13 / 32
(13)
しおりを挟む
宮廷教育として最低限身につけておかなくてはいけないことはもちろん、国家の来賓に粗相がないような礼儀やたしなみ、他国の文化や趣味嗜好や好みまで把握して、その知識を元に家庭教師になりきって、侍女がアシェリーを教育する。
「あの……私、こんなに頑張らなくてもいいんですけど……」
「何をおっしゃいますか! もっと頑張れますでしょう?」
「は、はあ……」
侍女に叱られて、アシェリーはため息をついた。
でも侍女の言う通りだし、逆らえないし……。
アシェリーはクッションを抱きしめ、癒されながら、あっという間に二週間が過ぎ去った。
☆■☆■
宮廷に向かう馬車に、アシェリーは乗り込んだ。
「それでは行ってらっしゃいませ、アシェリー様! がんばってくださいね」
「うん…」
「大丈夫ですか? 緊張なさっているようですね」
侍女がクスクスと笑った。
「大丈夫よ!」
アシェリーは自分に言い聞かせるように言った。大丈夫……フィリップ殿下の期待に応えなきゃ!
「クッション、持って行ってください。でも、よだれで汚さないようにしてくださいよ」
「うるさいなぁ」
アシェリーは頬を膨らませた。
「でも、本当に無理はなさらないでくださいね。つらくなったら帰ってきてください」
「うん……」
アシェリーは深呼吸した。
馬車が王宮に到着すると、フィリップ殿下が出迎えてくれた。相変わらず颯爽とした美男子だ。
フィリップ殿下はアシェリーを見て微笑んだ。
「やあ、アシェリー!」
「こんにちは、王太子殿下!」
アシェリーも挨拶を返した。
「よく戻った。さあ、行こう。歓迎のお茶会を用意した」
「はい!?」
アシェリーは戸惑いながらも、元気よく返事をした。
「あの……私、こんなに頑張らなくてもいいんですけど……」
「何をおっしゃいますか! もっと頑張れますでしょう?」
「は、はあ……」
侍女に叱られて、アシェリーはため息をついた。
でも侍女の言う通りだし、逆らえないし……。
アシェリーはクッションを抱きしめ、癒されながら、あっという間に二週間が過ぎ去った。
☆■☆■
宮廷に向かう馬車に、アシェリーは乗り込んだ。
「それでは行ってらっしゃいませ、アシェリー様! がんばってくださいね」
「うん…」
「大丈夫ですか? 緊張なさっているようですね」
侍女がクスクスと笑った。
「大丈夫よ!」
アシェリーは自分に言い聞かせるように言った。大丈夫……フィリップ殿下の期待に応えなきゃ!
「クッション、持って行ってください。でも、よだれで汚さないようにしてくださいよ」
「うるさいなぁ」
アシェリーは頬を膨らませた。
「でも、本当に無理はなさらないでくださいね。つらくなったら帰ってきてください」
「うん……」
アシェリーは深呼吸した。
馬車が王宮に到着すると、フィリップ殿下が出迎えてくれた。相変わらず颯爽とした美男子だ。
フィリップ殿下はアシェリーを見て微笑んだ。
「やあ、アシェリー!」
「こんにちは、王太子殿下!」
アシェリーも挨拶を返した。
「よく戻った。さあ、行こう。歓迎のお茶会を用意した」
「はい!?」
アシェリーは戸惑いながらも、元気よく返事をした。
7
あなたにおすすめの小説
一夜限りの関係だったはずなのに、責任を取れと迫られてます。
甘寧
恋愛
魔女であるシャルロッテは、偉才と呼ばれる魔導師ルイースとひょんなことから身体の関係を持ってしまう。
だがそれはお互いに同意の上で一夜限りという約束だった。
それなのに、ルイースはシャルロッテの元を訪れ「責任を取ってもらう」と言い出した。
後腐れのない関係を好むシャルロッテは、何とかして逃げようと考える。しかし、逃げれば逃げるだけ愛が重くなっていくルイース…
身体から始まる恋愛模様◎
※タイトル一部変更しました。
【完結】せっかくモブに転生したのに、まわりが濃すぎて逆に目立つんですけど
monaca
恋愛
前世で目立って嫌だったわたしは、女神に「モブに転生させて」とお願いした。
でも、なんだか周りの人間がおかしい。
どいつもこいつも、妙にキャラの濃いのが揃っている。
これ、普通にしているわたしのほうが、逆に目立ってるんじゃない?
