【完結】婚約解消だったので、嫌われ者の侯爵に嫁ぐことにしました。

朝日みらい

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第4章: 偶然の気づき 

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冷たい生活が続いていた。

侯爵家に来てから、数日が過ぎたけれど、相変わらず私の存在は空気のようなものだ。

アレクシスは相変わらず無表情で、まるで私がこの家にいることさえも気づいていないようだった。

冷たい食事、冷たい会話、冷たい気温。家全体が氷のようだ。

でも、ある日、思いがけない出来事が私の中で何かを変えるきっかけになった。

その日は、ちょっとした家の用事で早朝から動いていた。

あまりにも暇で、庭を散歩していたら、アレクシスが自室の窓辺に立っているのを見かけた。

外はまだ薄暗くて、霧がかかっている。

彼の姿がなんだか寂しげに見えた。

普段の彼なら、私が近づくのも無視して、どこかに行ってしまうのに、このときは私の足音に気づいて、ちらっと振り向いた。

そこで、ふと見えてしまった。

アレクシスの目が、普段とは違って、どこか遠くを見つめていた。

冷たいというよりは、どこか孤独を感じさせる目だった。

「アレクシス?」

私は、意を決して声をかけた。

「何だ。」

彼はすぐに冷静な声で返すが、その目はまだ、どこか遠くを見ている。

「…何を見てるの?」

私が質問するのも少し躊躇ったけど、あまりにその姿が気になって、言葉が出てしまった。

アレクシスは少しだけ間を置いてから答えた。

「ただ、何も考えていない。」

その言葉には、ほんの少しだけ、嘘が含まれているように思えた。

でも、私がそれに気づくわけないか。だって、彼は私にそんなことを打ち明けるような人じゃない。

そう思って、私は肩をすくめて答える。

「そう、ならいいけど。」

その後、アレクシスは何も言わずにまた窓の外を見つめ続けた。

私もそのまま庭の花を見つめて、無言で立っていた。

でも、さっきの一瞬、彼の孤独が伝わってきたような気がした。

「アレクシス、あまり無理しないでね。」

私がぽつりと言ったその言葉に、アレクシスは驚いたように私を見た。

「無理、とは?」

彼が眉をひそめる。

「そう、だから、無理しないで。」

私は笑顔で答えるが、内心は少しドキドキしていた。

なぜか、この冷たい人に気を使っている自分が不思議だった。

「…俺は、無理なんてしてない。」

彼は少し照れくさそうに言い、でもすぐに冷たい表情を取り戻した。

その瞬間、私は少しだけ彼が本当に冷たいだけじゃないことに気づいた。

その日から、私はアレクシスのことを少し違った目で見るようになった。

彼が孤独を抱えていること、そして、それが彼を冷たくしていることに気づいたのだ。

もちろん、彼が心を開くのはまだまだ先だろうけど、少なくとも私は彼をただの冷徹な侯爵として見るのではなくなった。

それから、数日後の夕方、私たちは一緒に食事をとることになった。

テーブルの上に並んだ料理は豪華だけど、二人とも黙々と食べているだけだ。

あまりにも会話がないと、ちょっと変な感じがする。

「アレクシス。」

私は突然、話しかけてみた。

「…孤独じゃない?」

彼はフォークを持ったまま、少しだけ顔を上げた。

「孤独?」と聞き返してきた。

「うん、だって、いつも一人でいるじゃない。」

私はつい言ってしまった。

どこか照れくさい気持ちが湧いてきたけど、それでも気になって聞いてみた。

アレクシスは少し驚いた顔をして、しばらく黙っていた。

やがて、ほんの少しだけ優しげに答える。

「誰も、俺に近づこうとはしないからな。」

彼の言葉には、嘘がなかった。

ただ、冷たく振る舞っているだけだったんだ。

その言葉に、私はちょっと胸が痛くなった。

「じゃあ、今は私がいるから、少しは寂しくないかしら?」と、つい言ってしまった。

アレクシスは一瞬だけ目を見開き、その後すぐに冷静に言った。

「君がいるから、寂しくないわけではない。ただ、少し…心が落ち着く。」

そして、微かに口元を緩めた。

その一瞬の表情に、私はドキっとしてしまった。

その後、しばらく沈黙が続いたけれど、私は心の中で思った。

アレクシスも、きっと孤独だったんだ。

冷たく見えても、実は寂しさを抱えているのかもしれない。

彼が本当に心を開いてくれるのは、もう少し時間がかかるだろうけど、それでも私は諦めない。

「あ、でも、私がいなかったら寂しいんじゃないかと思ったの。これからはもっと私とお話ししてみてもいいかもよ?」

私は軽く言ってみた。

アレクシスはちょっと驚いた顔をしてから、ぽつりと呟いた。

「その言葉、嬉しい。」
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