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~サージェスティン・フェイシア編~
魔竜の騎士は狼王の姫に翻弄される3◇~サージェスティン×幸希~
しおりを挟む――Side サージェスティン
誤魔化す事なんて、幾らでも出来た。
生きていく上で『必要』な『嘘』や『手段』の類は、幾らでも知っている。
今、俺の隣で戸惑っている彼女が面倒事に巻き込まれないように、俺のせいで傷を負わないように、付き合うようになってからも、余計な情報を与えないようにって、そう考えてきたつもりなのに……。
俺からの話を聞き終えると、彼女は気まずげに視線を彷徨わせ、そっと俺の胸に顔を寄せてきた。
「誤魔化されると、そう、思ってました……」
「あれ? 俺って、信用ない恋人だったのかなー?」
「そうじゃなくて……、サージェスさんは、肝心な事を隠すところがあるので、意外だったというか」
小さな声で呟いたユキちゃんに、クスリと笑みが零れる。
ディヴェラーデ侯爵家からの手紙を、俺とあの家の関わりを、彼女に話しても、余計な戸惑いを生むだけ。悩まなくてもいい事を、悩ませてしまう罪。
それでも、俺が彼女に全てを話したのは、愛する人に俺の事を知ってほしいという我儘からだ。
「迷惑だった?」
「いいえ。サージェスさんの事を、好きな人の事を、私は知りたいです。どんな事でも、向き合って、受け止めたいって、そう思ってます」
「綺麗な事ばかりじゃなくても? ユキちゃんに迷惑がかかる事だって、あるかもしれないよ? 俺の人生って、結構『表』と『裏』を行き来するようなものだったし、お世辞にも、良い人じゃないしね? 俺って」
俺がユキちゃんに話した事があるのは、赤ん坊の頃に、母親らしき人に、フェイシア孤児院という場所に預けられて育った事。そして、その孤児院が強盗団に襲われて、財の全てを奪われた事。
それから……、俺が、早い内に独り立ちして、このガデルフォーンだけでなく、エリュセード中を旅していた事。その旅路の中でどんな事をしていたのかについては、軽くしか触れていない。
彼女の心を試すかのように、俺は何度か同じ事を口にしてきた。
その存在を愛しながらも、自分では不釣り合いだと、自分の中の黒で、彼女を染めてしまうのではないかと、迷いが、顔を出す。
自分らしくもない弱気な面に、彼女はムッと眉根を寄せて俺を見上げてくる。
あぁー……、不味い、また怒らせちゃったね、これは。
「サージェスさんの過去や、私に隠している事に関しては、お付き合いをすると決めた時に、散々、ルイヴェルさんから言われました。――お前も穢れるぞ、って」
「……手厳しいね、ルイちゃんは」
ウォルヴァンシア王国、王宮医師。そして、魔術師団を率いる団長であり、魔術と医術の名門、フェリデロード家の次期当主。
ユキちゃんにとっては、幼い頃に懐いていたお兄さん的存在であり、今も、彼女を見守り続けている頼もしい存在の一人だ。
そんなルイちゃんからすれば、俺みたいな男がユキちゃんの特別になった事は、誤算、だったんだろうね。
「穢れても、受け入れる事が難しい事でも、私は、逃げないって決めたんです。サージェスさんと一緒に、隣に、居続ける為に」
何度言えばわかるんですか? ユキちゃんが、俺を睨みながら言う。
きっと彼女が、俺の考えている事や価値観、行動、過去の全てを肯定してくれる事はないだろう。
