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第二章
第61話 鎧の中身
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「おまえは――」
ゼムドが鎧の中から出てきた人物をみて、やや驚いて呟いた。
鎧の中から出てきたのは、長い黒髪で着物を着た女だった。
一般的に見れば美少女、また、美女にも見える。
他の魔族達も驚いたような顔をしている。
一方で、鎧の中から出てきた女はすました顔をして話を始めた。
「お久しぶりですゼムド様。覚えていて下さったようで光栄です。あの時はありがとうございました」
ゼムドは次の瞬間、警戒した表情をして返答した。
「報復に来たのか?」
女は首を横に振りながら答えた。
「まさか。あの時ゼムド様が我が一族を守ってくださらなかったら、私たちはどうなっていたか分かりません。感謝こそあれど、報復などとても――」
ゼムドは警戒した表情のままで続ける。
「あれはお前たちを守っていたわけではない。単に、あそこでお前達に死なれたら、つまらないから外敵を排除していただけだ。あの時期の俺は――、強そうな連中のところへ片っ端から行って倒し、その後、そいつに報復を誓わせて、そいつが回復するまで守ってやっていただけだ。お前達もそうだ。別に助けたつもりはない」
女は首をまた横に振った。
「まぁ、そのように感じられるのは当然でしょうが、私としては、あれは助けて戴いたものだと理解しております。そして、今日ここで鎧を解いた理由について申し上げます」
そう言って、女性は床に正座をして、前に手を付いた。
「エスカさんの後で構いませんので、ゼムド様に発情期が訪れた際は、私の相手をしていただけないでしょうか?」
ゼムドが驚いている。そして、この瞬間、ゼムドはケリドの方へ一瞬だったが、視線を送った。ケリドも驚いた表情のままゼムドに視線を返す。何かに気づいたようだ。
ゼムドは少し考えていたが、しばらくしてエスカの方を見て質問した。
「エスカ、お前はこの話についてどう思う?」
エスカは特に表情を変えることもなく即答した。
「別に私は構いませんよ。ただ、最初の相手が私という点だけは守ってもらいますが、それ以外については興味がないので」
ゼムドは少し考えてから、もう一度、女に視線を落として返事をした。
「いいだろう。お前の要求も飲んでやる。ただ、エスカと同じ条件だ。お前が人族及び他種族に危害を加えるならその段階でお前を殺す。また、行為中はお前も魔力を完全に解け。それが条件だ」
女は顔を上げて無表情にゼムドへ返答した。
「ありがとうございます。私が人族や他種族を殺さないことをここで誓いましょう。また、私の名はシヴィと云います。今後はそうお呼びください」
そう言って、その場で立ち上がる。
そこで、キエティはふと気づいた。
アザドムドの様子がおかしい。顔が赤い。しかも耳まで赤い。
エスカもそれに気づいたようで、ニヤッと笑って、アザドムドに話しかけた。
「アザドムドく~ん。どうしちゃったのかな~?」
アザドムドがエスカを睨んだ。
「別に何でもねぇよ」
エスカが両手を上げながら、ゆっくりと歩く。
「ああ、そうよね、その通りよね。クールを売りにしたアザドムド君が、まさか、一目惚れとか、そんなことあるわけないわよね~」
アザドムドの表情が変わるのが分かる。
「エスカ、表へ出ろ。今日がお前の最期だ」
エスカが腰に手を当てて、言い返す。
「あんたが、いっつも私をからかうからでしょ!!」
ゼムドが仲裁に入る。
「やめろ、下らないことで騒がないでくれ。もう今日は終わりにしよう。お前達には、人族の国で過ごす場所へ行ってもらう。お前達には悪いが、当面はそこで結界を張らせてもらう。しばらくは俺の許可がでないうちは、そこで魔道板を使って勉強してもらう。ケリド、準備したマンションまでこいつらを連れて行ってやってくれ」
ケリドがゼムドの言葉を聞いて頷く。
「分かりました。では、皆さんは私に付いてきてください」
エスカがゼムドに尋ねた。
「ゼムド様はどうされるのですか?」
「俺は、今はこの建物近くのホテルのスイートルームにいる。最終的には俺もお前たちのマンションに移動するつもりだが、現在は人族から連絡を取りやすい理由で、この首都に住まいを構えている。様々な人間が俺の下へ来る。要望が多く、実際にその望みを叶えるかどうかは別問題だが、話だけは聞くことにしている。
それに、俺は定期的にかなりの高頻度で龍のところへ行かねばならない。それは龍種からの俺が人の国へ関わることの条件だ。要は、俺の監視だ。最終的にはお前たちも定期的に龍種の下へ訪れて日常を報告せねばいけない。また、龍種からの連絡は、現在首都でしか受信できない。だから、首都から動けない」
アザドムドが真面目な顔をして、不満そうに言う。
