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とんだ作戦
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さて、夜分となり、ジョセフィーヌ公爵令嬢は、手もみしながら、用心棒ふたりの帰りを待っていた。
二人とも涙もろいという欠点以外は、すこぶる剣の技量はあるので、女ひとり始末するなど、朝飯前と踏んでいた。
もちろん、この『エミリス嬢、暗殺計画』は、父公爵の許可があっての話である。
ジョセフィーヌ公爵令嬢がバルコニーで吉報を待っていたところ、覆面姿の用心棒が、荷台になにやら主そうな荷物を荷台に乗せて、屋敷の門から入ってきた。
ジョセフィーヌ公爵は嬉々として踊り場から螺旋階段を優雅に降りて1階のロビーに待ち受け、用心棒が抱えたむしろを、床に置かせた。
「お嬢様、ご命令通りに、エミリス嬢を殺してやりました」
親分が満足げに、報告した。
「どうやって殺したの?」
「胸を剣先でひとつき」
若いスリム体型が答えた。
「これで、目の上のたんこぶがなくなったわ。ほーほっほっほ」
ジョセフィーヌ公爵は、悪役令嬢にぴったりの高笑いをホールに響かせた。
「さあ、顔を見せてちょうだい」
そこで、布袋をはいだ途端、出てきたのは……。
「殿下……!」
ジョセフ王太子は、瞼を開き、起き上がると、ジョセフィーヌ嬢の喉仏に携えていたサーベルを突きつけた。
親分が合図の口笛を吹くと、屋敷を取り囲んでいた王子直属の近衞たちが一斉に流れ込み、あっという間に公爵家の家人たちもろとも、御用となったのだった。
この暗殺未遂事件で、ジョセフィーヌ嬢をはじめ、公爵家はお取り潰しとなり、愛するエミリス嬢を命がけで守った、勇気あるジョセフ王太子と、機転を利かしたエミリス嬢の活躍は、民の間で、勇敢なる愛の話として広まった。用心棒ふたりの罪は咎められず、むしろ、国王直属の騎士団の一員として採用されたのだった。
そしてまたあらためて、国王の執務室に呼び出されたエミリスとジョセフ王太子は、今度は修羅場どころか、
「喜んで、お前たち、ふたりの婚約を認めよう」
と、満面の笑みで言ったのだ。
(ヤバいっつーの。さらに彼と離れにくくなってきたじゃない……)
エミリスの心配はそのまま現実に。2年ほどした18歳の成人となった時、民に祝福され、ふたりは結婚した。
二人とも涙もろいという欠点以外は、すこぶる剣の技量はあるので、女ひとり始末するなど、朝飯前と踏んでいた。
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ジョセフィーヌ公爵令嬢がバルコニーで吉報を待っていたところ、覆面姿の用心棒が、荷台になにやら主そうな荷物を荷台に乗せて、屋敷の門から入ってきた。
ジョセフィーヌ公爵は嬉々として踊り場から螺旋階段を優雅に降りて1階のロビーに待ち受け、用心棒が抱えたむしろを、床に置かせた。
「お嬢様、ご命令通りに、エミリス嬢を殺してやりました」
親分が満足げに、報告した。
「どうやって殺したの?」
「胸を剣先でひとつき」
若いスリム体型が答えた。
「これで、目の上のたんこぶがなくなったわ。ほーほっほっほ」
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「さあ、顔を見せてちょうだい」
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「殿下……!」
ジョセフ王太子は、瞼を開き、起き上がると、ジョセフィーヌ嬢の喉仏に携えていたサーベルを突きつけた。
親分が合図の口笛を吹くと、屋敷を取り囲んでいた王子直属の近衞たちが一斉に流れ込み、あっという間に公爵家の家人たちもろとも、御用となったのだった。
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