それでも、何もかも、受け止めた上で、一緒に歩いてくれる存在。
受け止めはするけれど、受け入れるかどうか、それをちゃんと考えてくれる人。
貴方の何もかもを肯定し、受け入れます。そんな偽善的な存在はいらないから……。ね
だからこそ、俺は彼女を愛おしく想う。
「ごめんね。もう言わないから、ね?」
木の実を生地に練り込んで焼いたクッキーを一枚取り、ユキちゃんの口に添えると、小さな吐息と共に、それを受け入れてくれた。
子リスのように口の中でクッキーを咀嚼している可愛い顔を眺めながら、腕の中に閉じ込める。
「ねぇ、ユキちゃん」
「んぐっ……、は、はい?」
「嫌なら、断ってくれていいんだけど……」
クッキーを食べ終わった彼女をぎゅっと、強く抱き締めながら、その耳元に唇を寄せる。
今の彼女にこんな事を言うのは卑怯だけど、そろそろ、俺も限界だから……。
「俺の寝室に、来てくれない?」
「――っ」
予想通り、ユキちゃんの身体は恐れを抱くように強張った。
その顔に浮かんでいるのは、嫌悪の情じゃない。
みるみる内に赤く染まっていくその顔に浮かんでいるのは、恥じらいと戸惑い。
だけど、それだけじゃない何かが、彼女の中には隠れているような気がする。
「この三ヶ月間、ずっと避けていたよね? 俺の屋敷に来る事。それから、俺とのお泊りも。俺の事が嫌いになったわけじゃないって事はわかってるんだけど……、あの夜、俺、何かした?」
「ち、違いますっ。お泊りのお誘いを断っていたのは……、そのっ」
「初めての経験でトラウマになる子もいるし、俺も……、最後まで優しく気遣えた自信がないからね。何が嫌だったか、何が怖いのか、それを言ってくれれば、次からは」
それに、ユキちゃんを寝台に残して、無様にもバスルームに駆け込んじゃったからねぇ……。
少女期の女の子相手に、我を見失って暴走しかけてました、なーんて、言えないよ、流石に。
しかも、一人で慰めてる所まで見られちゃったし……、ははっ、本気で死にたくなったよ、あの瞬間。その時の事も関係あるのかなぁ、と思ったんだけど……、ユキちゃんはさらに顔を真っ赤にして、俯いてしまった。
「ごめん、なさい……っ。サージェスさんは何も悪くないんですっ。ただ、その、私が……、臆病なだけで」
俺に抱かれるのか怖い? と聞けば、彼女は大声で否定の言葉を叫んでくれた。
その、『臆病』という言葉の意味を、自分自身でも迷っているかのように、ユキちゃんは一生懸命に言葉を探している。
急かす事はせず、俺は黙ってユキちゃんの背中を撫で下ろしながら待つ。
「サージェスさんに、好き、って、そう言って貰える度に、とても、嬉しくなるんです」
「うん」
「三ヶ月前も、サージェスさんと初めてひとつになれて、とても、嬉しかったんです。好きな人に愛の言葉を貰いながら、優しく、抱いて貰えて……。でも、サージェスさんが私に向けてくれる愛情は、私が思っていたものよりも大きくて、優しい笑顔の下に、受け止めきれない激しさを抱いているんだって、そう気付いたら……」
「う、うん……」
「さ、サージェスさんが、その、ほ、本気を出したら……、わ、私は、どうなってしまうのかな、って。そ、その事が気になって、抱いて貰う事に、初めての時以上の恥ずかしさが、ご、ごめんなさいっ」
えーと……、つまり、俺が必死に抑え込んでいた邪(よこしま)なあれそれを、しっかりとキャッチされて、警戒されちゃってた……、って事、かな?
