17 / 32
(17)
しおりを挟む
ウィリアムが褒められていることが嬉しい。
自分のことよりも嬉しく感じられ、自然と笑みがこぼれてしまう。
「ふふふっ……」
そんなエドナを見て、アガーネンは不思議そうな表情を浮かべた後、微笑んで言った。
「エドナ嬢のお話もお聞かせいただけますか?」
そう聞かれたので、エドナは笑顔で浮かれ気味に答えた。
ウィリアムとの出会いから恋に落ちるまでの話もまた、アガーネンには興味深かったようだ。
真剣に耳を傾けて聞いてくれるのが嬉しい。
その後も二人はたわいもない話で談笑を続けたのだが、ふとアガーネンが何かを思い出したかのように口を開いた。
「ところで、エドナ嬢はウィリアム卿とご婚約をなさるのですか?」
突然の質問に戸惑ったものの、エドナは「はい、婚約しますの」と、正直に答えた。
すると彼は微笑みながらこう答えるのだった。
「ご婚約を。そうですか……」
「……」とはどういうことなのだろう?
疑問に思うことはあったものの、エドナはそれ以上聞くことはできずに言葉を待つ。
(やっぱりウィリアム様のことを気にかけていらっしゃるのかしら。わたしではつり合わないってこと……?)
エドナが心の中でそんなことを考えていると、不意にアガーネンが近づいてきて耳元で囁いた。
「ウィリアム卿は若いながら立派な騎士です。ですがね……深傷を負ったリンドン隊長を助けずに置き去りにしたのは……」
「置き去りですって……」
「そのまま『見殺し』にしたとも解釈できますから」
その言葉を聞き、エドナは驚いて目を丸くした。
「見殺し……?」
なぜ急にそんなことを言うの?
アガーネンはそんなエドナの様子を見て微笑むと、ゆっくりと口を開く。
「答えは簡単ですよ。ウィリアム卿は隊長になりたかったからです。あのリンドン隊長には誰にも敵いませんからね」
とさらに付け加えた。
しかし、その声色からは、彼が本気なのか冗談で言っているのか判断できなかった。
アガーネンはそれ以上のことは言わなかった。
(きっと彼の言葉はただの憶測に過ぎないのだわ。絶対、そうよ…)
エドナはそう思いこもうとした。
しばらくするとウィリアムが戻ってきた。
王様や他の重臣も一緒である。
彼らはエドナとアガーネンを見て微笑んでいた。
「おや、宰相殿と知り合いになったのか?」
と王様が尋ねてきた。
「はい、宰相様にお会いできて光栄です」
とエドナが答えると、王様も満足そうに頷いているが、ウィリアムはどことなく浮かない顔をしている。
(ウィリアム様はリンドン隊長を見殺しにしたって……一体どういうことなの?)
とエドナは思った……。
自分のことよりも嬉しく感じられ、自然と笑みがこぼれてしまう。
「ふふふっ……」
そんなエドナを見て、アガーネンは不思議そうな表情を浮かべた後、微笑んで言った。
「エドナ嬢のお話もお聞かせいただけますか?」
そう聞かれたので、エドナは笑顔で浮かれ気味に答えた。
ウィリアムとの出会いから恋に落ちるまでの話もまた、アガーネンには興味深かったようだ。
真剣に耳を傾けて聞いてくれるのが嬉しい。
その後も二人はたわいもない話で談笑を続けたのだが、ふとアガーネンが何かを思い出したかのように口を開いた。
「ところで、エドナ嬢はウィリアム卿とご婚約をなさるのですか?」
突然の質問に戸惑ったものの、エドナは「はい、婚約しますの」と、正直に答えた。
すると彼は微笑みながらこう答えるのだった。
「ご婚約を。そうですか……」
「……」とはどういうことなのだろう?
疑問に思うことはあったものの、エドナはそれ以上聞くことはできずに言葉を待つ。
(やっぱりウィリアム様のことを気にかけていらっしゃるのかしら。わたしではつり合わないってこと……?)
エドナが心の中でそんなことを考えていると、不意にアガーネンが近づいてきて耳元で囁いた。
「ウィリアム卿は若いながら立派な騎士です。ですがね……深傷を負ったリンドン隊長を助けずに置き去りにしたのは……」
「置き去りですって……」
「そのまま『見殺し』にしたとも解釈できますから」
その言葉を聞き、エドナは驚いて目を丸くした。
「見殺し……?」
なぜ急にそんなことを言うの?
