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~サージェスティン・フェイシア編~
魔竜の騎士は狼王の姫に翻弄される11~サージェスティン×幸希~
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「ん……、サージェス、……さん?」
夢を見る事もなく、ぐっすりと眠り込んでいた私は、自分の頬を擽る感触に目を覚ました。
何も纏わぬ姿で寄り添い合っている私達。
サージェスさんの手の中には、私の蒼い髪が一房。彼の唇がそっと触れている。
掠れた声で名前を呼んだ私を、ゆっくりと開いたアイスブルーの双眸が捉えた。
「ごめんね。起こさないように気を付けていたつもりなんだけど」
「……何を、けほっ、けほっ」
喉が、痛い。それに、身体も……、すごく、重くて、だるい。
「あぁ、やっぱり枯れちゃってるね、声。ちょっと待って」
「サー、……けほっ、けほっ、んっ」
思い出した。私を迎えに来てくれたサージェスさんとウォルヴァンシアに戻って、レイフィード叔父さん達との騒動の後……。この人のお屋敷で一緒に夜を過ごして……。
「やっぱり、まだ三回はきつかったよね……? ごめんね」
「……い、いえっ、私も……、その」
私の喉に唇を触れさせて治癒の術を行使したサージェスさんに、癒えていく痛みと声を感じながら首を振った。初めての時と、その次の時も、どちらも一度で終わった行為。
私を気遣って、決して無理をさせようとはしなかったサージェスさんだけど……。
今夜の彼は違っていた。一度私の中で果てた後、僅かな休息を挟んで二度目を求められ、互いを呼び合う切ない音と、強まる欲情の気配に支配された寝室。
サージェスさんと私の汗が交じり合い、余裕のない熱い息に肌を擽られ、彼の想いを刻まれ続けた。ウォルヴァンシアで負った傷の具合はどうなのか、とか、話し合いの行方は、とか、落ち着いて話す暇もない程に……。
抱かれる事で感じる恥ずかしさや身体への負担も、途中から余計な事が何もかも消え去って……、私も、サージェスさんの愛を自分から求めていた。
でも……、初心者の私には、やっぱり三回はきつかったようだ。
「あれ……? サージェス、さん?」
確かに身体はきつい。だけど、この人の愛を感じられて満足している。
欲しがっていたのはサージェスさんだけじゃない。私も、同じだった。
求められる事に喜びを感じている。サージェスさんとひとつに溶け合ってしまいたい程に、私はこの人を愛しているから。
そう、素直に伝えてみたのだけど……。ちょっと、不味かったかもしれない。
サージェスさんはニッコリとした笑顔のまま固まってしまい、も、毛布の中で……、何か、か、硬い物の感触が。
「あ、あのっ、……さ、サージェスさんっ、そ、その、ご、ごめんなさいっ」
「うん……、自分が何を言ったのか、俺にどれだけ凄い爆弾を落としてくれたか、ちゃんとわかるようになっただけ進歩かなー。ははっ、小悪魔ユキちゃん最強過ぎだよね」
「本当にっ、本当にっ、ごめんなさい!!」
私のお腹の辺りに当たっているご立派な息子さんの逞しさに慄きながら、私は謝罪を繰り返す。
室内の様子からして、まだ朝方前……、なのだろうけれど。
時間はあっても、四回目を受け入れられる余裕はありません!! そういう意味もあっての謝罪だ。サージェスさんは頭を片手で支えながら肘をシーツに着き、微笑ましそうに私を見下ろしてくる。
「ふふ、大丈夫、だいじょーぶ。話でもしてれば、すぐに治まるだろうしね」
「は、はい……っ。ありがとう、ございますっ」
男性にとって、そうなってしまった物を何もせずそのままにしておく事は辛いはずなのに……。
「その代わり、ユキちゃんを抱き締めながら話をしてもいい? 結婚の事、どうなったか報告しておきたいし」
サージェスさんは私を自分の胸に抱き寄せて、平常心のままウォルヴァンシアでの事を話してくれた。レイフィード叔父さん達と凄まじい攻防を繰り広げ、危うく、騎士団と魔術師団の総攻撃まで受けそうになった事……。助けの手が入らなければ、ここに帰って来られるかどうかも危うかった、と。はぁ……、のほほんと楽しそうに語るサージェスさんだけど、全然笑える話じゃありませんからね!! 私は半眼になってサージェスさんを見つめる。
「無茶はしないで下さい、って、危なくなったら逃げて下さいって……、そう言いましたよね?」
「俺だって言ったよー。ユキちゃんと一緒になる為なら、死んでも勝ちに行く、って」
「だからって、大勢を相手に無理をし過ぎです!!」
それに、本人は隠しているけど、ウォルヴァンシアで負った傷を治癒の術で処置して来た事には気付いている。団長服姿から新しい私服に着替えて寝室に来たのも、見せられない状態にまで追い込まれていたから……。私を安心させようという、サージェスさんの気遣い。
どんな時でも守ってくれようとするこの人の優しさを有難い、とは思っているのだけど……。
やっぱり……、ちょっと言っておいた方がいい気がしてきた。
ニコニコとした笑顔を見つめ続ける事十数秒後――。
「決めました……」
「え?」
「次に、私だけを蚊帳の外において同じ事をやったら……、別れ、――んぅっ!?」
ある意味、脅迫的な台詞だと自分でもわかっている。
だけど、サージェスさんは私がそれを言い終わらない内に唇を塞ぎにかかってきた!
「んっ、……さ、最後、までっ、……ふぅ、うぅっ、んんっ!」
お願いだから最後まで言わせて下さいよ!! ぐっ、ぐぐぐぐぐぐっ!! ひ、引き剥がせない!! ちょっ、し、舌が口の中で滅茶苦茶に舐めまわされて、ついでに、ァアアアアアッ!!
