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第三章『序章』~女帝からの誘い~
同行者決定
しおりを挟む――Side 幸希
遊学のお誘いがきたその日の内に決まった私の心。
動機は少々不純、どころの騒ぎではなかったけれど、最終的にはレイフィード叔父さんも納得して許可を出してくれたし、あとは準備を進めて出発当日を待つだけ。
そんな、残り四日となったある日の事……。
朝食後に国王執務室へと呼ばれた私は、レイフィード叔父さんの許を訪れていた。
「レイフィード叔父さん、何かご用事ですか?」
「呼び出してすまないね、ユキちゃん。こっちにどうぞ」
普段通りに笑顔で出迎えてくれたレイフィード叔父さんにぺこりと頭を下げた私は、左側のクリーム色をした壁の方で不機嫌そうに背を預けているカインさんの姿を見つけた。
この時間帯だと、朝食後によく町に出かけているはずなのに……。
ギリギリまで怒りを抑え込んでいるかのように、苛立った舌打ちが聞こえてくる。
それに、ソファーに座って寛いでいるレイフィード叔父さんの横にはレイル君の姿も。
「実はね、ガデルフォーンの遊学の件について幾つかユキちゃんに話しておく事があるんだ」
「はぁ……」
「難しい話でもないから、お菓子でも食べながら、ね?」
「はい」
カインさんにもソファーへ座るようにとレイフィード叔父さんが促しの声をかけたけれど、返ってきた反応は反抗的なそれだった。
何か嫌な事でもあったのか、それとも、これからカインさんの望まぬ何かが起こるのか……。
疑問に首を傾げていると、レイル君がくすりと笑って理由を寄越してくれた。
「ガデルフォーンの女帝陛下は、カイン皇子を逃がす気はないらしい。一生追い回されるのと、一か月遊学に来るのと、どちらがマシだ? と脅されたそうだ」
「お、脅し……」
「ディアーネスは一度目を付けると自分の望み通りになるまで追い回すからねぇ……。大体、君の父親だって散々酷い目に遭わせてきた女性なんだよ? 普通に考えて息子の君が勝てるわけないって」
「あの女の脅しに負けたわけじゃねぇよ……。ユキが行くっつーから……、ほ、保護者的な役を買ってやってんだろうが」
カインさんが……、保護者? 保護者……。
口に含んでいた紅茶を噴き出しそうになるのを堪えて、私はカップをソーサーに戻した。
聞き捨てならない、カインさんが私の保護者ポジション……、どう考えても精神年齢が同じような人がその立場に就くなんてっ。
「私の方がカインさんよりも大人だと思います」
ボソッと漏らした本音に、カインさんが片眉を吊り上げてさらに不機嫌な音を向けてくる。
「はぁあああ? ……ユキ、お前、俺の年齢この前教えてやっただろうが。どう見ても俺の方が精神的にも肉体的にも」
「いや、短気なところのあるカイン皇子と比較すると、確かにユキの方が落ち着いているな」
「だよね~。ユキちゃんは滅多に怒鳴ったりしないし、気配りも出来てるし」
私の味方にまわってくれたレイフィード叔父さんとレイル君にまでそう評されてしまい、カインさんも少しだけ怯んだようだ。その場でグリグリと絨毯を踏みつけながら拳を震わせている。
短気で怒りっぽい、まるで思春期のような少年。そんな性格のカインさんだけど、私を悔しそうに睨みつけてくるだけで、暴力に訴えようとはしないあたりが、感心出来るところだ。
それに……。
「大人の礼儀を弁えたカインさんなんて、……カインさんじゃないと思いますよ」
「どういう意味だろうなぁ? このひよっこ王兄姫」
「だって……、そのままのカインさんだから、こうやって仲良くなれたんじゃないですか」
「……」
何気なく言ったありのままの本音。
最初の出会いは本当に最悪過ぎて、危うく一生消えないトラウマを刻みつけられそうだったけれど、カインさんの抱えているものを知って、一緒に大変な事を乗り越えて、今がある。
私がお友達になったのは、捻くれていて、不器用で、乱暴なところもあるけれど……、心根の一番奥はあったかい、そんなカインさんだから。
無言になってしまったカインさんを見つめていると、その顔が徐々に桃色の赤みを帯びて……。
「カインさん?」
「女性には慣れているだろうに……、ある意味で純粋な子だねぇ」
「嬉しかったんでしょうね。……完全に思考は停止しているようですが」
私に対して皮肉的な物言いで対抗してきたカインさんは、くるりと私に背を向けてブツブツと何か独り言に集中し始めてしまった。
気のせいかな……、全身から煙みたいな何かが立ち昇っているように見えるのだけど。
「ユキちゃん、カインの事は気にしないでいいよ。それよりも、ガデルフォーンへの同行者が決まったから伝えるね」
