最強の魔族がやってきた ~人の世界に興味があるらしい~

夏樹高志

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第二章

第73話 ダンジョン内

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 キエティ達はダンジョンへゼムドに高速で運んでもらい、気が付くと、ダンジョンの中にいた。

 正面には巨大な鍾乳石がいくつもぶら下がっており、その直径は10~50メートルはあるだろうか。高さは数百メートルあるものもある。この鍾乳石は、白色のものだけではなくて、赤、青、緑、カラフルな色をしたものも多かった。
 また、鍾乳石の下には大きな湖が出来ていた。湖の水は青白く光っていて、綺麗ではあるが、底の様子を伺うこことはできなそうだ。それに、自分の足元を見ると、半透明な石のようなもので出来ている。鍾乳石の中身と同じ材質だろうか?

 キシャーンもキョロキョロしながら、鍾乳石の様子を見ていたが、すぐに魔道板を取り出して、その様子を撮影し始めた。学者として記録に残して置きたいのだろう。
 周囲の冒険者たちはキョロキョロするものとしない者がいる。多分、すでに来たことがある者とない者の違いだろう。
 カルベルトが話し始めた。

「じゃあ、悪いけど、ゼムドさん。とりあえずここから、35層までのモンスターを全て倒してきてくれ」

「今、調べていたが、30~35層までの、全てのモンスターの数は分かった。大型種についてだが、トカゲのようなものが32匹、魚の様なものが13匹、昆虫が48匹、カエルが73匹、カニが25匹、亀が17匹、蛇が19匹といったところか。いずれも小さいもので3~5メートルはある。あと中型のモンスターも大量にいるが、これも含めて全部倒するのか?」

「全部わかるのか……すげぇな。じゃあ、どうするべきか。いや、待ってくれ。魚と言ったか?」

「ああ、いる。というか、この目の前の湖の中に3匹いる」

「本当か?それはもしかして、表面が白くて、まるで人間の服を着たような魚じゃないか?」

「色までは流石に分からないが、何か普通の魚とは違うな。鱗ではない感じだ。魚の形状をしているが、たしかに服のようなものを纏っている」

「ああ、それはドレスフィッシュだ。そうか。この湖にもいたのか」

「なんだそれは?」

「最後に捕まえた記録が残ってるのは600年くらい前だ。かなり珍しい魚だが、俺や他の冒険者もよく目撃している。人を襲うことはない。ただ、何せ捕獲が難しい。おそらく、このダンジョンが出来た当初にいた小魚の一部が魔素でモンスターになって、その後生態系を作って、繁殖していったのだろう。この湖に3体ってことは、この湖は、他の階層の湖と地底でつながっているはずだ。3体では繁殖できない」

「人族にとって、その魚は何か意味があるのか?」

「その魚の着ている布の材質が極めて珍しい。まぁ、簡単に云うと、自分が思う通りに自在に変化する。昔、捕まえられた時には、時の王族に献上されたはずだ。現在では服飾の技術が進歩はしているが、それでもそれなりに価値があるだろう」

「それは殺して捕まえた方がいいのか?話を聞く限りだと、それっきりになってしまう気がするぞ」

「ああ、できれば、この魚に関しては殺さずに、魚が着ている服だけを剥がして欲しい。多分、魚は死なないはずだ。できるか?」

「問題ない。目の前にいる3匹で試してみよう」

 そういうと、ゼムドが右手を前に出した。
すると、水中から泡がボコボコと出てきた。そして、それに合わせて、湖の中から大きな魚が三匹出てくる。長さは2メートルくらいだろうか。どこにでもいる魚の様だが、たしかに変な布切れを撒いているように見える。ゼムドがその布を重力魔法で強制的に剥がしていった。
 そして魚を水に戻してやった。

「おお、すげぇな。これを捕まえるのは難しいんだよ。俺も数十回は見たことがあるんだが、ただ、さすがに湖に入ってまで捕まえようとは思わない。この水も長時間触れると、人族にとってはそれなりに有害なものだしな」

「600年前にはどうやって獲ったのだ?」

「獲ったのはエルフ達だよ。人ではないな。獲った方法は分からない。今でもエルフの連中で徒党を組めば、簡単に取れるかもしれないが、最近のエルフ達は冒険者になることが少ないな。大学へ行って、そのまま魔法研究者になることが多い。魔力量は多いのに、それを実践ではなく理論で使おうとする連中が多いな。俺としては冒険者になって欲しいところだ」

