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幕間 その2 マグマ地帯を突破する

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 次の街に訪れて情報を収集した。
 ただ、この先は進むに当たって些か問題があるらしい。
 どうやら、この一個先の街に向かうには、火山地帯を乗り越えなければいけないとのことだった。ただ、この辺の火山は少し変わっているという事だった。

 火山というか、大きな平地があって、そのいたる所で地面からマグマが噴出しているということだった。
 写真のような画像を見せてもらったが、マグマが固まって黒い火成岩となり、多孔質になった大地が広がっている感じだろうか。現在も毎日、各所でマグマが噴出しており、噴出されたマグマがゆっくりと地面を動いていくとのことだった。多分、この大地は徐々に標高が上がっていくのだろう。

 カルディさんが皆にその状況について説明した。
 ビルドが手を上げて質問した。

「俺達は空を飛べます。何か問題があるのでしょうか?」

「あると言えば、ある。まぁ、このマグマなんだが、極稀に高さ数百メートル近く、吹き上げることがあるそうだ」

「え? それより高く飛べばいいんじゃないですか?」

「ただ、ここからが問題だ。そこより高く飛ぼうとすると、他国の制空権を犯すことになる。つまり、また、前回のような獣族との戦いになる可能性があるということだ」

「じゃあ、どうすればいいんですか?」

「正直、ファードスとマサキ君は自力で歩いて突破することは可能だろう。私達でも羽を鍛えることはできない。私とファードスでもマグマが羽に当たれば墜落してしまう。が、ファードスは氷魔法も得意だし、体も強い。ファードスは羽に氷魔法を纏えば歩いて行くことは出来るはずだ。また、マサキ君の体も強い。以前、フライングタートルを倒する時に、刀に火を纏っていたが、本人は全く火傷をしていなかった。マサキ君も歩いて突破できるだろう」

「僕達はどうすればいいんですか?」

「方法はいくつかあるが、私が考えている方法を述べよう。マグマが強烈に噴き出す場所はランダムではあるが、ここ最近マグマが動き終えた場所では噴き出すことが無いらしい。そして、そのルートの地図は手に入れてある。この上を低空飛行していくのがいいだろう」

「でもそれって結構熱くないですか?」

「暑いね。この大地は風があまり吹かないらしい。熱気がモロに上空へ伝わる。だから、まず、ファードスがセリサ君を抱きかかえる。同時に、氷魔法を周囲に常時発動して、冷やしながらファードスには飛んでもらう。そして、私がビルド君を抱えて、私は結界魔法を使いながら飛ぶ。そして、マサキ君がリーシャさんを抱きかかえて地面を走ってもらうのがいいだろう。もちろんリーシャさんには私の結界魔法を掛ける。結界魔法はそれなりに魔力消費が多いので、長時間の使用は避けたいが、今回に限っては仕方ないだろう」

 僕はここで提案した。

「カルディさん、僕は結界魔法が使えるようになりました。今の僕なら、多少ですが、カルディさんの結界魔法の上にさらに結界魔法を使うことが出来ると思います」

「え? そうなのかい? どうやってそれを覚えたのかな?」

 カルディさんは不思議そうにこちらを見ている。

「以前、どうも僕のこの体が使っていたのかもしれません。急に使い方を思い出した感じでしょうか」

 ベゼルの事については伏せて置きたいので、嘘を付いた。

「そうか。それは助かる。魔力の消費を抑えられる」

 カルディさんに何か追及されるかと思ったが、そんなことはなかった。カルディさんはホッとしたような表情だった。やはり結界魔法を長時間使うのはキツイようだ。

「では、早速皆で、この先の火山を乗り越えることにしよう」

*********

 カルディさんから聞いた話ではこのマグマを通ろうとすると、マグマの中から岩石が飛んでくるという事だった。厳密にはマグマの高温に耐えらえる生き物が魔素で汚染され、マグマ地帯を通過しようとする者を襲ってくるという事だった。まあ、ファイヤーボールが飛んでくる感じだろうか。ただ、刀に氷魔法を使って、払っていけばいいと思った。

 街で聞いた話では、ここを通る人達も、体が頑強な人が複数でパーティを組んで、氷魔法を使いながら歩いて突破するとのことだった。まぁ、僕なら余裕だろう。
 
 刀を抜いて準備したが、リーシャをどう抱きかかえるかが問題だ。
 左手一本でリーシャを抱えて走ることもできるが、リーシャは疲れるだろう。
 が、ふと思い付いたことがある。

 土魔法で籠を作る、で、それを僕が背負えばいい。
 土魔法で籠を作って、その中にリーシャをちょこんと座らせた。
 そして、ビルドの荷物から太めのロープを取り出して、それに結界魔法を掛けながら、僕の体に籠を固定した。

 さて、前を見た。
 景色はいい。
 青い晴天に、薄っすらと白い雲があり、その下には一面、黒い大地と所どころからマグマがブクブクと吹き出している。一見危なそうにも思えるが、僕の体は高温に対しては耐性がある。この程度では暑いとは感じないし、恐怖もない。

