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~ルイヴェル・フェリデロード編~
【結婚後】差し入れとハプニング~ルイヴェル×幸希~
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※ルイヴェルと幸希の新婚生活二週間目の出来事です。
――Side 幸希
成熟期と呼ばれる大人の姿へと変化し、あっという間に結婚式を挙げて、早二週間……。
周囲の人達から聞かれる事といえば、新婚生活についての事が多くて、少し困ってしまう。
結婚後は一緒の部屋で寝起きし、朝食と夕食を一緒にとるようになったけれど、それ以外は以前と何も変わらない。
独占欲の強い旦那様だけど、別に私の時間を全て束縛するという事はなく、……とりあえず、寝室での苦労以外は許容範囲で済んでいるのだ。
それに、どちらかというと、離れている時でも旦那様……、ルイヴェルさんの事を考えてしまう私の方が、寂しがり屋なのかもしれない。
というわけで、今日はお昼の差し入れを持って、ウォルヴァンシア魔術師団の演習が行われている場所へと足を向けてみた。
王宮医師としてのルイヴェルさんは沢山見てきたけれど、魔術師団でのお仕事姿を目にする機会はあまりない。
だから、こっそりと陰から旦那様の魔術師団長としてのお仕事ぶりを見学させて貰おうとやってきたのだけど……。
「この『場』では、魔力調整の具合が著しく乱される……。その為、戦闘におけるデメリットは高く、通常であればこの地以外の場所で戦闘を行えばいいだけだが、それが不可能となる場合も考慮に入れて、どれだけ『場』の影響に抗い、自身の魔力を調整出来るか……。今回はそれを課題として訓練を行う」
「それが終わり次第、この『場』を使って模擬戦闘訓練を行います。皆さん、頑張ってくださいね」
一体どんな場所なのだろうかと追いかけて来てみれば、国内でも外れの方にある険しい山の中だった。登る為の整備された山道はあったのだけど、これがまた大変で大変で……。
息切れと共に登り切ると、一面ぼうぼうの草だらけが生えた広い大地が広がる場所に辿り着いた。
ずらりと整列した魔術師団員さん達の背中の向こうには、今日の演習内容を説明しているルイヴェルさんと、その隣に寄り添っている女神様のような女性こと、旦那様の双子のお姉さんであるセレスフィーナさんの眩いお姿が。
王宮医師としての白衣姿も素敵だけど、魔術師団の副団長服を纏ったそのお姿も、妖しい雰囲気がプラスされたようで、とっても素敵です。――セレスフィーナさん!!
と、旦那様の麗しのお姿よりも、そのお姉さんのナイスバディさと何を着ても似合う美しさに見惚れてしまう私だった。
「ニュイ~」
「しー……。あまり大きな声は出さないでね? ファニルちゃん」
腕の中で小さく身じろぎをして地面に飛び降りたのは、私の可愛い友達。
エリュセードの裏側と呼ばれる空間にある国、ガデルフォーン皇国における希少生物で、ファニルという動物だ。
薄桃色のぽっちゃりもふもふボディで、ふさふさの長いお耳と尻尾がとっても愛らしい。
地面の匂いをその小さなお鼻で嗅ぎながら、ファニルちゃんは辺りを見回している。
「ニュイッ!」
どうやら初めて訪れる場所に興味津々らしく、可愛いお友達は早速散策の旅に出てしまった。
私がどこにいても、ちゃんとあの子は戻って来てくれるから心配はないのだけど……。
一人にされてしまったせいで、ちょっぴり寂しい。
茂みの陰に隠れて溜息を吐いていると、魔術師団の訓練が始まったようで、不利な『場』……、ちなみに、『場』というのは、魔力が溜まり込んでいる土地の事を言う。
今回の『場』は、どうやら術者の魔力調整を乱す効果があるらしく、団員さん達は皆真剣に訓練に集中し始めている。
ルイヴェルさんとセレスフィーナさんや、上位と思われる魔術師の人達が指導の言葉をかけては、また別の人へ。
王宮医師の時とは違う、魔術師団長としての厳しい眼差しや、時折聞こえる叱咤の声。
大きな声を出すタイプではないはずの旦那様だけど、これはこれでまた新鮮に感じられる。
漆黒の団長服に、ウォルヴァンシアの紋章が刻まれたそれに、銀の髪がとても綺麗に映えていて……、あの人が自分の旦那様だとは、いまだに夢見心地というか、私が奥さんで本当に釣り合っているのだろうか? そんな自問自答はいつもの事。
ネガティブな気持ちはないけれど、ただ単純に、旦那様のハイスペックさに脱帽の日々なのだ。
「その程度の集中力では、戦闘での応用はまだまだ先だな。いいか? そこの調整は、こう……」
「は、はいっ。ご、ご指導、あ、ありがとうございますっ」
あ、ルイヴェルさんが可愛らしい女の子の肩に手をおいて丁寧な指導を……。
うわ~、気持ちはわかるけど、あんなに真っ赤になって、ビクビクと子ウサギのように震えて……。
(可愛い……)
素直そうで頑張り屋さんな事がすぐわかる金髪の女の子の姿に、思わず胸がきゅんとしてしまう。
あの性格だと、……ウチの旦那様の中でいじめたい&いじりたい症候群がウズウズと湧き上がるのではないだろうか? と思ったのだけど……、あれ? 意外に普通?
女の子の奮闘ぶりにルイヴェルさんが意地悪な発言をする様子はなく、ぽんと彼女の頭を撫でて薄く微笑むだけで、また次の人へ。
団長のお仕事の時は、あえて自分の困った性格を自重しているのだろうか?
