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第二章
第70話 キウェーン街を散策する
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キエティはゼムドと街を見ながら歩いているが、確かに首都に比べれば娯楽施設等は少なそうだ。ただ、冒険者が集うという事もあり、回復薬を販売する店。武器や防具等を販売している店もある。そんな街並みを二人で見物していく。
すると、ゼムドが話し掛けてきた。
「最初にこの街に来た時は、全ての店のシャッターは下りていて、誰もいなかった。今思うとあれは、お前たちがそう指示したのだな」
「そうですね。あの時点では何が生じるか想定できなかったので、ああするしかありませんでした。申し訳ありませんでした」
「いや、いい。当然の判断だ。あの時点での俺は、他人に興味が無かったから、下手をすると何をしていたか分からない。あれは英断だろう」
「ゼムド様はあの時、よく怒りませんでしたね」
「俺は基本的に怒ることはない。怒らなければいけないような局面に出会ったことはなかったし、合理的な行動をする方がマシだと思っていたからだ。対して、アザドムドなどは魔族の癖にやたら感情の起伏があるが、あれはあれで珍しい。最初に出会った頃はあんな奴じゃなかったが、日を追うごとにバカになっていく気がする。なんなんだ、あいつは……」
「今、アザドムドさんはどうされているのですか?」
「毎日ゲームをやっているな。しかも、ゲーム機では飽き足らず、最近はハイスペックPCでゲームをやっている。最近は100インチの大型ディスプレイを大量に部屋に持ち込んで、自分を中心に円形に囲うようにしてゲームをやっているみたいだ。ついでに、VR系のゲームも並行してやっているようだ。あいつは、もう駄目かもしれない……」
「ミホさんはどうされていますか?」
「ミホも似たようなものだが、あいつは音楽関係が好きみたいだな。様々なゲームをやっていたが、最近は、ヒップホップ、レゲェ、民謡、演歌様々な曲を聞き続けているようだ。そのうち、作曲とか始めるかもしれない。まぁ、分からんが。
あいつは出会った時から性格があまり変わらないが、ただ、最近は少し変わってきているようにも見える。どう性格が変化するかは分からないが」
「他の三人はどうですか?」
「ワダマルは今、少し体調を崩していて、ガルドマドの家で療養している。体調は、時間が掛かるだろうが元には戻るだろう。
ガルドマドは、どうやら盤上ゲームが得意らしくてな。囲碁、将棋、チェス、その他各種ゲームをワダマルに教えたようだが、どうやらワダマルはすぐに強くなるらしい。新しいゲームをやって少し経つと、ガルドマドを追い抜くようだ。電話をした感じでは、ガルドマドは負けが込んで、心労がかなり溜まっているようだ。
エスカはマンションで魔道板を読み込んでいる感じだな。現在、特に問題を起こすわけではない。人族の食べ物に興味があるらしくて、甘味のあるお菓子や飲料水を大量に取り寄せて、それを飲み食いしながら、魔道板を読んでいるようだ。シヴィも同じだな。ただ、何も要求するわけでもない。ただ、黙って魔道板を読みこんでいるようだ」
「じゃあ、皆さん、特に何か問題があるわけじゃないんですね」
「一応、俺が結界を張ってあるからな。ただ、ケリドも小まめに出入りする必要があるから、それほど強い結界を張っているわけじゃない。穴があるかもしれない。それに俺としては、一応結界を張ってはあるが、基本的にはあいつらを信頼したい。本気であそこへ閉じ込めたいわけではない。それぞれが本人なりにいい方向へ進んでくれればいいのだが」
「ケリドさんはどうなんですか?」
「あいつは元々、何故かああいう風に他人の世話役をするのが好きなようだ。ここ最近、俺なりにあいつの過去を探ってみたが、どうやら獣族の街にいた頃から態度は丁寧で、事務作業をするのが好きだったようだ。何故俺に従って、あいつらの世話をしたがるのかよく分からないが、俺に会う以前からあのような行動を取っているとするなら、問題を起こすことはないだろう。ワダマルやアザドムドの様に信頼していいだろう」
キエティはここで気になったことを聞く。
「ゼムド様は、どうして、それほどにアザドムドさんを信頼されているのですか? 正直、私からすると、アザドムドさんに最初に会った時の印象が強くて、少し怖く感じてしまうのですが……」
