【完結】彼は皇帝なので、彼女は薬師として尽くすことにしました。

朝日みらい

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1. 出会いの朝 

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あの朝のことは、忘れようと思っても忘れられない。  

私はいつも通り、薬草園でハーブを摘んでいた。

朝露に濡れた葉っぱの感触が好きだし、ほんのり漂うミントの香りが心を落ち着かせる。

そんな、穏やかな朝だった。  

ところが、突如として村外れの小道から、重たい馬の蹄音が響いてきた。

カラスたちがバサバサと一斉に飛び立ち、私は慌てて顔を上げた。

そこには、信じられないほど大きな影があった。

いや、影というか…人?

いや、獣?  

「…えっ?」  

思わず声が漏れた。

その人…いや、その存在は馬に乗っていた。

金属の鎧が朝日にギラギラと反射していて、目がくらみそうだった。

彼の顔が見えた瞬間、思わず息をのんだ。

鋭い瞳、強面の表情、そして狼の耳としっぽが。  

「…獣人?」  

思わず呟いたその言葉が、相手に聞こえたのかどうかはわからない。

でも彼は、私をじっと見つめたまま馬を降りた。

その動きの流れるような優雅さと言ったら。

もう、目が離せなかった。  

「この村の薬師は君か?」  

低くて深みのある声だった。

一瞬、心臓が飛び出るかと思ったくらい。

私はどうにか声を絞り出す。  

「は、はい!私ですけど…」  

近くで見ると、彼はさらに大きく見えた。

しかもなんというか…顔が整いすぎてて逆に怖い。

いや、怖いというより、圧倒されるって感じ?  

「俺の名はアラクシウス・ヴォルファス。」  

名前を聞いた瞬間、私は頭が真っ白になった。

だって、その名前、聞いたことある!

帝国の皇帝様の名前だ。

え、嘘でしょ?

そんな人がどうしてこんな田舎村に?  

「えっと、その…なんで皇帝様がこんなところに?」  

どうしても聞かずにはいられなかった。

だって普通、皇帝が田舎の薬師の家に来るなんてありえないでしょ?

彼は少し口元を緩めて、まるで私の驚きを楽しむかのように答えた。  

「用がある。それだけだ。」  

いや、それだけって!

全然わからないんだけど!?

でも彼の目は真剣で、冗談で言ってるようには見えなかった。  

「君の名前は?」  

「エリナ…エリナです。」  

私の名前を聞いて、彼は少しだけ表情を和らげた…気がする。  

「エリナか。悪くない名前だ。」  

なんで褒めるの!?

もう、心臓が持たない!

頬が熱くなるのを感じながら、私はなんとか平静を保とうとしたけど、うまくいったかどうかは怪しい。  

その後、彼は少し私の薬草園を眺めたあと、ふと私に向き直って言った。  

「俺には君の力が必要だ。」  

えっ…必要って、どういうこと?

いきなりそんなこと言われても、どう返事していいかわからない!

でも彼の瞳は真っ直ぐで、なんというか…吸い込まれそうなほど綺麗だった。  

私の平凡な日常が、この朝を境に一変するなんて、そのときはまだ、全然わからなかったんだけど。
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