最強の魔族がやってきた ~人の世界に興味があるらしい~

夏樹高志

文字の大きさ
3 / 85

第2話 兵士たちの対応

しおりを挟む
 人族の国に変な魔族がやってきた。

 そして、それは人族の国を支配していたグリフォンの一体を倒したらしい。

 改めてオリバは兵士に尋ねることにした。

「本当にあの魔族はグリフォンを倒したのか?」

「それは間違いないです。ここにいる全員が目撃しました。かなり遠くでしたが、ここに立っていたあの魔族が急に離れたと思ったら、ものすごい勢いで飛んで行ってグリフォンを一撃で貫いて倒しました」

「よく分からないのだが、何故飛んで行ったのだ? 魔族なら強い魔法も使えただろうに」

「それは先ほどの話からすると、あの魔族は人間の世界に興味があるからではないでしょうか? 魔法を使ったとすると、私たちを巻き込む可能性があるためかと」

「なるほど。それなら確かにあの魔族は人間に対して好意的というのは事実なのかもしれない。しかし、どれだけ強くてもグリフォン七体を相手にして勝てるとは思えない。それよりも、グリフォン達に対してどう説明したらいいかが問題だ。私が知る限り、グリフォンが他種族に殺されたという話は聞いたことがない。あの魔族が殺されるだけで済むならいいが、おそらくそうはなるまい。むしろ仲間が殺されたとなると、何らかの八つ当たりで人にも責任の一端が負わされる可能性の方が高いのではないだろうか」

 オリバの発言を聞く兵士たちの顔が強張る。

 オリバは困ったことになった、と考える。
 グリフォン達は知能が高い。ただの動物ではない。
 人族と同じように言葉を喋り、議会で政治政策を決めている。知能水準は極めて高い。
 また、グリフォンの魔力、そしてその巨躯から繰り出す力は人族に比べてはるかに大きい。そして、現在の人族は、そんなグリフォン達の支配下にある状態だ。ちょうど今から三千年前に人族はグリフォンの支配地域に押しとどめられ、その中で生活することを強要された。グリフォン達は人族の文明そのものの維持を認めている。しかし、だからと言って人族に好意的なわけではない。だから、グリフォンに対して貢物や人柱をせざるを得ない状態になってしまっているわけだ。

 それにもう一つグリフォンの性質で厄介なことがある。
 グリフォン達は尊大だ。自らの事を誇り高い種と認識しているし、人族以外の他種族にもそれを強要している。
 人族の国でグリフォン一体が殺害されたというのは、彼らにとっては屈辱的なことだ。彼らのプライドは大きく傷つけられるに違いない。また、そのはけ口として人族に何かしらの賠償を求めてくることもあり得る。
 
 ここであの魔族が飛んで行った方向を見た。
 
 あの魔族の飛行速度に驚いた。まるで魔力が殆どないように見えたが、一度飛び始めると物凄い速度で飛んで行った。あの魔族がグリフォンを倒したという事だが、たしかにあの魔族はかなり強いのだろう。
 
 が、所詮、たった一人の魔族だ。
 どれだけ強かろうが、あの魔族が複数のグリフォン達を相手に勝てることはない。
 もうしばらくすると、グリフォン達があの魔族の死体を咥えて、ここへ来るのは間違いないが、そこでどう説明したらいいのだろうか? 
 グリフォン達の機嫌を損ねないよう丁寧に、事情を説明しなければならない。複数の可能性を考えていく。

 自分達は人の国の一番端の街に住んでいる。この街は主に、来訪者の入国審査や外へ出かける者の出国手続きを取るための街だ。自分達には、国の行く末を決めるだけの権限があるわけではない。

 できれば国の中央である人族の代表達に、今回の魔族によるグリフォン殺害について意見を求めたいところではあるが、間に合わない可能性がある。中央で意見を集約するのには時間が掛かる。

