ウォルヴァンシアの王兄姫~淡き蕾は愛しき人の想いと共に花ひらく~

古都助(幸織)

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第二章『竜呪』~漆黒の嵐来たれり、ウォルヴァンシア~

穏やかな昼間と三つ子&訪問者!

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 幸希が気になる声を聞いた晩、再び夢の中へと堕ちた頃……。
 ウォルヴァンシアの城下町から少し離れた場所に位置する山の中、竜の第三皇子カインは、一人その肩を震わせながら自分の手を見下ろしていた。
 ぐっしょりと、大量の血に塗れた竜の手……、肉を抉った感触が色濃く残っている。
 周囲には、先ほどまでカインの命を奪おうと刃を向けていた哀れな刺客達が息絶えていた。

「くっ……、はぁ……はぁ」

 刺客達を殺さないという選択肢はカインの中には存在していない。
 彼に戦う力を与え教え導いた師とも呼べる人物の口癖……。
 敵に情けをかければ、いずれ仇となってそれは自身の身を引き裂く。
 それをずっと覚えているから、カインは刺客達を生かしては返さない。
 命を奪う事に抵抗を覚えなくなったのは、いつからだっただろうか……。
 何度も何度も仕掛けられてきた暗殺の手、それを退ける為に揮った竜の力。
 うんざりするほどに相手をしてきた、数えきれないくらいの刺客達……。
 もう何人殺したかさえ、カインは覚えていない。
 これからも……、この竜の力を向け、襲い来る者達の命を奪うだけ……。

「面倒くせぇ……」

 他国に来たのを良い機会だと捉え、遊学期間が終わり次第雲隠れしようと思っていたのに……。
 まさか、自国に居る時よりも、多くの刺客に狙われる羽目になるとは……。
 カインは、竜の形状をした自分の手を見つめ、うんざりだ……と呟き吐息を吐き出した。
 イリューヴェル皇帝の行使する魔力により、定められた期間はウォルヴァンシア王国内から出る事は出来ない。けれど、それが解ければ……、今度こそ、『自由』を手に入れられるかもしれない。
 母親である皇妃には怯えられ、皇宮の者達からは自身が望んだ通りに厄介者として疎まれている自分……。本当なら、もっと早くにイリューヴェル皇国を出るべきだったのだろう。
『要らない存在』の第三皇子……、生まれ堕ちた瞬間から疎まれた我が身……。

「くそ……」

 竜手の中に舞い落ちた葉を握り潰したカインは、ゆっくりと夜空を見上げた。
 物言わぬ闇夜に輝く星々の光と、この世界、エリュセードを加護する神々の化身である三つの月……。カインの胸中にある葛藤も、淀んだ暗い感情も……神々が救ってくれることはない。
 ただ穏やかに……、彼の血に塗れた姿を……、照らし出すだけだった……。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 ――Side 幸希

 ロゼリアさんには聞こえなかった不思議な『声』……。
 私にだけ聞こえたその『声』から一晩が明けた。
 部屋のベッドに戻り、夕陽色の狼に変じていたロゼリアさんともう一度瞼を閉じてからは、――あの声が聞こえてくる事はもうなかった。


 翌日、私はロゼリアさんの添い寝のお蔭でぐっすりと眠る事が出来た身体を起こした。
 隣接している別室に足を向け、顔を洗って身支度を整える。

「ユキ姫様、お茶の準備が出来ております。こちらへどうぞ」

 もう着慣れてしまった異世界の服を身に纏い、部屋に戻ると、ロゼリアさんがお茶の支度をしてくれていた。本当は、ロゼリアさんの任務は夜の添い寝だけなのだけど、護衛の交代にアレクさんが私の部屋を訪れるまでは、こうやって傍に留まり続けてくれている。