「おいおい、冗談だろ。なんでゼムド、お前があんなトカゲに従ってんだよ」
ゼムドはアザドムドを真剣に見据えて返答した。
「前にも言ったことだが、俺達の力は大きすぎる。世界のバランスを崩すことがありえる。だから、俺達もきちんとした分別を付けることで、世界全体の安定性に貢献しなければいけない。
今は俺達が魔族の中で最も強いが、最終的にどうなるか分からない。例えば、俺達より強い魔族が現れて、世界の均衡を崩そうとするなら、俺達全員で闘ってそいつを倒さねばならない。
また、俺は今の魔族の現況を変えようと思った。可能なら、俺達も魔族の国を作り、法を作り、己を律する生活をしたい。今の様に同族同士で、永遠に殺し合いをし続け死ぬのは御免だ。
龍にはその変革の手伝いをしてもらっているつもりだ。あいつらとしては俺達を監視したいのだろうが、ただ、俺からすると第三者を介入させることで俺達の自立をより促せると思っている。そのために龍に協力してもらっているつもりだ」
アザドムドは不満そうだが、特にそれ以上追及もしなかった。アザドムドを筆頭にして、素直に魔族達は部屋を出ていった。
部屋には人族三人と、キエティが取り残された。
ゼムドがキエティに話しかけた。
「キエティ、お前はこれからどうする?」
キエティは時間を確認したが、もうすぐ教授会の時間が近づいていた。
今この場にいるわけにはいかなかった。
「ゼムド様、すみません。お話をしたいのですが、ちょっと仕事の方が立て込んでいまして、すぐにそちらの方へ向かわねばなりません。また機会を改めて、ご連絡差し上げようと思いますが、宜しいでしょうか?」
「構わない。俺はこれから人族の代表と話し合いをする。ただ、おそらく明日もあの六人と人族の代表達とで今日の様に話し合いをする。お前は明日も来るか?」
キエティは少し考えたが、こう返事をした。
「――はい。私も明日、是非参加させてください」
***********
ゼムドは人族の代表と話をした後、部屋に残って、一人で座っていた。
ガルドロスト、もといシヴィは、俺が以前に報復を誓わせた者だった――。
シヴィは俺に対して、好意があるような発言をしていたが、あれは〝おかしい〟。
なぜなら、俺に好意を抱いているなら、最初から鎧など被らず会いにくればいい。
シヴィには何か目的があるはずだ。
それを推測しなければいけない。
ゼムドは部屋に一人残って、ガルドロストがこの四千年間、鎧を被っていた時期について思い出していた。
――違和感の痕跡を見つけ出さなければいけない――。
そうして、取り留めもなく考え続けるのだった。
ゼムドが鎧の中から出てきた人物をみて、やや驚いて呟いた。
鎧の中から出てきたのは、長い黒髪で着物を着た女だった。
一般的に見れば美少女、また、美女にも見える。
他の魔族達も驚いたような顔をしている。
一方で、鎧の中から出てきた女はすました顔をして話を始めた。
「お久しぶりですゼムド様。覚えていて下さったようで光栄です。あの時はありがとうございました」
ゼムドは次の瞬間、警戒した表情をして返答した。
「報復に来たのか?」
女は首を横に振りながら答えた。
「まさか。あの時ゼムド様が我が一族を守ってくださらなかったら、私たちはどうなっていたか分かりません。感謝こそあれど、報復などとても――」
ゼムドは警戒した表情のままで続ける。
「あれはお前たちを守っていたわけではない。単に、あそこでお前達に死なれたら、つまらないから外敵を排除していただけだ。あの時期の俺は――、強そうな連中のところへ片っ端から行って倒し、その後、そいつに報復を誓わせて、そいつが回復するまで守ってやっていただけだ。お前達もそうだ。別に助けたつもりはない」
女は首をまた横に振った。
「まぁ、そのように感じられるのは当然でしょうが、私としては、あれは助けて戴いたものだと理解しております。そして、今日ここで鎧を解いた理由について申し上げます」
そう言って、女性は床に正座をして、前に手を付いた。
「エスカさんの後で構いませんので、ゼムド様に発情期が訪れた際は、私の相手をしていただけないでしょうか?」
ゼムドが驚いている。そして、この瞬間、ゼムドはケリドの方へ一瞬だったが、視線を送った。ケリドも驚いた表情のままゼムドに視線を返す。何かに気づいたようだ。
ゼムドは少し考えていたが、しばらくしてエスカの方を見て質問した。
「エスカ、お前はこの話についてどう思う?」
エスカは特に表情を変えることもなく即答した。
「別に私は構いませんよ。ただ、最初の相手が私という点だけは守ってもらいますが、それ以外については興味がないので」
ゼムドは少し考えてから、もう一度、女に視線を落として返事をした。
「いいだろう。お前の要求も飲んでやる。ただ、エスカと同じ条件だ。お前が人族及び他種族に危害を加えるならその段階でお前を殺す。また、行為中はお前も魔力を完全に解け。それが条件だ」