俺に抱かれる事で、自分の中の何かが変えられそうな気がして臆病になっていた、と。
震えを抱く小さな声音で語ってくれたユキちゃんに、今までに感じた事もないような罪悪感のビックウェーヴが襲いかかってくる。
俺が、ユキちゃんに対して抱いた、今もこの心の中にある、『願い』。
いや、どちらかといえば、身勝手な欲望ってやつだろうね……。
俺は……、あの晩、ユキちゃんを抱きながら、こう思ったんだ。
「早く……、俺だけのユキちゃんになればいいのに」
「え?」
「ウォルヴァンシアや皆の事なんか忘れて、ずっと、ずっと……、俺の腕の中で、笑っていてくれればいいのに、って、子供っぽい事を考えながら、ユキちゃんを抱いてた」
想いを交わせても、ひとつになれても、ユキちゃんはすぐにウォルヴァンシアへ帰ってしまう。
変だよねぇ……。孤児院にいた頃だって、実の親を思って泣く事もしなかった俺が、一人の女の子を特別に想って、自分でも信じられないくらいに執着して、離したくない、って、そんな風に思ってる。――そして、その想いが一番強く、激情となって表に顔を出したのが、あの晩。
ユキちゃんが無意識に俺を警戒し、お泊りを避けるのは当然の事だね、うん。
変えられてしまいそうな気がする、っていうのも正解。
「ごめんね? 悪い大人で」
「サージェス、さん?」
「俺とユキちゃんって、結婚出来るの……、まだまだ何年も先でしょ?」
「えっ!? け、結婚、ですかっ!?」
「うん。考えた事……、なかった、かな?」
ウォルヴァンシアの王兄姫であり、いまだ少女期の女の子。
ユキちゃんと結婚するには、まず、彼女が成熟期を迎える事が大前提となる。
だけど、その時期が来るには、まだまだ、まだまだまだまだ、はーるか先の話となるわけで。
その遥か先の未来を、ユキちゃんはまだ、真剣には考えた事がなかったのかもしれない。
いや、想像した事はあっても、その瞬間を求める気持ちが、互いに違いすぎているだけ……。
恥じらいの熱を強めながら困惑している彼女に、もう一度繰り返す。
「ごめんね。欲張りな大人で。ユキちゃんが成熟期になるまで待てない、って、あの時、そう思ったんだよ、俺……。だから」
「んっ」
愛おしいその温もりを腕の中に閉じ込め、ユキちゃんの耳元に唇を近付けて、秘密の話をする。
他の誰も、知らなくていい。俺の、彼女への本気の想い。
それを口にすれば、嫌われてしまうかもしれない。怖がられて、逃げられてしまうかもしれない。
自分に不利を招くような真似を、好んでする必要はないのに……。
俺の囁きを耳にしながら、どんどん身体の熱を強めていくユキちゃんに笑みを零してしまうのは、何故だろうね……。
「……あ、あの、っ、そ、そのっ」
「ごめんね? こんな恋人で」
独占欲にも程がある内容の数々を聞かされたせいで、ユキちゃんは思考が上手く働かない、受け止めきれないと、まさに大パニックの様子で口をパクパクさせた後……、見事に予想通りの反応を見せてくれた。
まぁ、結構凄い事いっぱい言っちゃったからねぇ……。
俺の腕の中で首を後ろ側へ引っ張られるように仰け反ってしまったユキちゃんを支え、ごめんね、と繰り返しながら、彼女の頬に温もりを摺り寄せる。
今まで歩んできた人生の中で、初めて……、執着という感情を覚えた存在。
出会った時には、そんな感情は一切なかったし、一目惚れでもなくて、他国からの世間知らずなお姫様が来たなぁ、ぐらいのところだったのに。
ユキちゃんは、ただの心優しいお姫様という最初の印象を、徐々に俺の中で変えていった子だ。
守られているだけじゃ嫌だ、っていう子は珍しくもないけど、彼女はその為の努力をする子で……。どんなに傷付いても、時に折れそうになっても、必ず立ち上がり、前に、力強く、一歩一歩、進み続けようとする力がある。
白い光の中でじっとしている存在じゃなくて、穢れた淀みの中にも足を踏み入れてゆく事を厭わない、その凛とした意志の強さ。
脆さと、強さ、彼女は、――その狭間で懸命に生き続ける、一輪の、花。
「頑張り屋なところも、頑固で手を焼かせるところも、大好きだよ、ユキちゃん」
だから、ごめんね? 君が俺の本音を知って、逃げたいと思うようになっても、俺はこの温もりを手離す事は出来ない。
俺が君に溺れ込んでしまっているように、君も、どうか俺に溺れて?