数分後、私は何かを言う気力ごと体力を奪われてしまい、降参の白旗を上げていた。うぅ……、く、悔しいっ。
「ははっ、俺の勝ちだねー? 」
「ひ、卑怯、ですよ……っ。大事な話をしている最中にっ」
「えー? 不吉な予兆を感じ取ったから未然に防いだだけなのにー?」
「不吉なんかじゃありませんよ……、全然っ。サージェスさんが私絡みで酷い仕打ちを受けないようにっていう注意事項をですねっ」
「俺の為でも、約束を破ったら別れるなんて言わないでよ……。本気じゃないってわかってても、言われると……、凄く、辛いから」
……お茶目な雰囲気の笑顔が一瞬で消えてしまった。
氷のように揺らめくアイスブルーの瞳が、寂しそうに私を捉えている。
「さっき……、戻って来た時に言ってくれたよね? 俺と一緒にいたかった、って……。二人の事だから、最後まで一緒に、って」
「はい……」
「その気持ちはね、嬉しいんだよ……。本当に、本当に、ね……。だけど、駄目なんだよ」
「ど、どうして……っ」
「俺が、奪うからだよ。ウォルヴァンシアの皆から、大切な、大切な女の子を……、君を奪う存在だから。だから……、皆が抱えている辛さや悲しみを、しっかりと受け止めなくちゃいけなかったんだ」
あの場所に私が居座っていれば、レイフィード叔父さん達に我慢をさせる事になる。
だから、自分一人が残って、きちんと向き合わなくちゃいけなかった……。
そう、サージェスさんは言う。それが、私と結婚する為に必要な事だから、って。
う~ん……、家令のロフェルトさんも同じような事を言っていたけれど……、だからって、あの人数とその他大勢の心まで受け止める事はっ。
「げ、限度ってものがあると思うんですけど……っ」
「ははっ、まぁ、……途中から、これ、有りなのかなぁーって思わないでもなかったけど、愛する女性をお嫁さんにするって事は、そういう事なんだよ。一人で立ち向かわなくちゃならない時もあるって、ね」
「サージェスさん……」
「だから、俺はこれからもユキちゃんに心配をかけたり、無茶をする事もあると思うんだ。その必要がない事を祈るけど、やっぱりその時が来たら……、約束は出来ない、かな」
納得は出来ない……、けど。
この人は私に対して真摯な想いで向き合ってくれる。
ディヴェラーデ侯爵との件に関しても、きちんと話してくれた。
お茶目な嘘を吐(つ)いても、大事な事を隠したりしない。偽ったり、しない。
「私の負け、ですね……」
「ごめんね。でも、嘘を吐(つ)いてユキちゃんを安心させても、……いつかその約束を破っちゃったら意味がない。だから、初めからそういう事もある、って、知っておいてほしいんだ」
「……はい」
「その代わり、別の約束をしよう?」
身体の位置をずらして、私の肩口へと埋められてくるサージェスさんの顔。
切なく吐き出された甘い吐息を感じながら、きつく吸われた肌に僅かな痛みと快楽の片鱗を覚え、唇から小さな嬌声が漏れてしまう。
「俺は、君を残して死んだりしない。絶対にね……。寿命的なものは仕方がないって、そう思って貰わなきゃいけないけど、それ以外は別。どんな無茶をしても、どんな不利な状況におかれても、俺は君の所に帰ってくる。絶対に」
「……お仕事の時は、仕方がない、って、わかってます。だけど……、それ以外では、怪我をしないように気をつける、って、約束して下さい」
「うーん……、出来るような、出来ないような……。うん、絶対ってわけじゃないけど、努力はするよ。それでもいい?」
困惑した気配で私を見上げたサージェスさんに、笑みを抱いて頷く。
絶対じゃなくてもいい。私が言った事を覚えていてくれるだけで……。
サージェスさんなら、私との約束をある限り、無意識にでもそれを心掛けてくれると思うから。
「――で、結局どうなったんですか? 結婚の事」
「うん、強力な助っ人のお陰で良い結果をもぎ取る事が出来たよ。詳しい話し合いは後日になったけど、頑張った甲斐があった」
「そういえば、さっきもそう言ってましたよね? 強力な助っ人のお陰で場が収まった、って。誰なんですか?」
「ユキちゃんのお母さんと、ウォルヴァンシアの王妃様」
「え!?」
まさかの、お母さんと王妃様が!?
あぁ、……確かに、あの二人が出てきたら、誰も逆らえない、か。
案の定、レイフィード叔父さんは王妃様に、お父さんはお母さんに首根っこを掴まれ、事態は強制終了の勢いで収まった、と。なんという、ナイスタイミング!
しかも、ウォルヴァンシアの王族兄弟だけでなく、その場にいた全員が……、正座させられた上にお説教乱舞でしぼられた、と。はぁ……。
「ふふ。皆、頭とお尻に狼の耳と尻尾が生えちゃってねー。見ててちょっと面白かったよー」
サージェスさんの話では、その場の全員余す事なく、だったという話なわけで……、つまり。
「る、ルイヴェルさんも、ですか……?」
「ん?」
「狼の耳と尻尾が出たの……」
「うん。ルイちゃんもしゅぅぅんとなっちゃって、可愛かったよー。後から来たセレスちゃんからのお説教も効いたんだろうねー」
そ、それはっ、ちょ、いやいやっ、物凄く見たかったんですけど!!
記録(シャルフォニア)で、写真と映像もバッチリ撮っておいたから、と、素晴らしいお仕事ぶりを発揮してくれたサージェスさんに、私は全力で頷きながら後で見せて貰う約束を取り付ける。
そして、私の手を取ったサージェスさんに左の薬指へと優しいキスを落とされ……。
「これで、君に誓える……」
「さ、サージェス、さん?」
「俺が誓うのは、未来永劫変わらぬ愛じゃない。君と過ごす日々の中で、果てなく募る、無限の愛……。自分でもどうなっちゃうのかわからないけど、結婚したら、もっと君を好きになる自信があるよ、ユキちゃん」
濃厚な蜂蜜でも味わっているかのように、甘い微笑が私の心を蕩かす。
薬指へと触れていた誓いのキス。その感触が消え、今度は額にその温もりが落ちる。
「ん……」
「そんな俺の愛だけど、受け取ってくれるかな? 勿論、返品不可で」
くすりと笑ったサージェスさんの口元。
悪戯めいた気配と共に近づいてきた唇を、私は瞼を閉じて受け入れたのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
――Side サージェスティン
「「ウォ、ウォルヴァンシアに……、住む?」」
「サージェスさん……、本気ですか?」
翌日。俺はユキちゃんを連れてウォルヴァンシアに戻り、結婚に関する詳しい話し合いをする為の場に腰を据えていた。
隣に座っているユキちゃんも、目の前のソファーでぽかんと口を開けているウォルヴァンシアの王族兄弟も、予想通りの反応だねー。まぁ、当たり前か。
他の子達と違って、俺は他国の住人だしね。ユキちゃんを連れてガデルフォーンに引っ込むとか、この国から彼女がいなくなるとか、そんな風に考えていたんだろう。
王族兄弟の傍に立っている女性陣二人……、王妃様と、ユキちゃんのお母さんは、俺が何を考えているのか、ある程度予想していたようだけどね。