アガーネンはそんなエドナの様子を見て微笑むと、ゆっくりと口を開く。
「答えは簡単ですよ。ウィリアム卿は隊長になりたかったからです。あのリンドン隊長には誰にも敵いませんからね」
とさらに付け加えた。
しかし、その声色からは、彼が本気なのか冗談で言っているのか判断できなかった。
アガーネンはそれ以上のことは言わなかった。
(きっと彼の言葉はただの憶測に過ぎないのだわ。絶対、そうよ…)
エドナはそう思いこもうとした。
しばらくするとウィリアムが戻ってきた。
王様や他の重臣も一緒である。
彼らはエドナとアガーネンを見て微笑んでいた。
「おや、宰相殿と知り合いになったのか?」
と王様が尋ねてきた。
「はい、宰相様にお会いできて光栄です」
とエドナが答えると、王様も満足そうに頷いているが、ウィリアムはどことなく浮かない顔をしている。
(ウィリアム様はリンドン隊長を見殺しにしたって……一体どういうことなの?)
とエドナは思った……。
1
あなたにおすすめの小説
溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~
紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。
ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。
邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。
「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」
そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。
「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)
透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。
有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。
「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」
そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて――
しかも、彼との“政略結婚”が目前!?
婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。
“報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。
白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活
しおしお
恋愛
政略結婚の末、侯爵家から「価値がない」と切り捨てられた令嬢リオラ。
新しい夫となったのは、噂で“冷徹”と囁かれる辺境領主ラディス。
二人は互いの自由のため――**干渉しない“白い結婚”**を結ぶことに。
ところが。
◆市場に行けばついてくる
◆荷物は全部持ちたがる
◆雨の日は仕事を早退して帰ってくる
◆ちょっと笑うだけで顔が真っ赤になる
……どう見ても、干渉しまくり。
「旦那様、これは白い結婚のはずでは……?」
「……君のことを、放っておけない」
距離はゆっくり縮まり、
優しすぎる態度にリオラの心も揺れ始める。
そんな時、彼女を利用しようと実家が再び手を伸ばす。
“冷徹”と呼ばれた旦那様の怒りが静かに燃え――
「二度と妻を侮辱するな」
守られ、支え合い、やがて惹かれ合う二人の想いは、
いつしか“形だけの夫婦”を超えていく。
悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜
咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。
もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。
一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…?
※これはかなり人を選ぶ作品です。
感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。
それでも大丈夫って方は、ぜひ。
【完結】元悪役令嬢は、最推しの旦那様と離縁したい
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
「アルフレッド様、離縁してください!!」
この言葉を婚約者の時から、優に100回は超えて伝えてきた。
けれど、今日も受け入れてもらえることはない。
私の夫であるアルフレッド様は、前世から大好きな私の最推しだ。 推しの幸せが私の幸せ。
本当なら私が幸せにしたかった。
けれど、残念ながら悪役令嬢だった私では、アルフレッド様を幸せにできない。
既に乙女ゲームのエンディングを迎えてしまったけれど、現実はその先も続いていて、ヒロインちゃんがまだ結婚をしていない今なら、十二分に割り込むチャンスがあるはずだ。
アルフレッド様がその気にさえなれば、逆転以外あり得ない。
その時のためにも、私と離縁する必要がある。
アルフレッド様の幸せのために、絶対に離縁してみせるんだから!!
推しである夫が大好きすぎる元悪役令嬢のカタリナと、妻を愛しているのにまったく伝わっていないアルフレッドのラブコメです。
全4話+番外編が1話となっております。
※苦手な方は、ブラウザバックを推奨しております。
急に王妃って言われても…。オジサマが好きなだけだったのに…
satomi
恋愛
オジサマが好きな令嬢、私ミシェル=オートロックスと申します。侯爵家長女です。今回の夜会を逃すと、どこの馬の骨ともわからない男に私の純潔を捧げることに!ならばこの夜会で出会った素敵なオジサマに何としてでも純潔を捧げましょう!…と生まれたのが三つ子。子どもは予定外だったけど、可愛いから良し!
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる