学芸院凰雅の華麗なる日常

枕返し

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学芸院凰雅と解決編

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凰雅が指さす先にいたのは。代議士、詩遊戯帝。
「何を言い出すかと思えば。私が犯人だと?私はやっていないと言っているだろう。本当に私が犯人だというのなら証拠があるのかね?他の者ではなく、私であるという証拠が。」
「やれやれ。犯人の常套句だな。さっさと自供した方がいいと思うがな。」
「何を言っているんだ君は。私は犯人ではないんだから自供も何もしようがないとわからないのか?探偵ごっこを気取って偉そうな口ぶりをしている割には物事の道理もわからないのか。」
「おいおい、往生際が悪いぜ。」
「君は思い付きで私を犯人だと言った。違うか?だから論理的な証拠がないのだろう。」
「やれやれだ。」
「さて、こんな子供のふざけた名探偵ごっこはここまでにしよう。我々が何をすべきなのか、しっかり話し合わなければ。」
「犯人だと言われて口数が増えるのは自分から認めているようなものだぜ。」
「証拠もなく濡れ衣を着せられれば口数が増えもするだろう。大体、証拠もないのに犯人と決めつけるな。それを思い付きと言うんだ。思い込みとも言う。そして君のような学生のことを思い上がりとも言うな。例え犯人がわかったとて、警察が来るまでは暴力的な拘束くらいしかできん。なら今やるべきことは現場の保存だ。そして犯人の意図はまだわからないのだから、次の殺人や被害が起こらないように・・・」
「うるさいっ!」
凰雅は詩遊戯帝に関節技を決めた。
もちろん詩遊戯帝も抵抗をしたが、そこは毎日運動不足解消のために筋トレをしている学芸院凰雅。2メートル20センチの長身と150キロの体重から繰り出される技を常人が防げるはずもない。
「痛い痛い痛い!離せ!おいそこの弁護士!これは傷害事件だろ!おい!お前らなんで見ているだけなんだ!おい!ちょ、これは、痛い痛い・・・」

それから30分後

「私がやりましたぁっ!!!」
事件の真犯人である詩遊戯帝の口から真実の言葉が紡がれた。凰雅の説得を受けた詩遊戯帝は体中から汗を噴き出し、今更自ら犯した罪の重さに気が付いたのか顔面は蒼白だ。
「やれやれ。どうして殺人なんか犯したんだ?ん?」
詩遊戯帝から離れる凰雅。己の口から己の意思で真実を話すという、罪を犯した者の最初の贖罪をさせようという凰雅の優しさからの行動だろう。指を鳴らしながら見守る凰雅の視線に後押しされるように、詩遊戯帝は語り出す。
「あいつは・・・、金持成蔵は殺されて当然の男だった。・・・俺の育った家庭は豊かではないものの貧しいわけでもなく、楽しい毎日を送っていた。優しく仲睦まじい両親、格好良くて頼りになる兄貴、可愛く素直な妹・・・。だが奴は俺からその幸せを奪っていった。俺の父は友人の保証人になって多額の借金を背負ってしまった。だがその友人と金持成蔵はグルだったんだ。借金の減額を餌にその友人は借金の一部を計画的に俺の父に擦り付けた。返済不可能な程の金利でな。」
「それを恨んで・・・。」
「それだけじゃない。借金の返済のために身を粉にして働いた父と母だったがある日突如行方不明になった。それも金持成蔵の仕業だったのだ。奴は世界中の富豪達へ表の世界では見られない娯楽のショーを開く興行主でもあった。その中の殺人ショーに俺の両親を使ったのだ。俺たち兄弟を殺すと脅して夫婦で殺し合いをさせ、その後猛獣に食わせるというショーに・・・。」
「それが恨みの理由か・・・。」
「そしてその借金はまだ幼かった俺たち兄弟に降りかかった。兄貴は俺たちにそれを悟らせまいと金持成蔵の紹介で危ない運び屋をやった。借金を返済した兄貴は俺たちに迷惑をかけまいと、平和に暮らせるようにと、行方をくらませ自殺したのだ。」
「そして元凶である金持成蔵を恨んだのか。」
「ああ、そうさ。だが奴の魔の手はそれでは収まらなかった。奴はついに妹にも手を出した。奴は兄貴のしてきた仕事を知っていた。それを何も知らない妹に教え、兄の名誉を守りたかったらと、ありもしない借金をでっちあげ、妾として娶ったのだ。素直な妹は奴の言葉を信じてしまった。そして奴はその素直さに目を付けたのだ。求められるまま成蔵に従っていた妹に飽きた奴は、妹を暴漢に襲わせた。その光景を画面越しに見て、そしてそのことを成蔵への裏切りだと心を痛める妹を見て、奴は楽しんだのだ。」
「そして奴を殺したいと思ったと。」
「そうさ!奴は俺たちみたいな被害者をたくさん作って、その上で笑っている。それはこれからも続くだろう。俺はそれが許せなかったんだ!」
詩遊戯帝の話を静かに聞いていた凰雅。そして聞き終えた凰雅はゆっくりとその口を開いた。
「なるほどな・・・、お前の言い分はわかった。だが、殺人はいけないことだ。いけないことということは、やってはいけないってことだ。そして暴力では何も解決しない。暴力で自分の意図を押し通すなんてことは、どんなことがあっても駄目だ。暴力を使っちまったら、そりゃもうおしまいだ。」

一晩明けて警察に連れていかれる詩遊戯帝を送り出し、凰雅の心は痛んでいた。
「奴の心にもう少し筋肉がついていたら、こんな凄惨な事件は起きなかっただろうに。考えて悩んで間違って、心だけじゃなく脳みそも軟弱だぜ。脳みそにも筋肉をつけろってんだ。」
「こんな事件が二度と起きないようにワタシ達がいるのでーす。少しはワタシのことに興味持ってくれマシタ?」
「フッまあな。だが俺はあくまでただの高校生。面倒ごとには巻き込んでほしくないものだぜ。」
「ミスターオーガがそう思っていても世界はあなたを見逃さないデショウ。」
「やれやれだぜ。」
「ところで凰雅、どうしてあの人が犯人だってわかったの?」
「簡単な推理だ。代議士って、聞いたことあるけど何の仕事なのかよくわからないからな。」
「オー、流石ミスターオーガ。メー推理でーす。」
こうして世界を震撼させた事件は幕を下ろした。
そして凰雅の活躍したこの事件以降、可哀想な子供が減ったという確かな結果が街頭アンケートによって判明した。
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