【完結】辺境騎士団長は恋に鈍感！ 元王都魔導士見習いの私、初恋成就作戦が今日も空回りしてます！

第11章：告白未満の約束

　静寂に包まれた夜の広場。幻獣フェルンとの激闘を終えた村に、再び穏やかな時間が流れてまいりました。

無事を確認し合った村人たちがそれぞれの家に帰っていくのを二人で見送った後、わたしとカイルは、星明かりの下、ベンチに座っておりました。

「カイル、怪我は大丈夫ですか？」

心配でたまらず、そっと彼の顔を覗き込むと、カイルは少し照れたように、はにかんだ笑顔を見せました。

その頬に、まだ夕焼けの名残のような赤みがさしているのが、なんだかとても愛おしく思えました。

「ああ、大丈夫だ。リリアが治癒魔法で手当てしてくれたからな。お前のおかげで、もうほとんど痛みもない」

「そ、そう……」

カイルの優しい声に、胸がぎゅっと締め付けられるような、嬉しさと恥ずかしさが込み上げてまいりました。

きっと、今頃、わたしの顔も林檎のように真っ赤になっているに違いありません。

「それにしても、リリアの魔法には驚いたよ。まさか、俺を守ってくれるなんて……」

カイルは、そう言って、吸い込まれそうなほど真っ直ぐな瞳でわたしを見つめました。

「お前がそばにいると、俺は強くなれる」

その言葉は、まるで夜空にきらめく星々のように、わたしの心に深く、深く響きました。

それは、これまでのどんな言葉よりも、わたしの心を温めてくれる、最高の褒め言葉でした。

「カイル……」

わたしは、溢れる想いを言葉にできず、代わりに、どうしようもなく笑ってしまいました。

「じゃあ、ずっとそばにいてもいいですか？」

星空よりもきらめく彼の瞳を、わたしは真っ直ぐに見つめ返しました。

カイルは一瞬、戸惑ったような表情を見せましたが、すぐに満月のように優しい笑顔になりました。

「当たり前だ」

その言葉は、告白には足りませんでした。

でも、わたしと彼の間の距離が、これまでのどんな言葉よりもずっと近くなった気がいたしました。

その言葉の重みは、これまでの何よりも重く、わたしの胸をいっぱいに満たしてくれました。

「ありがとうございます、カイル」

わたしは、感謝の気持ちを込めて、彼の肩にそっと頭を乗せました。

カイルは、わたしの髪を指先で梳くように、優しく撫でてくれます。

その大きな手の温かさが、わたしの不安をすべて取り除いてくれるようでした。

「お前がいてくれて、よかった」

カイルはそう囁くと、わたしをそっと、壊れ物のように優しく抱きしめてくれました。

彼の胸の鼓動が、わたしの心臓と共鳴するように響きます。

わたしたちは、二人で、満天の星空をただ見上げておりました。

「カイル、わたし……」

「ん？」

「ううん、なんでもありません」

本当は、「カイルが好き」と、そう伝えたかったのです。

でも、あと一歩が踏み出せません。臆病なわたしが、心の中に閉じ込めてしまった言葉。

でも、今は、もうこれでいいのかもしれません。

わたしたち二人の関係は、この広大な夜空の下、ゆっくりと、そして、確実に、深まっていくのですから。

この温かいぬくもりがあれば、きっといつか、わたしの想いは届くはずだと、わたしは信じておりました。