「俺は、俺との結婚でユキちゃんを悲しませる事も、ウォルヴァンシアの皆を悲しませる事も、望んでいないんですよ。だから、この案を提案してるんです」
正確には、ユキちゃんの部屋と、ガデルフォーンにある俺の屋敷を術で繋いで、自由に行き来が出来るようにするって最良の案。
誰も悲しまない、誰とも離れずにいられる新しい形。
俺が片目を瞑ってウインクをしてみせると、ウォルヴァンシアの王様とユキちゃんのお父さんが戸惑い気味に互いの顔を見合った。
「その案があったか……」
「ユキちゃんを連れて行かれちゃうって、そればっかり考えてましたからねぇ……。サージェス君、結構気が利いてるんだね、君」
「ははっ。本当は誰にも邪魔されない場所で新婚生活をイチャイチャ過ごしたかったんですけどねー。でも、それをやっちゃうと……、皆で嬉々としながら乗り込んでくるでしょ? となると、こっちが一歩譲って、不満を解消してあげた方が無難かなーと」
「ふふ、サージェスさんたら、皆の事をよくわかってくれているわね~。ユキ、お母さん、安心して貴女をお嫁に出せそうだわ」
「本当にね……。昨夜はコイツ何やってんだかって呆れたけど、その案なら私達も安心だわ。どこぞの過保護な集団が、国を放り出して大暴走する危険性が減るものねぇ……?」
のほほんとしているユキちゃんのお母さんに同意して、恐ろしいオーラを放って王様を睨みつけている王妃様は……、うん、相変わらず強いなぁ。
「コホンッ……。わかったよ。結婚後もユキちゃんが変わらずに僕達と会えるのなら……、二人の婚姻を認めよう」
「私にはまだ、……早過ぎると思うのだけどね。だが、昨晩君が見せてくれた誠意と、ユキ本人がそれを望んでいる事を考慮すれば、認めるべきなのだろう。……サージェス君、娘を頼むよ。絶対に、幸せにしてやってくれ」
「レイフィード叔父さん……、お父さん」
仮にも一国の王と、その兄が席を立ち上がり俺に頭を下げる事の意味。
彼らが大切に守り育んできた宝物。ユキちゃんを貰い受ける事の意味を、俺は自分の心に刻みながら同じように頭を下げた。これから彼女を守っていくのは、俺の役目だ。
「――だ、け、ど! すぐには無理だからね」
「え?」
「ユキちゃんはウォルヴァンシアの王族だからね。婚儀を行うにしても、色々と準備が必要だ。それと、結婚式を挙げるなら年明けがいい!! なにせ来年は、十年に一度の女神フェルシアナの祝福大放出の良い事尽くめの一年!! その年に式を挙げたカップルは、普通の夫婦よりも幸福度が倍増しだって言い伝えがあるからね!! だから、来年にしよう!! 来年に!!」
「……王様、来年って、さ……。後、十ヶ月も先、なんだけど」
俺的には、準備期間も入れて三ヶ月ぐらいでゴールインしたいんだけど……!!
本音をぐっと喉の奥に飲み込んで、俺は抵抗を試みる。
「いやぁ……、幸運の年に結婚っていうのもいいんだけど……、俺的には」
「私も同感だ。縁起を担ぐのも幸先が良いと思うし、新しい一歩を踏み出しやすくなるだろう。ユキ、サージェス君、そうしなさい。十ヶ月もあれば、ゆっくりと準備に時間が使えるだろうしね」
エリュセードの一年は二十四ヶ月。その後半に当たる二ヶ月は終えているものの……。
十ヶ月……、年が明けるまで、十ヶ月も、おあずけ……?
あ、不味い。今、くらりと目の前が真っ暗に。あぁ……。
「さ、サージェスさんっ、だ、大丈夫ですかっ!?」
気が付いたら、ユキちゃんに横から支えられていたっていう情けなさだよ、はぁ……。
もう、結婚式は来年に本決まりと言わんばかりの王様とユキちゃんのお父さんに、多分何を言っても無駄なんだろう。大切な姪御と娘を万全の状態で嫁に出す保護者の熱が凄いよ……。
俺はそのまま、ぽてんとユキちゃんのお膝に頭を落とし、大きな溜息を吐く。
「ユキちゃーん……、俺、耐えられるかなぁ……」
「ま、まぁ、婚約期間があるのもいいんじゃないでしょうか?」
「十ヶ月も、あるんだよぉ……。十ヶ月も」
「あ、そうだ、サージェス君」
「はいー……?」
半ば諦め気味に、ユキちゃんに頭を撫でて貰っていた俺に、王様が追い打ちをかけにかかる。
「君、多分忘れてると思うんだけどねぇ……」
「何を……」
「僕とユーディス兄上の許しが得られても、まだラスボスが残ってるよ?」
「え?」
ラスボス……? なんだっけ。思考を巡らせ始めた俺の頭上で、ユキちゃんが思い当たったような可愛い声で、「あ」と言った。
そして、遅れる事数秒後……、俺もそれに思い至ってしまう。
そうだ……、俺、物凄く大事な事を忘れていたよ。
ユキちゃんと結婚する為には、一番の難関がエリュセードの天空に控えてるわけで……。
「ユキちゃんの、神としての両親……。ソリュ・フェイト神とファンドレアーラ神に許しを貰って来ないと、式自体を挙げられないよ。そういう意味でも、これからの十ヶ月間は必要だと思うんだよねぇ……。無茶ぶりの試練を乗り越える為にも」
「あー……、ははっ、そういえば、……うん、そうだった、……ね、ははっ、はは」
「だ、大丈夫ですか? サージェスさん……」
全ての世界に存在する神々にとって、はじまりの十二神と呼ばれているソリュ・フェイト神。
古の時代に神器(しんき)と魂を滅ぼされた男神は、無事に復活を遂げ、現在天上にて奥さんとラブラブ真っ最中だ。
面倒見が良くて男らしい、愛想の良い神(人)だけど……。
確実に、娘さんを下さいとか言いに行ったら、笑顔で襲いかかってくるんだろうなぁ……。
最強の難敵過ぎて、逆にころっと現実逃避で忘れちゃってたよ。
「とりあえず……、昨日のダメージが回復してから、かなぁ」
「サージェスさん、あまり無理はしない方が……。お父様達の事なら、私一人でも」
「だーめ。御挨拶には二人で行くし、その後は俺の頑張りどころだから」
「もう……」
こればっかりは仕方がない。
俺がユキちゃんと幸せになる為のチケットを手に入れる為だから。
昨夜言った通り、俺はユキちゃんと約束出来ない。必ず、無茶をする。
死に物狂いで戦って、戦い抜いて……、その試練を乗り越えて、愛する人との未来を歩んで行く為に。だけど、ユキちゃんが俺の為に何かしたいって言ってくれるなら、甘えちゃおうかなぁ。
「ねぇ、ユキちゃん」
「はい?」
「ユキちゃんにしか出来ない応援、して貰ってもいい?」
「勿論です! 少しでもサージェスさんの助けになれるなら!!」
うんうん、すっごく嬉しいよー、ユキちゃん。――言質は取らせて貰ったからね、ふふ。
素直で健気な、可愛い可愛い俺の婚約者。君にしか出来ない大仕事を頑張って貰うよ。
「じゃあねー、早速今夜」
「「サージェス君」」
俺の力になれる事を喜んでいるユキちゃんの頬を右手に包み込み、本題に入ろうとした俺の言葉を遮って挟まれた不穏な声……。あ、これは不味いねぇ。
ちらりと向かい側のソファーに視線を向けてみれば、やっぱり予想通りの絵があった。
引き攣った笑顔で溢れんばかりの怒気を立ち昇らせている王族兄弟。
ついでに、あれぇ……、何だか王宮全体を震わせるような地鳴りが起きてる気がするねぇ。
「ユキちゃん、逃げよっか」
「え? きゃあっ!」
大事な時には挑むけど、それ以外は別!
どうやらケースバイケースらしき強い味方も傍観を決め込むようだし、貴重な休日を二回戦の激闘で潰す気はない。俺はユキちゃんをお姫様抱っこで抱き上げ、即座に逃亡の体(てい)に入る。
ゆらーり……。静かに怒れる大魔神級の王族兄弟にニコッと笑顔を向け、全力ダッシュ!!
「ユキちゃんとデートに行ってきまーす!!」
「ちょっ、さ、サージェスさん!! まだ話がっ」
「うん。じっくり話し合うよー。その前に、城下で一緒に美味しい物食べてー、あ、そうだ! 今、有名一座が丁度城下に来てるんだよー。観劇とかどうかなー?」
驚いている王宮メイド達に軽く挨拶を投げ、目指すは賑やかな城下町!
暖かな陽の光が差し込む廊下をひょいひょいと走り抜け、腕の中で困っているユキちゃんの額にキスを贈る。うん、薄暗い闇の中で見せてくれる色っぽい表情も良いけど、眩い光の中で見る恥じらい顔も最高だね。
それに、後を追って大爆走してくる自分のお父さんと叔父さんを気にしつつも、彼女は俺の腕の中から逃げ出そうとはしない。
様変わりしていく景色と同じように、困惑した表情から喜びの色へと変わっていく少女の口元。
彼女の両腕が俺の首へと絡められ、愛おしさに溢れた眼差しが一気に距離を詰め……。
「んっ」
頬へと触れた、親愛のキス。彼女の甘い吐息に耳を擽られたかと思うと。
「貴方と一緒なら、どこまでも」
「――っ」
最強の可愛すぎる殺し文句に、ぐらりと崩れかけた理性の塔。
王宮の入り口まで後少し、という所で、腕の中にいるユキちゃんと一緒に危うく前のめりに転びかけてしまう。手放しかけたバランスを即座に立て直し、残念な結果を回避する。
ふぅ……、と、安堵の息が漏れた。大切な恋人を落とさずに済んで良かった、怪我をさせなくて良かった。だけど……。
「ユキちゃーん……」
「ふふ、ごめんなさい」
恨みを込めてジロリと愛する少女を睨んでやれば、彼女は肩を竦めて楽しそうに笑う。
まったく……。何度注意したって、この子はすぐに忘れてしまう。
煽る気がなくても、俺にとってはどんな攻撃方法や大魔術よりも凄い、至上最強の一撃。
生殺しの刑に処されてしまった俺のもどかしさには構わず、ユキちゃんは腕の中から抜け出して先に歩き出してしまう。あぁ、……してやったりの背中が憎らしい。
彼女は俺に翻弄されて吃驚させられる事が多いと言うけれど、それは俺の台詞だ。
――君に恋をしてから、新しい自分に出会った。君を好きになってから、ただの日常にさえ煌々(きらきら)と輝く彩りを覚えるようになった。
心の奥があったかくて、君の事を考える度に切ない疼きを覚えてしまう。
唯一人にだけ抱く、特別な想い。得たものは、未来に続く溢れんばかりの幸彩(こうさい)。
「サージェスさん!」
だけど、俺の愛する少女は時にその素直さで、こちらを酷く追い詰めてくれる事もある。
立ち尽くしたまま後を追って来ない俺の傍に戻り、その小さな手が俺の温もりを包み込む。
繋いだ手を持ち上げ、「早く行きましょう?」と、そろそろ近いお昼をどこで過ごすか楽しげに語る君。背後から追っ手はもう諦めてくれたみたいだけど、俺にとって一番厄介な難敵はこの子だ。
その純粋さと素直さで俺を振り回して、無自覚に切ない男心を掻き乱してくれる小悪魔。
――だけど、困った事がもうひとつある。
「ユキちゃん」
「はい?」
「ちゃーんと……、責任、取ろうね?」
「え? せ、責任って、え?」
意味がわからず戸惑う君。その様子を眺めながら歩き出す。
何の事を言われたのか、全然わかっていないんだろう。
俺が耳元に顔を寄せてヒントを囁くと、数秒後に恥じらいの気配が彼女の全身を包み込んでいった。ふふ……、困ってる困ってる。
だけど、その反応は俺との夜が嫌って意味じゃなくて、嬉しいけど恥ずかしい、そんな感じ。
「こ、今夜も……っ、え、で、でもっ」
ユキちゃんは小さく呟きながら狼狽え、だけど、俺の手を離そうとはしない。
頭と心、一番反応が素直なのは、やっぱり後者だね。
好きなだけ困っていいよ、ユキちゃん。
俺が君に可愛い事を言われて翻弄される度、同じよう困って、同じように満たされた気持ちで最高の心地良さを覚えてしまう、そんな感情(きもち)を。
愛する人に翻弄されて、振り回されて、沢山困っても、俺達の心は喜んでしまう。
「重症だね。俺も、君も」
「ふぇっ!? な、何ですかっ? 今、何か言いましたっ?」
「ふふ、何でもなーい。さ、城下まで仲良くお散歩しようか」
お互いに好きで、好き過ぎて、その想いが高まる度に何度も困った事になるけれど。
ふふ、もっと困らせてほしい、なーんて……、本当、重症だよね。
ユキちゃんはこれから、どんどん魅力的な女性に成長していく。
俺の腕に抱かれてふわりと揺れる小さな花。
彼女が成熟期を迎え、艶めいた美しい大輪の華へと変わったその時……。
俺の苦労と悩みが、一気に増大するのは目に見えている。
だからこそ、俺は他の男達に希望の一片も見いだせないよう、先手を打つ。
この花が誰に愛でられるべきなのか、誰の腕の中でなければ咲き誇れないのか……。
まずは、目に見える形で牽制をかけさせて貰う事にしよう。
――明日の朝。彼女の薬指に、俺の想いを宿らせて。
fin