「ロゼリアさん、いつもすみません。毎朝、お茶の用意までして頂いて……」

「いいえ、気になさることはありませんよ。ユキ姫様と朝のティータイムをご一緒出来る時間は、私にとって、とても栄誉な事ですから」

「ロゼリアさん……、ありがとうございます」

 薄桃色のテーブルクロスが敷かれたテーブルに腰かけると、添い寝の翌日に、必ずロゼリアさんが淹れてくれる香りの良いお茶が用意されていた。
 ティーカップを手にとり、一口……。
 舌にすぅっと馴染む仄かな甘味、喉の奥を通った後のすっきりとした感触。
 寝起きの頭に残っていた眠気が会っという間に晴れていく。

「ロゼリアさんの用意してくれたこのお茶。いつ飲んでも、とっても美味しいですよね……。朝の一口にぴったり! です。確か、このお茶に使われている茶葉の名前は……」

「チェリシーヌという葉を使っております」

「そうでした! ありがとうございます、ロゼリアさん。この前聞いたのに、中々名前が出て来なくて……。これ、とてもすっきりとしていて、飲みやすいですよね」

「私の実家のルートで手に入る茶葉なのですが、ユキ姫様のお口に合っているようで、何よりです」

 私に感想に、ロゼリアさんが嬉しそうに微笑んだ。
 彼女の実家は、『カーネリアン茶葉店』といって、茶葉の専門店をやっているらしい。
 お茶に関する知識は勿論、用途別に的確な茶葉を選ぶ能力にも恵まれているロゼリアさん。
 つまり……、私のすぐ傍にお茶のエキスパートさんがいたというわけです!
 流石に、教えて貰った時は吃驚した。
 茶葉専門店の娘さんが騎士さんになっているなんて、誰が思えるだろう。
 ロゼリアさんは、普段からとても凛々しく頼もしい落ち着いた素敵な騎士様だ。
 そんな彼女がお店に立って、『いらっしゃいませ~』と言っているイメージは、中々想像出来ない。

「ユキ姫様が望んでくださるなら、私はいつでもお茶を淹れに参ります。ですから、遠慮なくお呼びくださいね」

「ありがとうございます!!」

 この申し出には、すぐにお礼の言葉と共に大きく首をこくりと頷かせた。
 迷う暇もないくらい、私はすっかりロゼリアさんの淹れてくれるお茶の虜になっていたから、そうやって言ってくれることに、大きな喜びを覚える。
 やっぱり、お茶の事を知り尽くしている人が淹れてくれるものは格別なんだもの。
 その誘惑に抗えるわけはない。
 ロゼリアさんと二人、女性同士の時間を楽しみながらお茶に関する話を聞いていると、不意に扉をノックする音が響いた。

「ユキ姫様、私が参ります」

 扉へと向かったロゼリアさんが、訪問者を部屋へと招き入れる。
 朝の陽差しを受けて輝く銀の色の主であるアレクさんだ。

「ユキ、おはよう。昨日はよく眠れたか?」

「おはようございます、アレクさん。ロゼリアさんのお蔭でぐっすりでしたよ」

「そうか。お前の眠りが守られたのなら、幸いだ」

 私の前に立ち、頭を優しく撫でてくれたアレクさんの手にひらの感触に身を預けていた私は、ふと、見上げた先に映ったアレクさんの表情に違和感を覚えた。

「アレクさん……、もしかして、具合が悪いんじゃないですか?」

 じっとアレクさんの顔を観察し終えた私は、笑みの下に浮かぶ疲労の気配を指摘した。
 ロゼリアさんも私と同じように、アレクさんの様子を窺い見て眉を顰める。

「副団長、まさかとは思いますが……、徹夜などされませんでしたか?」

「徹夜というほどじゃない。ただ、溜まっていた案件を深夜に片付けていただけだ。体調に異常もないし、気にする事はない」

「お聞きしますが……、何時までそれをされていたのですか?」

 じと……と、ロゼリアさんの眼差しが剣呑な光を帯びる。
 アレクさんの蒼い瞳が、気まずそうに別方向へと視線をずらす。

「アレクさん、本当の事を言ってください」

「副団長……」

「……あ、……朝の、五時まで……やっていた」

 観念したように吐き出された事実に、私は心の中で悲鳴を上げた。
 どうしよう……、私のせいだ。
 朝から就寝前まで、アレクさんは私の護衛の任を引き受けてくれている。
 騎士団の仕事は必要最低限になってはいるけれど、だからといって全てが免除になるわけじゃない。アレクさんじゃないと出来ない仕事だってあるだろうし、それをこなす為に睡眠時間を削る事になったのではないだろうか。