(まぁ、職場でも意地悪な事ばかりしていたら、辞職者が多発しそうだし……)
平和でいい、のかな。
茂みの陰にまた顔を引っ込め、私はその場に足を崩してバスケットの中を探る。
今傍にあるのは、自分用の昼食バスケット。残りの差し入れ分は、お散歩中のファニルちゃんの中。あの子の体内は自分の食事用の胃袋とは別に、様々な物を収納しておける異空間を持っている。
だから、ファニルちゃんにお願いして幾つかのバスケットを飲み込んで貰ったのだ。
「もぐ……、ん~、……やっぱりルイヴェルさんは凄いなぁ」
クリームとジャムを挟んだサンドイッチをパクリと頬張り、私はそれを咀嚼しながら頭上に広がる爽やかな空を見上げる。
普段は何てことのない顔をしている旦那様だけど、魔術師団の仕事と王宮医師としての仕事、そのどちらもこなし、時には出張にも出て行く。
あの人の中に溜まり込んだ疲労は、一体どうやって発散されているのか……。
いまだに、最強無敵の旦那様に対する疑問点は尽きない。
指先についたクリームをぺろりと舌先で舐めとり、今度は携帯ポットから準備してきた紅茶をカップに注ぐ。
背後では、ルイヴェルさんの団員さん達を指導している声が心地よく聞こえてくる。
「そういえば、お休みの日は必ず私をどこかに連れて行ってくれるし……、本当に、いつ休んでるの?」
普通の睡眠時間はとっているようだけれど、それ以外は……。
休日は私を連れて城下や他国に行ったり、王宮で過ごす時もずっと私の傍。
それって休んでる事になるのかなぁ……。
なーんて、本人に伝えて距離を取ろうと気を遣ったとしても、逆に怒られるのがオチな気がする。
今度疲労に効く料理や、マッサージに関する事でも勉強してみようかな……。
などと、ぼんやりまったり考えていると、突然耳元で心臓に悪すぎる吐息が触れた。
「一人でピクニックか? ユキ」
「ふにゃぁっ!!」
予期せぬ事態に奇妙な声をあげてしまった私を、背後から伸びてきた両腕ががっしりと捕らえにかかってくる。ギギッと顔を左に向ければ、……あぁっ、銀フレームの眼鏡越しに愉しそうなドSの深緑が!! じたばたと暴れてみせるけれど、旦那様から逃げられるわけもなく。
茂みの陰に腰を下ろしたルイヴェルさんが、バスケットの中に手を伸ばしてきた。
「さしずめ、差し入れを口実に俺の様子を見に来た、というところか? 奥さん」
ククッと喉の奥で含み笑いをされている横で、私は飛び上がった心臓から伝わってくるドキドキとし過ぎる鼓動に翻弄されながら顔を地面に伏せて呼吸を整えている。
び、吃驚した……!! 心底吃驚して、口から心臓が出そうな表現を体感したような気分!!
仕掛けてきたご本人は何に動じる事もなく、私の作ったチルフェートクリーム、チョコに似た味のそれを挟んだサンドイッチを食べている。
ま、魔力反応を悟られないように消してきたつもりなのに……、まさか気付かれていたなんて。
「ど、どうして私がいる事にお気づきで?」
「魔力反応を消しても、茂みから顔が出ていたからな。普通は気付くだろう? というか、王宮を出た時から気付かないフリをしてやっていたんだがな?」
「うぅっ、……ど、どこまで凄いんですかっ」
「あえて言うならば……、そうだな。夫だから、で全部片付けておけ」
アバウト過ぎますよ!!
地面を拳で打ち付け、悔しそうに唸る私の後ろ襟首を、旦那様がクイッと指先で引っ張り、こっちを向けと促してくる。
絶対にバレないと自信を持って追いかけて来たのに……、ああっ、また負けた!!
悔しさのあまりそっぽを向いていると、背後で愛しの旦那様が不機嫌になる様子が寒気と共に……。
「ユキ、こっちを向け」
「お、お仕事中の旦那様のお邪魔は出来ませんので!! どうぞお戻りくださいっ」
「ほぉ……。健気な妻の為に仕事を抜け出して相手をしてやろうという夫の気遣いに背を向けるのか?」
「た、頼んでません!! ほ、ほらっ、皆さんが探してますよっ。戻ってあげてくださいったら」
バレた事も不満だったけれど、それよりも、人の心臓を緊急停止させるような驚かせ方をした旦那様の腕の中に飛び込むのは癪だったから、私はその場を逃げ出そうとバスケットの持ち手を掴みかけた、――その時。
「あ、あれ……、な、なんでっ」
バスケットの持ち手に触れる寸前、ピタリと石のように動かなくなった私の身体。
原因は考えるまでもない。背後で冷たい目を向けてくる魔術師団の団長様が何かしたのだ。
しかも、動きを止められただけじゃなくて、身体が勝手にルイヴェルさんの方に向かい始める。
「うぅっ、ひ、卑怯です、よ!! うぐぐぐぐっ」
「ふぅ、つれない妻を振り向かせるのも苦労が伴うな」
ぽふん……。来い来いと両手を広げ、片足を立てて座り込んでいる大魔王様の胸に、身体が自分から倒れ込んでいく。
漆黒の団長服から、ほんのりとシトラスに似た香りが鼻を擽って……。
悔しいけれど、旦那様の懐は昔から心地良くて困りものだ。
幼かったあの頃も、私はルイヴェルさんの腕の中にいるのが好きで、今とは違い、自分からこの人の事を追いかけていたような気がする。
「せ、せめて、私が自分から出てくるまで知らないフリをしてくれても……」
ようやく身体に自由が戻り、余裕に満ちた笑みを浮かべている旦那様を見上げながらそう抗議すると、零れ落ちて来たのはさらに深まった意地悪な気配。
「幼い時のお前は、わざと見つけられないフリをしてやると、何故見つけてくれないんだと大泣きして俺に抗議したものだがな?」
「うっ……」
それはきっと、昔一緒に遊んだかくれんぼの事を言っているのだろう。
すぐに私の事を見つけてしまう『ルイおにいちゃん』に怒った私は、次こそ見つからない所に隠れる!! と宣言して……、三時間ほど王宮の厨房に隠れ続けた、というか、放置されていた。
見つからないように隠れたつもりなのに、大好きな『ルイおにいちゃん』に見つけて貰えなくて、大粒の涙を零しながら料理長さんに連れられて王宮医務室に戻った、ら……。
「そういえば、あの時のルイヴェルさんは……、魔術書片手にソファーで寛いでましたよね?」
「お前が見つけるなと言っていたからな。その望み通りにしてやっただけだが? まぁ、案の定膨れっ面で泣きながら帰って来たお前は……」
そこで、思い出し笑いをするように含み笑いをしないでほしい。
この鬼!! ドS!! と、ポカポカ旦那様の胸を拳で叩いても、ダメージはゼロ。
私が怒っているのに、ルイヴェルさんはとても嬉しそうで……。
「きょ、今日のは、かくれんぼじゃないんですよっ。それなのに、あ、あんな驚かせ方をしてっ。ルイヴェルさんのせいで心臓が止まったらどうしてくれるんですかっ」
冗談じゃなく、本気で止まりそうだったんですよ!!
そんな私に、ルイヴェルさんは愉し気に鼻で笑ってきた。
「その場合は……、愛する妻の為に、夫として奇跡の口づけと共に治療をしてやるとするか」
「――っ!!」
心臓止めてる場合じゃない!!
ニヤリと大魔王モードに入っている旦那様からクイッと顎を持ち上げられた私は、全身にぞぞぞぞぞぞぞっと本能の警鐘反応が妖しい疼きと共に走り抜けた。
世界で一番安心出来る最愛の旦那様の腕の中なのに、本当に一瞬たりとも油断出来ない!!
と、二人で傍(はた)から見ればじゃれ合っている構図を繰り広げていると、――あ。
「ル~イ~ヴェ~ルゥ~……!」
仕事をサボっている団長様の背後に現れた、恐ろしい怒りの気配が揺らめく女神様のお姿。
容赦なく振り上げられた右拳が、ルイヴェルさんの頭を問答無用で打ち付けにかかった。
敵との戦闘であれば簡単にその一撃をお見舞いされる事はないのだろうけれど、大切にしている双子のお姉さん相手には、――ゴンッ!
