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第二章
第67話 試験を受ける
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ミツルギがワダマルと会ってから、三十分もしないうちに、ワダマルはゼムドを連れてその場に現れた。
ミツルギはゼムドを見る。初めて見た。
ミツルギよりは背が少し高い。ただ、驚くことに魔力を纏っていない。
しかし、ここで気づいた。
――違う――
これは極端に高濃度の魔力を薄く体に纏っている……。
おそらく、あの魔力を突破して、体を傷つけることができるような者はほとんどいないはずだ。あの変化したワダマルが仕えるだけの者ではあるか……。
ゼムドが話しかけてきた。
「気づいたか。大半の者は気づかないからな。俺を見て、何も分からないなら流石に俺たちの仲間に加えるつもりはなかったが、まぁ、その点だけはとりあえず合格だな」
ゼムドがコートのポケットから手を出して続けた。
「チャンスは一度だ。本気で来い。手を抜いたと感じたらそこで終わりだ」
――次の一瞬――
ワダマルはこの瞬間、自分が出来る限りの魔力を瞬時に放出して、右手に力を込め、一気に切り込んだ。
迷いはなかった。
が、ゼムドに刀を止められた。しかも指二本、親指と人差し指だけだ。
しかし、ここまでは想定していた。
左手で鞘を瞬時に掴みゼムドの横腹に一撃を加えようとした。
ゼムドはここで、何故か刀から指を話して、この一撃を避けた。
ゼムドからすれば別に避ける必要も無いように思えるが、理由は分からない。
ただ、その理由については考えない。
今は次の一撃のみに賭ける。
そう思って、もう一度、空中で鞘に刀を収め、抜刀態勢を取った。
そして、ここで〝寿命〟を使うことにした。
風魔法を使って、両足を切断する。
一瞬、間が空いたが、次の瞬間、自分の体に力が漲ってくるのが分かる。
本能から、急回復しようとしているのが分かる。
同時に回復能力のすべてを刀の鞘に集中させて、そこからゼムドめがけて一線を放った。
が、ダメだった。
やはり先ほどと同じようにゼムドに指二本で刀は止められた。
もう力が無くなって、刀を掴むことすらできずに、地面に落ちていく。
地面に落ちた。
足の切断面からの出血がひどい……。
ゼムドが下りてくるのを感じる。
「合格だ。お前は俺達の仲間になれ」
そう言って、ゼムドがミツルギのきった両足を掴んで、その足を切断面に合わせようとする。
また、同時に何故か、出血したはずの血液が空中に浮かんでおり、それが自分の切断面の中に吸収されていく。何かの魔法のようだが、よく分からない。
しばらくは、何も答えられず、足の回復に集中した。
ゼムドとワダマルはこちらを見て、あるいは何か雑談しているようだ。
自分がゼムドに仕えようと思ったのは、二年前に遠くの地で魔力を放出されたのを感じた時だ。あれは明らかに常軌を逸していた。どうにかなるレベルではないと思ったし、同時に自分が仕えるとするならこの人物以外にはいないと思った。
正直、変化後のワダマルのように、他人に仕える気が無かったのは事実だ。それに値するだけの者に会えるかどうかも分からなかったし、自分がいずれ最強になるだろうとも思っていた。
しかし、あの魔力放出量を知って、考え方が変わった。
――自分が届かない世界がある――
同時に自分の〝種としての使命〟をも感じた。
ゼムドが近づいて来た。
「お前は俺達の仲間だ。ただ、お前との契約だが、それはしない」
驚いて尋ね返す。
「何故でしょうか?」
「理由は一つだ。おまえはまだ若い。俺より強い者が現れる可能性はある。俺は今まで強いと言われていた者が倒され、世代交代するのを何度も見てきた。というか、俺が自力で繰り上がったわけだが。ただ、今後、俺以上の者が現れることはあり得る。その時にお前が俺と契約していてはお前にとって不利だろう」
「しかし……」
「そんなに焦るな。俺達には時間がある。ワダマルが俺と契約した時はお前よりもっと年齢が上だった。別にお前が成人して納得するようなら、その時は契約してやってもいい。ただ、今のお前は、まだまだ未熟だ。もっと己を磨け」
ゼムドが真剣な表情をしている。ここで、自分の価値観が揺らぐわけではなかったが、しかし、今はゼムドに従うしかないと思った。
「分かりました。いつかその時が来たら、その時こそは宜しくお願い致します」
そう言うしかなかった。
**************
「さて、ゼムド殿、これから私の相手もして頂きたい」
「ああ、約束だ。それに俺もお前と闘ってみたい。お前ほどの者は滅多にいない」