「あいつに最初会った時は、あんなもんじゃなかったぞ。物凄い殺気をバラまきながら、戦闘技術が高くて、頭のキレる奴だった。俺が当時出会った魔族の中では最も強い奴だった。ただ、俺と闘って静かになった感じか。それが二年前のあの場で、一気に過去に戻ったような感じだな。ただ、最近はアホすぎて見ているこっちが、辛くなってくるが……」
そう言ってゼムドは呆れた顔をしたが、少し真面目な顔をして話を続けた。
「あいつは、俺が龍を倒してから、今のメンバーで共同生活をすることを自ら提案した。お前達人族からすると、大したこと無い話に見えるかもしれないが、これは上位種の魔族としては相当異質なことだ。おそらく、あいつはそれぞれのメンバーに頭を下げて、今の生活をすることを提案したはずだ。自分の存在意義、誇りを全て捨てなければできないほどのことだ。そのような判断をする魔族はいない。死んだ方がマシだろう。そういう意味で、俺はあいつを信頼している」
ゼムドはそう言って、キエティの顔を見る。
「そろそろ腹が減っているのではないか?何か食べたいならそう言えばいい」
「あ、すみません。たしかに少しお腹が減ってきているかもしれません。でもゼムド様は食べないですよね?」
「いや、最近は食べるようにしている。人に会う機会も増えているが、その場で相手に合わせる必要があって、そのような真似事をしている。また、どうせならと思って、魔法でお前達、人族の味覚を再現しながら食している。ただ、口に入れた瞬間に食材は溶けて吸収されてしまう感じだから、人族が食べているような食感はないが、疑似的な味覚は体感できている」
キエティは驚いた。
「そうなんですか。以前は全く食べなかったので、それにはびっくりしました。何がお好みですか?」
「別にどれも美味しく感じるぞ。肉、パスタにハンバーガー、何でもおいしく感じる。人族は嫌いな食べ物があるようだが、俺は特に何かを食べてまずいと思ったことはないな。キエティが食べたい店を選ぶといい。俺はどこでも構わない」
キエティはどうしようかと思ったが、ちょうど、近くにあるレストランの看板に目が留まった。それを指さして、ゼムドに奨めてみる。
「あれにしてみませんか?どうやら、ダンジョンで獲れたモンスターの肉を料理したお店みたいですよ。多分、この地域でないと食べられない料理ではないでしょうか?」
「――そうだな。たしかにここでしか食せないものかもしれない。せっかくだ。入ってみよう」
店内に入ってみたが、かなり大きい店だった。一度に五百人は入れるような店だ。
にもかかわらず、店内は半分ほど人が埋まっていた。
そして、店内には大きなガラスの水槽があった。耐圧ガラスで出来ており、水族館のように、外側から内部の様子が観察できるようになっている。また、ガラス内には様々な水様性の生物が入っているようだ。
ゼムドはキエティと一緒にそれを見てみる。
中に入っているもので一際、大きいのはカニだ。十メートル近くはあるだろうか。しかも目が怖い……。
キエティは不思議に思った。ダンジョンにこんな水の中に生息する生き物がいるのだろうか?
「ゼムド様はダンジョンに入ったことがありますか?ダンジョンの中は水があるのでしょか?」
「俺はダンジョンに入ったことはそれほど多いわけじゃない。多分10回程度だろう。ダンジョンにはもちろん水が溜まる場所もある。そこにいたカニを捕まえてきたのだろう。
見た感じ、お前達では、カニの食用部の魔素濃度が高すぎるから、何かしらの手段で魔素を下げる必要があるのではないか? おそらく、あの水はカニ内部の魔素を外部へ排出するような役割を担っているのだろう」
キエティはなるほど、と思っていたが、ここで店員が来たのでテーブルに案内してもらった。2人でメニューを見てみる。
「主に魚介系がメインの店みたいですね。どうしますか?」
「俺は何でもいいぞ。というか、俺も人族の国から電子マネーを貰っている。金額はそれなりに大きい。俺自身は欲しい物がないから、ほとんど使ったことはないが、お前が食べたいものを何でも注文するといい。食べきれないなら俺が食べてやろう。せっかくだ。様々なものを注文すればいい」
キエティは、ゼムドがお金を持っているとは思わなかったし、もし、持っていたとしても自分の分は自分で払いたいと思った。ただ、ゼムドにおごってもらうのは、本人の優しさの表れのような気がしたので、今回はおごってもらおうと思った。
「では、せっかくですから、色々と注文してみましょうか。私はそれほど食べるわけではありませんが、それでも種類は多く食べてみたいと思います」