「ん……」
「うーん……、でも、ちょっと、やりすぎちゃった、よね? ははっ、……ユキちゃーん? 早く目を覚ましてくれないと、サージェスお兄さんが狼さんになっちゃうよー? 魔竜だけど」
茹でダコ状態で意識を失っているユキちゃんも可愛いけど、今ちょっと……、熱のせいで理性の枷が緩んでるからねぇ。
俺達の種族、竜煌族の者だけが罹る、ちょっと厄介な高熱。
これに罹ると、軽く一週間は寝込む事になるんだけど、そろそろ……。
「ユキちゃん……」
熱くなっている無防備なその首筋に唇を寄せ、濡れた舌を這わせながら、欲を抑えきれない吐息と共に吸い付く。
執着と独占の証が、淡い紅の花びらとなって肌に残る。
二ヶ月前につけた痕は全て、もう消えてしまっているから……、新しいのをつけてあげよう。
ユキちゃんがウォルヴァンシアに戻っても、俺の事を忘れないように、その心を独占出来るように、沢山。
「ん……、ぁっ」
「……胸元にも、つけちゃおうか?」
髪と同じ、蒼色の大きなリボンを外し、白いブラウスの釦を外していく。
少女期の、まだ慎ましやかな胸の膨らみ。薄桃色の下着によって隠されたその胸元にも、俺の抑えきれない愛を散らしておく。
甘い味なんて感じるはずもないのに、ユキちゃんの肌を舐めると、いつも『甘い』と、そう感じてしまう。少し早足で鼓動を打つ音に耳を寄せ、彼女が生きているという証に心を委ねる。
世の中には、大切な人が死んでしまうと、自分の命もその瞬間に終わる、と口にするタイプもいるけど、……きっと、俺も、そうかもしれない。
俺の方が年上だから、先に逝かれる可能性は低いと思う。でも、万が一、という事もあるから。
「絶対に、先に逝っちゃ駄目だよ? 寂しくて……、辛くて、生きたまま、死んじゃうかもしれないからね?」
「う、うぅん……っ」
「それと、魂が巡って生まれ変わっても、俺以外を旦那様にしちゃ駄目だよ? 何度だって、必ず、君を捜しに行くから。何度でも、愛し合う為に」
うーん、我ながら、凄い執着心だなぁ……。
誰かを好きになっても、それは期間限定の戯れだって、昔はそう思う事もあったのに。
ユキちゃんを好きになればなる程、愛情に限界なんかないんだって、ひしひしと感じているよ。
ごめんね、ユキちゃん。俺、本当に危険レベル最大値の困った恋人だよ!!
……そして、必死に自制を利かせようとしてるっていうのに。
「何だろうね、この堪え性のない指の動きは」
「うぅ……、サージェス、さん」
まだ意識回復に時間がかかっているのか、辛そうに唸っているユキちゃんの下着を、ぐっと……、上に押し上げ始めている、俺のどうしようもない右手。
いやいやいやいやいや、意識を失ってる女の子に何しようとしてるのかなー? 俺。
これでも、目の前で女性に全裸になられて誘われても、平然と笑顔を浮かべていられるっていうのに……、あぁ、可愛らしい服らみに何の守りもなくなっちゃったよ。
笑顔のまま固まった俺は、自分の手がしでかした所業に慄きつつ、意識のない彼女をソファーに寝かせ、……上に、覆い被さった。
不味い……、熱が、どんどん上がって、本能が前に出てくる。
「ユキちゃん……、少しだけ、触れさせてね」
初めて抱いてから、二ヶ月間……。
ユキちゃんと過ごした一夜の記憶が夢じゃなかったと、そう自分に言い聞かせながら過ごしてきた。勿論、到底本人には伝えられないような、情けない事も。
元々、俺達は獣の性(さが)を抱く種族的な性質があるから、知識としては知ってたんだよね。
自分にとって特別な相手が出来ると、……特に男の側は、求めすぎる傾向がある、って。
身を以ってそれを知ったというか、味わされまくったというか、熱のせいでさらに困った事態になっている。
小さな可愛い二つの突起を指でぷにっと押し潰し、暫く沈黙した後。
「ユキちゃ、……ンッ、ごめん、ね、っ、はぁ」
柔らかな蕾を口の中で転がし、唾液を絡めながら舌を這わせる。
小さく漏れる、ユキちゃんの可愛い、感じている声。
今、意識が戻ったら……、うん、完全に変態犯罪者扱いされて悲鳴を上げられちゃうんだろうなぁ。はは……っ、やっぱり、やめよう。全力で理性を繋ぎ直そう。