「は、はいっ」
「まず、カインは強制連行。それから、護衛役にウチのレイル君」
「え? れ、レイル君をですか? 一国の王子様を護衛役にってそんな……」
贅沢すぎるし、レイル君には王子様としての仕事もあるはずで、私の護衛役を担当して貰うなんて色々とご迷惑がかかるんじゃ……。
けれど、そう心配した私の反応が予想通りだったのか、二人の反応は穏やかだった。
「幸いな事に、ユーディス伯父上がいてくださるからな。俺の王族としての仕事は、父上と伯父上が分担してくださるそうだ」
「で、でも……」
「大丈夫だよ、ユキちゃん。元々レイル君は仕事が早いし、何日も先までのものを片付けてあったりするから、全然問題はないんだよ。それに、この遊学はレイル君にとっても良い経験になるだろうし、休暇みたいなものだと思って楽しんでおいでと言ってあるから」
私の為に一か月もレイル君の時間を拘束してしまう心苦しさもあったけれど、よく似た親子の笑顔にほっと胸の奥が安心感に包まれていく。
カインさんと、レイル君、二人が一緒なら、きっと他国の地でも寂しくはならないだろう。
私はお礼を言った後、目の前に置かれてあったパイをフォークでサクッとひと口分に切り分け、それを口に運んだ。
「ん……、美味しい」
「甘酸っぱいべリムの実がこれでもかと使われているからね~。流石ウォルヴァンシアの料理長。食べただけで幸せになれる料理を作れる人は、本当に貴重だよ。――あ、そうだ」
私と同じようにパイを食べていたレイフィード叔父さんが、フォークを口に銜えたまま何かを思い出したように扉の方へと顔を向けた。……どうしたんだろう。
「同行者の最後の一人なんだけどね」
「まだ、誰か一緒に来てくださるんですか?」
「うん。ユキちゃんを完璧にガードする為の心強い護衛兼お医者さんをと考えて、実は最初にセレスフィーナが立候補してくれてね」
王宮医務室の女神様こと、セレスフィーナさんが同行者に……。
彼女が一緒に来てくれれば、きっと女性同士打ち解けて平穏な遊学期間を過ごせる事だろう。
二口目のパイを少し大きめに切り分けて頬張った私は、ニコニコと上機嫌モードに入った。
けれど、食べている最中に気づいた。レイフィード叔父さんは、立候補してくれたセレスフィーナさんの事を、「最初に」と……。あれ? 最初という事は、次に立候補した人がいる事を指すんじゃ。
「結構揉めたみたいだけど、最後にはセレスフィーナも納得したみたいだし、これで安心してユキちゃんをガデルフォーンに送り出せるよ。あぁ、ほら、来たみたいだね」
「れ、レイフィード叔父さん……、来た、って、あの……、私の同行者になったのは、せ、セレスフィーナさんなんじゃ」
ドクドクと不安を感じながら早足になっていく心臓の音。
国王執務室に近づいてきた足音が大きくなり、――ノックの音が。
扉の傍に控えてくれていたメイドさんがレイフィード叔父さんの頷きに応え、扉を開く。
「陛下、ルイヴェル・フェリデロード、お呼びに従い参上いたしました」
「――っ!!」
悪魔の使者さながらに響いた、王宮医師様の低音……。
持っていたフォークが、ぽろりと口から外れ、お皿の上に音を立てて落ちていく。
どうして? なんで? 私の同行者に立候補してくれた慈愛の女神様は何処に!?
あぁ、国王執務室に現れた王宮医師様の周囲に、悪魔の羽根が舞い落ちているような錯覚が。
「お~い、ユキ、ユ~キ~? ……ショックがでかすぎたみてぇだな」
「父上、どうしましょう」
「う~ん、まぁ、こうなる予想はしてたんだけどね~……。とりあえず、ユキちゃんを現実に戻してあげてくれるかな」
予期せぬ事態に我を忘れ、完全に思考を止めてしまった私を、レイル君とカインさんが身体を揺さぶって現実に戻って来いと声をかけてくる。
無理……。今は無理。だって、心穏やかな遊学を夢見ていた私の期待を。
浮かべられているのは、悪魔ならぬ、大魔王の微笑。
部屋の中へと入ってきたルイヴェルさんが、レイフィード叔父さんに一礼し、私の隣へと腰かけ……。
「どうなさいました? ユキ姫様。お顔の色が優れないようですが……」
頬へと伸ばされてくる硬い指先の感触、私を愉しそうに見つめている大魔王様の深緑。
それは、哀れな子羊が成す術(すべ)もなく生贄として差し出された構図のような……。
「――俺では不満か?」
「ひぃいいいいいいいい!! ち、近っ!! ルイヴェルさんっ、耳元は反則ですよおおお!!」
大魔王に魅入られた犠牲者のように固まっていた私は、耳元に唇を寄せられて妖しく囁かれた瞬間に情けない悲鳴を上げてしまった。
どうして眩い黄金の女神様が、ドSな大魔王様にすり替わっているの!?
セレスフィーナさんが立候補してくれた後に何があったのか、私はソファーから転がり落ちるように逃げ出し、レイル君にしがみついた。
「レイル君!! 助けて!!」
「おい!! なんでレイルの方にくっついてんだよ!!」
「いや、そういう問題じゃないだろう、カイン皇子。ルイヴェルも、ユキをからかって遊ばないでくれ」
「俺の同行を、麗しの王兄殿下は嫌がっておいでのようでしたので、少々傷付いたのですよ」
「そのわざとらしい敬語もやめてくれ。鳥肌が立ってくる……」
本性を現してからというもの、ルイヴェルさんは私の不意を突いて意地悪を仕掛けてくるから、会う時は心構えが必要となってくるのだ。
きちんと立ち向かう覚悟をして、それから会わないと……。
今みたいに、大魔王様の気配で距離を詰められ心臓に悪い事をされるから要注意!
「相変わらずだねぇ、君は……。でも、ユキちゃんにはちゃんと説明しないといけないから、とりあえず今は、問題のある愛情表現はやめようか? ね、ルイヴェル」
「御意」
「レイフィード叔父さん!! とりあえず今は、ってなんですか!!」
まるで、この場以外であれば私をいじっても構わないと国王様自ら許可を与えたかのような口ぶりだ。私やレイル君に戻っておいでと手招きしてくるけれど、そこに油断出来ない王宮医師様がいらっしゃるので今は無理ですよ!!
「ユキ姫様、陛下の仰る事に従えないのですか? それとも……、このルイヴェルに身を尽くして懇願せよと、そう仰りたいのでしょうか?」
「喜んで席に戻らせて頂きます!!」
遠回しにさらなるいじりで席に戻らせてやると脅しているに違いない!
ぶるりと恐怖に震えた私は、カインさんの腕を引っ張り自分とルイヴェルさんの間に座って貰い、自分なりの壁を作り上げた。
これなら、多分、大丈夫。そう自分の胸を押さえて言い聞かせる。
「さて、話を戻すけど、ルイヴェルはガデルフォーンについて詳しいし、知り合いもいる。ユキちゃんが万が一の事態に陥っても、彼ほど頼りになる護衛役はいないだろう。だから、ちょぉ~っと難のある困った護衛さんだけど、頑張ってくれるかな? ユキちゃん」
「は、はい……。もう、決定してるようですし、……な、なんとか、頑張って、みます」
がっくりと肩を落とし、平穏ではなくなった遊学予定を想像しながら身を震わせる。
そんな私の反応が気に入らないのか、カインさんという壁越しに突き刺さるような視線がっ。
「なぁ……、どいてもいいか? いいよな?」
「か、カインさん!! 見捨てないでください!!」
今そこから動かれてしまったら、大魔王様の脅威が荒波のように私へと襲いかかってきてしまう!! その腕にしがみつき、カインさんに強く懇願していると、あれ……、またカインさんの頬に桃みたいな熱が。何かを堪えているように震え始めたカインさんを、ルイヴェルさんがじーっと観察している。
「カイン……、限界ならそこをどいても構わないんだがな?」
「だ、誰がどくかっ!! お、俺は、ユキ専用の壁だからな。こ、このくらいっ。ガキじゃねぇんだ、こ、この、……く、らい」
「どかないでください!! カインさんが頼りなんです!!」
一体何がカインさんを苦しめているのかはわからないけれど、この砦を失ったら私はいじり倒される!! 是が非でも死守しなければ……と、頑張ってカインさんをその場に押し留めていたというのに。
やれやれと席を立ち上がったレイル君が問答無用でカインさんを外へと連れ出してしまった!
なんという無慈悲!! なんという理不尽!!
カインさんという壁を失ってしまった私は、それからレイフィード叔父さんに残りの説明を受けている間中、言葉や態度で大魔王様から手加減された? いじりを受け続ける羽目になってしまったのだった……。
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