そう言った瞬間だった。
『キャーーーーーー!!』
店内に女性の悲鳴が響き渡った。
キエティは女性の悲鳴を聞いて、慌ててそちらを見る。
すると、先ほどのカニがいけすの側面を上って、外へ這い出ようとしていた。しかも、動きが早い。
そして、近くにいた女性をハサミで掴もうとした。
瞬間、ゼムドが移動して、女性を抱きかかえてから、その場から離れる。
ゼムドは女性をすぐに下ろしてカニを見ている。
店員達が慌てて寄ってきて、カニを棒で抑えようとしている。しかし、これはどうにかなるようなレベルには見えない……。
ゼムドが一人の店員に尋ねる。
「これは、殺してしまうと問題があるのか?」
「いえ、もう食べられる段階まで魔素濃度が落ちています。殺してしまいたいのですが、何せ大きいので……」
そう言いながら、店員が棒で、カニを押し返している。
魔法を使えば殺すことはできるのだろうが、店内に影響が出るから使えないのだろう。
次の瞬間だった。
ゼムドがカニを殴った。
――ドン――
一瞬でカニの下に移動して、カニの頭を下からアッパーで殴ると、カニはそのまま動きを止めてしまった。死んだのか気絶したのかまでは分からない。
「これでいいのか?」
店員達が目を点にしている。
「あ、ありがとうございます。凄いですね……」
「なんで、こんな大きいカニを仕入れたんだ? お前たちの技量では、これは危険だろう」
「そうなんですが、実はギルドの方から、今夜、使うとかって話がありまして、その関係で一時的にここで保管されていたのです。私達としましても苦労はしていたのですが、ギルド関係者の方からすると、上客の方が今日来賓するらしくて、それ用とのことだったのです」
キエティにもこの話は聞こえてきたが、内容に思い当たる節がある。
間違いなくゼムドをもてなす為に、このカニをギルドが仕入れたのだろう。鮮度を保つために無理にここで保管して、それが逃げ出そうとしたわけだ。
これはキリに連絡を取った方が良いと思ったので、慌ててキリへ電話をした。
2コール目でキリが電話に出ので、慌ててこちらから話しかける。
「キリ?ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「何どうしたの?」
「今日、もしかしてゼムド様をもてなすためにカニを仕入れてない?」
「いや、私は知らないわ。どうしたの?」
「今、ダンジョン内で獲れた生き物を料理してくれる店があるんだけど、そこで十メートル近いカニが暴れだして、それをゼムド様が止めたのよ。話を聞くと、ギルドからの依頼でそれを無理に保管していたらしいんだけど、心当たりがあるかと思って」
キリは電話越しで、何かを考えていたようだが、すぐに返答してきた。
「分かったわ。あの〝バカ〟だわ。間違いないわ」
「どういうこと?」
「多分、ギルマスね。おそらくゼムド様をもてなすつもりで、何か驚かせるつもりだったんでしょう。それで、大きいカニを仕入れて、それを見せるつもりだったはずよ。いつも、そうなのよ、あの人は。ろくでもないことばっかりして、その尻拭いは私がするってわけ。多分、カニを仕入れるために、ギルドの予算も勝手に弄ってるわねぇ……」
「どうしたらいいの?」
「ちょっと私もすぐそこへ行くわ。店の名前を教えてくれる?」
店員は、お客たちに謝罪していた。客はそれほど怒っていたわけではないが、店内は騒然としていた。ゼムドは何故か、カニをバックに一緒に撮影を望む人たちの期待に応えていた。
しばらくして、キリが到着した。
そして、店員から事情を聞いて平謝りしていた。
それから、ゼムドが一通り、写真撮影を終えて、キエティの方へ近づいて来た。二人で一緒に元にいたテーブルへ戻った。そして、キリも同じテーブルへ近づいて来る。
「やっぱりギルマスだったわ。ギルド名義で勝手に伝票を切ってる感じね。あのカニについては、もうここで食べてもらうしかないわね。それにしても、あの大きさじゃ、相当の人数がいないと食べきれるものじゃないし、どうしましょう」
キリが困ったような表情をしているが、キエティはそれに返答した。
「ゼムド様なら食べきれるそうよ。もともとゼムド様用に注文したなら、今、食べても問題ないと思うけど」
キリはゼムドを見て質問した。
「あれを食べきれるのですか?」
「食べきれるぞ。厳密には舌に乗せた瞬間に溶かして、圧縮して体内に取り込む感じか。栄養になるわけではないが、別に食べ切れないことはない」
