30 / 124
本編
30 考えてみる
しおりを挟む
父は場を改めるように咳払いをした。
「仮に本当に瀬戸くんが月乃のことを好きなのだとして……本人に直接訊いてみないとわからないが。きみ達は、私達にどうして欲しいのかな?」
「それは勿論、もう一度婚約して欲しいです。虹川先輩に嫌われて、瀬戸くんは、今すごく荒れています。学校も問題視しています」
深見くんの話に、父は首を傾げた。
「荒れている? 学校が問題視?」
「はい。瀬戸くん、授業に出ても机に教科書もノートも出さず、ずっと携帯と腕時計を睨み付けています。携帯に何かメールが届いたり……そうじゃなくても何かの時間が来ると、授業中でも黙って教室を出ていきます。穏やかだったのに、今は四六時中ぴりぴりしていて、怖くて誰も話しかけられません」
深見くんの後に、山井さんが話した。
「私……職員室で先生の手伝いをしているときに見ました。瀬戸くんが担任に呼び出されて、授業態度を注意されていました。大学に通っているそうだが、いい加減にしろって言われていて……。その後ご両親も来ていたけど何も言わなくて……。大学通いって、虹川先輩のところですよね? どうか瀬戸くんのこと嫌わないで話してあげてください」
私と父は困ってしまった。
「話せって言われても……」
「そうだな。もう弁護士を通じて、婚約を正式に破棄してしまっているし、慰謝料も相応の額を渡した。簡単にもう一度婚約という訳にはいかない。何よりきみ達の話だけでは、瀬戸くんも瀬戸くんのご両親もどう考えているかわからないしな」
「そんな! 瀬戸くんの気持ちなんて決まっています!」
父の説明に対して、深見くんが大声を上げた。そう言われてもなあ……と、私と父は視線を交わす。
「……きみ達が瀬戸くんを心配しているのは、よくわかった。しかし私は父として月乃の気持ちも尊重したい。月乃は、瀬戸くんのことをどう思っているんだ? 好きか、嫌いか?」
私は腕を組んで頭を傾げながら、考えてみた。
「よく……わかりません。今までは、ただ婚約者として好ましいとは思っていましたが……。ただ、本当に誤解があるならば、話はしたいと思います」
「そうか。それならば、婚約というのを一切抜きにして、話してくるのがいいだろう。月乃の気持ち次第で、婚約者はまた条件の合う人を探してきてもいい」
私は父とそう話を結論付けた。一応私と征士くんが話し合うという形になったので、深見くん達は帰ることとなった。
「虹川先輩。本当にあいつは先輩のことが好きなんです。それをわかってやって、是非話をいい方向に進めてください」
帰り際、念を押すように深見くんに言われてしまった。
「……善処するわ」
志野谷さんは深く私に頭を下げた。
「嘘ついて本当にすみませんでした。またあの優しい瀬戸くんに戻してください。虹川さんだけにしか、お願い出来ません」
「私も嘘の写真とか撮ってしまって、申し訳ありませんでした。瀬戸くんをよろしくお願いします。このままじゃ瀬戸くん、停学とか留年とかなってしまいます」
山井さんも頭を下げる。これだけ謝られたら、許さざるを得ない。
「わかったわ。彼の生活態度と授業態度が改善するように、なるべく説得してみるから」
彼らは何度も頭を下げて帰っていった。
私は部屋へ戻って、久しぶりに携帯の電源を入れてみた。
ものすごい数の着信履歴とメールが届いていた。
着信履歴は圧倒的に征士くんからだった。
メールを日付の古い順から丁寧に読んでみる。大学に行かなかった時は、征士くんから、どうして婚約解消したのか、と疑問のメールが多かった。自分のどこが悪かったのか、他に好きな人が出来たのか、条件に合わなくなったのかと様々綴られていた。
玲子ちゃんや若竹くん達からも、心配したメールが届いていた。何で突然講義やサークルへ来なくなったのか、具合が悪いならばお見舞いに行こうか、などと書かれていた。心配してもらえて胸が熱くなった。
