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第26章:再びの求婚
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その日、セリーヌは朝から忙しかった。特注のケーキに、見習い少女の失敗フォロー、そして猫が工房に忍び込んでカスタードをなめるという事件まで――。
「ああもう、次は“猫進入防止マジック”でも仕込むべきかしら」
と、ひとりごちていると、見習いのリリィがバタバタと駆け込んできた。
「せ、せせ、セリーヌさん! 王子様が――!」
「配達に来たって? いつものイチゴのクレープ?」
「ち、ちがいます! ご本人が! 直々に! 白馬はいませんが!」
「……それ、要る情報?」
セリーヌが苦笑しながら玄関に出ると、そこには、見慣れた金髪の王子が、何ともまっすぐな眼差しで立っていた。
――ルシアン・フォン・クラリオン王子。彼女にとって、優しくて騒がしくて、でもどこまでも真剣な、不思議な王子様。
「久しぶり、セリーヌ」
「毎週のように来てるのに、“久しぶり”って言うのやめてよ」
「今日の僕は違うから。来たのは、王子としてじゃなく――一人の男として、君に向き合いに来た」
「……え、それ告白フラグじゃない? いや、もう何度目?」
「今回は本気の本気」
ルシアンはぐっと歩み寄り、まっすぐに彼女の瞳を見つめた。
「僕は、今の君が好きだ。夢を追いかけて、自分の足で立って、誰かを笑顔にする君が。だからもう一度、君の隣に立たせてほしい」
――風が、止まったように思えた。
セリーヌはその言葉を胸に受け止め、そっと視線を落とした。過去の痛みや迷いが、一瞬頭をよぎる。だが、それはもう霞のように薄れていた。
「……前に言ったわよね。私は、誰かに守られるだけじゃなく、自分の足で立ちたいって」
「覚えてる。だからこそ、君の決意を待ってた」
「なら、今なら……あなたと、対等でいられると思う」
そう言って、セリーヌはそっと微笑んだ。
ルシアンは息を呑み、それから――ぱっと顔を輝かせた。
「本当に!? え、今の“OK”ってことでいい!? 僕、ぬか喜びじゃないよね!?」
「ぬか喜びだったら、今日のシュークリームにマスタードでも詰めてあげるところよ」
「ヒッ……よかった、本気で嬉しい……!」
そして彼は、両手を広げて、勢いよくセリーヌを抱きしめ――ようとして、ふわりと止まった。
「……あ、いや、ここ工房だし、お菓子まみれの格好だし、後ろにリリィちゃんがいるし。えーっと、許可、ください」
「……仕方ないわね」
セリーヌは微笑んで、そっと彼の胸に顔をうずめた。
それは甘くて、あたたかくて、心地よい香りがした。
「ふふ……あなた、いつも甘いものの匂いがする」
「君のせいだよ。それだけ君に会いに来てるってことさ」
ふたりの距離は、もう、何の迷いもなかった。
春の風がふたりを包み込む。
ついに重なった想いは、これから先――確かな未来へと歩き出していた。
「ああもう、次は“猫進入防止マジック”でも仕込むべきかしら」
と、ひとりごちていると、見習いのリリィがバタバタと駆け込んできた。
「せ、せせ、セリーヌさん! 王子様が――!」
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「ち、ちがいます! ご本人が! 直々に! 白馬はいませんが!」
「……それ、要る情報?」
セリーヌが苦笑しながら玄関に出ると、そこには、見慣れた金髪の王子が、何ともまっすぐな眼差しで立っていた。
――ルシアン・フォン・クラリオン王子。彼女にとって、優しくて騒がしくて、でもどこまでも真剣な、不思議な王子様。
「久しぶり、セリーヌ」
「毎週のように来てるのに、“久しぶり”って言うのやめてよ」
「今日の僕は違うから。来たのは、王子としてじゃなく――一人の男として、君に向き合いに来た」
「……え、それ告白フラグじゃない? いや、もう何度目?」
「今回は本気の本気」
ルシアンはぐっと歩み寄り、まっすぐに彼女の瞳を見つめた。
「僕は、今の君が好きだ。夢を追いかけて、自分の足で立って、誰かを笑顔にする君が。だからもう一度、君の隣に立たせてほしい」
――風が、止まったように思えた。
セリーヌはその言葉を胸に受け止め、そっと視線を落とした。過去の痛みや迷いが、一瞬頭をよぎる。だが、それはもう霞のように薄れていた。
「……前に言ったわよね。私は、誰かに守られるだけじゃなく、自分の足で立ちたいって」
「覚えてる。だからこそ、君の決意を待ってた」
「なら、今なら……あなたと、対等でいられると思う」
そう言って、セリーヌはそっと微笑んだ。
ルシアンは息を呑み、それから――ぱっと顔を輝かせた。
「本当に!? え、今の“OK”ってことでいい!? 僕、ぬか喜びじゃないよね!?」
「ぬか喜びだったら、今日のシュークリームにマスタードでも詰めてあげるところよ」
「ヒッ……よかった、本気で嬉しい……!」
そして彼は、両手を広げて、勢いよくセリーヌを抱きしめ――ようとして、ふわりと止まった。
「……あ、いや、ここ工房だし、お菓子まみれの格好だし、後ろにリリィちゃんがいるし。えーっと、許可、ください」
「……仕方ないわね」
セリーヌは微笑んで、そっと彼の胸に顔をうずめた。
それは甘くて、あたたかくて、心地よい香りがした。
「ふふ……あなた、いつも甘いものの匂いがする」
「君のせいだよ。それだけ君に会いに来てるってことさ」
ふたりの距離は、もう、何の迷いもなかった。
春の風がふたりを包み込む。
ついに重なった想いは、これから先――確かな未来へと歩き出していた。
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