「じゃあ、あれを食べることにしましょう」
そう言って、キリは店員に注文をした。
キエティはあのカニをどうするのかと思っていたが、店員達は大釜を準備して、店内でそのカニを茹で始めた。周りには客が集まって、その様子を写真撮影している。
しばらくして、カニが運ばれてきた。
テーブルの上に、山盛りのカニのむき身が並べられている。
たくさんのソースが準備されていて、それぞれに付けて楽しむようだ。
三人でそれを食してみる。
「「美味しい」」
キエティとキリの声が重なる。
キエティは、魚介系は一度にたくさん食べると気持ち悪くなることが多い食材だと思っている。しかし、このカニは味がさっぱりしている割には、なんというか甘みがある。魚介特有の癖が無いと思った。次から次へと食べていく。キリも、先ほどまでギルマスに対して怒りをかみ殺していたような表情をしていたが、無言になってカニを食べ続けていた。
ふとゼムドはどうしているだろうと、そちらを見ると、ゼムドもパクパクと食べていた。そして、感想を言う。
「なるほど、このカニとこのソースで付け合せると、それなりに旨いな」
テーブルの上に山盛りになっているカニと、それを食べ続ける三人は変に映ったのだろう。
人が寄ってきて、テーブルのカニを撮影させてくれと、願い出る人が何人もいた。
ゼムドがここで意外な発言した。
「キリ、これからさらに茹でるだろうカニを、ここにいる客達に分けてやったほうがいいだろる。店員にそう言ってやったらどうだ。別に俺は何が何でもこのカニを食べなけばいけないわけじゃない。客に迷惑が掛かったなら、客にやった方が店のためになるだろう」
「いいのですか?」
「俺は、お前たちが俺のために準備してくれたことが分かったから十分だ。俺一人で食ってもつまらんだろう。この店に居る客達に食べさせてやってくれ」
「分かりました。では、店員にそう伝えてきます」
そう言って、キリはテーブルを離れていった。キエティは手を止めてゼムドに聞く。
「ゼムド様にしては、随分優しい配慮ですね」
「まぁ、龍族やケリドにそれなりに仕込まれているからな。俺は、七人の魔族の中で一番他人のことを気に掛けていなかったらしい。龍にはそう言われ、この二年ほど教育を受けていた。キエティには、顔を見せた方が良いのかと思ったが、龍の指示で、最低限のマナーや礼儀を弁えるまでは、人族の国に近づかせてもらえなかった。今になって自分を振り返ると、たしかに龍が言ったことが正解だったようだ」
キエティは少し笑って、返答した。
「たしかに二年前のゼムド様は少々ひどかったですね」
「龍からすると、俺以外の魔族六人は挫折をしているから、己の立場を理解して、他人へ配慮を考える、とのことだった。要は、俺に敗北して、他者の気持ちを考えざるを得なくなったということだ。逆に俺は自分のことしか考えていなかったし、実際それが通るだけの力がなまじっかあったわけだ。それが仇となっていたわけだ」
「今のゼムド様は魅力的ですよ」
キエティは何気なくそう言ってしまったが、言ってから自分で恥ずかしくなってきた。
エルフの長い耳がピクピクと動く。
「俺も今の方が楽しい。以前も悪くはないが、ただ、自分と並べる者がいない中で、ただ惰性で生きていくのはつまらない。今の方がいい」
しかし、ここでゼムドは少し笑って、キエティの方を指差した。
「お前も最初会った時は、まじめな奴だと思ったが、蓋を開けてみたらそうでもないな。なんというか堕ちていく一方に見える。特に、今日はひどい」
「あら、私は元からこのままですよ。ゼムド様が気づかなかっただけですよ」
「そうかもしれないな」
「一緒に堕落しませんか?」
「……そうだな。堕ちていく方が面白そうだ。アザドムドを見習うべきかもしれない」
キエティとしてはアザドムドとは違う方に堕ちてもらいたい、と思う。ニヤニヤしているとキリが近づいてくるのが見えた。
「店員の方にカニの残りの処分についてお願いしてきたわ。お客さんに無料で出してくれるそうよ。ゼムド様、店員の方が感謝されていましたよ」
「いや、よく分からないうちに、俺も原因の一端に噛んでいる以上仕方ないな。というか、キリはいつもこんな後始末をしているのか」
「はい。もうこれ以上ないくらいに」
「よくギルドを辞めようと思わないな」
「まぁ、仕事自体は好きですし、あのギルマス自体も頼り甲斐がないわけではないですよ。尊敬はしています」
「俺とアザドムドに似た関係か」
「えっ?」
「いや、なんでもない。独り言だ。そろそろ、ギルドへ戻ろう。もう、夕方ではないのか?」
