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第50話 世界の均衡が変わる時 その1
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キエティは〝その瞬間〟を見ていた。
ゼムドの瞳孔がやや細くなり、瞳の色が黒色から黄金色に変化した。
次の瞬間、ゼムドの左目の下にあった幾何学的な模様が、ゼムドの皮膚から空中へと浮かび上がった。そして、それは一度だけ光り輝くと同時に消えていってしまった。
その直後だった。
ゼムド本体から物凄い量の魔力が放出され始めていく。
自分は何故か結界で守らている。
ゼムドの髪の色は黒から完全な白へ、また皮膚の色も人族の肌色から白色に変化していく。普段着ているコートのような服装も、何かの司教のような白を基調としたローブ姿にその形を変えていった。
なんとなく神を思わせる。
辺り一帯をゼムドの魔力が包んでいく。
ゼムドの魔力の色は黒だ。
太陽が出ている時間なのに、ゼムドの魔力のせいで辺りが暗くなっていく。
まるで、日食が起きているようだ。
ゼムドがキエティを優しく抱きあげた。
そして、言葉を発した。
『者どもよ、傅け』
囁いた瞬間、辺り一帯に物凄い重力が掛かる。
グリフォンの兵士達はゼムドの魔力を見てから、千体ほどカルサーン上空に飛翔し、都市の護衛をしようとしていた。
が、急に重力を受けたせいで、どの個体も空中で翼の骨が折られ、地面に落ちていく。
何千本もの翼の骨の折れる気色の悪い音が、辺り一面に木霊する。
それと同時に、落とされたグリフォン達はカルサーン都市建物に衝突して、まるで爆弾のように建造物を毀損・損壊していった。破壊を目的とした流星群が降り注いだみたいな光景だった。
キエティは驚いていた。
ゼムドは本当に強かったんだ……
だったら、何でもっと……
ゼムドはグリフォンではない方角をずっと見ている。
何を見ているのだろう?
********************
シェルドミルはこの段階に至って初めて、目の前にいる魔族が異常個体であることに気づいた。
分からなかった。
何故だ? これほどの魔力を持ちながら、さっき見た時は何も魔力を纏っていなかった。
あの段階でこの魔族を即殺していれば、こんな失態を演じることはなかった。
完全に自分の判断ミスだ。
まずい、王を守らねば。
信号を送って、王の安否を確認する。
異常個体が使った魔法のせいで、シェルドミルの羽の骨は折られ、また、その後も強い力で地面に体を押さえつけられていた。
おそらく大半のグリフォンの翼の骨は折られたはずだ。
しかし、この上から強烈に押さえつけられる力は確かに凄いが、王はこの程度では致命傷を受けてはいないはずだ。
だが、ここで、この個体と戦えるグリフォンがどれだけいる?
外部から別の者にさらに襲われたら、都市も壊滅的な打撃を受けることになる。
何ができるか、急いで考える。
********************
ゼムドはじっと遠くを見ていた。
ここへ来るのは龍が三体、魔が六体。
後方で龍が十四体魔力を放出している。
これらの目的はおそらく……。
さて、世界の均衡を変えるか、そう思う。
このまま、あの魔力を持つ者達がここへ到着するとなると、魔力汚染が発生する。
結界の魔法陣を多重起動して、人の地だけでなく、グリフォン兵やその都市も含めて護っていく。
……。
到着まで、あと、3、2、1――。
物凄い速度で、龍が三体、魔族が六体ここへ到着した。
本来なら物凄い衝撃音が響き渡るのだろうが、ゼムドの重力魔法でそれを中和していく。
********************
キエティがゼムドの見据えている方向を同じように眺めていると、何か遠くから近づいてくるのが分かった。
そして遠くに点があると思った次の瞬間、いきなり目の前に大きい龍が三匹と、魔族が六人現れた。
物凄い速度で飛んできたのだろう。
魔族六人はこちらを見ることなく、上空で周囲をキョロキョロ見渡している。
何かを探しているのだろうか?
龍もだ。こちらを見ずに何かを探している。
何を探しているのだろう? と思っていると、一人の魔族がこっちを見下ろして、喋りかけてきた。
「おい、ゼムド、お前と戦っている奴は誰だ? どこにいる?」
ゼムドは答えない。
女の子の魔族が喋り出す。
「あれぇ、なんもいなくない? なんでぇ?? もしかして、もうゼムドが殺しちゃったの?」
侍のような恰好をした魔族も喋る。
「拙者はそれは無いと思うでござる。ゼムド殿がこれほど魔力を放出する相手なのに、全く気配を感じられないなんてことはあり得ないでござる」
最初の魔族が喋り始める。
「ゼムド、お前なんでこの辺り一帯護ってるんだ?? てか、お前の抱きかかえてるそれ何だ? まさかそれ人族か?」
ゼムドが最初に質問してきた魔族を、見上げながら答える。
『この者は、余が人の地を訪れた際に世話になった者だ。愚弄は許さぬ』
「いや、意味わかんねーって。これどう云う状況だよ。お前、何かと戦おうとしてたんじゃないのか?」
質問をされたが、ゼムドは黙っている。アザドム達と龍を見上げるだけだ。
何も答えない。
時間だけが過ぎていく――。
しかし、古龍ファルデザードはこの段階で何が起こっているか大体理解していた。
これは〝使える〟
まさかこういう状況が訪れるとは思わなかった。
〝この魔族六体は使える〟
そう思って、古龍ファルデザードは喋り始めることにした。
「フン、教えてやろう、六人の魔族達よ。ゼムドの敵が何であるかを」
その言葉を聞いて、六人の魔族が龍を一斉に見る。
「ゼムドはな、人の世界に情が湧いたのだ。そして弱い種が受ける不平等を敵とみなしたのだ」
龍はゼムドを見下ろし、見据えた。
「ゼムドよ、悲しいほどに哀れな者だ、貴様は。それほどの力を持って生まれながら、普通の種なら誰しも気づくことに、その年月を経てやっと気づいたか」
ゼムドは黙っている。
「大方、お前が人の地に下りて生活している時に、そのグリフォン達が人の世界にちょっかいを出して、それで揉めたのであろう。そして今お前が抱きかかえている者を護るためだけに、これほどの力を放出するとは」
アザドムドがゼムドに話しかける
「護るってなんだ? おまえそんなことして何か面白いのか??」
ミホも言う。
「龍の言ってること全然分かんないんですけどー」
「拙者も全く意味が分からないでござる。龍ではなく、ゼムド殿の言葉で説明して頂きたい」
この段階で、ゼムドはグリフォンに対して掛けてある重力魔法を解いた。
するとグリフォン達が一斉に立ち上がった。
ゼムドの瞳孔がやや細くなり、瞳の色が黒色から黄金色に変化した。
次の瞬間、ゼムドの左目の下にあった幾何学的な模様が、ゼムドの皮膚から空中へと浮かび上がった。そして、それは一度だけ光り輝くと同時に消えていってしまった。
その直後だった。
ゼムド本体から物凄い量の魔力が放出され始めていく。
自分は何故か結界で守らている。
ゼムドの髪の色は黒から完全な白へ、また皮膚の色も人族の肌色から白色に変化していく。普段着ているコートのような服装も、何かの司教のような白を基調としたローブ姿にその形を変えていった。
なんとなく神を思わせる。
辺り一帯をゼムドの魔力が包んでいく。
ゼムドの魔力の色は黒だ。
太陽が出ている時間なのに、ゼムドの魔力のせいで辺りが暗くなっていく。
まるで、日食が起きているようだ。
ゼムドがキエティを優しく抱きあげた。
そして、言葉を発した。
『者どもよ、傅け』
囁いた瞬間、辺り一帯に物凄い重力が掛かる。
グリフォンの兵士達はゼムドの魔力を見てから、千体ほどカルサーン上空に飛翔し、都市の護衛をしようとしていた。
が、急に重力を受けたせいで、どの個体も空中で翼の骨が折られ、地面に落ちていく。
何千本もの翼の骨の折れる気色の悪い音が、辺り一面に木霊する。
それと同時に、落とされたグリフォン達はカルサーン都市建物に衝突して、まるで爆弾のように建造物を毀損・損壊していった。破壊を目的とした流星群が降り注いだみたいな光景だった。
キエティは驚いていた。
ゼムドは本当に強かったんだ……
だったら、何でもっと……
ゼムドはグリフォンではない方角をずっと見ている。
何を見ているのだろう?