「ん、ァぁっ、は、……ぁんっ、サージェス、……さ、んっ」
「ユキちゃん?」
必死の体(てい)で身体を起こそうとしたその時、俺の頭がユキちゃんの両腕に抱かれてしまい、柔らかな両胸へと押し付けられてしまった。
意識が戻ったわけじゃない。多分、身体だけが俺の愛撫に反応して、無意識にこんな行動を。
「ちょっ、ゆ、ユキちゃんっ、これ、ちょっと、いや、かなり不味いからっ」
「ん~……、むにゃぁ、サージェス、さん、……、好き、……す、き、です。んにゃ」
「――っ!!!!!!!!」
瞬間、ぶちりと引き千切れた、何かの音。
ユキちゃんの抱擁から強引に逃れて上半身を起こした俺は、着ている黒シャツの前を釦ごと引き裂くように開け、髪を掻き上げた。
愛おしくて堪らない、俺の心を奪った女の子……。
彼女を愛し、彼女に愛されている幸福と、それ以上を求める心が、急速に膨れ上がっていく。
もう、抑えられない。抑えたくない。今すぐに、彼女の中に、俺の熱を。
暴れ狂う本能を感じながら、もう一度、自分の熱をその柔らかな肌に押し付けようと、上半身を倒しかけたけど、……。
「……ぐっ、……はぁ、……くぅっ」
鬩ぎ合った理性と本能。ギリギリのところで、繋ぎ直された糸。
ユキちゃんの下着とブラウスを元の状態に戻し、……息を吐く。
「ふぅ……、危なかった」
まだ少女期の、それも、眠っている女の子の無自覚な誘惑に一発で陥落しかけるなんて……、本当に、どうしようもない。
好きだと、愛するという気持ちは、とても尊いもので温かなものだけど、それは時に、自分にとって大切な人を傷付けてしまう、狂気にもなり得るものだ。
「……、んっ、……あ、れ? わた、し……、サージェス、さん?」
あ、このタイミングで、目を覚ましちゃうの? ユキちゃん。
まだ覆い被さったままの俺を見上げながら、目を瞬く寝起きの女の子。
だらだらと、俺の背中を気まずい汗が伝う。
これ……、間違いなく、誤解されるパターンだー……。
しかも、そんな俺に追い打ちる気満々の流れで、客間の扉にノックの音が聞こえ、家令君が今一番この部屋に招いちゃいけない人を連れて来てしまった。
「ユキを迎えに来た」
「あ、ルイヴェルさん」
「る、ルイちゃん……」
許可の合図さえ待たず、部屋の中に踏み入ってきた白衣の人。
ユキちゃんにとって、一番心強い味方であり、お兄さんのような存在でもあり、彼女を一番大切に想っているラスボス級の……。
その眼鏡越しの深緑に、ユキちゃんの上に覆い被さっている俺の姿が映り込む。
「お、怒ってるー……?」
「……」
無言!! 無言無反応だよ!! この人!!
だけど、俺にはわかるよ!! 今、ルイちゃんの頭の中では、自分の大事な妹的存在に不埒な真似をしようとしていた俺に対する激しい殺意の炎が燃え盛っていて、ありとあらゆる拷問や処刑方法が渦巻いているんだよね!! 絶対そうだ!!
ユキちゃんも戸惑いながら俺とルイちゃんを交互に見ているし、あぁ、これ、絶対、両方共に誤解されてるよねー!?
俺、我慢したんだよ!! 理性総動員で狼さんにならずに済んだんだよ!!
なのに、俺に仕えてくれている家令君は一瞬先の未来を瞬時に読み取ったのか、さっさと避難してしまっている。薄情者ぉおおおおおおっ!!
「サージェス……」
「ちょっ、お、俺の話を聞いてくれないかなーっ?」
――案の定、人の弁明など一切聞いてくれなかったルイちゃんの手により、俺の屋敷は巨大な爆発の中心地となってしまったのだった。
あぁ、理不尽……。でも、途中まではケダモノになりかけていたから、まぁ、仕方ない、か。
体調が悪い上に高熱もあるのに、とんだ災難にあったもんだ。
焼け野原になった屋敷の跡地で転がっていた俺だけど、実はこれ……、とんでもない災難の始まりにしか過ぎなかったんだよねー……。
ルイちゃんにお姫様抱っこをされて去って行くユキちゃんにぷるぷると右手を伸ばしながら弱々しくその名前を呼んでいた俺は、まだ、その未来を知らずにいた。
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