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第22章:王宮からの依頼
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ある朝、セリーヌの工房に一通の封筒が届いた。王家の紋章が刻まれたその分厚い羊皮紙は、まるで黄金のように光り輝いて見えた。
「まさか……税金の追徴……?」
「違うよ、セリーヌ。ちゃんと読んでみて」
ルシアンが笑いながら封を開ける。中には、王妃エリザベートの誕生日に供される“宮廷菓子”の調製を、セリーヌに正式依頼する旨が記されていた。
「王妃陛下の、誕生日……わ、私が……?」
「そう。ついに来たね、王宮デビュー」
ルシアンはいたずらっぽく目を細めると、にこりと微笑んだ。「それにね、王妃は甘いものが大好きだけど、実は胃が弱くて、いつも“心で泣きながら見送ってる”らしいよ」
「え、それ私みたいなタイプじゃない……!」
セリーヌはすぐさま厨房にこもり、準備に取り掛かった。
繊細で、優しくて、でも特別で――食べる人の体にも心にも、すっと溶け込むようなお菓子。
小麦粉とバターと果実、それからほんの少しの“魔法”――セリーヌは何度も試作を繰り返し、ついにひと皿のデザートを完成させた。
「“ラ・メール・ドゥ・ジュール(今日という日の母へ)”。どうか、王妃様の心に届きますように」
そして迎えた当日。セリーヌは工房のエプロンを脱ぎ、ルシアンに用意された控えめな宮廷用ドレスに袖を通した。
「うわ……私、なんだか立派な人に見える……」
「いつも立派だよ。今日はその姿を、全王宮が知る日になるだけさ」
「……ほんと、甘い言葉には事欠かないわね」
「仕事柄ね」
そうして運ばれたデザートは、純白のティアラのような外観に、シルクのようにとろける果実のムースと、ミントの香りがふんわり香る逸品だった。
王妃エリザベートは、ひとくちそれを口に含んだ途端、スプーンをそっと置き、手を口元に当てて静かに微笑んだ。
「……この甘さは、優しさの味。まるで、私が母に手を引かれていた、あの頃を思い出すわ」
目元に涙が浮かぶ。王妃の侍女たちは驚き、会場には小さなどよめきが起こった。
「これほど温かな味は、初めてです」
王妃のその一言に、会場全体が静まり返り、そして拍手が巻き起こった。
セリーヌは深く頭を下げた。ドレスのすそをぎこちなく踏みながら。
「ひぃっ……ご、ごめんなさい王妃様……! スカート、まだ慣れてなくて……!」
王妃はそんなセリーヌを見て、くすりと笑った。
「あなた、いいわね。気取らなくて」
その夜、工房に戻ったセリーヌは、疲れ切った体を椅子に預けながら、そっと呟いた。
「私のお菓子が、誰かの心をあたためられるなんて……本当に、夢みたい」
背後から、ルシアンがふんわりとブランケットをかけてくれる。
「君の味は、贈り物だって。君が言ってたじゃない。今日、それが証明されたんだよ」
「うん……でもやっぱり疲れた。明日は寝坊してもいい?」
「もちろん。じゃあ僕は明日も、厨房で皿洗い係かな」
「うん、頑張って。あ、でも手が荒れないように保湿してね。王子の手は貴重だから」
そう言って笑い合うふたりの夜は、静かに、更けていった。
「まさか……税金の追徴……?」
「違うよ、セリーヌ。ちゃんと読んでみて」
ルシアンが笑いながら封を開ける。中には、王妃エリザベートの誕生日に供される“宮廷菓子”の調製を、セリーヌに正式依頼する旨が記されていた。
「王妃陛下の、誕生日……わ、私が……?」
「そう。ついに来たね、王宮デビュー」
ルシアンはいたずらっぽく目を細めると、にこりと微笑んだ。「それにね、王妃は甘いものが大好きだけど、実は胃が弱くて、いつも“心で泣きながら見送ってる”らしいよ」
「え、それ私みたいなタイプじゃない……!」
セリーヌはすぐさま厨房にこもり、準備に取り掛かった。
繊細で、優しくて、でも特別で――食べる人の体にも心にも、すっと溶け込むようなお菓子。
小麦粉とバターと果実、それからほんの少しの“魔法”――セリーヌは何度も試作を繰り返し、ついにひと皿のデザートを完成させた。
「“ラ・メール・ドゥ・ジュール(今日という日の母へ)”。どうか、王妃様の心に届きますように」
そして迎えた当日。セリーヌは工房のエプロンを脱ぎ、ルシアンに用意された控えめな宮廷用ドレスに袖を通した。
「うわ……私、なんだか立派な人に見える……」
「いつも立派だよ。今日はその姿を、全王宮が知る日になるだけさ」
「……ほんと、甘い言葉には事欠かないわね」
「仕事柄ね」
そうして運ばれたデザートは、純白のティアラのような外観に、シルクのようにとろける果実のムースと、ミントの香りがふんわり香る逸品だった。
王妃エリザベートは、ひとくちそれを口に含んだ途端、スプーンをそっと置き、手を口元に当てて静かに微笑んだ。
「……この甘さは、優しさの味。まるで、私が母に手を引かれていた、あの頃を思い出すわ」
目元に涙が浮かぶ。王妃の侍女たちは驚き、会場には小さなどよめきが起こった。
「これほど温かな味は、初めてです」
王妃のその一言に、会場全体が静まり返り、そして拍手が巻き起こった。
セリーヌは深く頭を下げた。ドレスのすそをぎこちなく踏みながら。
「ひぃっ……ご、ごめんなさい王妃様……! スカート、まだ慣れてなくて……!」
王妃はそんなセリーヌを見て、くすりと笑った。
「あなた、いいわね。気取らなくて」
その夜、工房に戻ったセリーヌは、疲れ切った体を椅子に預けながら、そっと呟いた。
「私のお菓子が、誰かの心をあたためられるなんて……本当に、夢みたい」
背後から、ルシアンがふんわりとブランケットをかけてくれる。
「君の味は、贈り物だって。君が言ってたじゃない。今日、それが証明されたんだよ」
「うん……でもやっぱり疲れた。明日は寝坊してもいい?」
「もちろん。じゃあ僕は明日も、厨房で皿洗い係かな」
「うん、頑張って。あ、でも手が荒れないように保湿してね。王子の手は貴重だから」
そう言って笑い合うふたりの夜は、静かに、更けていった。
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