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第29章:祝宴の夜
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王宮の大広間には、黄金のシャンデリアがまばゆく輝き、絹のドレスと燕尾服の波がきらめく音楽とともにゆるやかに揺れていた。
その夜、セリーヌは王妃の計らいにより、祝宴の菓子をすべて自らの工房で焼き上げたもので構成した。ケーキ、タルト、パイ、焼き菓子の数々が並ぶ長テーブルは、まるで夢の甘い国のよう。しかもそのすべてが、「王子の婚約者セリーヌの作品」として注目を浴びていた。
「ねえ見て、このラズベリータルト! 宝石みたい!」
「このレモンケーキ、口の中でふわって溶ける……!」
「えっ、これってあの、“侯爵家を追い出された元令嬢”が作ったって……嘘でしょう? え、婚約者? 王子の!?」
ざわめきと賞賛の声が会場中を満たし、その中心でセリーヌは少しだけ頬を赤らめていた。
「なんだか……まだ夢みたいだわ。あの頃の私が聞いたら、腰を抜かすんじゃないかしら」
そんな彼女に、王妃が近づいてきた。紫のドレスに身を包み、優雅に笑みを浮かべながら、ひと口、セリーヌの作ったミルフィーユを口に運ぶ。
「……これは、罪深い味ですね。ダイエットは明日からにしましょう」
隣の王様も、大きくうなずきながら言った。
「我が王国の宝は、ルシアンだけではなかったようだな。そなたの菓子、実に……うむ、実に旨い!」
「光栄です、陛下。ちなみにこのクッキーには、王妃様のお好みだったハイビスカスの香りを加えてみました」
王妃は目をぱちくりさせて、ふと微笑む。
「まあ……覚えていてくれたのね」
セリーヌは頷きながら、柔らかく答えた。
「人の“好き”を大切にしたくて、お菓子を作っていますから」
その姿を、ルシアンは遠くから見つめていた。
――彼女は、もう誰かに守られるだけの存在ではない。
そして、ひと段落ついた頃、ルシアンがそっと彼女の手を取り、広間の片隅へ連れ出す。バルコニーからは、星の瞬く夜空と、祝福の灯りに包まれた王都の街並みが見渡せた。
「ねえ、セリーヌ。今日、君を見ていて……ずっと思ってたことがあるんだ」
「……なにかしら?」
彼は、真っ直ぐに彼女の目を見つめながら、ゆっくりと告げた。
「君が隣にいることが、私の一番の誇りだ」
「ルシアン……」
その言葉に、セリーヌはほんの少し、目を潤ませた。そしてそっと視線を落とし、彼の胸元に額を寄せた。
「……ありがとう。なんだかね、思い出しちゃったの。初めて一人で焼いた、小さなタルトのことを」
「小さなタルト?」
「うん。お世辞にも綺麗じゃなかったし、焼きすぎてちょっと焦げてた。でもね、あれを食べて“おいしい”って笑ってくれた人がいて……その時、初めて思ったの。“ああ、私の作るものって、誰かを幸せにできるんだ”って」
彼女の視線の先には、街角で見かけた子どもたちの笑顔、工房で焼いた菓子、そして今、目の前にいる彼の姿。
「それが、私の始まりだったのね」
「そして、今は……?」
セリーヌは微笑んだ。
「今は、あなたと一緒に、もっとたくさんの“幸せ”を作っていける気がするの」
夜空に一つ、流れ星が落ちた。
二人の未来は、甘くて、優しくて、時にほろ苦く――でも確かに、一緒に作っていく最高のレシピになるだろう。
その夜、セリーヌは王妃の計らいにより、祝宴の菓子をすべて自らの工房で焼き上げたもので構成した。ケーキ、タルト、パイ、焼き菓子の数々が並ぶ長テーブルは、まるで夢の甘い国のよう。しかもそのすべてが、「王子の婚約者セリーヌの作品」として注目を浴びていた。
「ねえ見て、このラズベリータルト! 宝石みたい!」
「このレモンケーキ、口の中でふわって溶ける……!」
「えっ、これってあの、“侯爵家を追い出された元令嬢”が作ったって……嘘でしょう? え、婚約者? 王子の!?」
ざわめきと賞賛の声が会場中を満たし、その中心でセリーヌは少しだけ頬を赤らめていた。
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そんな彼女に、王妃が近づいてきた。紫のドレスに身を包み、優雅に笑みを浮かべながら、ひと口、セリーヌの作ったミルフィーユを口に運ぶ。
「……これは、罪深い味ですね。ダイエットは明日からにしましょう」
隣の王様も、大きくうなずきながら言った。
「我が王国の宝は、ルシアンだけではなかったようだな。そなたの菓子、実に……うむ、実に旨い!」
「光栄です、陛下。ちなみにこのクッキーには、王妃様のお好みだったハイビスカスの香りを加えてみました」
王妃は目をぱちくりさせて、ふと微笑む。
「まあ……覚えていてくれたのね」
セリーヌは頷きながら、柔らかく答えた。
「人の“好き”を大切にしたくて、お菓子を作っていますから」
その姿を、ルシアンは遠くから見つめていた。
――彼女は、もう誰かに守られるだけの存在ではない。
そして、ひと段落ついた頃、ルシアンがそっと彼女の手を取り、広間の片隅へ連れ出す。バルコニーからは、星の瞬く夜空と、祝福の灯りに包まれた王都の街並みが見渡せた。
「ねえ、セリーヌ。今日、君を見ていて……ずっと思ってたことがあるんだ」
「……なにかしら?」
彼は、真っ直ぐに彼女の目を見つめながら、ゆっくりと告げた。
「君が隣にいることが、私の一番の誇りだ」
「ルシアン……」
その言葉に、セリーヌはほんの少し、目を潤ませた。そしてそっと視線を落とし、彼の胸元に額を寄せた。
「……ありがとう。なんだかね、思い出しちゃったの。初めて一人で焼いた、小さなタルトのことを」
「小さなタルト?」
「うん。お世辞にも綺麗じゃなかったし、焼きすぎてちょっと焦げてた。でもね、あれを食べて“おいしい”って笑ってくれた人がいて……その時、初めて思ったの。“ああ、私の作るものって、誰かを幸せにできるんだ”って」
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「それが、私の始まりだったのね」
「そして、今は……?」
セリーヌは微笑んだ。
「今は、あなたと一緒に、もっとたくさんの“幸せ”を作っていける気がするの」
夜空に一つ、流れ星が落ちた。
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