「ユキ姫様が来て下さって浮かれているんでしょうけど……、今は仕事中! なのよ? 少しは団長らしく分別をつけなさい!!」
「痛ぅ……、手厳しいな、セレス姉さんは。仕方ない、仕事に戻るとするか……。ユキ、二時間ほどしたら、休憩をとる。それまでは見学でも散歩でも、好きに過ごすといい」
「あ、は、はい」
意地悪をされていた私の分まで仇を取ってくれたように思える、女神様の一撃。
そのスカッとした光景を見て気分が晴れた私は、仕方なく立ち上がり微笑んだルイヴェルさんに頭をひと撫でされ、麗しき双子姉弟の去って行く様を見送る事になったのだった。
そして……、見学の最中に山の中を散策し始め、思わぬ事態に巻き込まれる事になる。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
それは一瞬の事。
山の中でファニルちゃんと合流した私は、とんでもないハプニングに見舞われていた。
先を行く薄桃色のぽっちゃりボディを追いかけ、茂る木々の中を進んでいると……。
「きゃああああああああああああああ!!」
「ニュイぃいいいいいいいい!?」
不意に覚えた、ぼこりという足元の異変。
その直後に私の身体へと襲いかかったのは、床が抜けるかのような浮遊感と、視界の中を大きく傾いだ山中の静かな景色。
――落ちる。そう悟った時にはもう何も間に合わず、私は真っ暗な闇の中へと飲み込まれていった。
――……。
「ふむ……。どれだけ見ても飽きない愛らしさだ」
なんだろう……。指で頬を突(つつ)かれているような感触が伝わってくる。
聞き覚えのない、男性と思われる……、艶を含んだ低い声。
土の匂いを濃く感じられる場所の気配と、誰かの温もりで包まれている自分の身体。
ゆっくりと瞼を開いた私の目に飛び込んで来たのは、……真っ黒な髪の、……誰?
好奇心に溢れた青の双眸が私の顔を覗き込んでいる。
「うむ、やはり俺の目に狂いはないな」
「あ、の……」
ルイヴェルさんと同じくらいの、二十代前半程の顔立ちはとても綺麗で、どちらかといえば、男らしい魅力を抱く人だと思える男性。この人は、誰?
髪型は出会った最初の頃のカインさんと似ているけれど……、その黒髪の頭には。
「翼……?」
本物なのかはわからないけれど、男性の頭の両サイドからは、真っ白な鳥の翼のような物が生えているように見えた。ぼーっとしながらその翼、片翼のようなそれに触れてみると、男性が擽ったそうに身動ぎをしてみせる。
「んっ、……積極的な女だな」
「ご、ごめんなさい……。あの、この翼みたいなのは、本物、ですか?」
「あぁ、正真正銘生まれつきのものだ。別にこれで飛べるわけではないのだが、別にあっても不便ではないな」
「そう、ですか……。あの、貴方は……」
その腕の温もりから離れようとすると、男性は私を逃がさない為か、ぎゅっと強く抱き締めてきた。目を瞬く私の額へを指先でなぞり、次に触れたのは……、柔らかな感触。
「娘よ、そなたの名が聞きたい。我が妻となる、愛らしき者」
「……はい?」
今何か……、意味はわかるけど、その理由が全然わからない言葉が飛び出て来たような気が。
ニッコリと笑ったその顔は、どこか幼く見えて可愛いと思えたけれど……。
私は男性の胸を押し返し、全力で首を横に振った。
「ごめんなさい!! 既婚者です!!」
「なっ!!!!!! き、既婚者……、そ、そなたには、も、もう、心に決めた伴侶が……。い、いや、既婚者でも構わん!! 離縁して、俺の嫁になれば良いんだからな!!」
「自分勝手にもほどがありますよ!! 大体、好きでもない人の為に離婚なんて出来ません!!」
あぁ、吃驚した……。
出会って突然プロポーズなんて、常識はずれにもほどがあるもの。
それにこの人、自分勝手な事を言ったくせに……、私が怒鳴りつけると、ビクッと子犬みたいに震えて涙ぐみ始めてしまう始末。
外見はどう見ても、某竜の皇子様ことカインさんのように俺様的な気配がするのに、まさかの中身がヘタレ気味、と。多分このタイプは、乱暴な真似はしないと思うのだけど……。
「とりあえず、離れましょう。話はそれからです」
「嫌だあああっ!! ようやく俺好みの嫁を見つけたんだぞ!! 一緒に添い遂げたい!! 添い遂げたい!!」
「既婚者ですから無理です。それと、私の旦那様はとぉぉおおおっても怖い人! なので、無理強いをしたり、下手な真似をすると……。あの世に送られますよ」
「あ、あの世……。それほどまでに、恐ろしい男、なのか? そなたの夫は」
大魔王級です、と、私にしては不気味な笑顔と共に伝えて差し上げると、正体不明の男性はサアァァァァァッと一気に青ざめて……、私を解放して一人洞窟的な通路の片隅で膝を抱えてしまった。
「大魔王は……、困る。だが、俺は嫁が欲しい。俺だけを見て、俺だけを想ってくれる、生涯の伴侶が」
落とし穴にでも落ちたのかと最初は思っていたけれど、どうやら足元が崩れた気がしたのは、この男性が空間に穴をあけて、自分の許に招き寄せた、のは確か……。
けれど、我儘な態度とは裏腹に、何故か臆病極まりない面もあり、ギャップのある人だなぁ。
でも、悪い人ではなさそうだし、……う~ん。
「あの、お名前を聞いてもいいですか?」
「伴侶となってくれない者に教える気はない」
「じゃあ、不審者さんって呼びますよ? いいんですね?」
「うぐっ……。お、大人しそうな顔をしているくせに、意外と押しが強いタイプだな……。イメージが違い過ぎるじゃないか!! 詐欺だ!!」
人の内面を知りもせずに結婚したいだの言う人に言われたくはない。
どうやらこの誘拐犯としか言えない男性は、山の中を散策中だった私を見つけ、自分好みの相手だと思い込んでしまったのだとか。
容姿を基本に、大人しくて素直、従順な娘だと……。
確かにそう見られがちだけど、嫌な事は嫌。私だって自分の意見や判断する意志はある。
大体、自分の思い通りに寄り添ってくれる伴侶なんて、それはお人形でしかない。
「というか、ここは一体どこなんですか?」
「俺の住処だ」
「……この薄暗い、洞窟にしか見えない場所が、ですか?」
「明るい場所や賑やかな場所は……、苦手なんだ」
プラス、引きこもり属性、と。
あまり外に出る事もなく、最近はこの洞窟……、どうやら私が散策していた山のどこかにある場所らしいのだけど、この場所に引きこもって暮らしているらしい。
で、術を使って外の様子を見たりしながら、理想の女性を探していたと語る男性に、私は段々と頭痛を覚えながら額を押さえた。
