異世界に落ちたオレは、キミの最強の武器になる

朝日みらい

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異世界

11 アジト

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 扉の前に立ち、とりあえず木造のそれをノックする。思った以上に低い音がこもって響くが、中からの反応はない。

 不安に思いながら取っ手に手をかけると、鍵の存在など最初からないかのようにあっさりと扉は開いた。

 窓からの光源のまったくない室内は、闇の中では完全に手探り状態だ。魔女が住んでいる場所というわりには、見張りも立たせていない無防備さはどうしたことだろうか。

「トイレ休憩って可能性もあるかも」

 頭だけ突っ込んで中をうかがうが、屋内の様子は完全の暗闇。よどんだ空気と据えた臭いの出迎えを受けながら、意を決してケンの足は中へ踏み込む。

 イリスは、おもむろに自分の毛皮の奥に手を差し込む。次に彼女が取り出したのは緑色の鉱石だ。

 彼女はその鉱石をケンの前に差し出し、
「明かりを持っておいて」

「……これ、どうすれば光るの?」

「それの使い方、知らない?」

 呆れと笑みを含んだ口調で言って、彼女は手の中の鉱石を軽く壁にぶつける。

 と、途端に鉱石が淡い緑色の光を放ち始めた。光力は弱く、せいぜい数メートル範囲をぼんやり照らす程度だ。だが、足下や手元の危険を確かめるには十分な光だ。

「手軽だし私は重宝してるの。消えたらおんなじように、叩けばまた光るから」

「なるほど……便利な仕組みだな」

 淡く光る鉱石を片手に、ふたりは恐る恐る中へと足を踏み入れる。

 ぼんやりと確保された視界の中、入口をくぐった目の前にあったのは小さなカウンターだ。もともとは飲み屋かなにかの建物だったのかもしれない。カウンターの向こうに割れた木箱が置いてあり、誰かがそこに腰掛けていたのだろうと推測できる。

 受付の役割を果たしていたらしいカウンター、その上には商品だろうか――いくつかの小箱や壺、刀剣の類が無造作に並べられていた。

 知識的な意味でも物理的な意味でも明るくないので、その価値はうかがい知れないが、素人目からしてもさほど価値のあるようには見えない。

 並んだ盗品には木札が一緒に置かれており、刃物で削ったらしき文字が刻まれている。

 ケンの足はさらに建物の奥へ。

 相変わらず人気はないが、奥へ行くほど置かれた盗品のサイズや価値が増しているのが乏しい光源の中でもわかる。

「ん?」
 ふいに、鼻先に生じた違和感に、ケンは立ち止まる。
 能的な不快感を刺激する、公園でかいた、あの不快な匂い。

「近いぞ」
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