最強の魔族がやってきた ~人の世界に興味があるらしい~

夏樹高志

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第27話 魔族と一緒に街を歩く その2

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 ウエディングドレスの販売店に入ると、女性の店員がすぐに寄ってきた。

「いらっしゃいませ。ご結婚のご予定ですか?」

 キエティは申し訳ないと思いつつ、店員に話しかける。

「すみません。実は、私は人族の代表の一人なのですが、仕事のために一度だけウェディングドレスをこの場で着させて頂きたいのです。お店にとってはご迷惑かもしれませんが、一回だけ試着させていただけないでしょうか?」

 店員は何故かキエティの後ろをチラッと見た。それからキエティの耳元で囁く。

「今話題の魔族の方ですね。大丈夫ですよ。せっかくですから良いところを見せましょう!」

 いや、違うって、何を勘違いしているんだか……。

 十五分ほど時間を掛けて、最初の一着を着てみることになった。
 どのウェディングドレスを着るべきか、結構悩んでしまった。着てみてゼムドにつまらないと言われては困るからだ。どうしようかと悩んだが、少し肌の露出が多めのウェディングドレスを選ぶことにした。
 ゼムドも男だ。きっと、女性の肌が見える方が喜ぶのではないか? と推測してそのようなものを選んでみた。
 店員さんに手伝ってもらって、彼女には申し訳ないと思いつつもウェディングドレスを着させてもらった。

 これは――――。

 いい!!
 中々いい!!
 かなり、ばっちりだ!!
 ゼムドに見せるよりも先に、店員さんにお願いして自分を撮影してもらう。
 記念に撮っておこう!!

 ……いやいや、いけない、いけない。
 自分が楽しんでいる場合ではない。ゼムドはこの姿を見て人族を理解しようとしているのだ。そちらを優先せねば。
 そう思って、ゼムドの前へ行く。キエティはニコニコしてゼムドに話しかけた。

「どうですか?」

 ゼムドはキエティを見ているが、つまらなそうな表情で一言返答した。

「動きにくそうだな」

 そういう事じゃないでしょ!! と思うが、黙っていることにする。
 すると、店員が話しかけてきた。

「折角だからもう一着、試着してみませんか?」

 店員は笑顔で、次のウェディングドレスを奨めてきた。

 ここでの店員の申し出はありがたいが、それに応じるわけにはいかない。
 今日、私はゼムドの監視をするのが任務だ。
 私は人族の代表であり、また、人族を魔族から守るという使命感を背負ってこの場にいる。
 軽い気持ちでここへ来たわけでない。
 私の軽率な行動一つでゼムドが街一つを消してしまうかもしれないのだ。
 店員には申し訳ないが、ここは断るしかない。
 そう思って返答しようとすると、店員がカタログを出してきた。

「どうですか? このページのモデルが今月やっと入荷したんですよ。人気のモデルで、今を逃したらもう着れないと思いますね」
「……」

 ここで、もう一度、状況を分析してみる。
 ゼムドは人の世界の慣習について全く知識がない。
 ウェディングドレスと言えば、人族ならば誰でもすぐにイメージすることができるが、ゼムドはそうでないはずだ。
 考えてみると、一着来ただけではウェディングドレスの良さが分からないかもしれない。
 人族の良さをゼムドが理解してくれれば、ゼムドは人族の街を破壊するなどと言わなくなくかもしれない。
 ならば、私が二着目を試着することにも意味があると考えられる。
 私は人族を魔族から守らねばならない。
 使命感が湧き上がってくる。

「ゼムド様、ちょっとよろしいでしょうか?」

「何だ?」

「ゼムド様にはウェディングドレスの良さが伝わっていないようなので、私がもう一着着てみるとその良さが分かるかもしれません。私がもう一度着替えた姿を見たくはないでしょうか?」

「……。いいいだろう。もう一度やってみろ」

 ゼムドはあまり興味が無いといった顔をしているが、私はウキウキして二着目のウェディングドレスを着てみることにする。

 店員さんが手伝ってくれ、ウェディングドレスを着させてもらえた。
 着終えてみたが、やはりいい。
 一着目に比べると肌の露出が無いが、綺麗に体のラインにフィットして姿を綺麗に見せている。このウェディングドレスをデザインした人は天才かもしれない。これはこの場で着ておく価値があると思った。
 もちろん、店員さんにお願いしてこの状態も撮影してもらう。
 記念に撮っておかなくては。
 今度は両手でピースをしながら、写真を撮ってもらった。

 が、そこで思い出した。

 ああ、そうだ、ゼムドに見せるために着たのだった。
 面倒だけど、ゼムドにもう一度を見せることにする。

「ゼムド様、どうですか? 私は一着目よりこちらの方が良いと思うのですが、ゼムド様は最初とこちらではどちらの方が好みでしょうか?」

「……」

 ゼムドはキエティを上から下まで一瞥しただけで、何の感想を言おうともしない。無表情だ。
 だがこの時、ふと思った。
 もしかすると、ゼムドはこの二着目の良さが分からないのかもしれない。
 三着目を着るしかないだろう。

「あの、ゼムド様――」

「もういい。大体分かった。次へ行くぞ」

 ゼムドはそういうと踵を返してサッと、店外へ行ってしまった。
 店員が近づいて着て、苦笑いしながら話しかけてきた。

「彼氏さんはあまりご興味が無いみたいですね」

「いや、違いますって、そんな関係じゃないですよ! 仕事ですよ! 仕事!!」

「ああ、そうなんですか」

 店員は笑っている。
 何か勘違いしているとしか思えないが、もう説明するのが面倒なので放っておくことにする。
 ウェディングドレスを脱がせてもらって、最後に店員にもう一度後日謝罪に来ます、と伝えて店外へ歩いていく。

「あーあ、もっと着たかったのにー」

 思わず声が出てしまうが、仕方ない。
 ゼムドが出て行ってしまったのだから、自分も店を出ていくしかない。
 そう思って、トテトテと店の外へ出ていくことにした。
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