虐げられた王女は隣国の王太子と出会ったので、真実の愛を見つけることにしました。

朝日みらい

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第4章: 冷たい歓迎 

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ヴァルトハイムの王宮に到着した私は、あまりの豪華さに一瞬息を飲んだ。

けれど、その驚きはすぐに冷たく鋭い視線に押しつぶされることとなった。  

王宮の使用人たちは皆、まるで私が見るからに怪しい者であるかのような目を向けてくる。

それもそのはずだ。

私は正式な王族ではない、いわば見知らぬ異国から送り込まれた花嫁もどきなのだから。  

「ふぅ…まあ、予想通りの歓迎よね」  

自嘲気味に呟いてみたものの、心の中はざわざわとして落ち着かない。

そんな私の不安をさらに煽るように、正面から歩いてきたのは彼――ヴァルトハイムの王太子、レオニードだった。  

背が高くて、整った顔立ち。

そして何より目を引くのは、その鋭い青い瞳。

まるで氷のように冷たく、刺さるような視線だった。  

「君が誰であれ、私にとってはただの取引だ」  

彼が初めて発した言葉はこれだった。  

一瞬、耳を疑った。

けれど、その冷たい声と無表情な顔を見た瞬間、すぐに理解した。

彼は本気だ。

本気で、私をただの道具としか見ていないのだと。  

「……」  

返す言葉が見つからず、ただその場に立ち尽くしてしまった。  

「黙っていればいい。余計なことは何もするな。それが唯一の条件だ」  

彼の冷ややかな声が突き刺さる。

その言葉のあと、彼は私に背を向け、その場を立ち去った。  


その晩、私は広すぎる寝室にひとり置き去りにされた。  

天井の高い部屋、絢爛豪華な調度品、ふかふかのベッド。

まるで夢のような空間のはずなのに、私は一歩も動けなかった。  

「これが、私の居場所…?」  

思わず呟いた言葉が、あまりにも空しく響く。

リヴィアから冷たく送り出され、ここでも冷たい目を向けられ、取引だと切り捨てられる。  

「…何やってるんだろう、私」  

気づけば、涙が頬を伝っていた。  

それでも、私は自分に言い聞かせる。

「泣いてる場合じゃない」と。  

「私には誇りがある。どんなに冷たく扱われても、私は…私は自分を見失わないから。」  

口に出してみると、少しだけ心が軽くなった気がした。  


そのときだった。

ドアが小さくノックされ、私は驚いて顔を上げた。  

「失礼いたします、アリシア様」  

現れたのは侍女のひとりだった。

彼女は緊張した面持ちで、何か言いたげに私の前に立つ。  

「…どうかしました?」  

「実は、レオニード殿下が…」  

その名前を聞いた瞬間、心臓が跳ねる。  

「殿下がどうされたの?」  

「…いえ、あの、殿下は特に何も。ただ…」  

侍女は言葉を濁したけれど、その表情から察するに、何かあるらしい。  

「大丈夫です。話して」  

「殿下はいつもそうなんです。冷たくて、無愛想で…でも、実はとても繊細なお方で…」  

繊細? 

あの冷たい目をした彼が?  

「それはどういう意味?」  

「…殿下はあまり人を信じられないのです。ですから、アリシア様もきっと、殿下にとってはまだ“未知”なのでしょう」  

未知。

そう言われると、少しだけ彼に興味が湧いてきた。  

「…ありがとう。話してくれて」  

侍女に礼を言い、再びひとりきりになると、私はベッドに腰を下ろした。  

彼が私をどう思っているのか、そんなことは分からない。

でも、彼が私を“未知”だと思っているのなら――私にも、彼を知るチャンスがあるのかもしれない。  

「未知、ね」  

そう呟いた瞬間、なぜか胸が少しだけ暖かくなった。  

これから何が起こるのか分からないけれど、私は諦めない。

たとえ彼が冷たくても、私には自分の道を切り開く力があるのだと信じるしかないのだから。  
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