「アレクさん、今日はもう帰って休んでください。私の事なら大丈夫ですから、きちんと睡眠を……」

「断る」

「なんで即答なんですか!! しかも迷いが一切なかったですよ、今!!」

 間髪入れずに真顔で言わないでほしい。
 私はアレクさんに、そこまで無理をして護衛騎士をしてほしいなんて思っていないのに……。
 身体は大事なんですよ? 睡眠時間だって馬鹿に出来ないんですよ?
 寝る子は育つというか、あ、アレクさんはもう十分すぎるほど育ってますけど……。
 と、とにかく、徹夜明けの人に守ってもらうのは絶対にご遠慮願いたい。
 途中で倒れてしまったら、それこそ、私は自分を許せないから……。

「俺はユキの護衛騎士だ。いつ何時も、お前を守るために傍に在るのが仕事だ」

「じゃ、じゃあ、そうだ、こうしましょう!! 私は今日一日、外出を控えます。この部屋でのんびり過ごします。だから、護衛騎士を一日お休みしてください」

「駄目だ」

「だから、少しくらい迷ってくださいよ!! 部屋の中にいるだけですよ? 何も危険な事なんて起こりません!!」

「俺がいない間に、もし……、この部屋に『あの男』が来たらどうするつもりだ? お前があの男に害されるかもしれないと思うと……、休む気にもならない」

 どこまで心配性で頑固なの、アレクさん!!
 この思い詰めた表情といい、彼の頭の中で、私は一体どんな目に遭っているというの……。
 だけど、ここで引き下がるわけにはいかない。
 私は瞳に力を込めて、さらなる追撃を開始した。

「アレクさんが心配してくれる気持ちはとても嬉しいです。でも、イリューヴェルの第三皇子様は、今日も勉強漬けのはずですよ。だから、こんな所にまでは来ません!!」

「ユキ、少しでも可能性がある以上、注意はしておくべきだ。あの男がこの王宮にいる限り、俺は気を抜くつもりはない」

 頑固ここに極まれり!!
 じっと負けないようにアレクさんと見つめ合っていた私は、揺らぐ事のない鉄壁の意志に負けた。
 これはもう、何を言っても引き下がる事はないだろう。
 アレクさんの騎士魂の強さに、私は思わず目許に悔し涙を浮かべる。
 その時、私達の様子を見守っていたロゼリアさんが、追加で淹れたお茶をアレクさんに差し出すのが見えた。

