先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件

桜 偉村

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第十一章

第304話 捻くれているのは

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 咲麗しょうれいのキックオフから、試合がリスタートした。
 左サイドを起点にすると見せて、武岡たけおかの一本のパスでサイドチェンジをした。右ウイングバックの町田まちだがクロスを上げる。

 低弾道のクロスは、壁谷かべやがクリアをした。そのこぼれ球は洛王らくおうが回収した。

「行くぞ!」
「「「おう!」」」

 一気にケリをつけるつもりなのか、彼らは二点差をつけているにも関わらず、再び攻勢に転じた。
 榎本えのもとが中に入って玲央れおのパスを受け取り、ピッチを横断するように右から左へ斜めにボールを運ぶ。武岡がマークについて行った。

 しかし、それは囮だった。
 守備の要である武岡を十分に釣り出したところで、榎本はノールックで玲央にパスを戻した。

 まことは攻撃参加の素振りを見せていたジョージについており、守備陣も他の選手に気を取られていたため、再びたくみと玲央の一対一の構図になった。

「なっ……!」

 巧は驚いたように目を見張った。
 玲央は残念そうにため息を吐いた。

「言わなかった? 素直すぎるって」
「敵の言葉は聞きません」

 巧はピシャリと言い放ち、腰を落とした。
 玲央は再度、落胆したようにため息を吐いた。

「戦術の割に、性格は捻くれてるんだね、敵のアドバイスは、素直に聞いたほうがいいこともあるんだよ?」

 玲央は呆れたように言いながら、巧を抜いた。その瞬間——、

「お前が思ってる以上に、そいつは捻くれてるぜ」
「なっ……⁉︎」

 玲央が真の姿をはっきり視認したときには、すでにボールは彼の足元にはなかった。

「彼はジョージのマークについていたはずじゃ——なっ⁉︎」

 いつの間にかフリーになっているジョージを見て玲央が驚愕している間にも、咲麗しょうれいはカウンターを発動させていた。

「いかせないヨ!」

 素早く戻ったジョージが、ボールを運ぶ真の前に立ちはだかった。
 真は並走する巧にチラリと視線を向けた。ジョージが巧との連携を止めようとする素振りを見せた瞬間、自らドリブルを仕掛けた。

「ここに来て自分なのカ? でも、オレなら間にあ——なっ⁉︎」

 ジョージが無理を効かせて真を止めようとした瞬間に、真はすでに巧にパスを出していた。
 その素早い判断はさすがに予想外だったようで、ジョージの反応が遅れた。

 巧とのワンツーで抜け出した真は、誠治せいじにボールを預けた。
 誠治は壁谷の厳しいマークを受けて倒れそうになりながらも、全身を使ってキープした。

「ナイス、誠治!」

 近寄ってきた水田みずたが引き取って、ドリブルを開始した。
 縦を見せてからのカットインで一人を置き去りにして、シュートモーションに入る。

「させるか!」

 洛王の選手たちがブロックの体勢に入った。

「待て、それは罠だ!」

 玲央が声を張り上げるころには、水田は横にボールを流していた。
 その先には、真が走り込んでいた。
 真はキックフェイントでディフェンスとキーパーのタイミングを外すと、豪快なミドルシュートをネットに突き刺した。

「「「うわああああ!」」」
「咲麗、一点返した!」
西宮にしみや、エグいなぁ!」
「ボール奪ってから、フィニッシュまで行きやがった!」
「まだまだわかんねーぞ!」

 待ってましたとばかりに、咲麗陣営は盛り上がった。

「このままいけますよ!」

 巧は声を張り上げ、パンパンと手を叩いた。
 ピッチのあちこちから、「おう!」というやる気に満ちた声が聞こえてくる。

 自陣に戻ろうとする巧の前に、玲央が立ちはだかった。

「ごめんね。ちょっと舐めすぎてたよ。思ったよりやるじゃん」
「どうも」

 巧は軽く頭を下げただけで、スピードを落とさず、玲央の脇をすり抜けた。

「……一点返したくらいで、調子に乗らないでもらおうか」



 しばらく睨み合いが続いたが、咲麗が少しだけ前がかりになった隙をつくように、洛王が再び攻撃のギアを上げた。
 榎本と玲央を中心としたパスワークで攻め立て、玲央はペナルティエリアの手前でボールを受けた。真がプレッシャーをかけた。

「——そう来ると思った。彼の思考パターンの癖は読んだよ」

 玲央はニヤリと笑い、真との勝負を避けるようにパスを出した。
 しかし、その笑みはすぐに驚愕に染まった。
 彼の視線の先では、巧がスライディングをしてジョージへのパスをカットしていた。

「なんであいつがあそこに……⁉︎ このっ!」

 玲央は立ち上がる巧に向かって、猛然とプレッシャーをかけた。

 ——それを予期していた巧は、慌てることなく大介に戻した。
 大介からの浮き球のリターンパスは、玲央の頭上を超えて巧の足元に収まった。

「舐めるな!」

 玲央は必死に追いすがり、巧に追いついた。

まさる!」

 巧は玲央に体を寄せられながら、前を走る優にパスを出した。
 足元にピタリと収めた優は、緩急で一人をかわすと、タイミングよくサポートに来た誠治とのワンツーでもう一人を置き去りにした。

「なんて連携だ!」
「速え!」

 水田や真も両サイドから上がっている。中央では三対三の構図が出来上がっていた。

「誠治!」

 巧がボールを要求した瞬間、玲央がパスコースをふさぎにかかった。
 しかし、まるでそれが見えていたかのように、誠治はあえて巧よりも後ろに出した。

 そういう決まりだったわけではない。
 だが、名前を呼ばれた瞬間、なんとなくそんな気がしたのだ。

 ——その予感は当たっていた。
 巧は誠治がパスを出した瞬間に、方向転換してボールを受けた。

「なっ……この!」

 玲央が再び驚愕の表情を浮かべ、慌てて巧にプレッシャーをかける。
 詰められる前に、巧は浮き球のパスを前線に送った。その際、一切前を見ていなかった。

 ——だから、洛王守備陣の準備が一瞬遅れた。
 その瞬間、優は入れ替わるように飛び出した。

 彼は、巧と一度もアイコンタクトを交わしていない。それでも、巧ならそうするはずだと信じていた。
 高校に入ってからの二年間、その大部分を同じカテゴリーで切磋琢磨していたからこその信頼だった。

 しかし、そこで終わるようなら準決勝まで全て無失点で勝ち上がることなどできていない。
 洛王の守備陣も、必死に食らいついた。

 優は直前まで、変なことをするよりは思い切って打ってしまおうかと考えていた。
 しかし、

「——百瀬ももせ!」

 その声が聞こえた瞬間、優は直感のままに逆サイドにグラウンダーのパスを出していた。
 そこには真が走り込んでいた。

「このっ……!」
「そこで見てろ」

 真は追いすがるジョージを腕でブロックしながら、落ち着いてゴール右下にシュートを流し込んだ。
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