「……そうですね。時間的にそろそろですし、ギルドへ向かわないと」
そう言って三人で店を後にし、ギルマスがいるだろうギルドへ向かうのだった。
すると、ゼムドが話し掛けてきた。
「最初にこの街に来た時は、全ての店のシャッターは下りていて、誰もいなかった。今思うとあれは、お前たちがそう指示したのだな」
「そうですね。あの時点では何が生じるか想定できなかったので、ああするしかありませんでした。申し訳ありませんでした」
「いや、いい。当然の判断だ。あの時点での俺は、他人に興味が無かったから、下手をすると何をしていたか分からない。あれは英断だろう」
「ゼムド様はあの時、よく怒りませんでしたね」
「俺は基本的に怒ることはない。怒らなければいけないような局面に出会ったことはなかったし、合理的な行動をする方がマシだと思っていたからだ。対して、アザドムドなどは魔族の癖にやたら感情の起伏があるが、あれはあれで珍しい。最初に出会った頃はあんな奴じゃなかったが、日を追うごとにバカになっていく気がする。なんなんだ、あいつは……」
「今、アザドムドさんはどうされているのですか?」
「毎日ゲームをやっているな。しかも、ゲーム機では飽き足らず、最近はハイスペックPCでゲームをやっている。最近は100インチの大型ディスプレイを大量に部屋に持ち込んで、自分を中心に円形に囲うようにしてゲームをやっているみたいだ。ついでに、VR系のゲームも並行してやっているようだ。あいつは、もう駄目かもしれない……」
「ミホさんはどうされていますか?」
「ミホも似たようなものだが、あいつは音楽関係が好きみたいだな。様々なゲームをやっていたが、最近は、ヒップホップ、レゲェ、民謡、演歌様々な曲を聞き続けているようだ。そのうち、作曲とか始めるかもしれない。まぁ、分からんが。
あいつは出会った時から性格があまり変わらないが、ただ、最近は少し変わってきているようにも見える。どう性格が変化するかは分からないが」
「他の三人はどうですか?」
「ワダマルは今、少し体調を崩していて、ガルドマドの家で療養している。体調は、時間が掛かるだろうが元には戻るだろう。
ガルドマドは、どうやら盤上ゲームが得意らしくてな。囲碁、将棋、チェス、その他各種ゲームをワダマルに教えたようだが、どうやらワダマルはすぐに強くなるらしい。新しいゲームをやって少し経つと、ガルドマドを追い抜くようだ。電話をした感じでは、ガルドマドは負けが込んで、心労がかなり溜まっているようだ。
エスカはマンションで魔道板を読み込んでいる感じだな。現在、特に問題を起こすわけではない。人族の食べ物に興味があるらしくて、甘味のあるお菓子や飲料水を大量に取り寄せて、それを飲み食いしながら、魔道板を読んでいるようだ。シヴィも同じだな。ただ、何も要求するわけでもない。ただ、黙って魔道板を読みこんでいるようだ」
「じゃあ、皆さん、特に何か問題があるわけじゃないんですね」
「一応、俺が結界を張ってあるからな。ただ、ケリドも小まめに出入りする必要があるから、それほど強い結界を張っているわけじゃない。穴があるかもしれない。それに俺としては、一応結界を張ってはあるが、基本的にはあいつらを信頼したい。本気であそこへ閉じ込めたいわけではない。それぞれが本人なりにいい方向へ進んでくれればいいのだが」
「ケリドさんはどうなんですか?」
「あいつは元々、何故かああいう風に他人の世話役をするのが好きなようだ。ここ最近、俺なりにあいつの過去を探ってみたが、どうやら獣族の街にいた頃から態度は丁寧で、事務作業をするのが好きだったようだ。何故俺に従って、あいつらの世話をしたがるのかよく分からないが、俺に会う以前からあのような行動を取っているとするなら、問題を起こすことはないだろう。ワダマルやアザドムドの様に信頼していいだろう」
キエティはここで気になったことを聞く。
「ゼムド様は、どうして、それほどにアザドムドさんを信頼されているのですか? 正直、私からすると、アザドムドさんに最初に会った時の印象が強くて、少し怖く感じてしまうのですが……」
「あいつに最初会った時は、あんなもんじゃなかったぞ。物凄い殺気をバラまきながら、戦闘技術が高くて、頭のキレる奴だった。俺が当時出会った魔族の中では最も強い奴だった。ただ、俺と闘って静かになった感じか。それが二年前のあの場で、一気に過去に戻ったような感じだな。ただ、最近はアホすぎて見ているこっちが、辛くなってくるが……」