「副団長は一度決めたら譲りませんからね……。ですから、私からひとつ提案をいたしましょう」

「ロゼ?」

「今日一日、私がユキ姫様の護衛を引き受けさせて頂きます」

「しかし……、お前にも騎士団の仕事があるだろう?」

「幸いな事に、私には急ぎの仕事が入っていません。稽古やその他の雑務については、別の者に任せれば済む話です」

「いいんですか、ロゼリアさん?」

 今度はロゼリアさんに迷惑をかけてしまうのではと不安げに視線を向けると、
 彼女は確かな頷きを私に返してくれた。

「このまま副団長に無理を強いる方が、後々面倒ですからね。さぁ、自室へお引き取りください、副団長」

「だが……」

 まだ不安があるのか、私に物言いたげな視線を寄越したアレクさんに、心配はないと笑顔を返す。ロゼリアさんもいるのだし、安全度は格段に増したと言ってもいいだろう。

「わかった……。お前達の言う通りにしよう。だが、くれぐれも『あの男』には注意しておいてくれ」

「了解しました」

 観念したアレクさんが、溜息と共に私達に背を向けた。
 これで、徹夜明けの身体をゆっくりと休ませることが出来るだろう。
 手を振って「ゆっくり休んでくださいね~」と伝えた私は、ロゼリアさんと一緒に一日を過ごす事になった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 朝の内に、ロゼリアさんに付き添って貰って王宮図書館に行った私は、返却用の本を受付で返し、新たに別の本を借りてきた。
 ロゼリアさんと二人でお茶を飲みながら、それぞれに借りてきた本を見ながら時を過ごす。
 自分の部屋に行動範囲を抑えておけば、イリューヴェルの第三皇子様に会う事もないし、
 ロゼリアさんの負担を増やす事もない。
 そう安堵して、穏やかな午後の時間を楽しんでいたのだけれど……。

「「「ゆ~き~ちゃ~ん~、あ~そ~ぼぉ~!!」」」

 テラスの方から聞こえてきた可愛らしい声に、私は席を立った。
 この声は、三つ子ちゃん達かな……。
 外窓の鍵を外し、予想通りの小さな可愛い訪問者三人に視線を向ける。

「こんにちは。部屋にどうぞ」

 と、中に入るように声をかけたのだけど、どうしたんだろう。
 三つ子ちゃん達が、後ろを振り返ったまま動かない。
 その視線の先に何があるの……?
 私もそれを追い、部屋の近くにある回廊を見遣った。

「……」

「どうされました、ユキ姫様?」

 一度、回廊から強制的に視線を外す。
 ……今、あそこに……物凄く見たくない人の顔を見た気がする。
 気のせいかな? 見間違い?
 そう思ってみても、現実は容赦なく私の前に突き付けられていく。

「「「かい~ん、こっちくるのぉ~!!」」」

 三つ子ちゃん達が、小さな手足を動かして彼の許へと駆け寄っていく。
 回廊の柱に寄りかかっていた彼、……漆黒の肩より長いクセのある髪と、真紅の瞳を持つ男性。
 イリューヴェルの第三皇子様、カインさんの服の裾をグイグイと引っ張った三つ子ちゃん達が、純真無垢な笑顔を浮かべて、こちらへと連れて来る……!!

(あぁぁっ、何で連れて来ちゃうのっ、三つ子ちゃん!!)

 いっそ今すぐ部屋に避難して外窓の鍵を閉めたい。
 だけど、三つ子ちゃん達を悲しませるわけには……っ。
 ぐるぐると悩んでいる間に、あっという間に私の目の前には第三皇子様が連れて来られていた。

「……こ、こんにちは」

「俺になんか会いたくもなかったって顔だな? 言っとくが、別に来たくて来たわけじゃないぜ? ガキ共が、勝手に俺を引っ張ってここまで連れて来ただけだ」

「会いたくなくなるような事をしたのは、貴方じゃないですか……っ」

 前回、王宮図書館の奥で三つ子ちゃん達とお昼寝をしていたシーンを知っているから、多分、どこかで仲良くなったんだろうな~とは思っていたけれど、まさか、私の部屋までこの人を連れて来てしまうとは思わなかった。
 予想外すぎて、この場で頭を抱えてしゃがみ込みたくなる衝動をぐっと堪える。

「キスしてやった事、まだ怒ってんのか? 根に持つ女は、モテねぇぞ?」

「だから、どうしてそういう風に、人の嫌がる事を平気で言えるんですかっ」

 面白がるように喉の奥で笑った第三皇子様に、私は拳をぐっと震わせる。
 人の気持ちを逆撫でして、わざと怒らせようとしてくるかのようなこの言動っ。

「またあの時みたいに怒りに任せて、俺を平手打ちか? まぁ、今度はタダで殴られてやる気はねぇけどな」

「――っ!!」

 私の鼻先をからかうようにチョンと指先で小突いた第三皇子様に、ピキリと頭の中で、ある種の感情が刺激されたのを感じた。
 最初の出会いの時は、不快感と嫌悪感をもたらしてくれたこの人だけど、憩いの庭園で再会した時には、激しい怒りの感情を私に植え付けた。
 あの時と同じ苛立ちが、沸々と胸の奥に沸き上がっていくのを感じる……。