夢を見る事もなく、ぐっすりと眠り込んでいた私は、自分の頬を擽る感触に目を覚ました。
何も纏わぬ姿で寄り添い合っている私達。
サージェスさんの手の中には、私の蒼い髪が一房。彼の唇がそっと触れている。
掠れた声で名前を呼んだ私を、ゆっくりと開いたアイスブルーの双眸が捉えた。
「ごめんね。起こさないように気を付けていたつもりなんだけど」
「……何を、けほっ、けほっ」
喉が、痛い。それに、身体も……、すごく、重くて、だるい。
「あぁ、やっぱり枯れちゃってるね、声。ちょっと待って」
「サー、……けほっ、けほっ、んっ」
思い出した。私を迎えに来てくれたサージェスさんとウォルヴァンシアに戻って、レイフィード叔父さん達との騒動の後……。この人のお屋敷で一緒に夜を過ごして……。
「やっぱり、まだ三回はきつかったよね……? ごめんね」
「……い、いえっ、私も……、その」
私の喉に唇を触れさせて治癒の術を行使したサージェスさんに、癒えていく痛みと声を感じながら首を振った。初めての時と、その次の時も、どちらも一度で終わった行為。
私を気遣って、決して無理をさせようとはしなかったサージェスさんだけど……。
今夜の彼は違っていた。一度私の中で果てた後、僅かな休息を挟んで二度目を求められ、互いを呼び合う切ない音と、強まる欲情の気配に支配された寝室。
サージェスさんと私の汗が交じり合い、余裕のない熱い息に肌を擽られ、彼の想いを刻まれ続けた。ウォルヴァンシアで負った傷の具合はどうなのか、とか、話し合いの行方は、とか、落ち着いて話す暇もない程に……。
抱かれる事で感じる恥ずかしさや身体への負担も、途中から余計な事が何もかも消え去って……、私も、サージェスさんの愛を自分から求めていた。
でも……、初心者の私には、やっぱり三回はきつかったようだ。
「あれ……? サージェス、さん?」
確かに身体はきつい。だけど、この人の愛を感じられて満足している。
欲しがっていたのはサージェスさんだけじゃない。私も、同じだった。
求められる事に喜びを感じている。サージェスさんとひとつに溶け合ってしまいたい程に、私はこの人を愛しているから。
そう、素直に伝えてみたのだけど……。ちょっと、不味かったかもしれない。
サージェスさんはニッコリとした笑顔のまま固まってしまい、も、毛布の中で……、何か、か、硬い物の感触が。
「あ、あのっ、……さ、サージェスさんっ、そ、その、ご、ごめんなさいっ」
「うん……、自分が何を言ったのか、俺にどれだけ凄い爆弾を落としてくれたか、ちゃんとわかるようになっただけ進歩かなー。ははっ、小悪魔ユキちゃん最強過ぎだよね」
「本当にっ、本当にっ、ごめんなさい!!」
私のお腹の辺りに当たっているご立派な息子さんの逞しさに慄きながら、私は謝罪を繰り返す。
室内の様子からして、まだ朝方前……、なのだろうけれど。
時間はあっても、四回目を受け入れられる余裕はありません!! そういう意味もあっての謝罪だ。サージェスさんは頭を片手で支えながら肘をシーツに着き、微笑ましそうに私を見下ろしてくる。
「ふふ、大丈夫、だいじょーぶ。話でもしてれば、すぐに治まるだろうしね」
「は、はい……っ。ありがとう、ございますっ」
男性にとって、そうなってしまった物を何もせずそのままにしておく事は辛いはずなのに……。
「その代わり、ユキちゃんを抱き締めながら話をしてもいい? 結婚の事、どうなったか報告しておきたいし」
サージェスさんは私を自分の胸に抱き寄せて、平常心のままウォルヴァンシアでの事を話してくれた。レイフィード叔父さん達と凄まじい攻防を繰り広げ、危うく、騎士団と魔術師団の総攻撃まで受けそうになった事……。助けの手が入らなければ、ここに帰って来られるかどうかも危うかった、と。はぁ……、のほほんと楽しそうに語るサージェスさんだけど、全然笑える話じゃありませんからね!! 私は半眼になってサージェスさんを見つめる。
「無茶はしないで下さい、って、危なくなったら逃げて下さいって……、そう言いましたよね?」
「俺だって言ったよー。ユキちゃんと一緒になる為なら、死んでも勝ちに行く、って」
「だからって、大勢を相手に無理をし過ぎです!!」
それに、本人は隠しているけど、ウォルヴァンシアで負った傷を治癒の術で処置して来た事には気付いている。団長服姿から新しい私服に着替えて寝室に来たのも、見せられない状態にまで追い込まれていたから……。私を安心させようという、サージェスさんの気遣い。
どんな時でも守ってくれようとするこの人の優しさを有難い、とは思っているのだけど……。
やっぱり……、ちょっと言っておいた方がいい気がしてきた。
ニコニコとした笑顔を見つめ続ける事十数秒後――。
「決めました……」
「え?」
「次に、私だけを蚊帳の外において同じ事をやったら……、別れ、――んぅっ!?」
ある意味、脅迫的な台詞だと自分でもわかっている。
だけど、サージェスさんは私がそれを言い終わらない内に唇を塞ぎにかかってきた!
「んっ、……さ、最後、までっ、……ふぅ、うぅっ、んんっ!」
お願いだから最後まで言わせて下さいよ!! ぐっ、ぐぐぐぐぐぐっ!! ひ、引き剥がせない!! ちょっ、し、舌が口の中で滅茶苦茶に舐めまわされて、ついでに、ァアアアアアッ!!
