【完結】べつに平凡な令嬢……のはずなのに、なにかと殿下に可愛がれているんです

朝日みらい

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 宮廷教育として最低限身につけておかなくてはいけないことはもちろん、国家の来賓に粗相がないような礼儀やたしなみ、他国の文化や趣味嗜好や好みまで把握して、その知識を元に家庭教師になりきって、侍女がアシェリーを教育する。

「あの……私、こんなに頑張らなくてもいいんですけど……」

「何をおっしゃいますか! もっと頑張れますでしょう?」

「は、はあ……」

侍女に叱られて、アシェリーはため息をついた。

 でも侍女の言う通りだし、逆らえないし……。

 アシェリーはクッションを抱きしめ、癒されながら、あっという間に二週間が過ぎ去った。


☆■☆■


 宮廷に向かう馬車に、アシェリーは乗り込んだ。

「それでは行ってらっしゃいませ、アシェリー様! がんばってくださいね」

「うん…」

「大丈夫ですか? 緊張なさっているようですね」

侍女がクスクスと笑った。

「大丈夫よ!」

アシェリーは自分に言い聞かせるように言った。大丈夫……フィリップ殿下の期待に応えなきゃ!

「クッション、持って行ってください。でも、よだれで汚さないようにしてくださいよ」

「うるさいなぁ」

 アシェリーは頬を膨らませた。

「でも、本当に無理はなさらないでくださいね。つらくなったら帰ってきてください」

「うん……」

 アシェリーは深呼吸した。


 馬車が王宮に到着すると、フィリップ殿下が出迎えてくれた。相変わらず颯爽とした美男子だ。

 フィリップ殿下はアシェリーを見て微笑んだ。

「やあ、アシェリー!」

「こんにちは、王太子殿下!」

 アシェリーも挨拶を返した。

「よく戻った。さあ、行こう。歓迎のお茶会を用意した」

「はい!?」

 アシェリーは戸惑いながらも、元気よく返事をした。
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