「はぁ……、とりあえず、外に出ましょうよ。お嫁さん探しはそれからです」
「外に出るのは、面倒なん、――うわあっ!!」
駄々を捏ねる男性に向けて打ち付けた、三色の光からなる強烈な一撃が、彼の顔の横にぼっこりと無残な痕を残す。
私の操る事の出来る力を受け、男性がガクブルと激しくおびえ切った様子で涙を浮かべる。
はぁ……、本当に、外見と中身のギャップが凄い人だ。
けれど、私は奥さんにはなれないし、ここに留まる気もない。
彼の腕を引っ張り立ち上がらせ、強制的に地上へと出て貰う事にした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「嫌だ……っ、外に出るのは、俺は暗いところがいい!!」
「陽の光を浴びて、その引きこもりな所を直してください!!」
洞窟の中に放置して一人で逃げ出せば良かったのかもしれない。
けれど、なんだかこの引きこもりで臆病な男性とみていると……、何とかしなくてはならないという母心にも似た何かが疼いたのだ。
多分この男性は、一人でいる事が寂しくて堪らなくなったのだろう。
自分の世界に閉じ籠ってはいても、誰だって傍に優しい温もりが欲しくなる。
私に狙いを付けるのは勘弁してほしいところだけど、きちんと他の……、そう、押しが強く姐御肌の女性とくっつけてあげれば、脱・引きこもりが出来るはずだ。
それに、暗い場所に籠っていると、目だって悪くなる。
必死に抵抗する彼を引き摺って洞窟の外に出た私は、ふと、奇妙な違和感に襲われた。
確か、この山で散策をしていた時は、……まだお昼にもなっていなかったはず。
それなのに、山中を照らしているのは眩い陽の光ではなく、柔らかなオレンジの世界。
もうすぐ、陽が落ちる……。
「はぁ……、溶けるかと思った~……」
「陽に当たったくらいで溶けるわけがないでしょうに……。それよりも、何でこんなに時間が経っているんですか」
「精霊の領域に入れば、ある程度の時間軸のズレが起こる事もある。というわけで、俺は中にもど、ぐええっ!!」
勝手にまた引き籠ろうとする男性の後ろ襟首を鷲掴み引き留めると、残念な悲鳴が零れた。
そんな事はどうでもいいとして、今この男性は……、精霊、と言っただろうか?
この異世界エリュセードにおいて、精霊の存在は天上の神々と同じく重要な存在だ。
様々な属性の精霊達が世界を巡り、多くの恩恵を与える。
時折悪戯をしたり、予想外の事態を引き起こす事もあるけれど、世界において必要不可欠な存在。
仕方なく私の方に向いてくれた男性の姿は、洞窟内にいた時よりも鮮やかに見える。
漆黒の髪、青い瞳。服装も動きやすそうな黒一色だけど、ところどころに破れも窺えた。
目元には、あ、薄暗い場所では気付かなかったけれど、薄っすらと寝不足みたいなクマが。
引きこもりの上に、寝不足……。生活習慣から見直す必要があるかもしれない。
「薄暗い場所では、男らしいな~的な印象が外見にのみありましたけど、あれ、暗闇限定ですね」
「うぐっ……。仕方がないだろう。闇の精霊は、闇の中でのみ、輝く」
と、グッサリ傷ついた男性は、拗ねたように呟いた。
なるほど……、よくよく観察してみれば、確かに、この人は人間でも、他種族の人でもない。
世界を巡る要素のひとつ、闇の精霊に連なる命だ。
力の強い精霊の類となると、人の姿にもなれるし、世界への干渉力も増す。
けれど、……何故、人外の闇の精霊がお嫁さんを探しているのだろうか。
普通は、同種族の闇の精霊と婚姻するべきところなのに……。
とりあえずそれについて聞いてみると、彼はその場に両手を着いた。
「闇の精霊の女共は……、俺の好みじゃない!!」
「じゃあ、他の精霊種族さんに……」
「一応好みの精霊はいたんだ……。光の精霊だったんだが、……眩しすぎて近づけなかった!!」
「はぁ……、それは、ご愁傷様です」
それで、近づいても大丈夫な人型の種族に興味を向けてみた、と。
一応、精霊と他種族の婚姻は可能と言えば可能だけど……。
人型の種族と添い遂げたいのなら、まず闇の精霊としての生活習慣を何とかしないと駄目だろう。
プラス、お嫁さんが欲しいのなら、外見と中身をしっかり見る目を養わせないと。
う~ん、ルイヴェルさんに相談してみようかなぁ……。多分、物凄く興味ない的な目で溜息を吐かれる可能性大だけど。
「人の娘には心優しい者が多いと聞く。だとすれば、俺の嫁はその中にいるはずなんだっ」
「わかりました、わかりましたから、とりあえず一緒に行きましょう。素敵な姐御肌の女性を見つけ出せるように」
「違ぁあああう!! 俺は、俺は、心優しい美人の娘がいいっ」
「あのですね……。結婚相手というのは、自分の好きに出来る存在じゃないんですよ? お互いに違うからこそ、喧嘩もあったり色々と面倒もありますけど……、心の絆を結んだ先には、幸せな事がいっぱい待っているんですから」
私だって、ルイヴェルさんの全部を受け入れているかと言われれば……。
お願いしますからドSな意地悪や、寝室での無茶ぶりを控えてください!! と、心の底から懇願したくなる時だってある。
ルイヴェルさんだって、私に対して不満や気に入らないところのひとつやふたつあるはずだ。
何もかも好き、にはなれない。ただ、一緒にいる内に、それに慣れたり妥協したり、お互いの距離感を掴んでいく。
だから、良い事尽くめの恋愛も結婚生活も存在しないと教えてあげた結果。
「うぅっ……、恋愛とは、結婚とは、試練の道のりなのかぁあああっ」
「別に試練ばっかりでもありませんよ。良い事もちゃんとありますって」
その場に蹲り地面を叩きつける闇の精霊さん……。
彼にとって恋愛や結婚は、未知の領域だったのだろう。
幸せだけがそこに在ると、引きこもり生活のせいで勘違いしていたらしい。
彼の背中を擦り慰めていた私は、次第に夕暮れの世界が夜の領域に変わり始めた事に気付いた。
ここからは、闇の精霊の力が強くなり、優しい月明りと美しい星々の煌めきが夜空を彩る。
「……あ」
瞬間、気付いてしまった訓練場の皆さんの事!! プラス、可愛いお友達、ファニルちゃん!!
ま、不味い……、絶対に大騒動になって大変な事になっている!!
闇の精霊の領域に引き摺りこまれ、一体どれだけの時間が……、ううん、下手をしたら何日も経っている可能性が。大慌てで術を使い、世界の時間経過を見てみたら、……ほっ。
どうやら散策中の時から何日も経っている、という事態は免れているようだ。
その代わり、今頃最愛の旦那様が……、大・激・怒!!