大学へ行き出すようになってからは、征士くんから本当に好きですとか、誤解ですとか、話し合ってください、など日付や時間を問わずに届いていた。
玲子ちゃんからも、もう一度よく話し合って、と書かれていた。
……よく、話し合おう。そう思って、出来たら明日お話しませんか、と征士くんにメールを送ってみた。
メールはすぐに返ってきた。いつでも、何時でも、どこでも構わないから話し合いたいとのことだった。
私は少し考えて、時々行く会員制のレストランにしようと決めた。あそこならば、個室だからゆっくりお話出来るし、リーズナブルなメニューもある。
レストランの予約を取ってから、征士くんに待ち合わせ時間とレストランの場所を説明して、レストランでは私の名前を言うようにとメールで伝えた。
その夜、私は婚約者ではない、これからの征士くんとの関係性を考えてから眠りについた。
「仮に本当に瀬戸くんが月乃のことを好きなのだとして……本人に直接訊いてみないとわからないが。きみ達は、私達にどうして欲しいのかな?」
「それは勿論、もう一度婚約して欲しいです。虹川先輩に嫌われて、瀬戸くんは、今すごく荒れています。学校も問題視しています」
深見くんの話に、父は首を傾げた。
「荒れている? 学校が問題視?」
「はい。瀬戸くん、授業に出ても机に教科書もノートも出さず、ずっと携帯と腕時計を睨み付けています。携帯に何かメールが届いたり……そうじゃなくても何かの時間が来ると、授業中でも黙って教室を出ていきます。穏やかだったのに、今は四六時中ぴりぴりしていて、怖くて誰も話しかけられません」
深見くんの後に、山井さんが話した。
「私……職員室で先生の手伝いをしているときに見ました。瀬戸くんが担任に呼び出されて、授業態度を注意されていました。大学に通っているそうだが、いい加減にしろって言われていて……。その後ご両親も来ていたけど何も言わなくて……。大学通いって、虹川先輩のところですよね? どうか瀬戸くんのこと嫌わないで話してあげてください」
私と父は困ってしまった。
「話せって言われても……」
「そうだな。もう弁護士を通じて、婚約を正式に破棄してしまっているし、慰謝料も相応の額を渡した。簡単にもう一度婚約という訳にはいかない。何よりきみ達の話だけでは、瀬戸くんも瀬戸くんのご両親もどう考えているかわからないしな」
「そんな! 瀬戸くんの気持ちなんて決まっています!」
父の説明に対して、深見くんが大声を上げた。そう言われてもなあ……と、私と父は視線を交わす。
「……きみ達が瀬戸くんを心配しているのは、よくわかった。しかし私は父として月乃の気持ちも尊重したい。月乃は、瀬戸くんのことをどう思っているんだ? 好きか、嫌いか?」
私は腕を組んで頭を傾げながら、考えてみた。
「よく……わかりません。今までは、ただ婚約者として好ましいとは思っていましたが……。ただ、本当に誤解があるならば、話はしたいと思います」
「そうか。それならば、婚約というのを一切抜きにして、話してくるのがいいだろう。月乃の気持ち次第で、婚約者はまた条件の合う人を探してきてもいい」
私は父とそう話を結論付けた。一応私と征士くんが話し合うという形になったので、深見くん達は帰ることとなった。
「虹川先輩。本当にあいつは先輩のことが好きなんです。それをわかってやって、是非話をいい方向に進めてください」
帰り際、念を押すように深見くんに言われてしまった。
「……善処するわ」
志野谷さんは深く私に頭を下げた。
「嘘ついて本当にすみませんでした。またあの優しい瀬戸くんに戻してください。虹川さんだけにしか、お願い出来ません」