女は顔を上げて無表情にゼムドへ返答した。
「ありがとうございます。私が人族や他種族を殺さないことをここで誓いましょう。また、私の名はシヴィと云います。今後はそうお呼びください」
そう言って、その場で立ち上がる。
そこで、キエティはふと気づいた。
アザドムドの様子がおかしい。顔が赤い。しかも耳まで赤い。
エスカもそれに気づいたようで、ニヤッと笑って、アザドムドに話しかけた。
「アザドムドく~ん。どうしちゃったのかな~?」
アザドムドがエスカを睨んだ。
「別に何でもねぇよ」
エスカが両手を上げながら、ゆっくりと歩く。
「ああ、そうよね、その通りよね。クールを売りにしたアザドムド君が、まさか、一目惚れとか、そんなことあるわけないわよね~」
アザドムドの表情が変わるのが分かる。
「エスカ、表へ出ろ。今日がお前の最期だ」
エスカが腰に手を当てて、言い返す。
「あんたが、いっつも私をからかうからでしょ!!」
ゼムドが仲裁に入る。
「やめろ、下らないことで騒がないでくれ。もう今日は終わりにしよう。お前達には、人族の国で過ごす場所へ行ってもらう。お前達には悪いが、当面はそこで結界を張らせてもらう。しばらくは俺の許可がでないうちは、そこで魔道板を使って勉強してもらう。ケリド、準備したマンションまでこいつらを連れて行ってやってくれ」
ケリドがゼムドの言葉を聞いて頷く。
「分かりました。では、皆さんは私に付いてきてください」
エスカがゼムドに尋ねた。
「ゼムド様はどうされるのですか?」
「俺は、今はこの建物近くのホテルのスイートルームにいる。最終的には俺もお前たちのマンションに移動するつもりだが、現在は人族から連絡を取りやすい理由で、この首都に住まいを構えている。様々な人間が俺の下へ来る。要望が多く、実際にその望みを叶えるかどうかは別問題だが、話だけは聞くことにしている。
それに、俺は定期的にかなりの高頻度で龍のところへ行かねばならない。それは龍種からの俺が人の国へ関わることの条件だ。要は、俺の監視だ。最終的にはお前たちも定期的に龍種の下へ訪れて日常を報告せねばいけない。また、龍種からの連絡は、現在首都でしか受信できない。だから、首都から動けない」
アザドムドが真面目な顔をして、不満そうに言う。
「おいおい、冗談だろ。なんでゼムド、お前があんなトカゲに従ってんだよ」
ゼムドはアザドムドを真剣に見据えて返答した。
「前にも言ったことだが、俺達の力は大きすぎる。世界のバランスを崩すことがありえる。だから、俺達もきちんとした分別を付けることで、世界全体の安定性に貢献しなければいけない。
今は俺達が魔族の中で最も強いが、最終的にどうなるか分からない。例えば、俺達より強い魔族が現れて、世界の均衡を崩そうとするなら、俺達全員で闘ってそいつを倒さねばならない。
また、俺は今の魔族の現況を変えようと思った。可能なら、俺達も魔族の国を作り、法を作り、己を律する生活をしたい。今の様に同族同士で、永遠に殺し合いをし続け死ぬのは御免だ。
龍にはその変革の手伝いをしてもらっているつもりだ。あいつらとしては俺達を監視したいのだろうが、ただ、俺からすると第三者を介入させることで俺達の自立をより促せると思っている。そのために龍に協力してもらっているつもりだ」
アザドムドは不満そうだが、特にそれ以上追及もしなかった。アザドムドを筆頭にして、素直に魔族達は部屋を出ていった。
部屋には人族三人と、キエティが取り残された。
ゼムドがキエティに話しかけた。
「キエティ、お前はこれからどうする?」
キエティは時間を確認したが、もうすぐ教授会の時間が近づいていた。
今この場にいるわけにはいかなかった。
「ゼムド様、すみません。お話をしたいのですが、ちょっと仕事の方が立て込んでいまして、すぐにそちらの方へ向かわねばなりません。また機会を改めて、ご連絡差し上げようと思いますが、宜しいでしょうか?」
「構わない。俺はこれから人族の代表と話し合いをする。ただ、おそらく明日もあの六人と人族の代表達とで今日の様に話し合いをする。お前は明日も来るか?」
キエティは少し考えたが、こう返事をした。
「――はい。私も明日、是非参加させてください」
***********
ゼムドは人族の代表と話をした後、部屋に残って、一人で座っていた。
ガルドロスト、もといシヴィは、俺が以前に報復を誓わせた者だった――。
シヴィは俺に対して、好意があるような発言をしていたが、あれは〝おかしい〟。
なぜなら、俺に好意を抱いているなら、最初から鎧など被らず会いにくればいい。
シヴィには何か目的があるはずだ。
それを推測しなければいけない。
ゼムドは部屋に一人残って、ガルドロストがこの四千年間、鎧を被っていた時期について思い出していた。
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