【完結】べつに平凡な令嬢……のはずなのに、なにかと殿下に可愛がれているんです

朝日みらい

文字の大きさ
5 / 32

(5)

しおりを挟む
(どうしてこうなった?)

 アシェリーは心の中で叫んだ。もう、緊張しっぱなしで頭が真っ白になってしまったのだ。

 殿下と何を話したかは、緊張のあまり何も覚えていない。とりあえず『月刊・魔術書』のバックナンバーの国王陛下やご家族の似顔絵は覚えていたので、魔術に興味がありますとか、わたしは平凡ですが、努力は惜しみませんとか話したような……。

 よくあの場でボロを出さなかったものだと自分でも感心しているぐらいだ。

 そして本日、正式に王太子妃候補に決定したアシェリーが宮殿に訪れると、宰相からお言葉があった。

「近い将来、フィリップ殿下の妃になることは王族の一員になるためでもある。それは承知しているな?」

「はい!」

 元気しか取り柄がないと思って、アシェリーは背筋を伸ばして、大きな声で返事をした。

「よろしい。では、待っていなさい」

「かしこまりました!」

と返事をしたものの……え? もう来てらっしゃるの!? 

 そして入れ替わるようにフェリクス・デーニッツ王太子殿下が入室してきたのである。

(ううっ)

 アシェリーは再び緊張で頭が真っ白になった。こんな間近でお顔を拝見することなんてないので、心臓に悪い! 

 部屋に残ったアシェリーとフィリップ殿下はしばらく無言で見つめ合っていたが……やがて、殿下の方から声をかけられる。

「君がヘーボンハス公爵家の娘だね?」

「は、はい!」

 アシェリーは慌てて返事をした。

「君のお父上とは面識がある。子供の頃から色々とお世話になった」

 フィリップ殿下は少し砕けた口調になったが、それでも上品さが漂っていてとても格好よく見えた。さすが次期国王と言われるだけのことはあるとアシェリーは思った。

(ああ! 近くで見るとますます素敵だわ!)

 フィリップ殿下は背が高く、体つきもがっしりしていた。しかし、太っているわけではなく、手足はスラッとして無駄な脂肪など一切ない。

 そして顔立ちは精悍で男らしく、その目は理知的な光を宿し、口元は自信に満ちているように見える。髪は輝くような金髪で短く刈り揃えられ、前髪を上げていていかにも清潔感がある。

(王太子妃候補になれてよかったわ!)

 アシェリーは思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】契約結婚のはずが、旦那様の独占欲が強すぎます!

22時完結
恋愛
契約結婚のはずが、冷徹な旦那様の独占欲が強すぎて、毎日が予想外の展開に。 心優しい私は、彼の冷酷な態度に傷つきながらも次第にその愛に溺れていく。けれど、旦那様の過去の秘密と強すぎる愛情に、私はどう対処すればいいのか…?波乱万丈な日々の中で、二人の関係は一歩一歩進んでいく。果たして、彼の独占欲が私を束縛するのか、それとも二人で幸せな未来を築けるのか?

余命宣告されたモブ令嬢と隠しルートの人見知り魔術師

佐倉穂波
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生したミリア。  モブなりに楽しく生きていこうと思った矢先に、ミリアは余命宣告を聞いてしまう。  短い人生なら推し活に残りの人生を費やそうと、ミリアは前世で推しだった隠しルートの魔術師を訪ねることにした。 *本編4話完結 *リュカリスside3話。 *ふわっとした世界観。 *この作品はpixiv『投稿企画 みんなが読みたい小説を書こう!』のお題を利用し創作したものです。  https://www.pixiv.net/novel/contest/yomitainovel

氷の公爵の婚姻試験

潮海璃月
恋愛
ある日、若き氷の公爵レオンハルトからある宣言がなされた――「私のことを最もよく知る女性を、妻となるべき者として迎える。その出自、身分その他一切を問わない。」。公爵家の一員となる一世一代のチャンスに王国中が沸き、そして「公爵レオンハルトを最もよく知る女性」の選抜試験が行われた。

身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)

柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!) 辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。 結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。 正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。 さくっと読んでいただけるかと思います。

自己肯定感の低い令嬢が策士な騎士の溺愛に絡め取られるまで

嘉月
恋愛
平凡より少し劣る頭の出来と、ぱっとしない容姿。 誰にも望まれず、夜会ではいつも壁の花になる。 でもそんな事、気にしたこともなかった。だって、人と話すのも目立つのも好きではないのだもの。 このまま実家でのんびりと一生を生きていくのだと信じていた。 そんな拗らせ内気令嬢が策士な騎士の罠に掛かるまでの恋物語 執筆済みで完結確約です。

【完結】灰かぶりの花嫁は、塔の中

白雨 音
恋愛
父親の再婚により、家族から小間使いとして扱われてきた、伯爵令嬢のコレット。 思いがけず結婚が決まるが、義姉クリスティナと偽る様に言われる。 愛を求めるコレットは、結婚に望みを託し、クリスティナとして夫となるアラード卿の館へ 向かうのだが、その先で、この結婚が偽りと知らされる。 アラード卿は、彼女を妻とは見ておらず、曰く付きの塔に閉じ込め、放置した。 そんな彼女を、唯一気遣ってくれたのは、自分よりも年上の義理の息子ランメルトだった___ 異世界恋愛 《完結しました》

急に王妃って言われても…。オジサマが好きなだけだったのに…

satomi
恋愛
オジサマが好きな令嬢、私ミシェル=オートロックスと申します。侯爵家長女です。今回の夜会を逃すと、どこの馬の骨ともわからない男に私の純潔を捧げることに!ならばこの夜会で出会った素敵なオジサマに何としてでも純潔を捧げましょう!…と生まれたのが三つ子。子どもは予定外だったけど、可愛いから良し!

冷徹公爵閣下は、書庫の片隅で私に求婚なさった ~理由不明の政略結婚のはずが、なぜか溺愛されています~

白桃
恋愛
「お前を私の妻にする」――王宮書庫で働く地味な子爵令嬢エレノアは、ある日突然、<氷龍公爵>と恐れられる冷徹なヴァレリウス公爵から理由も告げられず求婚された。政略結婚だと割り切り、孤独と不安を抱えて嫁いだ先は、まるで氷の城のような公爵邸。しかし、彼女が唯一安らぎを見出したのは、埃まみれの広大な書庫だった。ひたすら書物と向き合う彼女の姿が、感情がないはずの公爵の心を少しずつ溶かし始め…? 全7話です。

処理中です...