「ゆきちゃ~ん……、なんでおこってるのぉ~?」

「おかお、こわいよぉ~」

「おこっちゃいや~」

 三つ子ちゃん達の怯えた声に、私はすぐさま我に返った。
 今にも泣き出しそうな不安げな顔つきで、私を見つめる愛らしい三つの同じ顔。
 深呼吸をして、どうにか自分の気持ちを落ち着けると、私は三つ子ちゃん達の許に膝を着いた。

「ごめんね? もう怒ってないからね」

「うぅ~、ゆきちゃん、かいんのこと、きらいなのぉ~?」

「かいん、ゆきちゃんにいじわるいっちゃだめなのぉ~」

「ゆきちゃんとかいん、なかよくしないと、めっ、なのぉ~」

 うっ……。なんて無垢で悪意のない言葉を放つの三つ子ちゃん達……!!

「勘違いすんなよ? 俺は別にこいつの事を嫌ってない。俺が一方的に嫌われてるだけの話だ」

「その原因を作ったのは貴方でじゃないですか……っ」

「ゆきちゃん、また、こわいおかお~!!」

「おこらないでぇ~!!」

「かいんとなかよくして~!!」

 だから、どうして私一人が悪者みたいになるんだろう……。
 可愛い三つ子ちゃん達を前に、私が完璧に白旗を上げる様を、第三皇子様は愉しげに見下ろしている。もうこうなると、私に打てる手など何も存在しない。
 三つ子ちゃんの一人を抱え上げ、「俺は仲良くしたいと思ってるのに、酷いよなぁ~?」って……。第三皇子様、子供達を味方につけて、私に不利な状況に持ち込むのをやめてくださいっ。

「「「ゆきちゃ~ん、かいんとなかよくしてあげて~」」

 駄目押しとばかりに、可愛らしい三重奏が響き渡る。
 三つ子ちゃん達は完全に第三皇子様の味方についてしまったらしい。
 私の傍に縋り着いた三つ子ちゃん達が、さらに続けてくる。

「「「なかよくするのぉ~!! なかよしなかよし~!!」」」

 私とカインさんの間に何があったのか、知らないからこそ言えるこの無垢な悪意のないおねだり。
 もうっ、絶対嫌なのに、この子達を味方に付けられたら観念するしかないじゃない……!!

「わ、わかりました!! わかりましたから!! お願いだから、そんなうるうるしたお目々で泣きそうな顔をしないで、三つ子ちゃん!!」

 むぎゅぅっと三つ子ちゃん達を抱き締めた私は、自分で自分の首を絞めるような真似をしてしまった。
 第三皇子様だけは、どうにかしてお帰り頂きたかったのに、完全に三つ子ちゃん達に絆されてしまった自分がいる。
 涙目で後ろを振り向けば、ロゼリアさんが額に手を当て、「ユキ姫様……」と哀れむように項垂れている姿があった。
 ごめんなさい、ロゼリアさん。せっかく護衛騎士を引き受けてくれたのに……。
 私は自分自身で問題の種を受け入れてしまいました……!!