 もちろん既に中央には報告して今後の対応について指示を仰いでいるが、場合によったら、グリフォン達がすぐに到着してしまうかもしれない。

 今回に関しては、私の判断が人の行く末を決めることになる。

 オリバがそのことを思うと、額に一筋の汗が流れていった。

********************

 しばらくして、オリバ達の目の前にはグリフォンの首が七個積まれていた。

 その中で、とりわけ一つの首は、他の首に比べて二倍以上、大きかった。
 この首の個体は、〝七体〟の中でおそらく最も年長者で、強い個体だったのだろう。

「首七つだ。さて、おまえらはどうする?」

 オリバは本当に驚いた。
 どう転んでも、あり得ない状況だ。
 そもそもグリフォンの本拠地とこの人の領地では相当の距離がある。
 あの魔族が走り出して帰ってくるまでに三十分も掛かっていない。

 ということは、あの魔族は物凄い速度でほぼグリフォンの本拠地近くまで行き、七体のグリフォンを倒してここまで戻ってきたということになる。

 本当にこの魔族がやったのだろうか?

 誰か別の者が倒した首を、持ってきただけではないのだろうか?

 それとも、この魔族は本当に強いのだろうか?

「……分かりました。すぐにこのことを中央に伝えて、あなた様に従うように意見させて戴きたいと存じ上げます」
 
 そう言って、オリバはそこにいた全ての人間を跪かせて、この魔族に対して頭を下げさせた。
 ただ、オリバはこの段階で、この魔族の事をもちろん信用していたわけではなかった。
 兵士や街の人に被害が出ないようにするためだけに、しょうがないから頭を下げた。

 グリフォンが本気で攻めてきたらこの魔族は負ける。

 国の中央と連携して、すぐにこの魔族の対処に当たらねばならない、そう思っていた。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった

雷覇
ファンタジー
ワノクニ、蒼神流・蒼月道場。 天城蒼真は幼き頃から剣を学び、努力を重ねてきた。 だがある日、異世界から来た「勇者」瀬名隼人との出会いが、すべてを変える。 鍛錬も経験もない隼人は、生まれながらの天才。 一目見ただけで蒼真と幼馴染の朱音の剣筋を見切り、打ち破った。 朱音は琴音の命で、隼人の旅に同行することを決意する。 悔しさを抱えた蒼真は、道場を後にする。 目指すは“修羅の山”――魔族が封印され、誰も生きて戻らぬ死地へと旅立つ。

最強転生悪役令嬢は人生を謳歌したい!~今更SSクラスに戻れと言われても『もう遅い!』Cクラスで最強を目指します!~【改稿版】

てんてんどんどん
ファンタジー
 ベビーベッドの上からこんにちは。  私はセレスティア・ラル・シャンデール(0歳)。聖王国のお姫様。  私はなぜかRPGの裏ボス令嬢に転生したようです。  何故それを思い出したかというと、ごくごくとミルクを飲んでいるときに、兄(4歳)のアレスが、「僕も飲みたいー!」と哺乳瓶を取り上げてしまい、「何してくれるんじゃワレ!??」と怒った途端――私は闇の女神の力が覚醒しました。  闇の女神の力も、転生した記憶も。  本来なら、愛する家族が目の前で魔族に惨殺され、愛した国民たちが目の前で魔族に食われていく様に泣き崩れ見ながら、魔王に復讐を誓ったその途端目覚める力を、私はミルクを取られた途端に目覚めさせてしまったのです。  とりあえず、0歳は何も出来なくて暇なのでちょっと魔王を倒して来ようと思います。デコピンで。 --これは最強裏ボスに転生した脳筋主人公が最弱クラスで最強を目指す勘違いTueee物語-- ※最強裏ボス転生令嬢は友情を謳歌したい!の改稿版です(5万文字から10万文字にふえています) ※27話あたりからが新規です ※作中で主人公最強、たぶん神様も敵わない(でも陰キャ) ※超ご都合主義。深く考えたらきっと負け ※主人公はそこまで考えてないのに周囲が勝手に深読みして有能に祀り上げられる勘違いもの。 ※副題が完結した時点で物語は終了します。俺たちの戦いはこれからだ! ※他Webサイトにも投稿しております。

処理中です...