そう言ってゼムドは呆れた顔をしたが、少し真面目な顔をして話を続けた。
「あいつは、俺が龍を倒してから、今のメンバーで共同生活をすることを自ら提案した。お前達人族からすると、大したこと無い話に見えるかもしれないが、これは上位種の魔族としては相当異質なことだ。おそらく、あいつはそれぞれのメンバーに頭を下げて、今の生活をすることを提案したはずだ。自分の存在意義、誇りを全て捨てなければできないほどのことだ。そのような判断をする魔族はいない。死んだ方がマシだろう。そういう意味で、俺はあいつを信頼している」
ゼムドはそう言って、キエティの顔を見る。
「そろそろ腹が減っているのではないか?何か食べたいならそう言えばいい」
「あ、すみません。たしかに少しお腹が減ってきているかもしれません。でもゼムド様は食べないですよね?」
「いや、最近は食べるようにしている。人に会う機会も増えているが、その場で相手に合わせる必要があって、そのような真似事をしている。また、どうせならと思って、魔法でお前達、人族の味覚を再現しながら食している。ただ、口に入れた瞬間に食材は溶けて吸収されてしまう感じだから、人族が食べているような食感はないが、疑似的な味覚は体感できている」
キエティは驚いた。
「そうなんですか。以前は全く食べなかったので、それにはびっくりしました。何がお好みですか?」
「別にどれも美味しく感じるぞ。肉、パスタにハンバーガー、何でもおいしく感じる。人族は嫌いな食べ物があるようだが、俺は特に何かを食べてまずいと思ったことはないな。キエティが食べたい店を選ぶといい。俺はどこでも構わない」
キエティはどうしようかと思ったが、ちょうど、近くにあるレストランの看板に目が留まった。それを指さして、ゼムドに奨めてみる。
「あれにしてみませんか?どうやら、ダンジョンで獲れたモンスターの肉を料理したお店みたいですよ。多分、この地域でないと食べられない料理ではないでしょうか?」
「――そうだな。たしかにここでしか食せないものかもしれない。せっかくだ。入ってみよう」
店内に入ってみたが、かなり大きい店だった。一度に五百人は入れるような店だ。
にもかかわらず、店内は半分ほど人が埋まっていた。
そして、店内には大きなガラスの水槽があった。耐圧ガラスで出来ており、水族館のように、外側から内部の様子が観察できるようになっている。また、ガラス内には様々な水様性の生物が入っているようだ。
ゼムドはキエティと一緒にそれを見てみる。
中に入っているもので一際、大きいのはカニだ。十メートル近くはあるだろうか。しかも目が怖い……。
キエティは不思議に思った。ダンジョンにこんな水の中に生息する生き物がいるのだろうか?
「ゼムド様はダンジョンに入ったことがありますか?ダンジョンの中は水があるのでしょか?」
「俺はダンジョンに入ったことはそれほど多いわけじゃない。多分10回程度だろう。ダンジョンにはもちろん水が溜まる場所もある。そこにいたカニを捕まえてきたのだろう。
見た感じ、お前達では、カニの食用部の魔素濃度が高すぎるから、何かしらの手段で魔素を下げる必要があるのではないか? おそらく、あの水はカニ内部の魔素を外部へ排出するような役割を担っているのだろう」
キエティはなるほど、と思っていたが、ここで店員が来たのでテーブルに案内してもらった。2人でメニューを見てみる。
「主に魚介系がメインの店みたいですね。どうしますか?」
「俺は何でもいいぞ。というか、俺も人族の国から電子マネーを貰っている。金額はそれなりに大きい。俺自身は欲しい物がないから、ほとんど使ったことはないが、お前が食べたいものを何でも注文するといい。食べきれないなら俺が食べてやろう。せっかくだ。様々なものを注文すればいい」
キエティは、ゼムドがお金を持っているとは思わなかったし、もし、持っていたとしても自分の分は自分で払いたいと思った。ただ、ゼムドにおごってもらうのは、本人の優しさの表れのような気がしたので、今回はおごってもらおうと思った。
「では、せっかくですから、色々と注文してみましょうか。私はそれほど食べるわけではありませんが、それでも種類は多く食べてみたいと思います」
そう言った瞬間だった。
『キャーーーーーー!!』
店内に女性の悲鳴が響き渡った。
キエティは女性の悲鳴を聞いて、慌ててそちらを見る。
すると、先ほどのカニがいけすの側面を上って、外へ這い出ようとしていた。しかも、動きが早い。