「私も嘘の写真とか撮ってしまって、申し訳ありませんでした。瀬戸くんをよろしくお願いします。このままじゃ瀬戸くん、停学とか留年とかなってしまいます」
山井さんも頭を下げる。これだけ謝られたら、許さざるを得ない。
「わかったわ。彼の生活態度と授業態度が改善するように、なるべく説得してみるから」
彼らは何度も頭を下げて帰っていった。
私は部屋へ戻って、久しぶりに携帯の電源を入れてみた。
ものすごい数の着信履歴とメールが届いていた。
着信履歴は圧倒的に征士くんからだった。
メールを日付の古い順から丁寧に読んでみる。大学に行かなかった時は、征士くんから、どうして婚約解消したのか、と疑問のメールが多かった。自分のどこが悪かったのか、他に好きな人が出来たのか、条件に合わなくなったのかと様々綴られていた。
玲子ちゃんや若竹くん達からも、心配したメールが届いていた。何で突然講義やサークルへ来なくなったのか、具合が悪いならばお見舞いに行こうか、などと書かれていた。心配してもらえて胸が熱くなった。
大学へ行き出すようになってからは、征士くんから本当に好きですとか、誤解ですとか、話し合ってください、など日付や時間を問わずに届いていた。
玲子ちゃんからも、もう一度よく話し合って、と書かれていた。
……よく、話し合おう。そう思って、出来たら明日お話しませんか、と征士くんにメールを送ってみた。
メールはすぐに返ってきた。いつでも、何時でも、どこでも構わないから話し合いたいとのことだった。
私は少し考えて、時々行く会員制のレストランにしようと決めた。あそこならば、個室だからゆっくりお話出来るし、リーズナブルなメニューもある。
レストランの予約を取ってから、征士くんに待ち合わせ時間とレストランの場所を説明して、レストランでは私の名前を言うようにとメールで伝えた。
その夜、私は婚約者ではない、これからの征士くんとの関係性を考えてから眠りについた。
0
あなたにおすすめの小説
丘の上の王様とお妃様
よしき
恋愛
木崎珠子(35才)は、大学を卒業後、帝国財閥の子会社に勤めていた、ごくごく平凡なOLだった。しかし、同じ職場の彼に二股をかけられ、職場にも居づらくなり、あげくに両親が交通事故でいっぺんに他界。結局会社を退職し、両親がやっていた喫茶店「坂の上」を引き継ごうと、地元へ帰ってくる。喫茶店の仕事は、会社務めに比べると、珠子にはなんとなくあっているようで...ご近所さんを相手にユルくやっていた。そんな珠子が地元へ戻ってから半年ほどして、喫茶店「坂の上」の隣にある、通称「お化け屋敷」と呼ばれる大豪邸に、帝国財閥の偉い人が越してくると話題になる。珠子は、「別の世界の人間」だからと、あまり意識をしていなかったのだか...
「お化け屋敷」の噂からひと月後。いつもは見ない紳士が、喫茶「坂の上」によってきて。そこから始まる現代シンデレラ物語
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
モース10
藤谷 郁
恋愛
慧一はモテるが、特定の女と長く続かない。
ある日、同じ会社に勤める地味な事務員三原峰子が、彼をネタに同人誌を作る『腐女子』だと知る。
慧一は興味津々で接近するが……
※表紙画像/【イラストAC】NORIMA様
※他サイトに投稿済み
織田信長の妹姫お市は、異世界でも姫になる
猫パンダ
恋愛
戦国一の美女と言われた、織田信長の妹姫、お市。歴史通りであれば、浅井長政の元へ嫁ぎ、乱世の渦に巻き込まれていく運命であるはずだったーー。しかし、ある日突然、異世界に召喚されてしまう。同じく召喚されてしまった、女子高生と若返ったらしいオバサン。三人揃って、王子達の花嫁候補だなんて、冗談じゃない!
「君は、まるで白百合のように美しい」
「気色の悪い世辞などいりませぬ!」
お市は、元の世界へ帰ることが出来るのだろうか!?
