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昔は羽振りが良い時もあったのです

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 すると、マユミは突然、ポツリポツリと、身の上について話し出したのだった。

 親が親友の会社の保証人になっており、その会社の倒産で借金を抱えたことや、その借金返済のために高校を中退し、この店で働いていることを聞いた。

「わたし、人見知りだし。お客さんは満足しないから、不機嫌だし。あたし、プロ失格ですよ」

 マユミは、一瞬空元気の笑顔を浮かべたが、あっという間に崩れてしゃくり上げ始めた。

 圭吾は、やさしくマユミの髪をなでながら、
「大満足だよ」と言った。

 マユミは、瞼に涙を溜ながら、圭吾を見上げた。

「どこが…」

 圭吾は、指先で涙を払いながら、

「だって、マユミちゃんのフェラ、めちゃくちゃ最高だったし」と笑った。

「嘘つき…」

 マユミはますます瞳を潤ませて、圭吾に柔らかい胸を押しつけて泣き崩れたのだった。

 あれから、毎回圭吾はマユミを指名して、マユミもそれにこたえた。

 会社を辞めて、二年もの間、店に行けなくなっても、マユミからのメールは途絶えたことはない。

 こうして、マユミの店が入る雑居ビルの前に立つと、いつもマユミの顔を思い出す。

(いけないにしても、マユミの店前に行くだけなら、よいのではないか)

 圭吾はエレベーターのない、薄暗い階段を上りながら、いいわけを考え始めた。

 三階の店前の写真ボードを見て、圭吾は目を見張った。

 十二枚のポートレートの二番目に、マユミがいたのだ。

(店のナンバーツーまで、上り詰めたなんて、すごいな)
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