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異世界
7 ベビー
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それはそれとして、こちらを見る彼女の瞳は、透き通る清水みたい。魅入られるように美しい。
美少女慣れしていない俺はそれだけで、思わず顔を赤くして目をそらしてしまう。
そんな俺の仕草に少女は警戒の眼差しのまま不敵に笑い、
「あなたみたいな、ある意味すごい人、久しぶりに見たけど」
「どういうことだよ?」
すごい人? もしや、俺はどこかに身売りされたりして、この娘に報酬で何ポイントか入るってわけか。
ケンは急に怖じ気づいて、
「なんか期待されてるところ悪いけど、俺は偶然いただけで」
「偶然? それ、嘘」
ケンは虚勢を張って立ち上がり、
「嘘じゃねえよ。キミに助けてもらっただけで十分だ。サンキュー、アンド、グットバイ」
これ、決まったな、と思った瞬間、
「あれ?」
「あのう、無理して立ち上がんない方がいいよ」
ケンは体がふらつき、支えようと伸ばした手が壁を掴めずに空を切り、そのまま、さっきまで寝ていた地面に倒れこむ羽目に。
受け身できずに、今度は鼻面からそのまま落ちて、鋭い痛みに意識を持っていかれる。
「って、言うのが遅かったか」
遠ざかり始める意識の彼方で、そんな彼女の呆れた言葉がわずかに聞こえてきた。
異世界ファンタジーなのに、冷徹な見方をしてるぜ。
このまま路地裏に捨て置かれるのか、というネガティブな思考と、死ぬところだったのが命あるだけ恩の字だ、というポジティブな思考が混ざり合う。
そんな消極的な両結論を得ながら、ケンの意識は段々、段々と遠くへ。
「ほんと、世話が焼けるわ。無能な」
ぷつりと意識が途切れる瞬間に、銀髪の少女が見えた。
「――ベビー」
――呆れ顔も、可愛いな、異世界ファンタジー。
そんな感想を最後に、今度こそ俺の意識は闇に落ちた。
眠りから目覚める感覚は、水面から顔を出す感覚と似ている。
瞼を開ければ傾いた陽光が瞳を焼き、眩しさに顔をしかめながら目をこする。寝起きはいい方で、一度目が覚めればすぐに意識がはっきりするのがケンの体質だった。
「はあ、やっと目が覚めた?」
声は真上、寝ているケンの頭上から聞こえた。
その声に顔を向けて、ケンは自分が地べたに寝転がり、何か柔らかいものに寄りかかりながらまどろんでいた事実に気付く。
「まだ動かないで。頭も打ってるから、安心できないわ」
こちらの身を案じる声は優しく、さらに頭の下には尋常でない至福の感触。
ケンは自分が意識を失う寸前の出来事を思い返し、今、自分が男の子的にもの凄く恵まれた展開にいるのではという推測に即座に辿り着いた。
――すわ、これぞまさにママの膝枕だ。
天恵に従い、俺は寝返りを打つ素振りでその太ももの感触を堪能しにかかる。
その視線の先には、不満げに銀髪の少女が見える。
意識を失う直前、ケンの記憶と眼に鮮烈に焼きついた少女に間違いない。
「なんか、けっきょく目が覚めるまでいてもらって……もしや、俺に好意とか」
「は、はあ?」
美少女慣れしていない俺はそれだけで、思わず顔を赤くして目をそらしてしまう。
そんな俺の仕草に少女は警戒の眼差しのまま不敵に笑い、
「あなたみたいな、ある意味すごい人、久しぶりに見たけど」
「どういうことだよ?」
すごい人? もしや、俺はどこかに身売りされたりして、この娘に報酬で何ポイントか入るってわけか。
ケンは急に怖じ気づいて、
「なんか期待されてるところ悪いけど、俺は偶然いただけで」
「偶然? それ、嘘」
ケンは虚勢を張って立ち上がり、
「嘘じゃねえよ。キミに助けてもらっただけで十分だ。サンキュー、アンド、グットバイ」
これ、決まったな、と思った瞬間、
「あれ?」
「あのう、無理して立ち上がんない方がいいよ」
ケンは体がふらつき、支えようと伸ばした手が壁を掴めずに空を切り、そのまま、さっきまで寝ていた地面に倒れこむ羽目に。
受け身できずに、今度は鼻面からそのまま落ちて、鋭い痛みに意識を持っていかれる。
「って、言うのが遅かったか」
遠ざかり始める意識の彼方で、そんな彼女の呆れた言葉がわずかに聞こえてきた。
異世界ファンタジーなのに、冷徹な見方をしてるぜ。
このまま路地裏に捨て置かれるのか、というネガティブな思考と、死ぬところだったのが命あるだけ恩の字だ、というポジティブな思考が混ざり合う。
そんな消極的な両結論を得ながら、ケンの意識は段々、段々と遠くへ。
「ほんと、世話が焼けるわ。無能な」
ぷつりと意識が途切れる瞬間に、銀髪の少女が見えた。
「――ベビー」
――呆れ顔も、可愛いな、異世界ファンタジー。
そんな感想を最後に、今度こそ俺の意識は闇に落ちた。
眠りから目覚める感覚は、水面から顔を出す感覚と似ている。
瞼を開ければ傾いた陽光が瞳を焼き、眩しさに顔をしかめながら目をこする。寝起きはいい方で、一度目が覚めればすぐに意識がはっきりするのがケンの体質だった。
「はあ、やっと目が覚めた?」
声は真上、寝ているケンの頭上から聞こえた。
その声に顔を向けて、ケンは自分が地べたに寝転がり、何か柔らかいものに寄りかかりながらまどろんでいた事実に気付く。
「まだ動かないで。頭も打ってるから、安心できないわ」
こちらの身を案じる声は優しく、さらに頭の下には尋常でない至福の感触。
ケンは自分が意識を失う寸前の出来事を思い返し、今、自分が男の子的にもの凄く恵まれた展開にいるのではという推測に即座に辿り着いた。
――すわ、これぞまさにママの膝枕だ。
天恵に従い、俺は寝返りを打つ素振りでその太ももの感触を堪能しにかかる。
その視線の先には、不満げに銀髪の少女が見える。
意識を失う直前、ケンの記憶と眼に鮮烈に焼きついた少女に間違いない。
「なんか、けっきょく目が覚めるまでいてもらって……もしや、俺に好意とか」
「は、はあ?」
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