最強の魔族がやってきた ~人の世界に興味があるらしい~

夏樹高志

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第3話 魔族がホテルに泊まる

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 グリフォンの首を七つ持って人族の所へ帰ると、人族達は自分に頭を下げた。

 自分を人族の国へ入国させ、もてなすという事だった。
 自分からは何も望みを言わず、相手について行った。

 すると、宿泊施設へ案内された。
 案内された場所はホテルという名称らしい。
 ガラスと鉄で出来た建物で五階建ての建物だった。

 五階の部屋へ案内されたが、ベッドやらテーブルやらが綺麗に置かれていた。
 室内にはテレビという映像が映る機器が置いてある。
 見てみると、人々が歌ったり、踊ったり、輪を囲んで喋っている。
 これは娯楽や情報収集のために使われるらしい。
 また、人族はこのような機器を作り出すのが上手という事だ。

  テレビの横にあったゲームという物もやってみた。
 やってみたゲームはパズルとシューティング、音ゲ―というものらしい。オンラインとかいうネットワークに繋がったゲームで、人の国にいる者達とスコアを競う仕様になっているとか。
 人によると課金というもので、かなりの財産をつぎ込む者がいるという事だ。
 自分からすると簡単に思えるが、それは動体視力が人族よりは優れているからだろう。

 ただ、人族の話からすると、もっと大きい施設で遊べる場所があるらしい。
 人の国は娯楽が豊富なようだ。
 行ってみてもいいかもしれない。

 もてなしという事で、人の食べ物や飲み物を出された。
 目の前の料理を見る。すると、見た感じでは、葉っぱが多いように見える。

 食べてみた。

 何かで味付けをしているのは分かるが、魔族の自分からは、到底美味いとは思えないものだった。
 それぞれの食事の説明を受けたが、途中で食べるのを止めてしまった。

 魔族の食べ物は主に三つで、殺した魔族の体内にある〝魔核〟自然界に発生する天然の〝魔石〟それから大気中に含まれる魔力の元になる〝魔素〟を吸収することで賄えていた。一方で、人の食べるものは穀物が多いようだ。はっきり言ってそこら辺に生えている草を食べさせられているような気分だ。

 ただ、酒に関してはたしかに悪くない。グリフォン達が献上させるのは分かる。

 魔族が作った酒に比べれば若干濃い。
 どうも話を聞いてみると生成過程で低温で丁寧に作っているとのことだった。
 魔族が住む地域は極端に高温かあるいは低温である地域が多く、酒の製造には向いていない。
 魔族で酒を製造するのは、魔族の中位種が気温の変化が大きくないような地域で発酵させて作っているだけだ。

 しかし、人は山をくり抜いたり、あるいは地下を掘ったりして、気温が安定する場所を作り、それに合わせて酒を造っているとのことだった。加えて、グリフォンに献上している酒は通常の醸造法で造り、その後魔石を砕いて酒に投入して加工していくらしい。
 自分に献上された酒もグリフォン用のものだろうが、自分にとっては味が物足りない。もっと強い魔石を砕いて酒に入れれば美味いのかもしれない。

 また、深夜になると人は寝るようだ。
 魔族はほとんど眠らない。下位種はやや眠るが、上位種になればなるほど眠らなくなる。
 上位種に進化すればするほど、常時戦闘に身を置くことになるため、生き残るには眠らない方が有利だ。強くなればなるほど睡眠時間が減っていき、最終的には全く寝る必要がなくなる。

 窓から寝静まった人の街を見下ろす。
 このホテルの前には数人の衛兵が立っているのが見える。
 闘神をもてなすためと、監視する意味があるのだろう。

 さて、明日からどうするか。
 人には領地として守ってやるといったことを発言したが、正直、約束を守る気は全くなかった。そうでも言わないと、人が言うことを聞かないと思っただけであって、自分が一通り人間の生活を理解したら、人の地を離れるつもりであった。あくまで、ちょっと興味が湧いた程度の話であったのだから。

 別にグリフォンだろうが上位種の魔族だろうが、強さという点で、自分にとって脅威ではなかった。自分が成長している時、また、自分と肩を並べるような者がいる時は闘争心も高まるが、もう三千年ほど何かに対して固執するような思いもなくなっていた。

 魔族は、より強さを求めてより強いものと戦いたがる。
 自分も七千年くらい前は、強い魔族を求めて戦い続けていたが、ある時から闘争心が弱り始めた。

 強くなりすぎたことが原因だろう。

 それまでは相手と戦った場合、必ず相手を殺してきた。
 そうでないと、報復でまた自分がいつ殺されるか分からないからだ。
 しかし、自分と相手に圧倒的に差があると、今殺さずに成長させて報復を待つ方が面白いと思うようになる。
 そして相手が報復しに来たらまた殺さず、逃がす。それを繰り返した。

 だが、それでも自分に並べるほどの者は現れなかった。

 やがて、魔族の中でも闘神と呼ばれるようになり、皆が自分を避け始めた。
 獣の中でも伝説になっているものを探し出して戦ってみたが、相手になるものは既にいなかった。

 それからさらに時間が経って、魔族の中では、かつて自分に報復を誓った者達が、自分に近づこうとする新たな挑戦者を罰する、ということをし始めていた。

〝少なくとも自分達すら倒せないのに闘神とは戦わせない〟というようなことを始めていた。
 その様子はまるで自分の護衛だと思った。

 彼らと、かつては命の奪い合いをしていたが、気づくと仲良く話すようになった。

 単純に拳を交えるだけでなく、魔力の使い方や戦闘技術も教えてやったが、しかし、それでも俺の足元にすら届いてくれなかった。

 だが、自分に従う強い魔族達と会話をし、時には笑い合う生活をしていると、不思議に思った。
〝人の知力は高いと聞く、そういう種族はどのような生活を営んでいるのだろう?〟と。

 単純に見てみたいと思った。

 しかし、この魔族の知り合い達に、その話をしてみても関心を持つとは思えない。
 それに大所帯で人の地へ押しかけたのでは、自分以外の連中が何をするか分かったものではない。
 だから、魔力を消して、この地までゆっくり飛んできたのだ。
 
 グリフォンを倒す時にも魔力を使わなかったのはそれもある。
 強い魔力を広範囲に使うとあいつらに居場所がバレてしまう恐れがあった。

 しかし、と思う。
 多分、あいつらは自分のことを探しているのだろう。
 自分も暇だが、あいつもそうだ。
 そのうちあいつらはこの人族の国に俺がいることを突き止めるだろう。

 できれば、その前に人族の国を理解してみたいと思う。
 そうでないと、あいつらは何をしでかすか分からないのだ……。

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