 ゼムドが顔を上げて、遠くを見た。

「三体のトカゲがこちらへ向かっているな。今の水音を聞いて、様子を見に来たのだろう。おそらく、ここの人々を見たら、食べようとするだろう」

「大丈夫か?」

「俺の結界があるから、問題はないな。食べられても消化はされない。が、それは困る。この辺り一帯に結界を張って、部外者が入れないようにしておこう」

 そう言って、ゼムドは立方体の結界魔法を150人に張った。
 そして、それに合わせて、トカゲの姿が見えてきた。

 キエティは気持ち悪いと思った。足が六本に目が三つある。長さは10メートル近くあるかもしれない。物凄い速さで鍾乳石の隙間を縫ってこちらへ向かってくる。あれはおそらくこちらを餌だと思っているはずだ。
 カルベルトがゼムドに話しかける。

「あれはスリーマルチプルズドラゴンて奴だ。三の倍数が名の由来だな。あれの首の骨と脳だけ破壊して、ここに置くことは出来るか?」

「可能だ。というか、望むなら血抜きをしてやってもいい」

「ああ、じゃあ、血抜きも頼む。あれ系のモンスターは脳を破壊してもしばらく動くことがある。血を完全に抜いてしまえば、おそらく動かなくなるだろう。あれは、肉は薬に、表面の皮はバッグやソファーの材料に使われる。価値がないわけじゃない」

 また、ゼムドが手を伸ばす。すると三匹のトカゲはピタリと動きを止めて、空中へ浮かび上がり、こちらへゆっくり向かってくる。重力魔法だ。また、ゼムドはトカゲを一度クルリと反転させ、風魔法で首を切り落とした。血抜きが終わると、しばらくして、トカゲが同じようにこちらへ運ばれてくる。

「おお、すげぇ、すげぇ。これも無傷で捕まえるのが結構難しいんだよ。表面を傷つけると、一気に価値が無くなるからなぁ。ゼムドさん、さっき、30~35層までは全部倒してくれ、と言ったが、やっぱ中止だ。可能なら全部、血抜きをして、ここまで持ってきてほしい。できるか?」

「問題ないな。ただ、俺の考えだと、おそらくこれらの生物は、このダンジョンで生態系を築いている。全部獲ってしまうと、今後、この手のモンスターは発生しなくなるな。それでもいいのか?」

「そうなのか? キシャーンちゃんどう思う?」

「私もそう思います。このダンジョンの鉱物資源を採取したいなら、モンスターは邪魔になるので、全て倒した方が良いとは思いますが、それ以上については何とも言えません。見た限り、この鍾乳石の色はカラフルですが、例えばこの赤の鍾乳石は、ドワーフが加工すれば火の魔石になるとは思います。今後、モンスターのドロップアイテムを諦めて、鉱物確保を優先するかどうか、という感じでしょうか?」

「……よし、じゃあ三分の一だけモンスターを倒して持って帰ろう。それくらいならいいだろう」

「いえ、それだと多分、生態系が壊れますね。せいぜい、五分の一くらいにしておいた方が良いと思います」

「そんなもんか?」

「三分の一をも減らしてしまうと、今いる種の一部が生存競争に負けて絶滅し、今までに活躍できなかった種が繁殖して、生態系の主導権を握る可能性はありますが、それが人族にとって有用な生き物になるかは分かりません。逆に、今以上に有用な生き物になるかもしれませんが……」

「ん~。まぁ、今でもそれなりに満足してるからな。今の状態を維持してくれないと困るか。じゃあ、五分の一だけ持って帰ることにしよう。ゼムドさんはそれでいいか?」

「構わないぞ。お前たちがやりたいようにやればいい。どうする? 適当に大型種のモンスターを全部ここへ持ってきてもいいのか?」

「カニは要らないな。あれは食用にしか使えないんだよ。それなりに高価ではあるが、今日、わざわざ捕まえる必要は無い。他の種類はとりあえず生息数の五分の一を持ってきてくれ。あと、やっぱ35層じゃなくて、45層までのモンスターを持ってきてくれ。せっかくここに150人も集めたんだ。俺達はここで、モンスターを解体する。要らない部位は廃棄して、必要なものだけを持って帰るか。じゃあ、すぐに行って捕まえてきてくれ」

「別にここに居たままでも、重力魔法で捕まえて、ここへ運ぶことは出来るが」

 そんな話をしながら、ゼムドはふと遠くを見る。

 なんとなく歪さ(いびつ)感じる。索敵をしているが、どうも45層から下の様子がうまく探れない。
 何かがおかしい。
 カルベルトの話を聞いた時、所詮人族の戯言だと思ったが、確かにこのダンジョンの地下には何かおかしな物があるのかもしれない。今朝、キエティが妙に不安そうな表情をしているのに気づいていた。本人を心配させたくないので、先ほどカルベルト達がいたあの場では不安を煽らなかったが、多少注意した方が良いかもしれない。
 そんな風に思った。
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