「それは心外ですね。以前の龍ですが、あれは私より下ですよ。その発言では、まるであの龍と私が同じ水準のようではないですか」
ゼムドがこれを聞いて、笑っている。
「お前と戦う前に結界を張る。流石にこの大地でも、お前とやるなら護ってやらないと使い物にならなくなるからな。それにできれば、アザドムド達や龍にもお前は見せたくない。切り札として取っておきたい」
これを聞いて、ベゼルが少し嬉しそうな顔をした。
ミツルギは、自分がどうしたらいいのか分からない。
すると、ゼムドが話しかけてきた。
「悪いな。ミツルギ。お前にはこの戦いは見せられない。お互いそれなりに手の内を明かして戦うことになる。お前のことを信用していないわけではないが、これは俺とワダマルの問題だ。お前はこの地を離れていてくれ。俺はこの辺り一帯に結界を張る。お前はその結界の外で待機だ」
ミツルギがその場所を離れると同時に、ゼムドが辺り一帯に強力な結界を張り始めた。
結界内に二人が対峙する。
「ベゼル、お前の残り時間はどれくらいだ?」
「厳密には、時間自体は問題ありませぬ。この状態になってしまったら、ある程度魔力を使い切るまでは元に戻れません。それだけです」
「じゃあ、始めるか。俺のどの状態を希望する?」
「可能なら、二年前のあの場で見せた姿をもう一度見たいかと」
「いいだろう。ただ、あの最後で見せた魔力は出せない。あれほど力を出すと、龍達に気づかれる。あの一歩、いや二歩手前だ。それに、お前相手なら、それでも十分すぎる」
ベゼルが不敵に笑った。
次の瞬間、一気にゼムドが変化した。目の色は黄金色に、髪と皮膚は白色に、そして服もローブ姿に形を変えた。結界内がゼムドの魔力でどす黒く濁っていく。
『――余は、この姿を見せた。其方はそのままか? 即死するぞ?』
ベゼルが姿勢を正した。
「ではこちらも本気を出させて戴きます」
そう言うと、ベゼルの外装が変化し始めた。着物が解け鎧兜が構築されていく。
また、刀の形が変化し始めた。刀は当然、柄一本に対して、一つの抜き身があるわけだが、ベゼルの刀は柄一本に対して刃が四本ある形状に変化した。
ゼムドはこれを見て思う。
〝四千年前より、一本増えたか〟
ワダマルが普段から、修行を欠かさないのには気づいていた。また、定期的にゼムドと闘うことで自力を上げていたのだろう。あの刀は厄介だ、そう思った。
二人が対峙している。
おそらく、現世界で、一番目と二番目に強い者同士が戦おうとしていた。
ミツルギはゼムドを見る。初めて見た。
ミツルギよりは背が少し高い。ただ、驚くことに魔力を纏っていない。
しかし、ここで気づいた。
――違う――
これは極端に高濃度の魔力を薄く体に纏っている……。
おそらく、あの魔力を突破して、体を傷つけることができるような者はほとんどいないはずだ。あの変化したワダマルが仕えるだけの者ではあるか……。
ゼムドが話しかけてきた。
「気づいたか。大半の者は気づかないからな。俺を見て、何も分からないなら流石に俺たちの仲間に加えるつもりはなかったが、まぁ、その点だけはとりあえず合格だな」
ゼムドがコートのポケットから手を出して続けた。
「チャンスは一度だ。本気で来い。手を抜いたと感じたらそこで終わりだ」
――次の一瞬――
ワダマルはこの瞬間、自分が出来る限りの魔力を瞬時に放出して、右手に力を込め、一気に切り込んだ。
迷いはなかった。
が、ゼムドに刀を止められた。しかも指二本、親指と人差し指だけだ。
しかし、ここまでは想定していた。
左手で鞘を瞬時に掴みゼムドの横腹に一撃を加えようとした。
ゼムドはここで、何故か刀から指を話して、この一撃を避けた。
ゼムドからすれば別に避ける必要も無いように思えるが、理由は分からない。
ただ、その理由については考えない。
今は次の一撃のみに賭ける。
そう思って、もう一度、空中で鞘に刀を収め、抜刀態勢を取った。
そして、ここで〝寿命〟を使うことにした。
風魔法を使って、両足を切断する。
一瞬、間が空いたが、次の瞬間、自分の体に力が漲ってくるのが分かる。
本能から、急回復しようとしているのが分かる。
同時に回復能力のすべてを刀の鞘に集中させて、そこからゼムドめがけて一線を放った。
が、ダメだった。
やはり先ほどと同じようにゼムドに指二本で刀は止められた。
もう力が無くなって、刀を掴むことすらできずに、地面に落ちていく。
地面に落ちた。
足の切断面からの出血がひどい……。
ゼムドが下りてくるのを感じる。
「合格だ。お前は俺達の仲間になれ」
そう言って、ゼムドがミツルギのきった両足を掴んで、その足を切断面に合わせようとする。