そして、近くにいた女性をハサミで掴もうとした。
瞬間、ゼムドが移動して、女性を抱きかかえてから、その場から離れる。
ゼムドは女性をすぐに下ろしてカニを見ている。
店員達が慌てて寄ってきて、カニを棒で抑えようとしている。しかし、これはどうにかなるようなレベルには見えない……。
ゼムドが一人の店員に尋ねる。
「これは、殺してしまうと問題があるのか?」
「いえ、もう食べられる段階まで魔素濃度が落ちています。殺してしまいたいのですが、何せ大きいので……」
そう言いながら、店員が棒で、カニを押し返している。
魔法を使えば殺すことはできるのだろうが、店内に影響が出るから使えないのだろう。
次の瞬間だった。
ゼムドがカニを殴った。
――ドン――
一瞬でカニの下に移動して、カニの頭を下からアッパーで殴ると、カニはそのまま動きを止めてしまった。死んだのか気絶したのかまでは分からない。
「これでいいのか?」
店員達が目を点にしている。
「あ、ありがとうございます。凄いですね……」
「なんで、こんな大きいカニを仕入れたんだ? お前たちの技量では、これは危険だろう」
「そうなんですが、実はギルドの方から、今夜、使うとかって話がありまして、その関係で一時的にここで保管されていたのです。私達としましても苦労はしていたのですが、ギルド関係者の方からすると、上客の方が今日来賓するらしくて、それ用とのことだったのです」
キエティにもこの話は聞こえてきたが、内容に思い当たる節がある。
間違いなくゼムドをもてなす為に、このカニをギルドが仕入れたのだろう。鮮度を保つために無理にここで保管して、それが逃げ出そうとしたわけだ。
これはキリに連絡を取った方が良いと思ったので、慌ててキリへ電話をした。
2コール目でキリが電話に出ので、慌ててこちらから話しかける。
「キリ?ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「何どうしたの?」
「今日、もしかしてゼムド様をもてなすためにカニを仕入れてない?」
「いや、私は知らないわ。どうしたの?」
「今、ダンジョン内で獲れた生き物を料理してくれる店があるんだけど、そこで十メートル近いカニが暴れだして、それをゼムド様が止めたのよ。話を聞くと、ギルドからの依頼でそれを無理に保管していたらしいんだけど、心当たりがあるかと思って」
キリは電話越しで、何かを考えていたようだが、すぐに返答してきた。
「分かったわ。あの〝バカ〟だわ。間違いないわ」
「どういうこと?」
「多分、ギルマスね。おそらくゼムド様をもてなすつもりで、何か驚かせるつもりだったんでしょう。それで、大きいカニを仕入れて、それを見せるつもりだったはずよ。いつも、そうなのよ、あの人は。ろくでもないことばっかりして、その尻拭いは私がするってわけ。多分、カニを仕入れるために、ギルドの予算も勝手に弄ってるわねぇ……」
「どうしたらいいの?」
「ちょっと私もすぐそこへ行くわ。店の名前を教えてくれる?」
店員は、お客たちに謝罪していた。客はそれほど怒っていたわけではないが、店内は騒然としていた。ゼムドは何故か、カニをバックに一緒に撮影を望む人たちの期待に応えていた。
しばらくして、キリが到着した。
そして、店員から事情を聞いて平謝りしていた。
それから、ゼムドが一通り、写真撮影を終えて、キエティの方へ近づいて来た。二人で一緒に元にいたテーブルへ戻った。そして、キリも同じテーブルへ近づいて来る。
「やっぱりギルマスだったわ。ギルド名義で勝手に伝票を切ってる感じね。あのカニについては、もうここで食べてもらうしかないわね。それにしても、あの大きさじゃ、相当の人数がいないと食べきれるものじゃないし、どうしましょう」
キリが困ったような表情をしているが、キエティはそれに返答した。
「ゼムド様なら食べきれるそうよ。もともとゼムド様用に注文したなら、今、食べても問題ないと思うけど」
キリはゼムドを見て質問した。
「あれを食べきれるのですか?」
「食べきれるぞ。厳密には舌に乗せた瞬間に溶かして、圧縮して体内に取り込む感じか。栄養になるわけではないが、別に食べ切れないことはない」
「じゃあ、あれを食べることにしましょう」
そう言って、キリは店員に注文をした。
キエティはあのカニをどうするのかと思っていたが、店員達は大釜を準備して、店内でそのカニを茹で始めた。周りには客が集まって、その様子を写真撮影している。
しばらくして、カニが運ばれてきた。