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 お茶をテーブルに並べたロゼリアさんが、私を心配そうに見ながら後ろへと下がった。
 三つ子ちゃん達の手前、彼女に第三皇子様を追い出して貰うわけもいかなくて……。
 その結果、三つ子ちゃん達が美味しそうにパンケーキを頬張っているのを見ながら、同時に第三皇子様の顔とも向き合ってお茶の時間を過ごす羽目になってしまった。

「お前、本当にわかりやすいな? 俺の事を嫌いな感情が手にとるようにわかるぜ? あと、すげぇ警戒してるよな? 心配しなくても、もう何もする気はねぇのにな」

 何を言われても、そこに絶対的な信頼など存在しない。

「どこをどう信用すればいいんですか?」と否定の言葉を投げつけたいけれど、周りにいる三つ子ちゃん達の事を考えると、それも出来ない。

「かいんね~、さっき、おにわでおひるねしてたのぉ~」

「ずっとねてるのはよくないのぉ~」

「だから、ゆきちゃんといっしょにあそぶ~って、つれてきたのぉ~」

「そ、そうだったんだ……」

 おそるべし、純真無垢な子供達の行動っ。
 多分、どこかでお昼寝をしていた第三皇子様を無理矢理起こしてきたって事だよね?
 で、よりにもよって、私の部屋に連れて来てしまったと……。
 今ここにアレクさんがいない事に安堵しつつ、同時に、この第三皇子様とどう接していいのか戸惑ってしまう。友好的にって、まず無理だと思うし……。
 かといって、追い出すというわけにもいかない。とりあえず、最初の頃の嫌悪感や恐怖心的なものは薄らいでいるのだけど……。
 かといって、前にされた事を許したわけではない。
 味わった苦痛と恐怖は、まだ私の心の中に残っているし、憩いの庭園で頬にキスされた怒りも忘れてはいないのだから。

「あの……、今日はお勉強の方は……」

「ん~? あぁ、オベンキョウ、な。面倒な説教や小難しい事ばっか話しやがるから、抜け出してきた。丁度国王もいなかったしな」

「後で怒られますよ……」

「生憎と、そういうのも慣れてるんでな? それに、あんな授業受けてる暇があったら、お前をからってる方が何倍も面白そうだ」

「――っ!!」

 そう言って伸ばされた第三皇子様の指先が、グイッと私の鼻を摘まんだ。

「ん~~!!!!!!」

「ユキ姫様に何をなさるのですか!!」

 ロゼリアさんの諫める声にも動じず、第三皇子様は苦しがる私の姿を満足そうに眺めてパッと指を離した。

「な、ななななな、何をするんですか、貴方は!!」

「くくっ……、面白ぇ反応だな」

「笑わないでください!! うぅ~、は、鼻がっ」

「お前、初めて会った時も思ったけど、反応がいちいち馬鹿素直だよなぁ? 押し倒してやった時も、すげぇ慌て具合だったし」

 ピシィィィィ!!
 人が心の奥に押し込んで早く忘れたいと願っているトラウマを……!!
 私の顔色が青くなったり赤くなったりと繰り返すのを愉しそうに観察しながら、第三皇子様は続ける。

「言っとくけど、あの時は別に本気でどーにかしてやろうとは考えてなかったぜ? せっかくゆっくり寝入ってたのに、それを邪魔してくれたんだ。ちょっとくらい仕返ししてやっても、バチは当たんねぇだろ」

「だ、だからって……、私がどんな気持ちだったか……っ。第三皇子様的にはからかったつもりかもしれませんけど、私はっ」

「この前から思ってたんだけどよ、お前……、その『第三皇子様』って呼ぶの、やめろ」

「え?」

 サクッと不機嫌そうにクッキーを齧って眉を顰めた第三皇子様が、命令にも似た響きでそう言った。ついさっきまで、私をからかう事で愉しそうだった雰囲気が消えていく……。
『第三皇子様』と呼ばれる事に、何か……、抵抗でもあるのだろうか。
 その響きを忌み嫌うかのように、第三皇子様は私をじっと見てくる。

「か……、カイン、さん……で、いいですか?」

 本人を目の前に、初めて口にする第三皇子様の名前……。
 それを向けた瞬間、第三皇子様……、カインさんは機嫌が良くなったように口許が和んでいく。
 名前で呼ばれる事が好きなんだろうか? 