数分後、私は何かを言う気力ごと体力を奪われてしまい、降参の白旗を上げていた。うぅ……、く、悔しいっ。
「ははっ、俺の勝ちだねー? 」
「ひ、卑怯、ですよ……っ。大事な話をしている最中にっ」
「えー? 不吉な予兆を感じ取ったから未然に防いだだけなのにー?」
「不吉なんかじゃありませんよ……、全然っ。サージェスさんが私絡みで酷い仕打ちを受けないようにっていう注意事項をですねっ」
「俺の為でも、約束を破ったら別れるなんて言わないでよ……。本気じゃないってわかってても、言われると……、凄く、辛いから」
……お茶目な雰囲気の笑顔が一瞬で消えてしまった。
氷のように揺らめくアイスブルーの瞳が、寂しそうに私を捉えている。
「さっき……、戻って来た時に言ってくれたよね? 俺と一緒にいたかった、って……。二人の事だから、最後まで一緒に、って」
「はい……」
「その気持ちはね、嬉しいんだよ……。本当に、本当に、ね……。だけど、駄目なんだよ」
「ど、どうして……っ」
「俺が、奪うからだよ。ウォルヴァンシアの皆から、大切な、大切な女の子を……、君を奪う存在だから。だから……、皆が抱えている辛さや悲しみを、しっかりと受け止めなくちゃいけなかったんだ」
あの場所に私が居座っていれば、レイフィード叔父さん達に我慢をさせる事になる。
だから、自分一人が残って、きちんと向き合わなくちゃいけなかった……。
そう、サージェスさんは言う。それが、私と結婚する為に必要な事だから、って。
う~ん……、家令のロフェルトさんも同じような事を言っていたけれど……、だからって、あの人数とその他大勢の心まで受け止める事はっ。
「げ、限度ってものがあると思うんですけど……っ」
「ははっ、まぁ、……途中から、これ、有りなのかなぁーって思わないでもなかったけど、愛する女性をお嫁さんにするって事は、そういう事なんだよ。一人で立ち向かわなくちゃならない時もあるって、ね」
「サージェスさん……」
「だから、俺はこれからもユキちゃんに心配をかけたり、無茶をする事もあると思うんだ。その必要がない事を祈るけど、やっぱりその時が来たら……、約束は出来ない、かな」
納得は出来ない……、けど。
この人は私に対して真摯な想いで向き合ってくれる。
ディヴェラーデ侯爵との件に関しても、きちんと話してくれた。
お茶目な嘘を吐(つ)いても、大事な事を隠したりしない。偽ったり、しない。
「私の負け、ですね……」
「ごめんね。でも、嘘を吐(つ)いてユキちゃんを安心させても、……いつかその約束を破っちゃったら意味がない。だから、初めからそういう事もある、って、知っておいてほしいんだ」
「……はい」
「その代わり、別の約束をしよう?」
身体の位置をずらして、私の肩口へと埋められてくるサージェスさんの顔。
切なく吐き出された甘い吐息を感じながら、きつく吸われた肌に僅かな痛みと快楽の片鱗を覚え、唇から小さな嬌声が漏れてしまう。
「俺は、君を残して死んだりしない。絶対にね……。寿命的なものは仕方がないって、そう思って貰わなきゃいけないけど、それ以外は別。どんな無茶をしても、どんな不利な状況におかれても、俺は君の所に帰ってくる。絶対に」
「……お仕事の時は、仕方がない、って、わかってます。だけど……、それ以外では、怪我をしないように気をつける、って、約束して下さい」
「うーん……、出来るような、出来ないような……。うん、絶対ってわけじゃないけど、努力はするよ。それでもいい?」
困惑した気配で私を見上げたサージェスさんに、笑みを抱いて頷く。
絶対じゃなくてもいい。私が言った事を覚えていてくれるだけで……。
サージェスさんなら、私との約束をある限り、無意識にでもそれを心掛けてくれると思うから。
「――で、結局どうなったんですか? 結婚の事」
「うん、強力な助っ人のお陰で良い結果をもぎ取る事が出来たよ。詳しい話し合いは後日になったけど、頑張った甲斐があった」
「そういえば、さっきもそう言ってましたよね? 強力な助っ人のお陰で場が収まった、って。誰なんですか?」
「ユキちゃんのお母さんと、ウォルヴァンシアの王妃様」
「え!?」
まさかの、お母さんと王妃様が!?
あぁ、……確かに、あの二人が出てきたら、誰も逆らえない、か。
案の定、レイフィード叔父さんは王妃様に、お父さんはお母さんに首根っこを掴まれ、事態は強制終了の勢いで収まった、と。なんという、ナイスタイミング!
しかも、ウォルヴァンシアの王族兄弟だけでなく、その場にいた全員が……、正座させられた上にお説教乱舞でしぼられた、と。はぁ……。
「ふふ。皆、頭とお尻に狼の耳と尻尾が生えちゃってねー。見ててちょっと面白かったよー」
サージェスさんの話では、その場の全員余す事なく、だったという話なわけで……、つまり。
「る、ルイヴェルさんも、ですか……?」
「ん?」
「狼の耳と尻尾が出たの……」
「うん。ルイちゃんもしゅぅぅんとなっちゃって、可愛かったよー。後から来たセレスちゃんからのお説教も効いたんだろうねー」
そ、それはっ、ちょ、いやいやっ、物凄く見たかったんですけど!!
記録(シャルフォニア)で、写真と映像もバッチリ撮っておいたから、と、素晴らしいお仕事ぶりを発揮してくれたサージェスさんに、私は全力で頷きながら後で見せて貰う約束を取り付ける。
そして、私の手を取ったサージェスさんに左の薬指へと優しいキスを落とされ……。
「これで、君に誓える……」
「さ、サージェス、さん?」
「俺が誓うのは、未来永劫変わらぬ愛じゃない。君と過ごす日々の中で、果てなく募る、無限の愛……。自分でもどうなっちゃうのかわからないけど、結婚したら、もっと君を好きになる自信があるよ、ユキちゃん」
濃厚な蜂蜜でも味わっているかのように、甘い微笑が私の心を蕩かす。
薬指へと触れていた誓いのキス。その感触が消え、今度は額にその温もりが落ちる。
「ん……」
「そんな俺の愛だけど、受け取ってくれるかな? 勿論、返品不可で」
くすりと笑ったサージェスさんの口元。
悪戯めいた気配と共に近づいてきた唇を、私は瞼を閉じて受け入れたのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
――Side サージェスティン
「「ウォ、ウォルヴァンシアに……、住む?」」
「サージェスさん……、本気ですか?」
翌日。俺はユキちゃんを連れてウォルヴァンシアに戻り、結婚に関する詳しい話し合いをする為の場に腰を据えていた。
隣に座っているユキちゃんも、目の前のソファーでぽかんと口を開けているウォルヴァンシアの王族兄弟も、予想通りの反応だねー。まぁ、当たり前か。
他の子達と違って、俺は他国の住人だしね。ユキちゃんを連れてガデルフォーンに引っ込むとか、この国から彼女がいなくなるとか、そんな風に考えていたんだろう。
王族兄弟の傍に立っている女性陣二人……、王妃様と、ユキちゃんのお母さんは、俺が何を考えているのか、ある程度予想していたようだけどね。