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行「婚約破棄ですか? それなら昨日成立しましたよ、ご存知ありませんでしたか?」完結
まほりろ
恋愛
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞・コミカライズ企画進行中。
コミカライズ化がスタートしましたらこちらの作品は非公開にします。
「アリシア・フィルタ貴様との婚約を破棄する!」
イエーガー公爵家の令息レイモンド様が言い放った。レイモンド様の腕には男爵家の令嬢ミランダ様がいた。ミランダ様はピンクのふわふわした髪に赤い大きな瞳、小柄な体躯で庇護欲をそそる美少女。
対する私は銀色の髪に紫の瞳、表情が表に出にくく能面姫と呼ばれています。
レイモンド様がミランダ様に惹かれても仕方ありませんね……ですが。
「貴様は俺が心優しく美しいミランダに好意を抱いたことに嫉妬し、ミランダの教科書を破いたり、階段から突き落とすなどの狼藉を……」
「あの、ちょっとよろしいですか?」
「なんだ!」
レイモンド様が眉間にしわを寄せ私を睨む。
「婚約破棄ですか? 婚約破棄なら昨日成立しましたが、ご存知ありませんでしたか?」
私の言葉にレイモンド様とミランダ様は顔を見合わせ絶句した。
全31話、約43,000文字、完結済み。
他サイトにもアップしています。
小説家になろう、日間ランキング異世界恋愛2位!総合2位!
pixivウィークリーランキング2位に入った作品です。
アルファポリス、恋愛2位、総合2位、HOTランキング2位に入った作品です。
2021/10/23アルファポリス完結ランキング4位に入ってました。ありがとうございます。
「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」
不器用な大富豪社長は、闇オクで買った花嫁を寵愛する
獅月@体調不良
恋愛
「 御前を幸せにする為に、俺は買ったんだ 」
〜 闇オク花嫁 〜
毒親である母親の為だけに生きてきた彼女は、
借金を得た母の言葉を聞き、
闇オークションへ売られる事になった。
どんな形にしろ借金は返済出来るし、
母の今後の生活面も確保出来る。
そう、彼女自身が生きていなくとも…。
生きる希望を無くし、
闇オークションに出品された彼女は
100億で落札された。
人食を好む大富豪か、
それとも肉体を求めてか…。
どちらにしろ、借金返済に、
安堵した彼女だが…。
いざ、落札した大富豪に引き渡されると、
その容姿端麗の美しい男は、
タワマンの最上階から5階部分、全てが自宅であり、
毎日30万のお小遣いですら渡し、
一流シェフによる三食デザート付きの食事、
なにより、彼のいない時間は好きにしていいという自由時間を言い渡した。
何一つ手を出して来ない男に疑問と不満を抱く日々……だが……?
表紙 ニジジャーニーから作成
エブリスタ同時公開
同居人の一輝くんは、ちょっぴり不器用でちょっぴり危険⁉
朝陽七彩
恋愛
突然。
同居することになった。
幼なじみの一輝くんと。
一輝くんは大人しくて子羊みたいな子。
……だったはず。
なのに。
「結菜ちゃん、一緒に寝よ」
えっ⁉
「結菜ちゃん、こっちにおいで」
そんなの恥ずかしいよっ。
「結菜ちゃんのこと、どうしようもなく、
ほしくてほしくてたまらない」
そんなにドキドキさせないでっ‼
今までの子羊のような一輝くん。
そうではなく。
オオカミになってしまっているっ⁉
。・.・*.・*・*.・。*・.・*・*.・*
如月結菜(きさらぎ ゆな)
高校三年生
恋愛に鈍感
椎名一輝(しいな いつき)
高校一年生
本当は恋愛に慣れていない
。・.・*.・*・*.・。*・.・*・*.・*
オオカミになっている。
そのときの一輝くんは。
「一緒にお風呂に入ったら教えてあげる」
一緒にっ⁉
そんなの恥ずかしいよっ。
恥ずかしくなる。
そんな言葉をサラッと言ったり。
それに。
少しイジワル。
だけど。
一輝くんは。
不器用なところもある。
そして一生懸命。
優しいところもたくさんある。
そんな一輝くんが。
「僕は結菜ちゃんのこと誰にも渡したくない」
「そんなに可愛いと理性が破壊寸前になる」
なんて言うから。
余計に恥ずかしくなるし緊張してしまう。
子羊の部分とオオカミの部分。
それらにはギャップがある。
だから戸惑ってしまう。
それだけではない。
そのギャップが。
ドキドキさせる。
虜にさせる。
それは一輝くんの魅力。
そんな一輝くんの魅力。
それに溺れてしまう。
もう一輝くんの魅力から……?
♡何が起こるかわからない⁉♡
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる