で動いていた昂ぶりが歓喜したように膨れ上がって……。

「ユキ……、くっ、そろそろ……っ」

「ぁっ……、はぁ、だい、じょう、ぶ、です。カインさん、き、て」

 私の両手をシーツに押し付け、カインさんが想いの丈の全てをぶつけたがるかのように奥を穿ち始めた。
 限界が近い事は、彼の余裕のない辛そうな顔と、私を見つめる熱情のはじける寸前のような眼差しでわかった。
 痛みはまだ消えない。だけど、私は瞼を閉じずに彼の真紅の双眸を最後まで離さない。
 好きな人との初めてを、新たな一歩を、最後まで……、二人の想いをこの胸に抱き締め続けるから……。

「あっ……、んぅっ」

「ユキ、……ユキっ、くぅっ!」

 瞬間、カインさんが思いきり強く私の最奥を突き上げた瞬間。
 彼の昂ぶりがぶるりと震え、強い締め付けを受けながら熱を放ったのがわかった。
 自分でも驚くほどの甲高い声が室内に響き、カインさんもまた、低い情欲の呻きと共に果てた後、どさりと胸に倒れこんできた。

「はぁ、……はぁ、悪い、堪えきれなかった」

「んっ、はぁ、……か、カイン、さん」

「優しくするって、言ったのにな……。お前の顔や、声、聞いてたら……、すげぇ、好きだって気持ちが、溢れて……」

 息を乱しながら謝ってくるカインさんに、私も同じように息を荒く吐きながら、くすりと笑いを零した。
 愛しさが募り過ぎておかしくなりかけたのは、私も同じなのに……。

「謝らないでください、カインさん」

「んっ、けどよ……、正直、気持ち良くなったの、俺、だけだろ……」

「大丈夫ですよ……。私は、カインさんに愛された事が嬉しくて、心の方は気持ち良かったですから」

「ユキ……。はぁ、お前、本当寛大だよな。流石は俺の嫁ってとこか」

 まだ結婚はしていないけれど、カインさんが幸せそうだから、いい、かな?
 確かに初体験は痛みの方が大きかったけれど、決してそれだけじゃなかったから。
 彼の深い愛情に包まれてひとつになれた事が、今までにないくらいに幸せな事だった。
 私はカインさんの頭を胸に抱き締めると、その漆黒の髪を撫で始めた。

「大好きです……、カインさん」

「んっ……、ユキ」

 まるで子猫のように身を委ねてくるカインさんが可愛くて、私はむぎゅぅぅっと愛しさのあまり彼の頭をさらに強く抱き締めてしまう。
 それが苦しかったのだろう。カインさんは腕の中でもごもごと顔を動かしていたかと思うと、不意打ちで胸の突起を舐めあげてきた。

「ぁっ」

「煽るなって……、そう、言っただろ? んっ……、お前がくれる幸せが、もっと欲しくなっちまう」

「んっ……、か、カイン、さんっ。ま、また変に、……ぁっ、駄目ですっ」

「わかってる……。初めての時は一回だけ、って、そう言ったからな」

 初めての私に無理はさせないと誓ってくれた事を覚えてくれていたのか、カインさんは私の肌に口づけなら何度も繰り返す。「わかってる……、わかってる」と。
 だけど、彼に触れられる度に、その掠れた低い音で耳を擽られ、熱に支配された真紅に見つめられる度に……。
 私の方が心と身体を甘い疼きに苛まれ……、欲しがってしまいそうになる。

「今日は、も、もう、寝ます。だから、は、離れてくださいっ」

「お前を抱き締めて眠りたい。このまんまの姿でな」

「そ、それは、んっ、だ、駄目っ、です!」

「駄目……、なのか?」

 うっ……。普段は強気にそっぽを向いている野良猫が、一晩の宿を求めて窓をカリカリと引っ掻きながら、いつもとは違う可愛い眼差しで見てくるかのような威力!!
 駄目……、駄目、ここで許したりしたら……。

「ユキ……」

「うっ……、わ、わかりました! わかりました、からっ、んんぅっ、その動きをやめてくださいっ」

 許可を出した途端、カインさんは一度起き上がり、私を自分の胸に抱いて横になる形でベッドに横たわった。
 裸で触れ合っているというのは、色々と気恥ずかしいものなのだけど……。
 二回目を心配する私とは反対に、真上にあるカインさんの顔を見上げた私は、ほっと息をついた。
 武闘大会の疲れが溜まっていたのだろう。すぐに気持ちよさそうな寝息が聞こえ始める。

「ん……」

「カインさん……」

 私との約束の為に頑張ってくれたカインさん……。
 傷だらけになっても降参せずに、全力以上の力でルイヴェルさんに立ち向かってくれた。
 起きている時とは違う、無防備なその寝顔に私は微笑を零す。
 異世界に移住すると聞いた時は、見知らぬ地での生活や慣れ親しんだ世界を離れる不安で押し潰されそうだったけど、沢山の人達が私を支えてくれた。
 数えきれないほどの想いが、今の私をこの地で生かしてくれている……。
 だけど、その中でも一番、私の事を魂の底から愛し、大切な存在となってくれたのは……。

「ユキ……」

「カインさん、……愛してます」

 眠っている恋人の唇に、ささやかな感謝と深い愛情の熱でキスをした私は、……その胸に顔を寄せて、瞼を閉じた。
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