逆行転生した侯爵令嬢は、自分を裏切る予定の弱々婚約者を思う存分イジメます
黄札
恋愛
侯爵令嬢のルーチャが目覚めると、死ぬひと月前に戻っていた。
ひと月前、婚約者に近づこうとするぶりっ子を撃退するも……中傷だ!と断罪され、婚約破棄されてしまう。婚約者の公爵令息をぶりっ子に奪われてしまうのだ。くわえて、不貞疑惑まででっち上げられ、暗殺される運命。
目覚めたルーチャは暗殺を回避しようと自分から婚約を解消しようとする。弱々婚約者に無理難題を押しつけるのだが……
つよつよ令嬢ルーチャが冷静沈着、鋼の精神を持つ侍女マルタと運命を変えるために頑張ります。よわよわ婚約者も成長するかも?
短いお話を三話に分割してお届けします。
この小説は「小説家になろう」でも掲載しています。
ブラック企業に勤めていた私、深夜帰宅途中にトラックにはねられ異世界転生、転生先がホワイト貴族すぎて困惑しております
さら
恋愛
ブラック企業で心身をすり減らしていた私。
深夜残業の帰り道、トラックにはねられて目覚めた先は――まさかの異世界。
しかも転生先は「ホワイト貴族の領地」!?
毎日が定時退社、三食昼寝つき、村人たちは優しく、領主様はとんでもなくイケメンで……。
「働きすぎて倒れる世界」しか知らなかった私には、甘すぎる環境にただただ困惑するばかり。
けれど、領主レオンハルトはまっすぐに告げる。
「あなたを守りたい。隣に立ってほしい」
血筋も財産もない庶民の私が、彼に選ばれるなんてあり得ない――そう思っていたのに。
やがて王都の舞踏会、王や王妃との対面、数々の試練を経て、私たちは互いの覚悟を誓う。
社畜人生から一転、異世界で見つけたのは「愛されて生きる喜び」。
――これは、ブラックからホワイトへ、過労死寸前OLが掴む異世界恋愛譚。
メイド令嬢は毎日磨いていた石像(救国の英雄)に求婚されていますが、粗大ゴミの回収は明日です
有沢楓花
恋愛
エセル・エヴァット男爵令嬢は、二つの意味で名が知られている。
ひとつめは、金遣いの荒い実家から追い出された可哀想な令嬢として。ふたつめは、何でも綺麗にしてしまう凄腕メイドとして。
高給を求めるエセルの次の職場は、郊外にある老伯爵の汚屋敷。
モノに溢れる家の終活を手伝って欲しいとの依頼だが――彼の偉大な魔法使いのご先祖様が残した、屋敷のガラクタは一筋縄ではいかないものばかり。
高価な絵画は勝手に話し出し、鎧はくすぐったがって身よじるし……ご先祖様の石像は、エセルに求婚までしてくるのだ。
「毎日磨いてくれてありがとう。結婚してほしい」
「石像と結婚できません。それに伯爵は、あなたを魔法資源局の粗大ゴミに申し込み済みです」
そんな時、エセルを後妻に貰いにきた、という男たちが現れて連れ去ろうとし……。
――かつての救国の英雄は、埃まみれでひとりぼっちなのでした。
この作品は他サイトにも掲載しています。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】溺愛される意味が分かりません!?
もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢
ルルーシュア=メライーブス
王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。
学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。
趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。
有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。
正直、意味が分からない。
さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか?
☆カダール王国シリーズ 短編☆
氷のメイドが辞職を伝えたらご主人様が何度も一緒にお出かけするようになりました
まさかの
恋愛
「結婚しようかと思います」
あまり表情に出ない氷のメイドとして噂されるサラサの一言が家族団欒としていた空気をぶち壊した。
ただそれは田舎に戻って結婚相手を探すというだけのことだった。
それに安心した伯爵の奥様が伯爵家の一人息子のオックスが成人するまでの一年間は残ってほしいという頼みを受け、いつものようにオックスのお世話をするサラサ。
するとどうしてかオックスは真面目に勉強を始め、社会勉強と評してサラサと一緒に何度もお出かけをするようになった。
好みの宝石を聞かれたり、ドレスを着せられたり、さらには何度も自分の好きな料理を食べさせてもらったりしながらも、あくまでも社会勉強と言い続けるオックス。
二人の甘酸っぱい日々と夫婦になるまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる