[完結]ゆり子と不思議なコピー機

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　いつもの十一時に、ゆり子は自分の部屋のベッドに入った。そして、目覚まし時計をいつもの朝七時から深夜の二時にセットしておいた。だけど緊張のせいで、一時すぎに目覚めてしまった。おそるおそる廊下に出てみるとシーンとしている。みんな、寝てしまったようだ。

　玄関に引っ掛けてある店のカギを手にとって、階段を下りる。店の照明をつけて、コピー機の前に立った。分厚い説明書をめくってみた。もちろん、にんげんをコピーできるページなんてない。

　ドラム缶をあけて、丸いざぶとんに座ってみる。きついけれどもなんとか入れる。でも、実行ボタンは外側についている。どうしようか。

　ちょっと考えた。仕方ない。ボタンを押してからすぐに中に入るしかないようだ。でも、本当にうまくいくのかな。不安はあるけれど。失敗しても、べつに何も起きないだろうし。やってみよう。
　ピッピッピッ。お父さんがしていたように人差し指で押していく。

｢よし。コピー、実行｣

すぐに、｢ブオー｣という機械のうなる声。あわてて中に入ってフタを閉める。青白い光が、体を包み込んでいく。

｢チーン｣

　外に出てみると、大きな穴の外に同じパジャマの、じぶんそっくりの女の子がうずくまっていた。
　
｢やった。成功！｣

　ゆり子は、笑顔で飛び上がった。女の子は体をふるわせながら、顔を上げた。

｢わたしは、どこ。どうなっちゃったの？｣

　女の子はいいながら、手を広げてみせた。ゆり子は、長くのびた髪をなでた。