「俺は、俺との結婚でユキちゃんを悲しませる事も、ウォルヴァンシアの皆を悲しませる事も、望んでいないんですよ。だから、この案を提案してるんです」
正確には、ユキちゃんの部屋と、ガデルフォーンにある俺の屋敷を術で繋いで、自由に行き来が出来るようにするって最良の案。
誰も悲しまない、誰とも離れずにいられる新しい形。
俺が片目を瞑ってウインクをしてみせると、ウォルヴァンシアの王様とユキちゃんのお父さんが戸惑い気味に互いの顔を見合った。
「その案があったか……」
「ユキちゃんを連れて行かれちゃうって、そればっかり考えてましたからねぇ……。サージェス君、結構気が利いてるんだね、君」
「ははっ。本当は誰にも邪魔されない場所で新婚生活をイチャイチャ過ごしたかったんですけどねー。でも、それをやっちゃうと……、皆で嬉々としながら乗り込んでくるでしょ? となると、こっちが一歩譲って、不満を解消してあげた方が無難かなーと」
「ふふ、サージェスさんたら、皆の事をよくわかってくれているわね~。ユキ、お母さん、安心して貴女をお嫁に出せそうだわ」
「本当にね……。昨夜はコイツ何やってんだかって呆れたけど、その案なら私達も安心だわ。どこぞの過保護な集団が、国を放り出して大暴走する危険性が減るものねぇ……?」
のほほんとしているユキちゃんのお母さんに同意して、恐ろしいオーラを放って王様を睨みつけている王妃様は……、うん、相変わらず強いなぁ。
「コホンッ……。わかったよ。結婚後もユキちゃんが変わらずに僕達と会えるのなら……、二人の婚姻を認めよう」
「私にはまだ、……早過ぎると思うのだけどね。だが、昨晩君が見せてくれた誠意と、ユキ本人がそれを望んでいる事を考慮すれば、認めるべきなのだろう。……サージェス君、娘を頼むよ。絶対に、幸せにしてやってくれ」
「レイフィード叔父さん……、お父さん」
仮にも一国の王と、その兄が席を立ち上がり俺に頭を下げる事の意味。
彼らが大切に守り育んできた宝物。ユキちゃんを貰い受ける事の意味を、俺は自分の心に刻みながら同じように頭を下げた。これから彼女を守っていくのは、俺の役目だ。
「――だ、け、ど! すぐには無理だからね」
「え?」
「ユキちゃんはウォルヴァンシアの王族だからね。婚儀を行うにしても、色々と準備が必要だ。それと、結婚式を挙げるなら年明けがいい!! なにせ来年は、十年に一度の女神フェルシアナの祝福大放出の良い事尽くめの一年!! その年に式を挙げたカップルは、普通の夫婦よりも幸福度が倍増しだって言い伝えがあるからね!! だから、来年にしよう!! 来年に!!」
「……王様、来年って、さ……。後、十ヶ月も先、なんだけど」
俺的には、準備期間も入れて三ヶ月ぐらいでゴールインしたいんだけど……!!
本音をぐっと喉の奥に飲み込んで、俺は抵抗を試みる。
「いやぁ……、幸運の年に結婚っていうのもいいんだけど……、俺的には」
「私も同感だ。縁起を担ぐのも幸先が良いと思うし、新しい一歩を踏み出しやすくなるだろう。ユキ、サージェス君、そうしなさい。十ヶ月もあれば、ゆっくりと準備に時間が使えるだろうしね」
エリュセードの一年は二十四ヶ月。その後半に当たる二ヶ月は終えているものの……。
十ヶ月……、年が明けるまで、十ヶ月も、おあずけ……?
あ、不味い。今、くらりと目の前が真っ暗に。あぁ……。
「さ、サージェスさんっ、だ、大丈夫ですかっ!?」
気が付いたら、ユキちゃんに横から支えられていたっていう情けなさだよ、はぁ……。
もう、結婚式は来年に本決まりと言わんばかりの王様とユキちゃんのお父さんに、多分何を言っても無駄なんだろう。大切な姪御と娘を万全の状態で嫁に出す保護者の熱が凄いよ……。
俺はそのまま、ぽてんとユキちゃんのお膝に頭を落とし、大きな溜息を吐く。
「ユキちゃーん……、俺、耐えられるかなぁ……」
「ま、まぁ、婚約期間があるのもいいんじゃないでしょうか?」
「十ヶ月も、あるんだよぉ……。十ヶ月も」
「あ、そうだ、サージェス君」
「はいー……?」
半ば諦め気味に、ユキちゃんに頭を撫でて貰っていた俺に、王様が追い打ちをかけにかかる。
「君、多分忘れてると思うんだけどねぇ……」
「何を……」
「僕とユーディス兄上の許しが得られても、まだラスボスが残ってるよ?」
「え?」
ラスボス……? なんだっけ。思考を巡らせ始めた俺の頭上で、ユキちゃんが思い当たったような可愛い声で、「あ」と言った。
そして、遅れる事数秒後……、俺もそれに思い至ってしまう。
そうだ……、俺、物凄く大事な事を忘れていたよ。
ユキちゃんと結婚する為には、一番の難関がエリュセードの天空に控えてるわけで……。
「ユキちゃんの、神としての両親……。ソリュ・フェイト神とファンドレアーラ神に許しを貰って来ないと、式自体を挙げられないよ。そういう意味でも、これからの十ヶ月間は必要だと思うんだよねぇ……。無茶ぶりの試練を乗り越える為にも」
「あー……、ははっ、そういえば、……うん、そうだった、……ね、ははっ、はは」
「だ、大丈夫ですか? サージェスさん……」
全ての世界に存在する神々にとって、はじまりの十二神と呼ばれているソリュ・フェイト神。
古の時代に神器(しんき)と魂を滅ぼされた男神は、無事に復活を遂げ、現在天上にて奥さんとラブラブ真っ最中だ。
面倒見が良くて男らしい、愛想の良い神(人)だけど……。
確実に、娘さんを下さいとか言いに行ったら、笑顔で襲いかかってくるんだろうなぁ……。
最強の難敵過ぎて、逆にころっと現実逃避で忘れちゃってたよ。
「とりあえず……、昨日のダメージが回復してから、かなぁ」
「サージェスさん、あまり無理はしない方が……。お父様達の事なら、私一人でも」
「だーめ。御挨拶には二人で行くし、その後は俺の頑張りどころだから」
「もう……」
こればっかりは仕方がない。
俺がユキちゃんと幸せになる為のチケットを手に入れる為だから。
昨夜言った通り、俺はユキちゃんと約束出来ない。必ず、無茶をする。
死に物狂いで戦って、戦い抜いて……、その試練を乗り越えて、愛する人との未来を歩んで行く為に。だけど、ユキちゃんが俺の為に何かしたいって言ってくれるなら、甘えちゃおうかなぁ。
「ねぇ、ユキちゃん」
「はい?」
「ユキちゃんにしか出来ない応援、して貰ってもいい?」
「勿論です! 少しでもサージェスさんの助けになれるなら!!」
うんうん、すっごく嬉しいよー、ユキちゃん。――言質は取らせて貰ったからね、ふふ。
素直で健気な、可愛い可愛い俺の婚約者。君にしか出来ない大仕事を頑張って貰うよ。
「じゃあねー、早速今夜」
「「サージェス君」」
俺の力になれる事を喜んでいるユキちゃんの頬を右手に包み込み、本題に入ろうとした俺の言葉を遮って挟まれた不穏な声……。あ、これは不味いねぇ。
ちらりと向かい側のソファーに視線を向けてみれば、やっぱり予想通りの絵があった。
引き攣った笑顔で溢れんばかりの怒気を立ち昇らせている王族兄弟。
ついでに、あれぇ……、何だか王宮全体を震わせるような地鳴りが起きてる気がするねぇ。
「ユキちゃん、逃げよっか」
「え? きゃあっ!」
大事な時には挑むけど、それ以外は別!
