【完結】顔が良ければそれでいいと思っていたけれど、気づけば彼に本気で恋していました。

朝日みらい

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【第16章】 熱い気持ち

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 王宮へ戻る馬車の中、わたしはルシアンさまの隣に座っていました。  
 夜の街の喧騒を離れ、静かな石畳を走る車輪の音が、妙に心地よく響きます。

 けれど――。

(……どうしよう。心臓が落ち着きません)

 隣に座るルシアンさまは、先ほどまで涙を見せていたとは思えないほど穏やかな表情で、  
 けれどどこか、わたしを見つめる瞳が熱を帯びていました。

「アリアさま」

「は、はい……?」

 名前を呼ばれただけで、胸が跳ねました。  
 するとルシアンさまは、ふっと微笑みました。

「そんなに緊張なさらなくても大丈夫ですよ。  
 俺はもう、逃げたりしませんから」

 その言葉に、胸の奥がじんわりと温かくなりました。

(……逃げない。  
 そう言ってくださるなんて)

 わたしが感慨に浸っていると、ルシアンさまはそっとわたしの手を取ってきました。

「っ……!」

 指先が触れた瞬間、全身が熱くなりました。

「アリアさまの手……温かいですね」

「そ、そうでしょうか……?」

「はい。俺のほうが、ずっと冷たい」

 そう言って、彼はわたしの手を包み込むように握りました。

 その仕草があまりにも自然で、優しくて――  
 胸がきゅうっと締めつけられました。

「アリアさま。  
 俺は……あなたに触れるのが、こんなにも嬉しいのだと、今日初めて知りました」

「ルシアンさま……」

「あなたが俺を愛してくださると知ってから……  
 どうしようもなく、触れたくなるのです」

 その声音は甘く、低く、耳の奥に残るほどでした。

(……これは、危険だわ)

 心臓が、まるで跳ね回っているように騒がしくなります。

 するとルシアンさまは、わたしの手をそっと持ち上げ、  
 甲に軽く唇を触れさせました。

「っ……!」

「アリアさま。  
 あなたの手は、俺の宝物です」

「た、宝物……?」

「ええ。  
 あなたが俺を選んでくださった、その手ですから」

 その言葉に、胸の奥がじんわりと熱くなりました。

(……こんなに甘い言葉を、本心で言ってくださるなんて)

 かつてのルシアンさまは、甘い言葉を“仕事”として使っていました。  
 けれど今の彼は、わたしだけに向けて、心からの言葉を紡いでくれています。

「アリアさま。  
 俺は、あなたを離しませんよ」

 その言葉は、まるで誓いのように静かで、  
 けれどどこまでも強く、真っ直ぐでした。

「……わたしも、離れない」

 そう答えると、ルシアンさまは嬉しそうに微笑みました。

「アリアさま。  
 あなたは本当に……可愛らしい方ですね」

「か、可愛らしい……?」

「はい。  
 俺の言葉でそんなに赤くなってくださるなんて……  
 もっと言いたくなってしまいます」

「っ……!」

 わたしは思わず顔を覆いました。

(……これは、本当に危険です)

 するとルシアンさまは、そっとわたしの手を外し、  
 指先でわたしの頬に触れました。

「隠さないでください。  
 あなたの照れた顔……俺は、とても好きです」

「ルシアンさま……」

「アリアさま。  
 これから毎日、あなたを甘やかしてもいいですか?」

 その問いは、あまりにも甘くて、優しくて――  
 胸の奥がとろけそうになりました。

「……はい」

 そう答えると、ルシアンさまは満足そうに微笑み、  
 わたしの髪をそっと撫でました。

「ええ。  
 あなたが望む限り、ずっと」

 その言葉に、胸の奥が熱く震えました。

(……これが、ルシアンさまの“本心”なのですね)

 夜の街で見せた涙も、弱さも、  
 そして今の甘い言葉も――  
 すべてが、彼の本当の姿。

 わたしは、そのすべてを愛おしいと思いました。
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