多分、怒るというか、行方不明になった私を探して多大な心配をしている事は間違いない。
急いで戻らなければ……、と、闇の精霊さんに振り向いた直後。
――私の意識は鈍い痛みと共に暗転した。
――Side 幸希
成熟期と呼ばれる大人の姿へと変化し、あっという間に結婚式を挙げて、早二週間……。
周囲の人達から聞かれる事といえば、新婚生活についての事が多くて、少し困ってしまう。
結婚後は一緒の部屋で寝起きし、朝食と夕食を一緒にとるようになったけれど、それ以外は以前と何も変わらない。
独占欲の強い旦那様だけど、別に私の時間を全て束縛するという事はなく、……とりあえず、寝室での苦労以外は許容範囲で済んでいるのだ。
それに、どちらかというと、離れている時でも旦那様……、ルイヴェルさんの事を考えてしまう私の方が、寂しがり屋なのかもしれない。
というわけで、今日はお昼の差し入れを持って、ウォルヴァンシア魔術師団の演習が行われている場所へと足を向けてみた。
王宮医師としてのルイヴェルさんは沢山見てきたけれど、魔術師団でのお仕事姿を目にする機会はあまりない。
だから、こっそりと陰から旦那様の魔術師団長としてのお仕事ぶりを見学させて貰おうとやってきたのだけど……。
「この『場』では、魔力調整の具合が著しく乱される……。その為、戦闘におけるデメリットは高く、通常であればこの地以外の場所で戦闘を行えばいいだけだが、それが不可能となる場合も考慮に入れて、どれだけ『場』の影響に抗い、自身の魔力を調整出来るか……。今回はそれを課題として訓練を行う」
「それが終わり次第、この『場』を使って模擬戦闘訓練を行います。皆さん、頑張ってくださいね」
一体どんな場所なのだろうかと追いかけて来てみれば、国内でも外れの方にある険しい山の中だった。登る為の整備された山道はあったのだけど、これがまた大変で大変で……。
息切れと共に登り切ると、一面ぼうぼうの草だらけが生えた広い大地が広がる場所に辿り着いた。
ずらりと整列した魔術師団員さん達の背中の向こうには、今日の演習内容を説明しているルイヴェルさんと、その隣に寄り添っている女神様のような女性こと、旦那様の双子のお姉さんであるセレスフィーナさんの眩いお姿が。
王宮医師としての白衣姿も素敵だけど、魔術師団の副団長服を纏ったそのお姿も、妖しい雰囲気がプラスされたようで、とっても素敵です。――セレスフィーナさん!!
と、旦那様の麗しのお姿よりも、そのお姉さんのナイスバディさと何を着ても似合う美しさに見惚れてしまう私だった。
「ニュイ~」
「しー……。あまり大きな声は出さないでね? ファニルちゃん」
腕の中で小さく身じろぎをして地面に飛び降りたのは、私の可愛い友達。
エリュセードの裏側と呼ばれる空間にある国、ガデルフォーン皇国における希少生物で、ファニルという動物だ。
薄桃色のぽっちゃりもふもふボディで、ふさふさの長いお耳と尻尾がとっても愛らしい。
地面の匂いをその小さなお鼻で嗅ぎながら、ファニルちゃんは辺りを見回している。
「ニュイッ!」
どうやら初めて訪れる場所に興味津々らしく、可愛いお友達は早速散策の旅に出てしまった。
私がどこにいても、ちゃんとあの子は戻って来てくれるから心配はないのだけど……。
一人にされてしまったせいで、ちょっぴり寂しい。
茂みの陰に隠れて溜息を吐いていると、魔術師団の訓練が始まったようで、不利な『場』……、ちなみに、『場』というのは、魔力が溜まり込んでいる土地の事を言う。
今回の『場』は、どうやら術者の魔力調整を乱す効果があるらしく、団員さん達は皆真剣に訓練に集中し始めている。
ルイヴェルさんとセレスフィーナさんや、上位と思われる魔術師の人達が指導の言葉をかけては、また別の人へ。
王宮医師の時とは違う、魔術師団長としての厳しい眼差しや、時折聞こえる叱咤の声。
大きな声を出すタイプではないはずの旦那様だけど、これはこれでまた新鮮に感じられる。
漆黒の団長服に、ウォルヴァンシアの紋章が刻まれたそれに、銀の髪がとても綺麗に映えていて……、あの人が自分の旦那様だとは、いまだに夢見心地というか、私が奥さんで本当に釣り合っているのだろうか? そんな自問自答はいつもの事。
ネガティブな気持ちはないけれど、ただ単純に、旦那様のハイスペックさに脱帽の日々なのだ。
「その程度の集中力では、戦闘での応用はまだまだ先だな。いいか? そこの調整は、こう……」
「は、はいっ。ご、ご指導、あ、ありがとうございますっ」
あ、ルイヴェルさんが可愛らしい女の子の肩に手をおいて丁寧な指導を……。
うわ~、気持ちはわかるけど、あんなに真っ赤になって、ビクビクと子ウサギのように震えて……。
(可愛い……)
素直そうで頑張り屋さんな事がすぐわかる金髪の女の子の姿に、思わず胸がきゅんとしてしまう。
あの性格だと、……ウチの旦那様の中でいじめたい&いじりたい症候群がウズウズと湧き上がるのではないだろうか? と思ったのだけど……、あれ? 意外に普通?
女の子の奮闘ぶりにルイヴェルさんが意地悪な発言をする様子はなく、ぽんと彼女の頭を撫でて薄く微笑むだけで、また次の人へ。
団長のお仕事の時は、あえて自分の困った性格を自重しているのだろうか?
(まぁ、職場でも意地悪な事ばかりしていたら、辞職者が多発しそうだし……)
平和でいい、のかな。
茂みの陰にまた顔を引っ込め、私はその場に足を崩してバスケットの中を探る。
今傍にあるのは、自分用の昼食バスケット。残りの差し入れ分は、お散歩中のファニルちゃんの中。あの子の体内は自分の食事用の胃袋とは別に、様々な物を収納しておける異空間を持っている。
だから、ファニルちゃんにお願いして幾つかのバスケットを飲み込んで貰ったのだ。
「もぐ……、ん~、……やっぱりルイヴェルさんは凄いなぁ」
クリームとジャムを挟んだサンドイッチをパクリと頬張り、私はそれを咀嚼しながら頭上に広がる爽やかな空を見上げる。
普段は何てことのない顔をしている旦那様だけど、魔術師団の仕事と王宮医師としての仕事、そのどちらもこなし、時には出張にも出て行く。
あの人の中に溜まり込んだ疲労は、一体どうやって発散されているのか……。
いまだに、最強無敵の旦那様に対する疑問点は尽きない。
指先についたクリームをぺろりと舌先で舐めとり、今度は携帯ポットから準備してきた紅茶をカップに注ぐ。
背後では、ルイヴェルさんの団員さん達を指導している声が心地よく聞こえてくる。
「そういえば、お休みの日は必ず私をどこかに連れて行ってくれるし……、本当に、いつ休んでるの?」
普通の睡眠時間はとっているようだけれど、それ以外は……。
休日は私を連れて城下や他国に行ったり、王宮で過ごす時もずっと私の傍。
それって休んでる事になるのかなぁ……。
なーんて、本人に伝えて距離を取ろうと気を遣ったとしても、逆に怒られるのがオチな気がする。
今度疲労に効く料理や、マッサージに関する事でも勉強してみようかな……。
などと、ぼんやりまったり考えていると、突然耳元で心臓に悪すぎる吐息が触れた。
「一人でピクニックか? ユキ」
「ふにゃぁっ!!」
予期せぬ事態に奇妙な声をあげてしまった私を、背後から伸びてきた両腕ががっしりと捕らえにかかってくる。ギギッと顔を左に向ければ、……あぁっ、銀フレームの眼鏡越しに愉しそうなドSの深緑が!! じたばたと暴れてみせるけれど、旦那様から逃げられるわけもなく。
茂みの陰に腰を下ろしたルイヴェルさんが、バスケットの中に手を伸ばしてきた。
「さしずめ、差し入れを口実に俺の様子を見に来た、というところか? 奥さん」
ククッと喉の奥で含み笑いをされている横で、私は飛び上がった心臓から伝わってくるドキドキとし過ぎる鼓動に翻弄されながら顔を地面に伏せて呼吸を整えている。
び、吃驚した……!! 心底吃驚して、口から心臓が出そうな表現を体感したような気分!!
仕掛けてきたご本人は何に動じる事もなく、私の作ったチルフェートクリーム、チョコに似た味のそれを挟んだサンドイッチを食べている。
ま、魔力反応を悟られないように消してきたつもりなのに……、まさか気付かれていたなんて。
「ど、どうして私がいる事にお気づきで?」
「魔力反応を消しても、茂みから顔が出ていたからな。普通は気付くだろう? というか、王宮を出た時から気付かないフリをしてやっていたんだがな?」
「うぅっ、……ど、どこまで凄いんですかっ」
「あえて言うならば……、そうだな。夫だから、で全部片付けておけ」
アバウト過ぎますよ!!
地面を拳で打ち付け、悔しそうに唸る私の後ろ襟首を、旦那様がクイッと指先で引っ張り、こっちを向けと促してくる。
絶対にバレないと自信を持って追いかけて来たのに……、ああっ、また負けた!!
悔しさのあまりそっぽを向いていると、背後で愛しの旦那様が不機嫌になる様子が寒気と共に……。
「ユキ、こっちを向け」
「お、お仕事中の旦那様のお邪魔は出来ませんので!! どうぞお戻りくださいっ」
「ほぉ……。健気な妻の為に仕事を抜け出して相手をしてやろうという夫の気遣いに背を向けるのか?」
「た、頼んでません!! ほ、ほらっ、皆さんが探してますよっ。戻ってあげてくださいったら」
バレた事も不満だったけれど、それよりも、人の心臓を緊急停止させるような驚かせ方をした旦那様の腕の中に飛び込むのは癪だったから、私はその場を逃げ出そうとバスケットの持ち手を掴みかけた、――その時。
「あ、あれ……、な、なんでっ」
バスケットの持ち手に触れる寸前、ピタリと石のように動かなくなった私の身体。
原因は考えるまでもない。背後で冷たい目を向けてくる魔術師団の団長様が何かしたのだ。
しかも、動きを止められただけじゃなくて、身体が勝手にルイヴェルさんの方に向かい始める。
「うぅっ、ひ、卑怯です、よ!! うぐぐぐぐっ」
「ふぅ、つれない妻を振り向かせるのも苦労が伴うな」
ぽふん……。来い来いと両手を広げ、片足を立てて座り込んでいる大魔王様の胸に、身体が自分から倒れ込んでいく。
漆黒の団長服から、ほんのりとシトラスに似た香りが鼻を擽って……。
悔しいけれど、旦那様の懐は昔から心地良くて困りものだ。
幼かったあの頃も、私はルイヴェルさんの腕の中にいるのが好きで、今とは違い、自分からこの人の事を追いかけていたような気がする。
「せ、せめて、私が自分から出てくるまで知らないフリをしてくれても……」
ようやく身体に自由が戻り、余裕に満ちた笑みを浮かべている旦那様を見上げながらそう抗議すると、零れ落ちて来たのはさらに深まった意地悪な気配。
「幼い時のお前は、わざと見つけられないフリをしてやると、何故見つけてくれないんだと大泣きして俺に抗議したものだがな?」
「うっ……」
それはきっと、昔一緒に遊んだかくれんぼの事を言っているのだろう。
すぐに私の事を見つけてしまう『ルイおにいちゃん』に怒った私は、次こそ見つからない所に隠れる!! と宣言して……、三時間ほど王宮の厨房に隠れ続けた、というか、放置されていた。
見つからないように隠れたつもりなのに、大好きな『ルイおにいちゃん』に見つけて貰えなくて、大粒の涙を零しながら料理長さんに連れられて王宮医務室に戻った、ら……。
「そういえば、あの時のルイヴェルさんは……、魔術書片手にソファーで寛いでましたよね?」
「お前が見つけるなと言っていたからな。その望み通りにしてやっただけだが? まぁ、案の定膨れっ面で泣きながら帰って来たお前は……」
そこで、思い出し笑いをするように含み笑いをしないでほしい。
この鬼!! ドS!! と、ポカポカ旦那様の胸を拳で叩いても、ダメージはゼロ。
私が怒っているのに、ルイヴェルさんはとても嬉しそうで……。
「きょ、今日のは、かくれんぼじゃないんですよっ。それなのに、あ、あんな驚かせ方をしてっ。ルイヴェルさんのせいで心臓が止まったらどうしてくれるんですかっ」
冗談じゃなく、本気で止まりそうだったんですよ!!
そんな私に、ルイヴェルさんは愉し気に鼻で笑ってきた。
「その場合は……、愛する妻の為に、夫として奇跡の口づけと共に治療をしてやるとするか」
「――っ!!」
心臓止めてる場合じゃない!!
ニヤリと大魔王モードに入っている旦那様からクイッと顎を持ち上げられた私は、全身にぞぞぞぞぞぞぞっと本能の警鐘反応が妖しい疼きと共に走り抜けた。
世界で一番安心出来る最愛の旦那様の腕の中なのに、本当に一瞬たりとも油断出来ない!!
と、二人で傍(はた)から見ればじゃれ合っている構図を繰り広げていると、――あ。
「ル~イ~ヴェ~ルゥ~……!」
仕事をサボっている団長様の背後に現れた、恐ろしい怒りの気配が揺らめく女神様のお姿。
容赦なく振り上げられた右拳が、ルイヴェルさんの頭を問答無用で打ち付けにかかった。
敵との戦闘であれば簡単にその一撃をお見舞いされる事はないのだろうけれど、大切にしている双子のお姉さん相手には、――ゴンッ!
「ユキ姫様が来て下さって浮かれているんでしょうけど……、今は仕事中! なのよ? 少しは団長らしく分別をつけなさい!!」
「痛ぅ……、手厳しいな、セレス姉さんは。仕方ない、仕事に戻るとするか……。ユキ、二時間ほどしたら、休憩をとる。それまでは見学でも散歩でも、好きに過ごすといい」
「あ、は、はい」
意地悪をされていた私の分まで仇を取ってくれたように思える、女神様の一撃。
そのスカッとした光景を見て気分が晴れた私は、仕方なく立ち上がり微笑んだルイヴェルさんに頭をひと撫でされ、麗しき双子姉弟の去って行く様を見送る事になったのだった。
そして……、見学の最中に山の中を散策し始め、思わぬ事態に巻き込まれる事になる。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
それは一瞬の事。
山の中でファニルちゃんと合流した私は、とんでもないハプニングに見舞われていた。
先を行く薄桃色のぽっちゃりボディを追いかけ、茂る木々の中を進んでいると……。
「きゃああああああああああああああ!!」
「ニュイぃいいいいいいいい!?」
不意に覚えた、ぼこりという足元の異変。
その直後に私の身体へと襲いかかったのは、床が抜けるかのような浮遊感と、視界の中を大きく傾いだ山中の静かな景色。
――落ちる。そう悟った時にはもう何も間に合わず、私は真っ暗な闇の中へと飲み込まれていった。
――……。
「ふむ……。どれだけ見ても飽きない愛らしさだ」
なんだろう……。指で頬を突(つつ)かれているような感触が伝わってくる。
聞き覚えのない、男性と思われる……、艶を含んだ低い声。
土の匂いを濃く感じられる場所の気配と、誰かの温もりで包まれている自分の身体。
ゆっくりと瞼を開いた私の目に飛び込んで来たのは、……真っ黒な髪の、……誰?
好奇心に溢れた青の双眸が私の顔を覗き込んでいる。
「うむ、やはり俺の目に狂いはないな」
「あ、の……」
ルイヴェルさんと同じくらいの、二十代前半程の顔立ちはとても綺麗で、どちらかといえば、男らしい魅力を抱く人だと思える男性。この人は、誰?
髪型は出会った最初の頃のカインさんと似ているけれど……、その黒髪の頭には。
「翼……?」
本物なのかはわからないけれど、男性の頭の両サイドからは、真っ白な鳥の翼のような物が生えているように見えた。ぼーっとしながらその翼、片翼のようなそれに触れてみると、男性が擽ったそうに身動ぎをしてみせる。
「んっ、……積極的な女だな」
「ご、ごめんなさい……。あの、この翼みたいなのは、本物、ですか?」
「あぁ、正真正銘生まれつきのものだ。別にこれで飛べるわけではないのだが、別にあっても不便ではないな」
「そう、ですか……。あの、貴方は……」
その腕の温もりから離れようとすると、男性は私を逃がさない為か、ぎゅっと強く抱き締めてきた。目を瞬く私の額へを指先でなぞり、次に触れたのは……、柔らかな感触。
「娘よ、そなたの名が聞きたい。我が妻となる、愛らしき者」
「……はい?」
今何か……、意味はわかるけど、その理由が全然わからない言葉が飛び出て来たような気が。
ニッコリと笑ったその顔は、どこか幼く見えて可愛いと思えたけれど……。
私は男性の胸を押し返し、全力で首を横に振った。
「ごめんなさい!! 既婚者です!!」
「なっ!!!!!! き、既婚者……、そ、そなたには、も、もう、心に決めた伴侶が……。い、いや、既婚者でも構わん!! 離縁して、俺の嫁になれば良いんだからな!!」
「自分勝手にもほどがありますよ!! 大体、好きでもない人の為に離婚なんて出来ません!!」
あぁ、吃驚した……。
出会って突然プロポーズなんて、常識はずれにもほどがあるもの。
それにこの人、自分勝手な事を言ったくせに……、私が怒鳴りつけると、ビクッと子犬みたいに震えて涙ぐみ始めてしまう始末。
外見はどう見ても、某竜の皇子様ことカインさんのように俺様的な気配がするのに、まさかの中身がヘタレ気味、と。多分このタイプは、乱暴な真似はしないと思うのだけど……。
「とりあえず、離れましょう。話はそれからです」
「嫌だあああっ!! ようやく俺好みの嫁を見つけたんだぞ!! 一緒に添い遂げたい!! 添い遂げたい!!」
「既婚者ですから無理です。それと、私の旦那様はとぉぉおおおっても怖い人! なので、無理強いをしたり、下手な真似をすると……。あの世に送られますよ」
「あ、あの世……。それほどまでに、恐ろしい男、なのか? そなたの夫は」
大魔王級です、と、私にしては不気味な笑顔と共に伝えて差し上げると、正体不明の男性はサアァァァァァッと一気に青ざめて……、私を解放して一人洞窟的な通路の片隅で膝を抱えてしまった。
「大魔王は……、困る。だが、俺は嫁が欲しい。俺だけを見て、俺だけを想ってくれる、生涯の伴侶が」
落とし穴にでも落ちたのかと最初は思っていたけれど、どうやら足元が崩れた気がしたのは、この男性が空間に穴をあけて、自分の許に招き寄せた、のは確か……。
けれど、我儘な態度とは裏腹に、何故か臆病極まりない面もあり、ギャップのある人だなぁ。
でも、悪い人ではなさそうだし、……う~ん。
「あの、お名前を聞いてもいいですか?」
「伴侶となってくれない者に教える気はない」
「じゃあ、不審者さんって呼びますよ? いいんですね?」
「うぐっ……。お、大人しそうな顔をしているくせに、意外と押しが強いタイプだな……。イメージが違い過ぎるじゃないか!! 詐欺だ!!」
人の内面を知りもせずに結婚したいだの言う人に言われたくはない。
どうやらこの誘拐犯としか言えない男性は、山の中を散策中だった私を見つけ、自分好みの相手だと思い込んでしまったのだとか。
容姿を基本に、大人しくて素直、従順な娘だと……。
確かにそう見られがちだけど、嫌な事は嫌。私だって自分の意見や判断する意志はある。
大体、自分の思い通りに寄り添ってくれる伴侶なんて、それはお人形でしかない。
「というか、ここは一体どこなんですか?」
「俺の住処だ」
「……この薄暗い、洞窟にしか見えない場所が、ですか?」
「明るい場所や賑やかな場所は……、苦手なんだ」
プラス、引きこもり属性、と。
あまり外に出る事もなく、最近はこの洞窟……、どうやら私が散策していた山のどこかにある場所らしいのだけど、この場所に引きこもって暮らしているらしい。
で、術を使って外の様子を見たりしながら、理想の女性を探していたと語る男性に、私は段々と頭痛を覚えながら額を押さえた。
「はぁ……、とりあえず、外に出ましょうよ。お嫁さん探しはそれからです」
「外に出るのは、面倒なん、――うわあっ!!」