テーブルの上に、山盛りのカニのむき身が並べられている。
たくさんのソースが準備されていて、それぞれに付けて楽しむようだ。
三人でそれを食してみる。
「「美味しい」」
キエティとキリの声が重なる。
キエティは、魚介系は一度にたくさん食べると気持ち悪くなることが多い食材だと思っている。しかし、このカニは味がさっぱりしている割には、なんというか甘みがある。魚介特有の癖が無いと思った。次から次へと食べていく。キリも、先ほどまでギルマスに対して怒りをかみ殺していたような表情をしていたが、無言になってカニを食べ続けていた。
ふとゼムドはどうしているだろうと、そちらを見ると、ゼムドもパクパクと食べていた。そして、感想を言う。
「なるほど、このカニとこのソースで付け合せると、それなりに旨いな」
テーブルの上に山盛りになっているカニと、それを食べ続ける三人は変に映ったのだろう。
人が寄ってきて、テーブルのカニを撮影させてくれと、願い出る人が何人もいた。
ゼムドがここで意外な発言した。
「キリ、これからさらに茹でるだろうカニを、ここにいる客達に分けてやったほうがいいだろる。店員にそう言ってやったらどうだ。別に俺は何が何でもこのカニを食べなけばいけないわけじゃない。客に迷惑が掛かったなら、客にやった方が店のためになるだろう」
「いいのですか?」
「俺は、お前たちが俺のために準備してくれたことが分かったから十分だ。俺一人で食ってもつまらんだろう。この店に居る客達に食べさせてやってくれ」
「分かりました。では、店員にそう伝えてきます」
そう言って、キリはテーブルを離れていった。キエティは手を止めてゼムドに聞く。
「ゼムド様にしては、随分優しい配慮ですね」
「まぁ、龍族やケリドにそれなりに仕込まれているからな。俺は、七人の魔族の中で一番他人のことを気に掛けていなかったらしい。龍にはそう言われ、この二年ほど教育を受けていた。キエティには、顔を見せた方が良いのかと思ったが、龍の指示で、最低限のマナーや礼儀を弁えるまでは、人族の国に近づかせてもらえなかった。今になって自分を振り返ると、たしかに龍が言ったことが正解だったようだ」
キエティは少し笑って、返答した。
「たしかに二年前のゼムド様は少々ひどかったですね」
「龍からすると、俺以外の魔族六人は挫折をしているから、己の立場を理解して、他人へ配慮を考える、とのことだった。要は、俺に敗北して、他者の気持ちを考えざるを得なくなったということだ。逆に俺は自分のことしか考えていなかったし、実際それが通るだけの力がなまじっかあったわけだ。それが仇となっていたわけだ」
「今のゼムド様は魅力的ですよ」
キエティは何気なくそう言ってしまったが、言ってから自分で恥ずかしくなってきた。
エルフの長い耳がピクピクと動く。
「俺も今の方が楽しい。以前も悪くはないが、ただ、自分と並べる者がいない中で、ただ惰性で生きていくのはつまらない。今の方がいい」
しかし、ここでゼムドは少し笑って、キエティの方を指差した。
「お前も最初会った時は、まじめな奴だと思ったが、蓋を開けてみたらそうでもないな。なんというか堕ちていく一方に見える。特に、今日はひどい」
「あら、私は元からこのままですよ。ゼムド様が気づかなかっただけですよ」
「そうかもしれないな」
「一緒に堕落しませんか?」
「……そうだな。堕ちていく方が面白そうだ。アザドムドを見習うべきかもしれない」
キエティとしてはアザドムドとは違う方に堕ちてもらいたい、と思う。ニヤニヤしているとキリが近づいてくるのが見えた。
「店員の方にカニの残りの処分についてお願いしてきたわ。お客さんに無料で出してくれるそうよ。ゼムド様、店員の方が感謝されていましたよ」
「いや、よく分からないうちに、俺も原因の一端に噛んでいる以上仕方ないな。というか、キリはいつもこんな後始末をしているのか」
「はい。もうこれ以上ないくらいに」
「よくギルドを辞めようと思わないな」
「まぁ、仕事自体は好きですし、あのギルマス自体も頼り甲斐がないわけではないですよ。尊敬はしています」
「俺とアザドムドに似た関係か」
「えっ?」
「いや、なんでもない。独り言だ。そろそろ、ギルドへ戻ろう。もう、夕方ではないのか?」
「……そうですね。時間的にそろそろですし、ギルドへ向かわないと」
そう言って三人で店を後にし、ギルマスがいるだろうギルドへ向かうのだった。
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