「上出来。……しっかし、今時、押し倒されたり、頬にキスしたぐらいで動じる女がいるとはなぁ。天然記念物っつーか……、お前、あれだろ?」

「な、なんですか……っ」

 物凄く嫌な予感がする……。
 ニィッと意地悪く笑んだカインさんが、私の反応に確信を得ているかのように言葉を続けた。

「男関係の経験……、ぶっちゃけゼロだろ?」

「――っ!!!!!!!!!」

 予感通りに、ろくでもない事を愉しげに口にされてしまった!!
 は、はずれてはいけないけれど……、三つ子ちゃん達やロゼリアさんの前で言うなんて……!!
 背後で、ロゼリアさんがガタンッと動じる気配が伝わってくる……。

「そ、そんな事、貴方に関係ないじゃないですか!!!!!」

 お昼になんて下世話な話題を出してくれるの!! テーブルを強く叩き私は涙目になって叫んだ。
 三つ子ちゃん達が、私の様子にビクリと身体を大きく震わせているのが見える。
 ごめんね、本当は怒りたくなんてない……、だけどっ。

「いやぁ? もしそうだったら、悪い事したと思ってよ。……男慣れしてないお姫さんには、俺は少しばかり刺激が強かっただろ?」

 刺激が強いどころか、バッチリ私の中でトラウマになってます!!
 薄桃色のテーブルクロスを掴み、悔しさに耐えながら、ぐぐっと握りしめる。
 この人……、悪いなんて少しも思ってない……!!

「そうですね……っ、貴方のせいで……、嫌な思いをいっぱいさせられましたから!!」

「くくっ、そうだなぁ。……ごめんな? 『経験値ゼロのはじめてチャン』?」

「~~~~~~~っ!!!!!!!!!」

 神経を思いきり逆撫でしたカインさんの一言に、私はプツン……と心の中で何かが切れる音を聞いた。

「男の一人も相手した事がねぇなんて、本当可哀想っつーか、なんつーか……。大事に育てられるのも考えもんだな。なんだったら、俺が練習相手に手取り足取り……男の事について教えてやろうか?」

 足早にベッドへと向かう私の背中に、カインさんの追いうちの声が追いかけてくる。
 本当に……、反省のない、最低最悪の無神経な意地悪皇子様だ……!!
 枕元の大きな水色のクッションを引っ掴んだ私は、爆発しそうな怒りと共にそれをカインさんに向かって投げつけた!!

「最低!!」

 当たってしまえ!! と、自分らしくもなく投げつけたクッションは、残念な事にカインさんに当たる事はなかった。
 片手であっさりと受け止められたクッション……、それを持つカインさんの口許が挑戦的な笑みを形作っていく。

「はい、ザーンネン。こんなもん、当たっても痛くも痒くもねーってのになぁ?  ま、でも、……売られた喧嘩は、買わねぇと……な!!」

「え、……きゃあああああ!!」

 力強く投げつけられたクッションが、私の顔に正面からボフン! と勢いよく当たってしまった。
 よろりと、身体が傾いでベッドの端に倒れ込んでしまう。

「ユキ姫様、!! 大丈夫ですか!!」

 私の傍へと駆け寄って来てくれたロゼリアさんが、肩を支えてくれた。
 クッションは絨毯の上に転がり、私の顔には傷も腫れもないけれど、心にはしっかりと大きなダメージを与えてくれたカインさんの一撃……。

「くくっ……、ははははっ!! あんなもんで倒れるとかっ、はっ、馬鹿みてぇっ!! ユキ、お前、はっ、ど、どんくせぇーのなぁっ」

「カイン皇子!! 何という事を!!」

「ロゼリアさん……、ごめんなさい」

「ゆ、ユキ姫様?」

 今までの自分の人生を振り返って、こんなにも怒りに満ちた低い声が出た事があっただろうか?
 私は転がっているクッションを拾い上げ、キッ!! とカインさんを睨み据えた。