 カルディさんが声を掛けてきた。

「準備はいいかい? これからリーシャさんに結界魔法を掛ける。それと同時に私とビルド君はここを飛び立つ。後は、君がリーシャさんを守りながら、この大地を走り抜けてくれ」

「結界魔法の掛け直しの時間はどれくらいにしますか?」

「一時間ごとにしよう。最初から強い結界魔法を掛けるよりは定期的に弱い結界魔法を掛けた方が、私の魔力の消費量は少なくて済む」

「分かりました。もし途中でカルディさんの結界魔法が切れたら、僕がリーシャに結界魔法を張ります。それで大丈夫だと思います」

「よし、分かった。じゃあ、それでいこう」

 そう言って、カルディさんはリーシャに結界魔法を掛けた。
同時に僕も鞘から刀を抜いて、氷魔法を刀に纏わせた。
 
 カルディさんは一気に上昇していった。
 さて、ここからが僕の出番だ。

 前を見る。
 マグマが赤く噴き出しているところを踏んではいけないだろう。
 ただ、一見マグマが冷えて黒く固まっているように見えるところも、内部はまだ固まっていないところがあるはずだ。もし、そういうところを踏み抜いてしまったら、足に氷魔法を掛けてマグマを瞬間的に固めてしまえばいいだろう。
 そう思って、走り出すことにした。

 走り出してみると、やはり硬いところと柔らかいところがある。


 時速五十キロメートルくらいで走り続けるのが一番良さそうだ。
 ズボ、っと足を踏み込むような感覚があると、一瞬で足から氷魔法で周囲を固め、その固まった部位を踏み台にして走って行く。

 ただ、思ったより、魔力の消費回数が多いかもしれない。万一、リーシャに結界魔法を掛けるとなると、それなりの魔力残存量を確保しておきたい。

 どうしようかと思っていると、真横から火を纏った岩石が飛んできた。

 ――ガキン――

 氷の刀でその岩石を真っ二つにする。すると、僕はここでこの岩石の中からある物が出てきたのに気付いた。
 魔核だ。

 この岩石はモンスターだし、一個一個に魔核があってもおかしくはない。
 魔石が地面に落ちる前に素早く移動して、空中で食べてみる。
 それと同時に魔力が回復するのが自覚された。
 なるほど、これなら片っ端から飛んでくる岩石をぶっ叩いて、中の魔石を食べていけばいいようだ。面白そうだ。

 走り続けて5時間ほど経ったが、結構な頻度で岩石が飛んできた。
 もしこの岩石が時速数百キロとかなら、対処に余裕が無いだろうが、飛んでくる大半は時速百キロ以下だろう。 一回に数十個岩石が降ってくる時もあるが、簡単に蹴散らしていける。ただ、刀を振るに当たって、体がどうしても大きく動いてしまう。
 背中に乗っているリーシャはそれなりに辛いだろう。なるべく、岩石を壊すのを止めて、リーシャの負担にならないようにしてマグマ地帯を走り抜けていった。

 前を見ると、ファードスさんとセリサは既にマグマ地帯を抜けたようだ。
 僕達を待っている。また、そこへ上空を飛んでいたカルディさんとビルドが降り立つのが見える。
 
 僕達ももう直ぐに到着できる。

 そう思った瞬間だった。足元が一気に揺らいでバランスを崩してしまった。思ったよりマグマが活発なところを踏み抜いてしまったらしい。瞬時に、リーシャに結界魔法を強く張って、籠ごと彼女を宙へ放り投げた。リーシャは空中で羽を広げた。

「僕は大丈夫だ。先に行ってくれ」

 そう言うとリーシャは頷いて、カルディさん達の所へ飛んで行く。
 僕が沈むのに合わせて岩石たちがたくさん飛んできた。弱っている者を狙う習性があるようだ。

 ――また、やるか――

 アルマジロ達を最後に吹っ飛ばした時の様に、マグマの地面に刀を突き刺して、そこで氷魔法を強く使う。地盤を一気に冷却させながら、刀を思いっきり振り抜いた。

 飛んでくる岩石達に僕が地盤を砕いた破片がぶつかっていく。
 それと同時に、僕も岩石から飛び出て、カルディさん達の所を目指した。

 到着すると、ビルドが片手を上げて待っていた。
 そこに軽くハイタッチをする。
 ビルドはこういう気遣いができる。パーティのムードメーカーだ。

 カルディさんに提案することにした。

「ここの飛んでくる岩石は魔核を持っていますよ。カルディさんが結界魔法で魔力を消費したなら、ここで魔核を補給していきませんか?」

 そういうとカルディさんは少し首を傾げて考えてから、返事をした。

「そうだね。魔力を回復させておいた方が良さそうだ」

 するとファードスさんが前に出てきた。そして、自らの羽に氷魔法を使う。
 そして、岩石地帯に入って行った。
 カルディさんはここで様子を見ていた方がいい、とファードスさんは判断して、代わりにマグマ地帯へ赴くようだ。

 そして、僕ももう一度、マグマ地帯に突入して、この後ファードスさんと一緒に魔核を集め捲ったのだった。
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