また、同時に何故か、出血したはずの血液が空中に浮かんでおり、それが自分の切断面の中に吸収されていく。何かの魔法のようだが、よく分からない。
しばらくは、何も答えられず、足の回復に集中した。
ゼムドとワダマルはこちらを見て、あるいは何か雑談しているようだ。
自分がゼムドに仕えようと思ったのは、二年前に遠くの地で魔力を放出されたのを感じた時だ。あれは明らかに常軌を逸していた。どうにかなるレベルではないと思ったし、同時に自分が仕えるとするならこの人物以外にはいないと思った。
正直、変化後のワダマルのように、他人に仕える気が無かったのは事実だ。それに値するだけの者に会えるかどうかも分からなかったし、自分がいずれ最強になるだろうとも思っていた。
しかし、あの魔力放出量を知って、考え方が変わった。
――自分が届かない世界がある――
同時に自分の〝種としての使命〟をも感じた。
ゼムドが近づいて来た。
「お前は俺達の仲間だ。ただ、お前との契約だが、それはしない」
驚いて尋ね返す。
「何故でしょうか?」
「理由は一つだ。おまえはまだ若い。俺より強い者が現れる可能性はある。俺は今まで強いと言われていた者が倒され、世代交代するのを何度も見てきた。というか、俺が自力で繰り上がったわけだが。ただ、今後、俺以上の者が現れることはあり得る。その時にお前が俺と契約していてはお前にとって不利だろう」
「しかし……」
「そんなに焦るな。俺達には時間がある。ワダマルが俺と契約した時はお前よりもっと年齢が上だった。別にお前が成人して納得するようなら、その時は契約してやってもいい。ただ、今のお前は、まだまだ未熟だ。もっと己を磨け」
ゼムドが真剣な表情をしている。ここで、自分の価値観が揺らぐわけではなかったが、しかし、今はゼムドに従うしかないと思った。
「分かりました。いつかその時が来たら、その時こそは宜しくお願い致します」
そう言うしかなかった。
**************
「さて、ゼムド殿、これから私の相手もして頂きたい」
「ああ、約束だ。それに俺もお前と闘ってみたい。お前ほどの者は滅多にいない」
「それは心外ですね。以前の龍ですが、あれは私より下ですよ。その発言では、まるであの龍と私が同じ水準のようではないですか」
ゼムドがこれを聞いて、笑っている。
「お前と戦う前に結界を張る。流石にこの大地でも、お前とやるなら護ってやらないと使い物にならなくなるからな。それにできれば、アザドムド達や龍にもお前は見せたくない。切り札として取っておきたい」
これを聞いて、ベゼルが少し嬉しそうな顔をした。
ミツルギは、自分がどうしたらいいのか分からない。
すると、ゼムドが話しかけてきた。
「悪いな。ミツルギ。お前にはこの戦いは見せられない。お互いそれなりに手の内を明かして戦うことになる。お前のことを信用していないわけではないが、これは俺とワダマルの問題だ。お前はこの地を離れていてくれ。俺はこの辺り一帯に結界を張る。お前はその結界の外で待機だ」
ミツルギがその場所を離れると同時に、ゼムドが辺り一帯に強力な結界を張り始めた。
結界内に二人が対峙する。
「ベゼル、お前の残り時間はどれくらいだ?」
「厳密には、時間自体は問題ありませぬ。この状態になってしまったら、ある程度魔力を使い切るまでは元に戻れません。それだけです」
「じゃあ、始めるか。俺のどの状態を希望する?」
「可能なら、二年前のあの場で見せた姿をもう一度見たいかと」
「いいだろう。ただ、あの最後で見せた魔力は出せない。あれほど力を出すと、龍達に気づかれる。あの一歩、いや二歩手前だ。それに、お前相手なら、それでも十分すぎる」
ベゼルが不敵に笑った。
次の瞬間、一気にゼムドが変化した。目の色は黄金色に、髪と皮膚は白色に、そして服もローブ姿に形を変えた。結界内がゼムドの魔力でどす黒く濁っていく。
『――余は、この姿を見せた。其方はそのままか? 即死するぞ?』
ベゼルが姿勢を正した。
「ではこちらも本気を出させて戴きます」
そう言うと、ベゼルの外装が変化し始めた。着物が解け鎧兜が構築されていく。
また、刀の形が変化し始めた。刀は当然、柄一本に対して、一つの抜き身があるわけだが、ベゼルの刀は柄一本に対して刃が四本ある形状に変化した。
ゼムドはこれを見て思う。
〝四千年前より、一本増えたか〟
ワダマルが普段から、修行を欠かさないのには気づいていた。また、定期的にゼムドと闘うことで自力を上げていたのだろう。あの刀は厄介だ、そう思った。
二人が対峙している。
おそらく、現世界で、一番目と二番目に強い者同士が戦おうとしていた。
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