********************
シェルドミルはこの段階に至って初めて、目の前にいる魔族が異常個体であることに気づいた。
分からなかった。
何故だ? これほどの魔力を持ちながら、さっき見た時は何も魔力を纏っていなかった。
あの段階でこの魔族を即殺していれば、こんな失態を演じることはなかった。
完全に自分の判断ミスだ。
まずい、王を守らねば。
信号を送って、王の安否を確認する。
異常個体が使った魔法のせいで、シェルドミルの羽の骨は折られ、また、その後も強い力で地面に体を押さえつけられていた。
おそらく大半のグリフォンの翼の骨は折られたはずだ。
しかし、この上から強烈に押さえつけられる力は確かに凄いが、王はこの程度では致命傷を受けてはいないはずだ。
だが、ここで、この個体と戦えるグリフォンがどれだけいる?
外部から別の者にさらに襲われたら、都市も壊滅的な打撃を受けることになる。
何ができるか、急いで考える。
********************
ゼムドはじっと遠くを見ていた。
ここへ来るのは龍が三体、魔が六体。
後方で龍が十四体魔力を放出している。
これらの目的はおそらく……。
さて、世界の均衡を変えるか、そう思う。
このまま、あの魔力を持つ者達がここへ到着するとなると、魔力汚染が発生する。
結界の魔法陣を多重起動して、人の地だけでなく、グリフォン兵やその都市も含めて護っていく。
……。
到着まで、あと、3、2、1――。
物凄い速度で、龍が三体、魔族が六体ここへ到着した。
本来なら物凄い衝撃音が響き渡るのだろうが、ゼムドの重力魔法でそれを中和していく。
********************
キエティがゼムドの見据えている方向を同じように眺めていると、何か遠くから近づいてくるのが分かった。
そして遠くに点があると思った次の瞬間、いきなり目の前に大きい龍が三匹と、魔族が六人現れた。
物凄い速度で飛んできたのだろう。
魔族六人はこちらを見ることなく、上空で周囲をキョロキョロ見渡している。
何かを探しているのだろうか?
龍もだ。こちらを見ずに何かを探している。
何を探しているのだろう? と思っていると、一人の魔族がこっちを見下ろして、喋りかけてきた。
「おい、ゼムド、お前と戦っている奴は誰だ? どこにいる?」
ゼムドは答えない。
女の子の魔族が喋り出す。
「あれぇ、なんもいなくない? なんでぇ?? もしかして、もうゼムドが殺しちゃったの?」
侍のような恰好をした魔族も喋る。
「拙者はそれは無いと思うでござる。ゼムド殿がこれほど魔力を放出する相手なのに、全く気配を感じられないなんてことはあり得ないでござる」
最初の魔族が喋り始める。
「ゼムド、お前なんでこの辺り一帯護ってるんだ?? てか、お前の抱きかかえてるそれ何だ? まさかそれ人族か?」
ゼムドが最初に質問してきた魔族を、見上げながら答える。
『この者は、余が人の地を訪れた際に世話になった者だ。愚弄は許さぬ』
「いや、意味わかんねーって。これどう云う状況だよ。お前、何かと戦おうとしてたんじゃないのか?」
質問をされたが、ゼムドは黙っている。アザドム達と龍を見上げるだけだ。
何も答えない。
時間だけが過ぎていく――。
しかし、古龍ファルデザードはこの段階で何が起こっているか大体理解していた。
これは〝使える〟
まさかこういう状況が訪れるとは思わなかった。
〝この魔族六体は使える〟
そう思って、古龍ファルデザードは喋り始めることにした。
「フン、教えてやろう、六人の魔族達よ。ゼムドの敵が何であるかを」
その言葉を聞いて、六人の魔族が龍を一斉に見る。
「ゼムドはな、人の世界に情が湧いたのだ。そして弱い種が受ける不平等を敵とみなしたのだ」
龍はゼムドを見下ろし、見据えた。
「ゼムドよ、悲しいほどに哀れな者だ、貴様は。それほどの力を持って生まれながら、普通の種なら誰しも気づくことに、その年月を経てやっと気づいたか」
ゼムドは黙っている。
「大方、お前が人の地に下りて生活している時に、そのグリフォン達が人の世界にちょっかいを出して、それで揉めたのであろう。そして今お前が抱きかかえている者を護るためだけに、これほどの力を放出するとは」
アザドムドがゼムドに話しかける
「護るってなんだ? おまえそんなことして何か面白いのか??」
ミホも言う。
「龍の言ってること全然分かんないんですけどー」
「拙者も全く意味が分からないでござる。龍ではなく、ゼムド殿の言葉で説明して頂きたい」
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するとグリフォン達が一斉に立ち上がった。
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※他Webサイトにも投稿しております。
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