どうやらケースバイケースらしき強い味方も傍観を決め込むようだし、貴重な休日を二回戦の激闘で潰す気はない。俺はユキちゃんをお姫様抱っこで抱き上げ、即座に逃亡の体(てい)に入る。
ゆらーり……。静かに怒れる大魔神級の王族兄弟にニコッと笑顔を向け、全力ダッシュ!!
「ユキちゃんとデートに行ってきまーす!!」
「ちょっ、さ、サージェスさん!! まだ話がっ」
「うん。じっくり話し合うよー。その前に、城下で一緒に美味しい物食べてー、あ、そうだ! 今、有名一座が丁度城下に来てるんだよー。観劇とかどうかなー?」
驚いている王宮メイド達に軽く挨拶を投げ、目指すは賑やかな城下町!
暖かな陽の光が差し込む廊下をひょいひょいと走り抜け、腕の中で困っているユキちゃんの額にキスを贈る。うん、薄暗い闇の中で見せてくれる色っぽい表情も良いけど、眩い光の中で見る恥じらい顔も最高だね。
それに、後を追って大爆走してくる自分のお父さんと叔父さんを気にしつつも、彼女は俺の腕の中から逃げ出そうとはしない。
様変わりしていく景色と同じように、困惑した表情から喜びの色へと変わっていく少女の口元。
彼女の両腕が俺の首へと絡められ、愛おしさに溢れた眼差しが一気に距離を詰め……。
「んっ」
頬へと触れた、親愛のキス。彼女の甘い吐息に耳を擽られたかと思うと。
「貴方と一緒なら、どこまでも」
「――っ」
最強の可愛すぎる殺し文句に、ぐらりと崩れかけた理性の塔。
王宮の入り口まで後少し、という所で、腕の中にいるユキちゃんと一緒に危うく前のめりに転びかけてしまう。手放しかけたバランスを即座に立て直し、残念な結果を回避する。
ふぅ……、と、安堵の息が漏れた。大切な恋人を落とさずに済んで良かった、怪我をさせなくて良かった。だけど……。
「ユキちゃーん……」
「ふふ、ごめんなさい」
恨みを込めてジロリと愛する少女を睨んでやれば、彼女は肩を竦めて楽しそうに笑う。
まったく……。何度注意したって、この子はすぐに忘れてしまう。
煽る気がなくても、俺にとってはどんな攻撃方法や大魔術よりも凄い、至上最強の一撃。
生殺しの刑に処されてしまった俺のもどかしさには構わず、ユキちゃんは腕の中から抜け出して先に歩き出してしまう。あぁ、……してやったりの背中が憎らしい。
彼女は俺に翻弄されて吃驚させられる事が多いと言うけれど、それは俺の台詞だ。
――君に恋をしてから、新しい自分に出会った。君を好きになってから、ただの日常にさえ煌々(きらきら)と輝く彩りを覚えるようになった。
心の奥があったかくて、君の事を考える度に切ない疼きを覚えてしまう。
唯一人にだけ抱く、特別な想い。得たものは、未来に続く溢れんばかりの幸彩(こうさい)。
「サージェスさん!」
だけど、俺の愛する少女は時にその素直さで、こちらを酷く追い詰めてくれる事もある。
立ち尽くしたまま後を追って来ない俺の傍に戻り、その小さな手が俺の温もりを包み込む。
繋いだ手を持ち上げ、「早く行きましょう?」と、そろそろ近いお昼をどこで過ごすか楽しげに語る君。背後から追っ手はもう諦めてくれたみたいだけど、俺にとって一番厄介な難敵はこの子だ。
その純粋さと素直さで俺を振り回して、無自覚に切ない男心を掻き乱してくれる小悪魔。
――だけど、困った事がもうひとつある。
「ユキちゃん」
「はい?」
「ちゃーんと……、責任、取ろうね?」
「え? せ、責任って、え?」
意味がわからず戸惑う君。その様子を眺めながら歩き出す。
何の事を言われたのか、全然わかっていないんだろう。
俺が耳元に顔を寄せてヒントを囁くと、数秒後に恥じらいの気配が彼女の全身を包み込んでいった。ふふ……、困ってる困ってる。
だけど、その反応は俺との夜が嫌って意味じゃなくて、嬉しいけど恥ずかしい、そんな感じ。
「こ、今夜も……っ、え、で、でもっ」
ユキちゃんは小さく呟きながら狼狽え、だけど、俺の手を離そうとはしない。
頭と心、一番反応が素直なのは、やっぱり後者だね。
好きなだけ困っていいよ、ユキちゃん。
俺が君に可愛い事を言われて翻弄される度、同じよう困って、同じように満たされた気持ちで最高の心地良さを覚えてしまう、そんな感情(きもち)を。
愛する人に翻弄されて、振り回されて、沢山困っても、俺達の心は喜んでしまう。
「重症だね。俺も、君も」
「ふぇっ!? な、何ですかっ? 今、何か言いましたっ?」
「ふふ、何でもなーい。さ、城下まで仲良くお散歩しようか」
お互いに好きで、好き過ぎて、その想いが高まる度に何度も困った事になるけれど。
ふふ、もっと困らせてほしい、なーんて……、本当、重症だよね。
ユキちゃんはこれから、どんどん魅力的な女性に成長していく。
俺の腕に抱かれてふわりと揺れる小さな花。
彼女が成熟期を迎え、艶めいた美しい大輪の華へと変わったその時……。
俺の苦労と悩みが、一気に増大するのは目に見えている。
だからこそ、俺は他の男達に希望の一片も見いだせないよう、先手を打つ。
この花が誰に愛でられるべきなのか、誰の腕の中でなければ咲き誇れないのか……。
まずは、目に見える形で牽制をかけさせて貰う事にしよう。
――明日の朝。彼女の薬指に、俺の想いを宿らせて。
fin
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