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 男の子は「町の親せきのおじさんおばさんの家に招待するから、いっしょに来てよ」とさそいましたが、まりもは頭をふりました。

「ありがとう、本当に。でも、町に行ったら、私の姿を見た人々はこわがるかもしれないし、みんな嫌な気分になるかもしれないの。だから、帰るね」と説明しました。

「わかった」

 男の子は、駅前で買った親せきのためのおみやげのおまんじゅうをまりもに差し出しました。

「これはお礼だよ。きみが親切にしてくれたからね。またいつか会えるといいな」

「ありがとう」

 まりもは村の家にもどり、おみやげをもって、お父さんとお母さんにうれしそうに男の子の話をしました。

 それから、男の子からもらったアツアツのおまんじゅうを手に取り、口に入れました。

 そのおまんじゅうは、ふわふわの生地で包まれたやわらかいジューシーな焼き豚が、口の中で広がってとろけていきます。まりもは幸せな気持ちと男の子の笑顔が頭に浮かんできて、ちょっと涙が出そうになりました。

「まりも。その子に会ってみたらいいじゃないか」

「お父さんの言う通りよ。そうしなさいよ」

 お父さんお母さんは、まりもの本当の気持ちを感じていたのです。

「…うん」

 翌朝、両親はまりものために、みにくい顔を隠すほどの大きな帽子を持ってきました。そして、化粧箱を持ってきて、ただれた肌を隠す白粉を使って、まりもの化粧をしてくれました。

「お父さん、お母さん、ありがとう!」
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