駄々を捏ねる男性に向けて打ち付けた、三色の光からなる強烈な一撃が、彼の顔の横にぼっこりと無残な痕を残す。
私の操る事の出来る力を受け、男性がガクブルと激しくおびえ切った様子で涙を浮かべる。
はぁ……、本当に、外見と中身のギャップが凄い人だ。
けれど、私は奥さんにはなれないし、ここに留まる気もない。
彼の腕を引っ張り立ち上がらせ、強制的に地上へと出て貰う事にした。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「嫌だ……っ、外に出るのは、俺は暗いところがいい!!」
「陽の光を浴びて、その引きこもりな所を直してください!!」
洞窟の中に放置して一人で逃げ出せば良かったのかもしれない。
けれど、なんだかこの引きこもりで臆病な男性とみていると……、何とかしなくてはならないという母心にも似た何かが疼いたのだ。
多分この男性は、一人でいる事が寂しくて堪らなくなったのだろう。
自分の世界に閉じ籠ってはいても、誰だって傍に優しい温もりが欲しくなる。
私に狙いを付けるのは勘弁してほしいところだけど、きちんと他の……、そう、押しが強く姐御肌の女性とくっつけてあげれば、脱・引きこもりが出来るはずだ。
それに、暗い場所に籠っていると、目だって悪くなる。
必死に抵抗する彼を引き摺って洞窟の外に出た私は、ふと、奇妙な違和感に襲われた。
確か、この山で散策をしていた時は、……まだお昼にもなっていなかったはず。
それなのに、山中を照らしているのは眩い陽の光ではなく、柔らかなオレンジの世界。
もうすぐ、陽が落ちる……。
「はぁ……、溶けるかと思った~……」
「陽に当たったくらいで溶けるわけがないでしょうに……。それよりも、何でこんなに時間が経っているんですか」
「精霊の領域に入れば、ある程度の時間軸のズレが起こる事もある。というわけで、俺は中にもど、ぐええっ!!」
勝手にまた引き籠ろうとする男性の後ろ襟首を鷲掴み引き留めると、残念な悲鳴が零れた。
そんな事はどうでもいいとして、今この男性は……、精霊、と言っただろうか?
この異世界エリュセードにおいて、精霊の存在は天上の神々と同じく重要な存在だ。
様々な属性の精霊達が世界を巡り、多くの恩恵を与える。
時折悪戯をしたり、予想外の事態を引き起こす事もあるけれど、世界において必要不可欠な存在。
仕方なく私の方に向いてくれた男性の姿は、洞窟内にいた時よりも鮮やかに見える。
漆黒の髪、青い瞳。服装も動きやすそうな黒一色だけど、ところどころに破れも窺えた。
目元には、あ、薄暗い場所では気付かなかったけれど、薄っすらと寝不足みたいなクマが。
引きこもりの上に、寝不足……。生活習慣から見直す必要があるかもしれない。
「薄暗い場所では、男らしいな~的な印象が外見にのみありましたけど、あれ、暗闇限定ですね」
「うぐっ……。仕方がないだろう。闇の精霊は、闇の中でのみ、輝く」
と、グッサリ傷ついた男性は、拗ねたように呟いた。
なるほど……、よくよく観察してみれば、確かに、この人は人間でも、他種族の人でもない。
世界を巡る要素のひとつ、闇の精霊に連なる命だ。
力の強い精霊の類となると、人の姿にもなれるし、世界への干渉力も増す。
けれど、……何故、人外の闇の精霊がお嫁さんを探しているのだろうか。
普通は、同種族の闇の精霊と婚姻するべきところなのに……。
とりあえずそれについて聞いてみると、彼はその場に両手を着いた。
「闇の精霊の女共は……、俺の好みじゃない!!」
「じゃあ、他の精霊種族さんに……」
「一応好みの精霊はいたんだ……。光の精霊だったんだが、……眩しすぎて近づけなかった!!」
「はぁ……、それは、ご愁傷様です」
それで、近づいても大丈夫な人型の種族に興味を向けてみた、と。
一応、精霊と他種族の婚姻は可能と言えば可能だけど……。
人型の種族と添い遂げたいのなら、まず闇の精霊としての生活習慣を何とかしないと駄目だろう。
プラス、お嫁さんが欲しいのなら、外見と中身をしっかり見る目を養わせないと。
う~ん、ルイヴェルさんに相談してみようかなぁ……。多分、物凄く興味ない的な目で溜息を吐かれる可能性大だけど。
「人の娘には心優しい者が多いと聞く。だとすれば、俺の嫁はその中にいるはずなんだっ」
「わかりました、わかりましたから、とりあえず一緒に行きましょう。素敵な姐御肌の女性を見つけ出せるように」
「違ぁあああう!! 俺は、俺は、心優しい美人の娘がいいっ」
「あのですね……。結婚相手というのは、自分の好きに出来る存在じゃないんですよ? お互いに違うからこそ、喧嘩もあったり色々と面倒もありますけど……、心の絆を結んだ先には、幸せな事がいっぱい待っているんですから」
私だって、ルイヴェルさんの全部を受け入れているかと言われれば……。
お願いしますからドSな意地悪や、寝室での無茶ぶりを控えてください!! と、心の底から懇願したくなる時だってある。
ルイヴェルさんだって、私に対して不満や気に入らないところのひとつやふたつあるはずだ。
何もかも好き、にはなれない。ただ、一緒にいる内に、それに慣れたり妥協したり、お互いの距離感を掴んでいく。
だから、良い事尽くめの恋愛も結婚生活も存在しないと教えてあげた結果。
「うぅっ……、恋愛とは、結婚とは、試練の道のりなのかぁあああっ」
「別に試練ばっかりでもありませんよ。良い事もちゃんとありますって」
その場に蹲り地面を叩きつける闇の精霊さん……。
彼にとって恋愛や結婚は、未知の領域だったのだろう。
幸せだけがそこに在ると、引きこもり生活のせいで勘違いしていたらしい。
彼の背中を擦り慰めていた私は、次第に夕暮れの世界が夜の領域に変わり始めた事に気付いた。
ここからは、闇の精霊の力が強くなり、優しい月明りと美しい星々の煌めきが夜空を彩る。
「……あ」
瞬間、気付いてしまった訓練場の皆さんの事!! プラス、可愛いお友達、ファニルちゃん!!
ま、不味い……、絶対に大騒動になって大変な事になっている!!
闇の精霊の領域に引き摺りこまれ、一体どれだけの時間が……、ううん、下手をしたら何日も経っている可能性が。大慌てで術を使い、世界の時間経過を見てみたら、……ほっ。
どうやら散策中の時から何日も経っている、という事態は免れているようだ。
その代わり、今頃最愛の旦那様が……、大・激・怒!!
多分、怒るというか、行方不明になった私を探して多大な心配をしている事は間違いない。
急いで戻らなければ……、と、闇の精霊さんに振り向いた直後。
――私の意識は鈍い痛みと共に暗転した。
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