「もうっ、絶対に許しませんからね!! ええええええい!!」

 馬鹿にされて我慢するのにも限界というものがある。
 私を見て笑いを止める事のないカインさんにクッションを再度勢いを思いきり付けて投げた私は、周りにある投げられそうな物を次々に手にとり、連続で攻撃を仕掛けた。

「ユキ姫様!! 落ち着かれてください!!」

「ロゼリアさん、止めないでください!! あの人だけは、絶対に許せないんです!!」

「ははっ、当たらねーぞ? 経験値ゼロの鈍くさいお姫様?」

「カイン皇子!! ユキ姫様を煽るような発言はおやめください!!」

 鮮やかに次々と避けているカインさんの口から繰り出される精神的な攻撃に、ますます私の中の怒りの感情は限界ゲージを振り切って大噴火の一途を辿っていく。

「ゆきちゃ~ん、かい~ん、あそぶのぉ~?」

「ぼくたちもなげるぅ~!!」

「あそぶあそぶ~!!」

 物を投げ合っている私とカインさんを、二人だけで遊んでいると勘違いした三つ子ちゃん達が、絨毯の上に落ちているクッションや小物を拾い上げて、それぞれに投げ始めてしまう。
 本当なら危ないから駄目だと止めないといけないのだけど、生憎と、この時の私は我を忘れていた。とにかく、一撃でもいいからカインさんに痛い目を見せたくて物を投げ続けていたから……。

「ユキ姫様!! カイン皇子!! いい加減におやめください!!」

「もうっ、避けないでくださいったら!!」

「悔しかったら、一回でもいいから当ててみるんだな? お前の動きなんか、目ぇ閉じてても避けられるぜ……ほらよ!!」

「きゃああ!!」

 三つ子ちゃん達の楽しそうなきゃっきゃっという笑い声、ロゼリアさんの制止の声が響く中、私とカインさんの攻防戦は、止まる事なく続いた。
 けれど、その戦いは……ある人物の訪問と共に収束する事になる。

「ユキちゃ~ん、料理長が美味しいケーキを作ってくれたんだけど、一緒にお茶でも……、ぐふっ!!」

 どちらが投げた物かもわからないクッションが、扉から顔を出したレイフィード叔父さんに当たってしまった……。
 重めのクッションが……、ゆっくりとスローモーションで絨毯の上に転がっていくのが見える。
 さすがに、後ろに倒れる事はなかったけれど……、レイフィード叔父さんの優しい眼差しが……。

「僕はね、元気な子供達の姿を見るのは大好きだよ? だけどね……、『この状態』は一体どういう事なのかな? こういうのって、人に当たったら危ないんだよ……わかってるのかなぁ」

 ブラウンの瞳が……、教育という名の光を宿し、クッションをパンパンと叩いて拾い上げる。
 レイフィード叔父さんの纏う雰囲気が、一気に背中に氷を落とし込むかのように一変した……。

「れ、レイフィード叔父さん、ご、ごめんなさい」

「「「と~さま~、おこっちゃやぁ~!!」」」

「まずい奴が来やがったもんだぜ……」

 バタン……と、何故だか逃げ場を封じるように、レイフィード叔父さんが扉を閉めた。
 浮かんでいるのは笑顔……、だけど……その目が笑っていない。
 ゆっくりと部屋の中央に足を運んでくるレイフィード叔父さんに、内心の冷汗が止まらない。

「全員……、僕の前に正座をして座りなさい」

 絶対的な命令の意志を感じた私達は、大人しくその場にいそいそと足を折り曲げて正座の形を作った。ロゼリアさんが、レイフィード叔父さんに命じられて、部屋のカーテンを閉めにいく。
 薄暗くなった室内で、それから二時間ほど……、私達は叔父さんの本気のお説教を味わう羽目になるのだった。


 ――教訓、レイフィード叔父さんを怒らせてはいけない。

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